ユキノシタ(雪の下)
Since 2002/06/14


 実家(兵庫県相生市)へ立ち寄ったら、庭の奥の日陰にユキノシタが咲いていました。一見地味ですが、アップで見ると、なかなかどうして、ユニークでメルヘンチックな姿をしていました。デジカメ越しに見ていると、何か別世界に迷い込んだような気分になりました。(撮影日:2002/06/08)

 ユキノシタは民間薬として知られており、解熱、鎮咳、消炎、解毒、利尿、止血などの効果があります。食用にもなります。生のままテンプラにしたり、ゆでて煮つけたり、浸し物や酢味噌和え、胡麻和えなどにもされます。

 「週刊朝日百科 世界の植物45」によると、ユキノシタの名は、冬、雪の下にあっても枯れずに残っているからとか、雪のような花の下に葉が見え隠れするからだとかいわれているそうです。柳田国男は、ユキノシタはイケノシタのことで、イケ(井戸)の内側などの清いところに生えるからだと書いています。

  (写真はクリックすると大きくなります。)

 実家の庭先には江戸時代に掘られた古い井戸があります。私が子供のころは、地表水の流れ込みを防ぐ囲い(高さ60〜70cm)があるだけで、屋根もフタもありませんでした。その井戸の内側(石垣)に、ビッシリとユキノシタが茂っていたのを思い出します。ユキノシタの輪(わ)の下に、透明な水がたたえられており、自然光だけで水底の様子が曇り無く見えました。もちろん飲めました。その後私の父がステンレスのフタを作りました。子供の転落や雨水の混入を防ぐためです。すると日光が井戸内に入らなくなり、ユキノシタは枯れてしまいました。

 余談ですが、この井戸にまつわる思い出話を少し。この井戸の水が冷たくて美味しいことは、近在ではちょっと知られていました。家族はもちろん、近所の人や行商人たちも、気軽に釣瓶で汲み上げて飲んでいました。夏にはスイカを布袋に入れてヒモをつけ、井戸の中に浮かべて冷やしたりもしていました。水を飲みに立ち寄る人の中で特にユニークだったのは、「ハメ捕りのヤッさん」です。「ハメ」とは毒蛇のマムシのことで、当地の老人は現在でもこう呼びます。ヤッさんの本名は分かりませんが、仕事は、精力剤や漢方薬の原料にするハメを生け捕りにすることでした。ヤッさんはフラリと我が家にあらわれて井戸の水を飲み、祖父からハメの目撃情報を仕入れて仕事に向かっていました。当時祖父は毎朝、ハメの多いことで知られた土井ヶ谷であぜや土手の青草を刈り、持ち帰って牛(農耕用)に食べさせていたのです。 


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