アフリカのAIDS事情
エイズに追い詰められるアフリカ


                         

アフリカではADISの流行が危機的な状況になっている。
死者が続出しているばかりでなく、HIV感染者も多い。
その原因は貧困や風習など様々な問題が絡んでいる。
アフリカ南部の国、ジンバブエ。
ジンバブエのエイズ対策網領(NACP)によれば、
国民の20〜25%、つまり4人に1人がHIV感染者と推定されている。
この4人に1人というのは、乏しいデータと希望的観測に基づいた
楽観的な数字だ。これは国全体で12ヶ所ある妊産婦用診療所が妊婦から
定期的に採血した血液サンプルに基づいている。
アフリカのHIV感染は、異性間での性交渉と母子感染によるものが殆どである。
ジンバブエをはじめアフリカの殆どの国は、HIV感染者が広がりやすい
環境にある。激しいインフレや失業による貧困、粗末な医療体制。。。
それにジンバブエにはHIVを広めやすい文化的背景もある。


まず、社会が歴史的に一夫多妻の男性優位
他のアフリカ諸国と同様、男性が農村部に妻子を残して
都会に出稼ぎにやってくる。家に帰るのは月に2、3回だけだ。
都会にいる間、男性は買春したり、愛人を持つ。
女性も生活のために数人の男性と付き合っていたりする。
家に残された妻も、子供の授業料が必要な時期になると
売春することがある。。。
アフリカ南部のSEXや衛生の慣習も感染率を上げる要因になっている。
男性が望むという理由で、膣内に洗剤や民間療法師から入手した
ハーブなどを入れたりする女性がいる。
こうした女性の場合、膣内細菌の均衡が崩れて、性感染症に
感染しやすくなるという論文を、ニューヨーク市の人口協議会の
所属員が発表している。
HIV感染リスクを下げるのは、若い女性ではなおさら難しい。
パトロンの問題があるからだ。男性は若い女性ほどSEXの
経験がなく、HIVに感染している恐れが少ないのを知っている。
処女と性行為をすれば、HIV感染やAIDSを治せると
思い込んでる人もいるのだ。。。


先人国の多くのAIDS患者やHIV感染者は、抗エイズ薬を使用しているが
こうした医療品には年間1人あたり1万ドル以上(日本円にして120万以上)
かかる。ジンバブエ政府や米国からの資金援助では到底足りない。
患者に抗エイズ薬を十分に供給できない。残された方法は行動を
変えさえることで、当分はコンドームの使用ということになる。
ジンバブエの家族計画協議会では、コンドームをアフリカ大陸で
最も多い年間5000万個配っていると言う。
1人あたり1年間に約4個のコンドームが配布されることになる。
しかし、男性優位の社会、コンドームの使用を拒否する男性も
まだまだ多い。
あまりに酷くて手の施しようがないと口にすることだけは
絶対にしてはならない。。。


日系サイエンス2000年8月号を参照


 




アフリカのAIDS事情
高すぎる医薬品の価格


                         

アフリカなどのエイズ治療が最も必要な地域で、治療が進まない
最大の理由は、医薬品が高価なことだ。
医薬品の価格問題は2000年11月の米国大統領選挙の争点にもなった。
貧しい国が購入しやすいように、エイズ治療薬の価格を下げる話合いが
5大製薬会社(ベーリンガーインゲルハイム社、グラクソ・ウェルカム社、
ブリストル・マイヤーズスクイブ社、メルク社、F・ホフマン・ラ・ロシェ社)
と、世界保健機構(WHO)の間で何度か開催されている。。。
製薬会社は、2000年5月にアフリカ向けの抗HIV薬の価格を80%下げる
と、申し出たが、この値下げでは不十分で遅すぎるという批判が上がった。
医薬品の費用以外で問題となるのは、個々の患者で抗HIV薬が効いて
いるかを判定し、薬剤耐性を持ったウイルスが出現していないかを
監視するのに必要な検査である。
こうした検査は、費用がかかり頻繁な来院が必要。
検査技師がこなすのに困難なこともある。
発展途上国の多くでは、CD4細胞数やウイルス量の検査装置が不足し
検査技師は訓練を受けていない。遺伝子型や表現型分析は言う間でもない。
さらに、ほとんどのサハラ以南のアフリカ諸国の指導者が
抗HIV薬の使用を歓迎していない。。。


南アフリカのムベキ(ThaboMbeki)大統領は、HIVだけがエイズの原因では
ありえないと主張し続けている。世界各地で行われた研究で
AZTや他の抗HIV薬が母子感染を半減させ、副作用もほとんどないことが
示されているにも関らず、ムベキ大統領は、AZTや他の抗HIV薬が
アフリカの妊婦にとって毒性が強すぎると主張しているのだ。
南アフリカ政府がグラクソ・ウェルカム社から、割引価格で購入してる
AZT(100rカプセル1錠当たり)の価格は3ランド(0.40ドル)である。
これは、ケープタウンでコーラ1缶の値段よりも安い
ニューヨークでは、1錠のAZTが5ドル以上することもある。
AZTと同様に母子感染率を低下させるのに有効と期待されているものに
ネビラピンが挙げられている。製造元のドイツ、インゲルハイムにある
ベーリンガーインゲルハイム社は、アフリカと他の貧しい地域に
ネビラピンを無料で提供してきた。2000年7月、同社は発展途上国に
5年間にわたり無料でこの医薬品を提供すると発表している。
しかし、HIVに感染した居住者の割合が最も高い国のひとつである
南アフリカは、ベーリンガーインゲルハイム社の申し入れを受入れていない。
米国の輸出入銀行は、アフリカのサハラ以南の24カ国に対し
抗HIV薬購入用として10億ドルの借款を申し出たが、
南アフリカとナミビアはすでに多大な債務を抱えているとして、
8月にこの申し出を断った。。。
南アフリカ政府が母子感染を防ぐのに抗HIV薬の使用をためらったことは、
国内外の多くの人を悲しませた。
自分自身もHIV感染者である南アフリカの憲法裁判所裁判官のカメロンは
ダーバンで開催されたエイズ国際会議の演説で、南アフリカでHIVに感染した
妊婦にネビラピンが与えられないことを
「嘆かわしいことだけでなく。不当で誤っている」と非難した。
ダーバンにある治療行動キャンペーン(TAC)というグループは、
南アフリカ政府にHIV感染妊婦全員に抗HIV薬を与えるよう訴訟手続きを
とっている。。。


高すぎる医薬品の論議が交わされている一方で、インドやタイ、ブラジルなどの
国が先発メーカーの抗HIV薬をまねた薬を製造している。
その中には米国で患者1人あたり1日20ドル以上かかる
極めて高価な新しいプロテアーゼ阻害剤も含まれている。
インドやブラジルの製薬会社は、知的所有権保護の協定を無視している。
クリントン大統領は2000年5月に、アフリカ諸国がこうした国で作られた
エイズ薬の類似品を輸入して米国の製薬会社の特許が侵害されても
干渉しないという行政命令に署名している。
「貿易に関する知的財産権」(TRIPS)の国際協定によって、アフリカ諸国は
合法的に抗HIV薬のノーブランド品を入手できる。
世界貿易機構(WTO)の137カ国が関係するTRIPSに従えば、
各国政府は協定の特許保護を無効にする法律を制定できる。
政府が「強制ライセンス」を国内の企業に与えれば、その企業は、国内向けに
同製品を製造できる。その企業は特許所有者に特許使用料を支払わなければ
ならないが、ほとんどの場合は、製品を安く製造できる。


製薬会社は強制ライセンス供与が、特許を侵害し、研究費をまかなえなくする上、
質の悪い危険な模造品につながるとして反対している。
その代りに,WHOとの交渉で5社は価格を80%下げるという案に
固執しているらしい。。。
当然、この5社は米国で認可された抗HIV薬のほとんどを製造している。
フランス組織の「国境なき医師団」によれば、これでも抗HIV薬は高すぎると言う。
製薬会社は製造コストをわずかに上回った価格で販売して欲しいと願っている。
価格を80%下げると、多剤併用治療の年間費用が
約1万2000ドル(1$=115円の換算で138万円)から
から2400ドル(換算で27.6万円)へ下がるのだが、ブラジルから輸入した
類似の医薬品なら1000ドル(換算で11.5万円)しかかからないからだ。
しかし、発展途上国の1人あたりの年間医療費がドルということを
考えれば、それでもかなり高いのである。。。
事実、80%の値下げでは、国全体の医療予算である20億ランドで
約12万人分の医薬品しか購入できない。
人口の約10%以上、420万人のHIV感染者がいると言うのに。
ビル&メリンダ・ゲイツ基金は、2000年7月に、ボツワナの医療インフラを
整備するため5000万ドルを寄付すると発表した。寄付は5年間で行なわれ
メルク社が治療計画管理と抗HIV薬を供与するのと連動することになる。。。






AIDS治療薬の価格の比較

医薬品名 米国の価格(卸売) 南アフリカの価格 日本の価格 「最も低い」価格 「最も低い」価格
元にした米国価格
シダノシン (ddl:バイデックス) $1.80 (207.0 円) $0.70 (80.5 円) 264.3 円 $0.50 (ブラジル)
 /57.5 円
3.6倍
エファビレンツ (EFV:ストックリン) $4.40 (506.0 円) $2.40 (276.0 円) 742.3 円 $2.30 (ブラジル) 
/264.5 円
1.9倍
フルコナゾール (ジフルカン) $12.20 (1403.0 円) $4.10 (471.5 円) $0.30タイ:維持用費
 /34.5 円
40.6倍
ラミブジン (3TC:エピビル) $4.50 (517.5 円) $1.10 (126.5 円) 1055.2 円 $0.50 (インド)
 /57.5 円
9倍
ネビラピン (NVP:ビラミューン) $4.90 (563.5 円) $3.00 (345.0 円) 1094.3 円 $2.10 (ブラジル)
 /241.5 円
2.3倍
スタブジン (d4T:ゼリット) $4.90 (563.5 円) $2.50 (287.5 円) 546.5 円 $0.30 (ブラジル) 
/34.5 円
16.3倍
ジドブジン (AZT:レトロビル) $1.70 (195.5 円) $0.40 (46.0 円) 352.4 円 $0.20 (ブラジル・インド)
 /23.0 円
8.5倍
コンビビル(ラミブジン+ジドブジン) $9.80 (1127.0 円) $1.50 (172.5 円) 2064.6 円 $0.70 (ブラジル)
/80.5 円
14倍

「 国境なき医師団の資料により作成 」     南アフリカ政府が製薬会社に支払う価格

全て、たったの1錠/1カプセルあたりの薬価 (1$=115円として換算)です。
*ddlは25rの錠剤の場合です。
*d4Tは15rの1カプセルの場合です。










米国での代表的な抗HIV薬の市


逆転写酵素阻害剤 (単位:100万ドル)
コンビビル(ラミブジン+ジドブジン) ..................... 478.4
スタブジン (d4T:ゼリット) ..................... 315.9
ラミブジン (3TC:エピビル) ..................... 260.2
エファビレンツ (サスティバ) ..................... 178.6
ネブラピン (ビラミューン) ..................... 108.1
ザイアジェン (アバカビル) ..................... 107.5
シダノシン (ddl:バイデックス) ..................... 78.6
ジドブジン (AZT:レトロビル) ..................... 55.0
ハイビット (ddc:ザルシタビン) ..................... 9.7
レスクリプター (デラビルジン) ..................... 7.4
レトロビル (IV) ..................... 0.7
合計 1600.1


プロテアーゼ阻害剤 (単位:100万ドル)
ネルフィナビル (ビラセプト) ..................... 440
インジナビル (クリキシバン) ..................... 234
リトナビル (ノービア) ..................... 101
フォートバーゼ (サキナビル・ソフトカプセル) ..................... 80
アゼネラーゼ (アンプレナビル) ..................... 48
インビラーゼ (サキナビル・ハードカプセル) ..................... 30
合計 933














※先進国である日本の抗HIV薬の価格は、
実に米国の2倍近いことが判ります。
いくら豊かな国とは言え、高価すぎやしませんか???。





原論文「AIDS Drugs for Africa」
〜SCIENTIFIC AMERICAN November2000〜
高すぎる医薬品の価格を参照