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毎日新聞・「手詰まり日朝私はこう見る」
右翼団体「一水会」顧問 鈴木邦男さん

 仮に拉致被害者5人の誰かが「いったん北朝鮮へ戻って子供に会いたい」と言い出したら、日本の社会は許すだろうか。たとえ北朝鮮がひどい国だとしても、5人を一度北朝鮮へ戻すと約束したのなら、政府は約束を破ったことを北朝鮮にわびるべきだ。そのうえで、日本の事情を説明すればよい。だが、日本の社会はそういう意見が言える雰囲気だろうか。
 9月の日朝首脳会談後、日本社会は気味が悪い、危ない状態になっている。北朝鮮問題に関する言論の自由がない。自由な言論を許さない人が政治家、そして市民の中に大勢いる。本当の意味での「戦い」をした経験がなく、拉致問題など二十数年間、無関心だったくせに、声の大きさだけで相手を威圧して押し切ろうとする「対北朝鮮強硬派」の大量出現である。
 彼らの抗議が怖いから、特に民放テレビは北朝鮮を悪く言う意見ばかり報道する。「北朝鮮にも幸せを感じながら、暮らしている人がいるかもしれない」などと言おうものなら大変だ。私のこの発言を読み、早速、抗議と脅迫を考える人がいるかもしれない。多様な言論を認めない社会は北朝鮮と同じだ。
 北朝鮮が独裁体制の危険な国だというのは分かるが、正常化交渉再開には賛成だ。交渉したから拉致被害者5人は帰ってきた。当面は中国やロシアに北朝鮮へ圧力をかけてもらうようお願いし、北朝鮮が話し合いのテーブルにつくのを待つしかないだろう。
「どうしようもない国だ」と言い続けるのは、外交ではない。強硬に臨むだけでは、問題は何も解決しない。



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