to be, or not to be, that is the question- について


to be,〜 をめぐるさまざまな考えについてです。全部先生に教えてもらった内容です(汗)。
まずはこの部分の原文を抜き出してみます。
  (原文:フィリップ・エドワーズ編「ニュー・ケンブリッジ・シェイクスピア」より/訳文:小田島雄志 白水Uブックスより)


To be, or not to be, that is the question ―          このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ。
Whether 'tis nobler in the mind to suffer           どちらがりっぱな生き方か、このまま心のうちに
The slings and arrows of outrageous fortune,         暴虐な運命の矢弾をじっと耐えしのぶことか、
Or to take arms against a sea of troubles,          それとも寄せくる怒濤の苦難に敢然と立ちむかい、
And by opposing end them. To die, to sleep ―        闘ってそれに終止符をうつことか。死ぬ、眠る、
No more; and by a sleep to say we end            それだけだ。眠ることによって終止符はうてる、
The heart-ache and the thousand natural shocks       心の悩みにも、肉体につきまとう
That flesh is heir to 'tis a consummation          かずかずの苦しみにも。それこそ願ってもない
Devoutly to be wished. To die, to sleep ―          終わりではないか。死ぬ、眠る、
To sleep, perchance to dream. Ay, there's the rub,      眠る、おそらくは夢を見る。そこだ、つまずくのは。
For in that sleep of death what dreams may come,      この世のわずらいからかろうじてのがれ、
When we have shuffled off this mortal coil,          永の眠りにつき、そこでどんな夢を見る?
Must give us pause. There's the respect           それがあるからためらうのだ、それを思うから
That makes calamity of so long life,              苦しい人生をいつまでも長びかすのだ。
For who would bear the whips and scorns of time,      でなければだれががまんするか、世間の鞭うつ非難、
Th' oppressor's wrong, the proud man's contumely,      権力者の無法な行為、おごるものの侮辱、
The pangs of disprized love, and the spurns         さげすまれた恋の痛み、裁判のひきのばし、
That patient merit of th' unworthy takes,           役人どもの横柄さ、りっぱな人物が
When he himself might his quietus make           くだらぬやつ相手にじっとしのぶ屈辱、
With a bare bodlkin? Who would fardels bear,        このような重荷をだれががまんするか、この世から
To grunt and sweat under a weary life,            短剣のただ一突きでのがれることができるのに。
But that the dread of something after death,          つらい人生をうめきながら汗水流して歩むのも、
The undiscovered country from whose bourn         ただ死後にくるものを恐れるためだ。
No traveller retuns, puzzles the will,             死後の世界は未知の国だ旅立ったものは一人として
And makes us rather bear those ills we have          もどったためしがない。それで決心がにぶるのだ、
Then fly to others that we know not of ?           見も知らぬあの世の苦労に飛びこむよりは、
Thus conscience does make cowards of us all,        慣れたこの世のわずらいをがまんしようと思うのだ。
And thus the native hue of resolution              このようにもの思う心がわれわれを臆病にする、
Is sicklied o'er with the pale cast of thought,         このように決意のもって生まれた血の色が
And enterprises of great pitch and moment           分別の病み蒼ざめた塗料にぬりつぶされる、
With this regard their curreunts turn awry           そして、生死にかかわるほどの大事業も
And lose the name of action. Soft you now,          そのためにいつしか進むべき道を失い、
The fair Ophelia.                           行動をおこすにいたらずに終わる―待て、
                                       美しいオフィーリアだ。



ここのすぐあとからが尼寺の場になるのだが、それは次に書くとして、ここの場面、つまり
「to be, or not to be, that is the question-」 の部分についての解釈は たくさん考えられてきている。
そもそもなぜこの部分が不可解(=さまざまな解釈が生まれる)のかというと、それはこの部分に
主語がひとつも出てこないからだろうと思われる。「 I 」などどこにも出てこない。
英語を日本語に訳すのは難しい。少なくともそのまま書くわけにはいかないから、何かを足さざるを得なくなる。
訳すときだけでなく、この部分の意味を考える上では何かしらの意味を付け足さなければならないだろう。
「 To be, or not to be 」の解釈には例えば以下のようなものがある。

 @ このあとに付け足しをする     A そのまま曖昧でよい。あとに説明があるから。

例えば@の場合、A : 〜 in this world を加える →→「この世に在る(be)か、そうでないか」
           B : 〜 after life を加える →→「死んだ後に be かどうか」

そしてAの場合、「そうであるべきか」などと訳されたりする。が、これも「べき」を付け足しているではないか、という意見有り。
あとに説明がある、というのは、原文で言うと
 To be = to sufferThe slings and arrows of outrageous fortune,
 not to be = to take arms against a sea of troubles,And by opposing end them.
を指しているのだという解釈。

 「 be であるか、be でないか」、それが問題だ。

…これを訳すのは難しい。どんな訳でもなんだか違和感があるような感じがしてしまう。
これが一体何について「問題だ」と言っているのか ということについて、例えば以下のような考え方がある。

 @ self-murder (自殺) 説   
 A ジレンマ説  A : ハムレット個人のジレンマである   B : 個人でなく普遍的なジレンマである

ここには「 that is the question- 」 の 「 question 」 が何なのか、という問題がそれぞれにある。
「 question 」 の内容についての考え方は、例えば次の5つがある。

 その1 : Question とは → 存在の利/不利 (人間として生まれて「 be 」でよかった?悪かった?)
 その2 : Question とは → life と death の2択 なのだ。 (どっち?)
 その3 : Question とは → ハムレット個人の問題で、つまりは 自殺するか、しないか。
 その4 : Question とは → 自分でなく、王を殺すこと。 (人を殺すのはよいのか、ダメか?)
 その5 : Question とは → 王の良心を得ること…芝居(劇中劇の“ゴンザゴ殺し”)を演じるか、やめておくか。

例えばその2の考え方を採用した場合、その訳は「生か、死か、それが問題だ」となるわけだ。
小田島雄志さんの訳ではそれが「ここままでいいのか、いけないのか」となっている。
文字上ではあまり意味は足されていないように思えるが、劇の中でそれを聞くと
ちゃんとストーリーの流れから何を指してハムレットがそう言っているのかを自然に思いうかべることができた。

その他にも「 in the mind 」 が、「 nobler 」 と 「 suffer 」 のどちらにかかっていくのかという迷いもある。
英語を細かく見ていくときりがない。というよりは本当にたくさんの解釈の余地があると言った方がよいか。

私の先生的には、この部分は 人間の運命・生きるということ という普遍的なものとして捉えているようだった。