幸福な人生

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140文字のてのひらSTORY チョコレイトの涙

「好き」とハッキリ相手に伝えて失敗しても冗談で終わらせることができる唯一の日が2月14日。恋する女は実年齢が何歳でも乙女に戻れる。「手作り」は本気度がばれて気まずい。そこそこの市販品、でもちょっと珍しいタイプで、しっかりおいしいものを。場所はデパ地下じゃなくロンロンの特設売り場。

「通りがかったら可愛いの見つけたからさ、何となくたくさん買っちゃった。良かったらあげるけど、いる?」違うよ、何度も売り場をぐるぐる回って、負担がかからない程度の大きさのを時間をかけて探した。心の整理がついたかつての恋人へひとつ、そしてあなたには2つ。「つい買い過ぎた」必然の個数。

立方体をちょっと崩したような形の、真っ白なパッケージのチョコレイト。「伝えたいメッセージを選べます」って書いてあった。選んだのは「これからもよろしく」「お友達で」「好きです」。箱がつぶれないように、そっと抱えて持って帰り、どうしよう…と考える。生まれて初めてのベタな告白の前夜。


悩みまくった末に持っていき、帰りの時間を待って、喫えもしない煙草を「ちょっと貸して?」なんて言って理由を無理につけ、非常階段に二人で出た。扉を閉め「寒いねきょう」なんて会話をしながら「ねえ、バレンタインのチョコが余っちゃったんだ。いやじゃなかったらもらってくれないかな」「いいよ」

「ふたつあるんだけどどっちがいい?白いのと青いの」「両方!」「なにいってんの」好きを右に、これからもよろしくを左に。「右か左か!」「左でいいよ」「で、ってなによ」と言いながら手渡す。「ありがとー」と笑うあなたの顔がとてもすてきだったから、いけないんだ。「あのね、もう1個もあげる」

「いいの?」「うん、いいよまだ他にもあるし」「なら。ありがと!」「これね、メッセージが入ってるんだよ。あとで見てみて」「え、気になるじゃん」パッケージを開けるあなた。最初に開けた箱に入っていたのは 「好きです」。あなたの驚く顔。冗談だよって言えなくて「はははっ気付かなかったの?」

「でも別にだからどうってことじゃないから」って続けたけど、あなたはじっと箱を見ながら「嬉しい」って言ってくれた。心ん中がぐちゃぐちゃにほにゃほにゃになりそうで、とりあえずでも「寒いからさ、もう中に戻ろう、帰ろうよ」ってごまかした。駅まで確か一緒に帰った気がする。いつもと同じに。

恋人になった次の日からあなたは私を「さん」づけしなくなった。ゆき、って急に威張るように呼び捨てするようになって、口調もなんだか全然違って。人目があるところとないところで全然違う人になって。それがすごくすごくいとしくて。好きになり過ぎたら束縛して失っちゃう。怖いからやせ我慢してた。


しばらくして横浜に二人で行った。「あーウチのほうに似てるよ」って写メを撮っている。建物かと思ったらただの道。「すごい広くってまっすぐじゃん。こういう道がいっぱいあるんだウチのほうってさ、なんか懐かしいなあ」わたしのことなんか1枚も撮らずに。私がレンズ向けると変顔するヒネクレモノ。

あなたのマフラーが潮風で取れかけてる。あなたはとても背が高くて、私は背がすごく小さいから、本当につま先だってピョンピョン背伸びしないと届かない。「下むいてヨ」って言って巻いてあげる。足も長いから、いつも遅れてしまう。いつも早足で、それでも間に合わなくて小走りであなたを追いかける。



毎日好きだよって言った。毎日キスしてた。毎日ごはんを一緒に食べた。大事に大事にしていた。大事に大事に。先に年をとってしまうわたし。できるだけ長く一緒にいられるように。できればずっと一緒にいられるように壊れないように。壊れないように。好きすぎて、わたしはあなたを守りすぎてしまった。



わたしの隣にあなたはもういない。あなたはもうじき違う女の子、あなたより若いこれから世の中を知っていく女の子の手を包むように握り、誰の目も気にせずお似合いのカップルとしてタワーから夜景を見たり映画を見たりしてわたしと違う時間を刻む。あなたの心はこうしている間にも、どんどん遠ざかる。

これからあなたは経験したことのない瑞々しい恋の始まりと結実、戸惑いながら深めていく愛情に夢中になることでしょう。もうあなたのなかに、恋人のわたしがいない。そのことを思うたび、私は泣いてしまうのです。誰もいないあなたの部屋で、ひとりで。わたしの思いはまだ、ただひたすらに愛しいだけ。

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チョコレイトの涙
bekko : melody
koyuki: lyrics

こんな夜くることがわかってたなら
あの日言わなきゃよかった 馬鹿ね

メッセージ隠してた
「好き」と「just be friends」
あなた「好き」を選んだの

壊れそうなハートつつみ
震える私にあなた
「これからは名前で呼んでいい?」

こぼれた星のかけら きらめいて
私の胸の中ささる
こわれた恋のかけら またたいて
私はまた泣いてしまう

あなた想い また 涙ながす
ほら また


大きな道を歩こう
僕の街は
こんなイメージなんだよ

転びそうな私を見て
不器用な腕広げる
「見ちゃいられない、つかまりなよ」

あなたの笑顔 もっと見たいから
背伸びをして肩に触れた
こぼれる愛の言葉抱きしめる

数えきれない恋の夢は
消えていった


たった一瞬の隙をみて
いたずらな風コートを揺らす
裾をつかんだ誘惑を
無防備なあなたは追いかけたの
お願い返して

こぼれた星のかけら きらめいて
私の胸の中ささる
こわれた恋のかけら またたいて
私はまた泣いてしまう

あなた想い また 涙ながす
ほら また
ひとりで


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【チョコレイトの涙・動画】(1cho.ver)
★music/夏空P
★illustration/まりる
★vocal/IA(VOCALOID)
★movie/piro

☆ニコニコ動画☆
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16885363

☆Youtube☆
http://www.youtube.com/watch?v=uB29E1NNR5Q