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だれにもいわずにおきましょう。
朝のお庭のすみっこで、 花がほろりとないたこと。
もしもうわさがひろがって はちのお耳へはいったら、
わることでもしたように、 みつをかえしにゆくでしょう。
小鳥は 小えだのてっぺんに、 子どもは 木かげのぶらんこに、 小ちゃな葉っぱは 芽(め)のなかに。
あの木は、 あの木は、 うれしかろ。
それはきれいなばらいろで、 けしつぶよりかちいさくて、 こぼれて土に落ちたとき、 ぱっと花火がはじけるように、 おおきな花がひらくのよ。
もしもなみだがこぼれるように、 こんなわらいがこぼれたら、 どんなに、どんなに、きれいでしょう。
はちはお花のなかに、 お花はお庭のなかに、 お庭は土べいのなかに、 土べいは町のなかに、 町は日本のなかに、 日本は世界のなかに、 世界は神さまのなかに。
そうして、そうして、神さまは、 小ちゃなはちのなかに。
花はつまれて どこへゆく
ここには青い空があり うたうひばりがあるけれど
あのたのしげな旅びとの 風のゆくてが おもわれる
花のつけ根をさぐってる あのあいらしい手のなかに わたしをつむ手は ないかしら
ちらほら花も さいている、 げんげ畑が すかれます。
やさしいめをした 黒牛に ひかれてすきが うごくとき、 花も葉っぱも つぎつぎに、 黒い、重たい 土の下。
空じゃひばりが ないてるに、 げんげ畑は すかれます。
垣(かき)がひくうて 朝顔は、 どこへすがろと さがしてる。
西もひがしも みんなみて、 さがしあぐねて かんがえる。
それでも お日さまこいしゅて、 きょうも一寸(いっすん) またのびる。
のびろ、朝顔、 まっすぐに、 納屋(なや)のひさしが もう近い。
お空の星が 夕顔に、 さびしかないの、と ききました。
おちちのいろの 夕顔は、 さびしかないわ、と いいました。
お空の星は それっきり、 すましてキラキラ ひかります。
さびしくなった 夕顔は、 だんだん下を むきました。
赤いちょうちんまだひがつかぬ、 秋のまつりの日ぐれがた、
遊びつかれてお家へもどりゃ、 おとうさんはお客さま、 おかあさんはいそがしい。
ふっとさびしい日ぐれがた、 うらの通りをあらしのように、 みこしのゆくのをききました。
きのうは子どもを ころばせて きょうはお馬を つまずかす。 あしたはたれが とおるやら。
いなかのみちの 石ころは 赤い夕日に けろりかん。
わたしが両手をひろげても、 お空はちっともとべないが、 とべる小鳥はわたしのように、 地面(じべた)をはやくは走れない。
わたしがからだをゆすっても、 きれいな音はでないけど、 あの鳴るすずはわたしのように たくさんなうたは知らないよ。
すずと、小鳥と、それからわたし、 みんなちがって、みんないい。
わたしはふしぎでたまらない、 黒い雲からふる雨が、 銀にひかっていることが。
わたいはふしぎでたまらない、 青いくわの葉たべている、 かいこが白くなることが。
わたしはふしぎでたまらない、 たれもいじらぬ夕顔が、 ひとりでぱらりと開くのが。
わたしはふしぎでたまらない、 たれにきいてもわらってて、 あたりまえだ、ということが。
月夜にかげふみしていると、 「もうおやすみ」とよびにくる。 (もっとあそぶといいのになあ。) けれどかえってねていると、 いろんなゆめがみられるよ。
そしていいゆめみていると、 「さあ学校」とおこされる。 (学校がなければいいのになあ。) けれど学校へでてみると、 おつれがあるから、おもしろい。
みなでしろ取りしていると、 お鐘(かね)が教場へおしこめる。 (お鐘がなければいいのになあ。) けれどお話きいてると、 それはやっぱりおもしろい。
ほかの子どももそうかしら、 わたしのように、そうかしら。
青いお空のそこふかく、 海の小石のそのように、 夜がくるまでしずんでる、 昼のお星はめにみえぬ。 見えぬけれどもあるんだよ、 見えぬものでもあるんだよ。
ちってすがれたたんぽぽの、 かわらのすきに、だァまって、 春のくるまでかくれてる、 つよいその根はめにみえぬ。 見えぬけれどもあるんだよ、 見えぬものでもあるんだよ。
お正月でも 花ざかり、 わたしのべに絵のお茶わんは。
四月がきても 花さかぬ、 わたしのみどりのおはしには。
なしのしんはすてるもの、だから しんまで食べる子、けちんぼよ。
なしのしんはすてるもの、だけど そこらへほうる子、ずるい子よ。
なしのしんはすてるもの、だから ごみばこへ入れる子、おりこうよ。
そこらへすてたなしのしん、 あるがやんやら、ひいてゆく。 「ずるい子ちゃん、ありがとよ。」
ごみばこへいれたなしのしん、 ごみ取りじいさん、取りに来て、 だまってごろごろひいてゆく。
こよみがあるから こよみをわすれて こよみをながめちゃ、 四月というよ。
こよみがなくても こよみを知ってて りこうな花は 四月にさくよ。
時計があるから 時間をわすれて 時計をながめちゃ 四時だというよ。
時計はなくても 時間を知ってて りこうなとりは 四時にはなくよ。
ゆめがほんとでほんとがゆめなら、 よかろうな。 ゆめじゃなんいも決まってないから、 よかろうな。
ひるまの次は、夜だってことも、 わたしが王女でないってことも、
お月さんは手ではとれないってことも、 ゆりのなかへははいれないってことも、
時計のはりは右へゆくってことも、 死んだ人たちゃいないってことも、
ほんとになんにも決まってないから、 よかろうな。 ときどきほんとをゆめにみたなら、 よかろうな。
だれがほんとをいうでしょう、 わたしのことを、わたしに。 よそのおばさんはほめたけど、 なんだかすこうしわらってた。
だれがほんとをいうでしょう、 花にきいたら首ふった。 それもそのはず、花たちは、 みんな、あんなにきれいだもの。
だれがほんとをいうでしょう、 小鳥にきいたらにげちゃった。 きっといけないことなのよ、 だから、いわずにとんだのよ。
だれがほんとをいうでしょう、 かあさんにきくのは、おかしいし、 (わたしは、かわいい、いい子なの、 それとも、おかしなおかおなの。)
だれがほんとをいうでしょう、 わたしのことをわたしに。
「遊(あす)ぼう」っていうと 「遊ぼう}っていう。
「ばか」っていうと 「ばか」っていう。
「もう遊ばない」っていうと 「遊ばない」っていう。
そうして、あとで さみしくなって、
「ごめんね」っていうと 「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか、 いいえ、だれでも。
おかあさまは おとなで大きいけれど、 おかあさまの おこころはちいさい。
だって、おかあさまはいいました、 ちいさいわたしでいっぱいだって。
わたしは子どもで ちいさいけれど、 ちいさいわたしの こころは大きい。
だって、大きいおかあさまで、 まだいっぱいにならないで、 いろんなことをおもうから。
わたしはいま すなのお国の王様です。
お山と、谷と、野原と、川を 思うとおりにかえてゆきます。
おとぎはなしの王様だって 自分のお国のお山や川を、 こんなにかえはしないでしょう。
わたしはいま ほんとにえらい王様です。
ふと思い出す、あの町の、 川のほとりの、赤い屋根、
そうして、青い大川の、 水の上には、白いほが、 しずかに、しずかに動いてた。
そうして、川岸(かし)の草の上、 わかい、絵かきのおじさんが、 ぼんやり、水をみつめてた。
そうして、わたしは何してた。 思いだせぬとおもったら、 それは、たれかにかりていた、 ご本のさし絵でありました。
おへやのしょうじは、ビルディング。
しろいきれいな石づくり、 空までとどく十二階、 お部屋のかずは、四十八。
一つのへやにはえがいて、 あとのおへやはみんな空(から)。
四十七間のへやべやへ、 だれがはいってくるのやら。
ひとつひらいたあのまどを、 どんな子どもがのぞくやら。
──まどはいつだか、すねたとき、 指でわたしがあけたまど。
ひとり日ながにながめてりゃ、 そこからみえる青空が、 ちらりとかげになりました。
このうらまちの ぬかるみに、 青いお空が ありました。
とおく、とおく、 うつくしく、 すんだお空が ありました。
このうらまちの ぬかるみは、 深いお空で ありました。
ちったお花のたましいは、 みほとけさまの花ぞのに、 ひとつのこらずうまれるの。
だって、お花はやさしくて、 おてんとさまがよぶときに、 ぱっとひらいて、ほほえんで、 ちょうちょにあまいみつをやり、 人にゃにおいをみなくれて、
風がおいでとよぶときに、 やはりすなおについてゆき、
なきがらさえも、ままごとの ごはんになってくれるから。
だれも知らない野のはてで 青い小鳥が死にました さむいさむいくれがたに
そのなきがらをうめよとて お空は雪をまきました ふかくふかく音もなく
人は知らねど人里の 家もおともにたちました しろいしろいかつぎ着て
やがてほのぼのあくる朝 空はみごとに晴れました あおくあおくうつくしく
小さいきれいなたましいの 神さまのお国へゆくみちを ひろくひろくあけようと
おてんと様のお使いが そろって空をたちました。 みちで出会ったみなみ風、 (何しに、どこへ。)とききました。
ひとりは答えていいました。 (この「明るさ」を地にまくの、 みんながお仕事できるよう。)
ひとりはさもさもうれしそう。 (わたしはお花をさかせるの、 世界をたのしくするために。)
ひとりはやさしく、おとなしく、 (わたしはきよいたましいの、 のぼるそり橋かけるのよ。)
のこったひとりはさみしそう。 (わたしは「かげ」をつくるため、 やっぱり一しょにまいります。)
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