前へ シュンラン:Cymbidium goeringii (Rchb.f.) Rchb.f.  次へ
についての考察

 

シュンランの学名と栽培品種の関連についてクドクドクドクドと書いてみました。かなり私見も入っているので、これをこのまま信じたりしないでください。

中国産のものは日本産のものに較べてセパル、ペタルともに細く、香があるというのは中国産でも一部の産地のものに限られた特徴のようです。セパル、ペタルの大きさや形も様々な上に香のないものも多いことがわかってきました。中には日本産とまったく区別のつかないものもあります。湖北省産のシュンランというやつを100個体以上見る機会がありましたが香りが無く花型も日本産とそっくりでした。日本産と混ぜたら識別不可能です。

最近は、日本産、中国産の区別なくシュンランの学名に Cymbidium goeringii (Rchb.f.) Rchb.f. が用いられています。

以下は、すべて Cymbidium goeringii (Rchb.f.) Rchb.f. のシノニムとされています。

Maxillaria goeringii Rchb.f.
Cymbidium forrestii Rolfe
Cymbidium formosanum Hayata
Cymbidium yunnanense Schltr.
Cymbidium pseudovirens Schltr.
Cymbidium tentyozanense Masamune
Cymbidium uniflorum T.K. Yen
Cymbidium chuen-lan C. Chow
Cymbidium goeringii (Rchb.f.) Rchb.f. var. formosanum (Hayata) S.S. Ying
Cymbidium goeringii var. formosanum f. albiflorum S.S. Ying
Cymbidium goeringii var. papyfiflorum Y.S. Wu
以上、中国植物志より

以下も Cymbidium goeringii (Rchb.f.) Rchb.f. のシノニムとされてるようです。

Cymbidium mackinnoni Duthie
Cymbidium virens Rchb.f.
Cymbidium virescens Lindley

中国植物志には Cymbidium goeringii (Rchb.f.) Rchb. f. に以下の4変種が記載されています。

Cymbidium goeringii (Rchb.f.) Rchb. f.

基準変種 var. goeringii

中国名:春蘭

流通名:日本春蘭、韓国春蘭、中国春蘭、朶々香、四川春蘭、四川雪蘭、豆弁蘭、台湾春蘭、阿里山春蘭、雪蘭、糸蘭

東洋蘭として栽培される以下の名称のものは、すべて基準変種の var. goeringii に含まれます。

日本春蘭、韓国春蘭
中国産:中国春蘭、朶々香、四川春蘭、四川雪蘭、豆弁蘭(var. serratum ?)
台湾産:台湾春蘭、阿里山春蘭、雪蘭、糸蘭(var. serratum ?)

中国に産する C. goeringii var. goeringii は非常に変化に富んでいて中国春蘭と呼ばれ古くから栽培されているものは、その中の一形に過ぎません。主に浙江省を中心とした地域のものといわれています。雲南省には花色が緑色、緑白色、桃色、黄色等と変化に富んで香のある地方タイプがあり園芸上「朶々香」と呼んで区別しています。あまり知られていませんが中国にも日本のものと区別のつかない香の無いものもあります。それとは異なって、やはり香のないものがあり園芸上は「豆弁蘭」と呼ばれています。

台湾のものは花に香があり葉の広さは様々で幅2mmほどの特に細いものもあります。花色は淡いものが多いようです。

韓国のものは香がなく日本のものと、まったく区別できません。

園芸的分類による代表的な栽培品種(選別個体):

日本春蘭:
 萬寿、紅陽、寿紅、女雛、紅陽、光琳、福の光、多摩の夕映、大虹、南紀、満月、帝冠、大雪嶺、輪波の花、守門竜
中国春蘭:
 宋梅、西神梅、大富貴、翠蓋、緑雲、龍字、老文団素、富水春(富水仙)、軍旗
朶々香:
 織姫、金鶏黄
豆弁蘭
 豆弁緑
台湾春蘭:
 白雲
糸蘭:
 糸蘭白花、呉鳳、緋鳳、山人紅

var. serratum (Schltr.) Y.S. Wu & S.C. Chen

中国名:綫叶春蘭「線葉春蘭」 ※本当は「綫」とは少し違う字です。

流通名:豆弁蘭(細葉のもの)?、糸蘭(台湾産)?

以下は、すべて var. serratum (Schltr.) Y.S. Wu & S.C. Chen のシノニムとされています。

Cymbidium serratum Schltr.
Cymbidium gracillimum Fukuyama
Cymbidium formosanum Hayata var. gracillimum (Fukuyama) T.S. Liu & H.J. Su
Cymbidium goeringii var. gracillimum (Fukuyama) R. Govaerts
以上、中国植物志より

貴州省産の標本に名付けられたものです。葉幅が2〜4(〜5)mmと狭く質が固いことを、よりどころとしているだけの疑問の多い分類群です。

通常、花に香が無いということなので俗に「豆弁蘭」と呼ばれるものを指していると推測できますが、そうなると台湾に産する C. goeringii var. gracillimum (俗にいう「糸蘭」が相当すると思われる)と呼ばれていたものも含んしまうことに疑問を感じます。「糸蘭」は俗に「台湾春蘭」と呼ばれるものの明らかな高地型であり貴州省産のもの同一視するのは少々乱暴なように思います。いいかえれば var. serratum を広くとらえ過ぎていると思います。

分布域も基準変種に準ずると記されており、はなはだ曖昧です。この論を通せば葉の細いものであれば、どこのものでも、この変種に含まれてしまうことになります。そうなると各地で独立して生じた細葉の変異を含む系統的にまとまりのない分類群になってしまう可能性があります。この分類群はあまり拡大した概念として、とらえるべきではないと思います。さらに極論すれば var. serratum は葉幅という曖昧な形質に依存しているだけの人為的な分類群であり成立そのものに問題があるといえるかもしれません。個人的な意見としては var. goeringii に含めてしまうべきものだと思います。

var. tortisepalum (Fukuyama) Y.S. Wu & S.C. Chen

中国名:菅草蘭

流通名:ピアナン(台湾産)、蓮弁蘭(中国産)

以下は、すべて var. tortisepalum (Fukuyama) Y.S. Wu & S.C. Chen のシノニムとされています。

Cymbidium tortisepalum Fukuyama
Cymbidium tsukengensis C. Chow
Cymbidium tortisepalum Fukuyama var. viridiflorus S.S. Ying
Cymbidium longibracteatum Y.S. Wu & S.C. Chen var. tortisepalum (Fukuyama) Y.S. Wu
Cymbidium goeringii (Rchb.f.) Rchb.f. var. tortisepalum f. albiflorum S.S. Ying
Cymbidium lianpan T. Tang & F.T. Wang ex Y.S. Wu
以上、中国植物志より

台湾産の標本にもとづいて記載されたもので1つの花茎に2〜4(〜5)花を咲かせ芳香があります。葉長30〜60cm、葉幅4〜12mmで質が柔らかく彎曲します。

中国植物志では雲南省産の C. lianpan と名付けられたものを同じものであるとしていますが、これには納得できます。恒常的に1花茎に複数の花が着くことから基準変種 var. goeringii との違いは明確です。

形態からはハルカンランと区別しがたい面もありますが独特の淡い花色からカンランとの交雑の可能性は少ないと思います。またハルカンランには春咲きのものと秋咲きのものがありますが、秋咲きの ものは現在のところ知られていません。花色からするとスルガランとの交雑の可能性が高そうです。しかし葉幅の狭いものが多い点から見るとカンランやスルガランとの交雑には疑問符が付きます。中国における自生量は、かなり多いらしく、この点からも他種との交雑によって生じた可能性は低いものと思われます。

園芸上は、台湾産のものを「ピアナン(意味不明)」、雲南省産のものを「蓮弁蘭」と呼んで区別しています。しかし両者を混ぜてしまったら区別は不可能でしょう。台湾産、雲南省産共に花の緑色が淡く蕚片や花弁の条線が目立ちます。白や桃色が美しく発色し洋蘭的な明るさを持っています。台湾産のものは暑さに弱く少し栽培しにくいと言われます。台湾では乱獲のため絶滅に近い状態らしいです。

園芸的分類による代表的な栽培品種(選別個体):

ピアナン:
 ピアナン白花
蓮弁蘭:
 雲南雪素(小雪素)、大雪素

参考:
 カンラン  :Cymbidium kanran Makino
 スルガラン :Cymbidium ensifolium Sw.
 ハルカンラン:Cymbidium x nishiuchianum Makino
        C. goeringii (Rchb.f.) Rchb.f. x C. kanran Makino

var. longibracteatum (Y. S. Wu & S. C. Chen) Y. S. Wu & S. C. Chen

中国名:春剣

流通名:春剣蘭

以下は、すべて var. longibracteatum (Y.S. Wu & S.C. Chen) Y.S. Wu & S.C. Chen のシノニムとされています。

Cymbidium longibracteatum Y.S. Wu & S.C. Chen
Cymbidium longibracteatum Y.S. Wu & S.C. Chen var. flaccidifolium Y.S. Wu
Cymbidium longibracteatum Y. S. Wu & S. C. Chen var. tonghaiense Y.S. Wu
Cymbidium longibracteatum Y. S. Wu & S. C. Chen var. rubisepalum Y.S. Wu
以上、中国植物志より

1つの花茎に3〜5(〜7)花を咲かせ芳香があります。葉長50〜70cm、葉幅12〜15mmで質が固く直立性が強く立ち葉になります。基準標本は四川省の栽培植物ということです。

基準変種 var. goeringii との違いは明白ですが var. tortisepalumと、きっぱりと区別が付けられるものなのかどうかは疑問が残ります。中国植物志でも葉幅が12〜15mmと広いことと葉が立ち気味になることだけが区別点であると記されているだけです。花色等の記載がまったく見られないので、さく葉標本を検討しただけであると推測されます。

「春剣蘭」として流通しているものは「蓮弁蘭」として流通しているものよりも花の緑色が濃い傾向があり、蕚片や花弁の条線は目立ちません。時に紫紅色を帯びることもあり、このような場合は蕚および花弁の外面の着色が強く、内面の着色が弱い傾向があります。この点は内面と外面が供に一様に着色する「蓮弁蘭」とは異なるような気がします。

代表的な栽培品種(選別個体):

 銀桿素、隆昌素、白玉素、大紅朱砂

C. goeringii の様々な栽培品種の画像が見られるホームページ

中国奥地の蘭の魅力:
http://www.sophynetwork.co.jp/~orchid/welcome.html

すずき園芸(東洋蘭写真集3):
http://www.suzuki-engei.com/toyopho3.htm
すずき園芸(東洋蘭写真集4):
http://www.suzuki-engei.com/toyopho4.htm

四季の東洋蘭:
http://member.nifty.ne.jp/geiseki/m_hana/hana.html

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