2月 9日(月)

February 9th (Mon), タンペレ通信に戻る( Back to Index)


(ラピン・クルタ)

 ラピン・クルタ(ラップランドの金)は、私がフィンランドで最も世話になっているビールである。330 ml 入の小瓶は20本入のケースで購入すると一本約6マルッカ(150円)弱だから決して安くはない。日本のスーパー・ドライともラガーとも異なる味わいではあるが、ハイネケンのような癖も、バドワイザーのような水っぽさもなく、外国のビールとしては飲みやすい味だと思う。来フィン当初は、カルフ(熊)ビールや イルヴェスのユニホームに広告を出しているKOFF ビールも飲んでみたが、結局、私にとって最も飲みやすいラピン・クルタに落ち着いた。製造所はボスニア湾の最奥部、ラップランドの南端、スウエーデン国境に近いトルニオの町だという。
 フィンンランドのビールは以前述べたように三種類に分類され、最もアルコール濃度の低いビールはアルコール飲料と認知されていないのか大学の食堂にも並んでいる。最もアルコール濃度の高いビールは国有のアルコール専売店アルコに行かなければ買えない(そう言えば、アルコには来フィン当初どんなところか偵察に行ったきりご無沙汰している)。普通ビールと言えば、スーパーでも購入できる第三類、アルコール濃度4.5%を示す。

(自転車)

 我々が来フィン早々に購入した自転車は、雪が降り始めた11月下旬からは使われず、アパート地階の自転車室で眠っているが、大学の構内には相変わらず学生諸君の自転車が駐輪されている。置かれている自転車は夏にピーク時の半分以下だが、雪が積もろうと(現在の積雪は30〜50cmくらいと思う)、道路が凍結しようとフィンランド人は(の一部と言ったのでは少なすぎる感じの割り合いで)自転車に乗って通勤通学する。夏の間に大人から子供まで自転車に乗るのにヘルメットを着用しているのが日本と違って不思議に思ったが、冬も乗るのであれば、ヘルメットは必需品かもしれない。なにしろ、最近でこそコツを覚えたのか転ばなくなったが、わずか10分の通勤で転びそうになること数回というのが普通である。このように滑りやすい道で自転車に乗ろうとは、我々は思ったこともない。
 マウンテンバイクの比率が多いように思ったのも、冬に乗るためかもしれないが、全ての自転車が凸凹の多いタイヤを持つわけではない。最近は見かけなくなったが、近所のスケートリンクに自転車を持ち込み、氷の上をドリフトしながら走っている子供達を見ていると、永年の練習の成果なのだろうと納得できる。一冬しか滞在しない我々には、到底まねできる芸ではない。恐れ入った。

(ノキア)

 ヘルヴァンタにはノキアに勤める人が多い。さくらちゃんの父ユハさんも、秋にフィンランド語教室で出会ったフランクトンさんもノキア勤務である。ヘルヴァンタに住む外国人にも、ノキアにスカウトされた研究者や技術者の家族がかなりの比率で含まれる。身近な例では、大学院の学生が就職が決まって研究室から離れると聞くと、2人に1人はのノキアの採用である。実は、タンペレ工大の南隣り、ヘルミアの研究地区で最も大規模な研究所がノキアの研究所なのである。以前、サウナパーティがあったのも、マラさんの好きな食堂(大学内の食堂は、全て同じ会社の経営なのだが、食堂によってメニューも食器も雰囲気も異なる。値段は、本館の職員用食堂を除けば、同じ)もヘルミアにあり、ノキアの研究所のお膝もとである。日本でも知る人は多いと思うが、ノキアは携帯通信端末(GSM)で有名なフィンランドの誇る先端企業である。
 最近、日本から送られてきた雑誌の記事によると、「ノキアは創業130年の歴史を誇る老舗で、従来は製紙、ゴム(ノキアの長靴は有名らしい)、電線、近年ではテレビで有名だったのが、90年代に入ってから従来の事業を全て捨てて、携帯端末に特化、大変身をとげた企業だ」というのである。はっきり言って驚いた。私が知るノキアは、伝統のある大企業の華麗なる変身後の姿だというのだ。この雑誌によると、ノキアでは社長を始めとする役員の年齢も若く、みなバリバリ働くという。そう言えば、残業や週末出勤もめずらしくないユハさんの話しを聞くと、まるで日本の製造業に勤める技術者のようだ(ハード・ワーキングだ)と思ったことがある。ばりばり働くことに重い価値を認める風土とはいえ、公共部門の比重が重く、定時勤務のが広く行き渡っているように見えるフィンランドでは、特異な存在ではないか。

(零下18℃)

 先週に引き続き、今週も寒い日が続いた(その代わり、青空に恵まれ、日照時間は桁違いに増えた。今週だけで軽く10時間は越えるだろう)。火曜日のホッケーの試合は14℃、木曜日の練習は17℃だった。いつもは12人以上集まるホッケー少年達もこの日は、わずか6人。しかも、練習途中で2人が帰宅した。練習後コーチのヨウニに聞くと、この気温はホッケー壮年達にも厳しいらしい。マイラ(ホッケーのスティック)でリンクに転がり込んできた雪玉を叩くと、キーンと甲高い金属音がする。地下駐車場の出口の扉は内側も氷始め、まるで冷凍庫の扉である。よく考えてみれば、外界全てが大形冷凍庫そのものと言っても間違いではない。面白い。

  
      (窓の氷)       (氷製作実験)       (アハヴェニス・プイスト) 

 零下15℃以下の気温になると、温度計、先週お話したヘルヴァンタのボイラー以外にも、いくつかの測温手段が見つかる。屋外に出て約十秒、鼻の中がもぞもぞしたら、まず15℃以下である。たぶん、鼻毛が凍るのであろう、測定時間も短く、簡便な方法である。次に、17℃くらいになると我が家ではキッチンの窓のまん中のガラス(窓ガラスは2cm間隔の三層)が凍り始める。大ざっぱに言うと、外気がマイナス20℃、室内がプラス20℃なら、中間は0℃というわけだろう。午後10時前なら、アハヴェニス・プイストで滑っている子供達の数を調べてもよい。マラさんの朝一番の話題も(良い)天気の話になる。ウインタースイミングには絶好の日和とのこと。幸いなことに、タンペレのあるフィンランド南部は暖かい地方で、真冬でもそれほど寒くはならないようだ。ラップランドでは30℃、時には40℃という気温予報が出ることも、それほど珍しくはない。


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