00年9月2日                      〈毎週水・土曜日発行〉
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          ☆小説の作り方!31号★彡 
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「どうしても使わなければならない言葉」しか使ってないと思わせなければな
りません。
              W・B・イェイツ

      【小説家・ライターになれる人、なれない人(同文書院)から】
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 こんにちは。
 今回は純文学を読みます。第119回直木賞受賞作品「赤目四十八瀧心中未遂」
車谷長吉(くるまたに ちょうきつ)文藝春秋 1998年 ¥1619 です。
 この本が直木賞というのは少しびっくりしたのですが――作者は純文学しか
書かない人で――でも力のある作家に送られる賞だと考えればそれでいいのか
も知れません。
 
 1970年頃、舞台は関西の尼崎。阪神電車出屋敷駅近くの日の当たらない
アパート。三十代前半のその日暮らしをする生島という男が主人公で、病死し
た牛や豚の臓物、鶏肉で焼鳥の串を作る生活を描いたものです。
 刺青師の眉さん、その息子で小学生の晋平。恋人で朝鮮人のアヤ子。くすぶ
りの暴力団員のアヤ子の兄。焼鳥屋の店主で元パンパンのセイ子ねえさん。と
いう登場人物。

 原稿用紙454枚あります。ですから、例によって最初の部分のプロットを書
き出してそれから感想を書きます。今回も長いので、ある程度プロットが頭に
入ったら読み飛ばしてくださってかまいません。

   ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
         ■ 「赤目四十八瀧心中未遂」を読む ■       
    ────────────────────────────
    目次 ・心理描写があれば、それだけでも書ける
   ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

      「赤目四十八瀧心中未遂」 一人称、生島の視点
      ──────────────────────

○1
  数年前、地下鉄神楽坂駅の伝言板に「――平川君は死んだ」と書いてあっ
  た。
  十数年前の阪神電車西元町駅の伝言板に「――あなたを待ちました。むご
  い」と書いてあった。
  生々しい思い出として記憶に残っている。呪いにも似た悲しみ。
  二十代の終わりに身を持ち崩し無一物になった。すさんだ気持ちで深夜の
  駅のベンチに座っていた。世間をはずれた愚図。
  昭和五十八年、再び東京で会社勤めをするようになった。失望した。
  野垂れ死にすることもならず、東京へ帰ってきたのである。
  人のそしり蔑みを受け、それでよいとしていた男が背広、靴をつけて生き
  る生活へ帰ってきたのである。恥じるということを知らない。
  その後、入院した。薬無しには日を送ることができない体になった。
  孤独死という末路を生きることになるだろう。それでよいのである。
  終日アパートで死人のように眠っていた。「いましばらく生きるために」
  この死人はまた会社に出ていくのだった。
  髪は坊主。書類は頭陀袋へ。異形だった。後ろ指を指されたり――
  「世を捨てて生きたい」絶望が目を開けていた。
  こういう私のざまを「精神の荒廃」と言う人もいる。だが人の生死にはど
  んな意味もない。空虚である。
  ある元旦、荒川の枯蘆の中、一人の男がごみに埋もれ雑煮を煮ていた。ノ
  オトにこう記した「澄んだ目なり」。翌年またその枯蘆に行った。男は激
  しい怒りの目で見た。忘れ得ぬ人である。
  忘れ得ぬ他人といえば植物園の塀沿いに歩いていると「どこへ行くの」と
  知り合いのように声をかけてくる女がいた。「図書館」「じゃいっしょに
  行きましょう」どうあっても付きまっとってくる気配だった。
  図書館で女は図鑑を広げ「この虫は食べられるでしょうか」と訊く。極彩
  色の芋虫の絵。
  女の顔を見返すと「いいえ、私たちは食べていました」全身の毛が凍るほ
  どに怖ろしかった。私も芋虫を食べて生きてきた。
  十二年前、阪神出屋敷駅近くの街でモツや鶏肉の串刺しをして口をのりし
  ていた。漂流物の生活の六年目である。
  ことの始まりは何の当てもないのに会社勤めをやめたことだった。
  土地の人は愛着を込めて「アマ」と言う。工場が建ち並び、職を求めて来
  た沖縄県人、朝鮮人。流人たちの掃寄せ場である。
  日雇い労務者――昼間から道端で車座になって酒を飲み酔い潰れ、歌を歌
  い喧嘩をし、垢に汚れ、寝ている者たち。こういうあからさまな光景。悲
  しみがじかに感じられる。


○2
  尼崎の駅構内に風呂敷を提げて立っていた。初めて来てこの市たらしめて
  いる異様な空気を感じていた。
眉「火ィ貸してくれへんか」
  鋭い眼光。(たばこを返そうとして落として)
 「おッ、すまんことをしたな」
  (ズボンのポケットから皺くちゃの一萬円札を取り出して)
 「これでたばこ買うてくれ」
  と、傘もささず歩いていく。私は舌打ちをした。
  これから見知らぬ他人を訪ねていくのだ、何の当てもなかった。
  後悔している余裕はなかった。背中に火がついて走り回る夢を見た。地図
  を見て焼鳥屋に行った。出てきたのは髪の薄い六十前の女だった。
セイ子「あんたかいな。」
  (マッチの軸木で卓子の上の灰皿を引き寄せたあと、たばこに火をつけた)
  働いて生きて来た皺だらけの手である。
 「蟹田はんの話では、あんた、大学出なんやとな。」
 「ほれも、ええ大学出とういう話やないか。」
 「はあ。」
 「はあやないやろッ、バチ当りが。」
  どこへ行ってもこの話から始まる。
 「ま、ま、ええ、チンケに負ける豚もある。」
  この女の怒りが何であるかよくわかっていた。腰抜けに見えるのだ。
 「世間の人はみな、銭がつかみとうて血まなこになっとんのに。あんた、可
 哀そうに。」
  実家に帰ったとき母が言った言葉である。逃げて帰るところはない、とい
  うことを思い知らされた。
  何とそしられようが私は平気だった。私を私たらしめているものへの憎悪。
  それに至福を感じていた。
  己の精神史を一変させてくれる言葉をどうかして捜したいと思っていた。
  大学ではニーチェやカフカを読んだ。折口信夫や丸山眞男。そんなことは
  腰抜けの戯言だ。
  無一物になるまでふらふらしていた。ジリ貧になれば逃げ道がなかった。
  私が私であることに耐え難かった。
 「蟹田はんの話では、まあ何ぼでもええさかい、やってくれ、いうことなん
 やけど、あんた、何ぼ欲しいんや。」(と、歯を鳴らしている)
  不意に私は、この女とまぐわいをしてもいい、と思った。
 「なあ、あんた、何ぼ欲しいんや。」
 「銭は一円でも多い方がええに決まってますけど。」
 「ほんなら、あんた、うちの言い値に不服があるんかいな。」
 「……。」
 「うちは気持よう働いて欲しいんやがな。」
  女主人は私を突き放した目で見た。
 「こうつと、あんた名前、何ちゅうんやったっけ。」
 「生島与一です。」
 「ほう、親にええ名前つけてもうてからに。」
 「私はおねえさんのおっしやる通りでええ思いますよ。」
 「そうか。」.
  女は嬉しそうな顔をした。はじめからこうなるのは決まっていたのである。
  私が知りたいのはこの女が何であるかということだけだったし、それも知
  らなければ知らないで、何程のこともないのである。
  私は女主人に連れられて出屋敷へ行った。大きな市場があった。にぎわい
  を少しはずれると安酒屋、簡易宿泊所が並んでいる。
  汚い老朽木造アパートの二階へ上がって行った。空気が死んだように人気
  がない。異様な臭気が鼻を刺した。部屋に入ると冷気が足もとから這い上
  がってきた。
 「あ、こななことは実地に言わな。」
  (セイ子は手を握ってくる)
 「あんた、可愛らしいな。」
  手を引いた。ぞっと背筋に寒気が走った。
 「あんた、気が腐るほど真面目な人や。」
  夜になって黴臭い布団にもぐり込んだ。冷たかったが温かいところで寝た
  いとは思わない。
  会社勤めをしていたときも同じだった。張り合いを見出すことができなか
  った。
  広告取りをすることに私が流失するような不安を覚えた。「私が私である
  こと」に耐え難いものを覚えた。
  その頃、一人、夜、アパートにいると、生への恐れは色濃くなってきた。
  安定した生活をしていることが苦しく、許せないと思うようになった。
  その頃こんなことがあった。百貨店で買い求めた鋏を包んでくれた店員を
  突然殺害したいと思った。見た目は美しい顔色の悪い女。その薄ら寒い感
  じが奈落に突き落としたい欲情を起こした。「死ね」と思った。が、その
  代わり自分を崖から突き落とした。
  それから寒い布団で寝起きすることに安らぎを覚えるようになった。それ
  でどうなったわけではない。不気味な怯えは得体が知れなかった。
  自分が殺した人の菩提を弔い続けることを生き甲斐としている人もいる。
  ただ私には悪夢だった。
  手を握られた感触が残っていた。便所に行くと、女が男根を含んでいる絵
  が壁に描かれていた。
  翌朝、若い男が入ってきて、ビニール袋のなかの牛や豚の臓物、鶏肉など
  を置いていった。
  表に行き電話をした。女主人は、
  「ほな、すぐ行く。」部屋で待っているとやって来た。
  「ええな、この黄色い脂は取んねで。」
  「これから、あのさいちゃんが毎日持って来るさかい」
  そう言って何も言わない。なにもわからない。
  「すまんことに、うちはあんたにまだお茶を出してなかった、あんた珈琲
 飲むか。」
  「いや、私は珈琲は……。」
  「まあええやないか、つき合うてえな。」
  「うちはゆうべ夜中になってから思い出したんやがな、えらい迂闊なこと
 に。」
  この女は昨夜、ふとんの中で冷たい手をさすりながら、私のことを考えて
  いたのだ。
  出島敷駅駅前の喫茶店へ行った。ドアを押して入ったところでお金を払っ
  ていた若い女が、いきなり、
  「やあ、おばちゃん、こないだはありがとう。」
  と言った。そして私には文脈のつかめない話を二人ははじめた。若い女は
  「兄ちゃん、また手紙寄こして。」とか、「広島の白井さんにはよう頼ん
  で来たのに。」とか言っている。私をちらりと見遣る。見るのが恐いよう
  な美人である。
  この若い女の全身を見て取る。すると女は目敏くそれと察知して、右手で
  軽く胸をかばうような仕種をし、また私を見遣って、目を伏せる。その目
  を伏せる時にだけ、この女の中に隠されているらしい暗いものが顛に現れ
  る。セイ子が目の隅で、鈍く私を返り見る。
  二人の話は終った。女はも一度私に目を遣って、出て行った。奥の席へ行
  って腰掛けた。セイ子が如排を二つ注文した。
  セイ子はロを開かなかった。時々、恐い目で私の方を見た。またそうであ
  るがゆえに意地で黙っていた。先にロを利いた方が自滅するのだ。
  「あんた、戦争がすんだ時、年なんぼやった。」
  「空襲の前の日の昼間生れた、いうて聞きましたけど。」
  「こうつと、ほんなら酉やな、三十三かいな。」
  「ま、そうです。」
  「うちは二十七で終戦や。」
  「はあ。」
  「ほの時、うちは泉州の岸和田におったんやけど、すぐに大阪へ出て来て、
 そなな年で進駐軍相手のパンパンや。」
  あッ、と思った。
  「なんやいな、ほなな顔して、パンパンがそない珍しいんかいな。」
  「いや――。」
  私はこの女の冷たい手の感触を思い出した。
  「うちはアメリカさんから毟り取った銭にぎって岸和田のお父ちゃんのと
 こへ帰ったんや、赤いハイ・ヒールはいて。あ、そのハイ・ヒールもアメリ
 カさんに買うてもうたんやけど。そしたらお父ちゃんどない言うた思う。」
  「……。」
  「ええ靴やの。それだけ。」
  私はこの女が何を言いたいのか分からなかった。けれども、この女が己れ
  の生の一番語りがたい部分を告げていることだけは確かだった。
  「きのうあんたをあの部屋に残して、店へ帰る道々、うちはこの話をどな
 いしても開いて欲しい思たんや、あんたに。」
  「えッ。」ノ
  「蟹田はんの話では、あんたええ大学出て、ええ会社に勤めとったいう話
 やないか。そやのにそれ捨ててもて。」
  蟹田のおやじがこの女に何をどう喋ったのか知れないが、私はこの女は何
  かを思い違いしているような気がした。私はなまくらな、見通しのない生
  活をしているうちに、女にも見捨てられ、ずるずる身を持ち崩してしまっ
  たに過ぎなかった。
  「うちは今日までわが身がパンパンやったこと誰にも言うたことない。隠
 して来た。隠して来たけど、知る人は知っとうことや。けど、うちはこのこ
 とを死ぬまでにいつど誰どに、自分の口で言うてから死にたかったんや。隠
 すいうことは辛いことや。」
  「はあ……。」
  「そやかて、この世に生きるいうことは焦るいうことやろが。そやからこ
 そ、お先にどうぞ、思て生きなあかんのやけど、世ン中の人はみな目の色変
 えて、我れ先に走って行きよるが、阪神電車に乗るん一つが。これを言い直
 したら、生きることは捨てることや。あんたは捨てた人や、うちがパン助に
 なったんも、わが身を捨てるいうことやったが。」
  この女にとって自身が若いころパンパンであったことは「忌まわしい過去」
  なのだ。少なくとも、そういう文脈でこの女の言葉は語られている。その
  過ぎし日の「地獄」を自白しているのだ。
  言葉が突然、私に襲い掛かって来た。女の味わったであろう失意、嘆き、
  怨み。だが、自白することは死の快楽だ。私はこれをどう受け止めればい
  いのか。なぜ「あんたに。」なのか。あの「冷たい手。」の感触として私
  の生身に沁みた。
  「生島はん、あんた子供や。もうええ年して、もっと汚れな。――と言う
 ても、あんたには無理やけど。」
  私はかすかな屈辱を感じた。併しこの女はなぜわが身が売春婦であったこ
  とを私に告げねばならないのか。
  「さっきのアヤちゃんな、えらい別嬪さんやろ。」
  「ええ。」
  「そなな嬉っそうな顔せんでもええがな。」
  「……。」
  「言うとくけどな、あの子、朝鮮やで。」
  私はふたたぴ、あッ、と思った。私の父や母も村外れに住む朝鮮人たちを
  陰でこう言うていた。それが私などの年代の者にも伝染し、同じように侮
  蔑的なロ吻で言う者がある。私にも感染していないとは言えなかった。あ
  ッ、と思うのは、そう思う中にそれがふくまれているからだ。あの若い女
  が、男がどうしても見ずにはいられない色を放っていたからだ。だが、ど
  うして見ずにはいられないのか。
───────────────────────────────────
 ここまでで45枚です。
 続きの粗筋です。


3 部屋に閉じこもり串を作ることに専念した。隣の部屋からは男女の交わり
  の声が聞こえてくる。向かいの部屋は一万円を押しつけたあの陰気な男の
  部屋らしい。アパートの玄関で一人で遊ぶ男の子、晋平に出会う。セイ子
  は菓子や果物を持って時々来る。

4 郵便局で眉さんと晋平に会う。眉さんが刺青師と気づく。さいちゃんに怒
  鳴られる。何を怒っているのかわからない。誰かに何かを書きたいと思っ
  て葉書を書こうとするが書けない。

5 休みの日、駅前で女流詩人の詩に心惹かれる。眉さんの部屋に男が訪ねて
  くる。アヤ子の兄だとわかる。初めてアヤ子と口を利く。眉さんとアヤ子
  の関係を知る。

6 晋平が部屋に来るようになる。隣の部屋で男が急病になる。その騒動のあ
  とセイ子が部屋に来て、歌を口ずさむ。さいちゃんが何を思ったかウィス
  キーを持って来た。向かいの部屋眉さんが出ていった後、アヤ子と男が喧
  嘩になる。言い寄られたらしい。

7 ごみ捨て場で階下に住んでいる老夫婦がごみをあさっている。奈良に行っ
  てみる気になる。法隆寺を歩く。晋平が継子なら子供を捨てるのかと訊く。
  学校でヘンデルとグレーテルの話を聞いたらしい。ウィスキーを少し飲み
  ドクダミの白い花を飾る。セイ子は「あんた、気色悪いことをする人やな」
  と言う。電話ボックスの電話帳に5万円挟んであるから取りに行ってくれ
  と頼まれる。怖かった。セイ子は「すまんかった」と言う。

8 商店街でアヤ子を見かける。後をつけてしまう。どきどきするが、姿は見
  えなくなる。セイ子が来て電話ボックスのことを詫び「袋叩きにされてた
  かもしれん」と言う。「もう一遍歌を歌てええか」悲しみがこもっていた。

9 アヤ子が部屋にやってきてセイ子が「あんたのこと、古代の少年のミイラ」
  と言ってたよ、と言う。桜桃を持ってきたのだ。「あんた、命懸けでおば
  ちゃんのこと救くうたんよ」後をつけていたことに気づいていた、と言う。
  「皆な、あんたのこと見てんやから」眉さんの耳に入ったらどうなるのか。

10 晋平が来た。「紙飛行機折ってくれたか」まだだった。階下に下りた晋平
  を探しに行くと、裏の空き地で土管を覗き込んでいる。蝦蟇をその中に入
  れている。「見たらあかん。おっちゃんが見たら死んでしまう」と言われ
  る。商店街で買い求めたクレヨンをやろうとするが絵は嫌いだと断られる。
  蝦蟇を逃がしてやろうかと思うが、寝床に入って「なぜ、見たら死んでし
  まう」と言われたのか考える。翌日、見に行くと蝦蟇はじっと死を待って
  いた。

11 晋平が来た。クレヨンで描いた鳥の絵を見てアヤ子の背中にも鳥の絵があ
  ると言う。仕事をしていると、晋平が顔色を変えて「蝦蟇を見たやろ」と
  言い石を投げつける。眉さんに会う。ちょっと足を滑らせて……と言うと
  「嘘をつけ!」と怒鳴られる。セイ子が「誰にやられた」と訊く。

12 京都の知り合いの医者のところへ行く。フッサールやメルロ・ポンティの
  評論を書く人だ。帰りに匂い袋を買う。セイ子にやろうと思う。アパート
  の前で晋平に会う。桜桃を持ってアヤ子が来た事情を聞く。蝦蟇をアヤ子
  に見せたら驚いたので、怒って晋平が食べなかった桜桃なのだ。「アヤ子
  のこと、好きやろ」と言われる。私が食べたので眉さんは「おもしろい奴
  や」と言っていたという。眉さんにすべてばれていると思い怖ろしい。セ
  イ子が「あんた、病院に行ったんやな」と言う。「何が楽しみで生きてる
  んや」男が来た。「電話ボックス以外の公衆電話を使うてくれんかの」こ
  れでわかった、私は監視されているのだ。

13 警戒するようになった。飯屋で噂を聞く。ノミ屋・賭博にさいちゃんも関
  わっているのかもしれない。隣から売春婦が交わる時に呟くお経のような
  声が聞こえてくる。風呂帰りのアヤ子に会う。「目だけで女楽しむのはや
  めたほうがいいよ。あんたはここでは生きていけん人。うちらと違うの」

14 眉さんが箱を預かってくれと持ってくる。セイ子が盆栽を持ってくる、買
  ってきたのだ。

15 姫島の淀川土手を歩く。夜、アヤ子がやってくる。パンティを脱ぐ。唇の
  内側をかんで私を見つめる。「起って」ズボンに手を入れて男根を握り唇
  に含む。背を向けて「外して」と言う。刺青が広がっている。私を激しく
  抱きしめた。雄と雌になり激しく崩れおちる。

16 梅雨である。アヤ子はあの日、パンティを残していった。あれから姿を見
  かけない。階下に下りてみるが老人に「何か」と訊かれて立ち止まってし
  まう。部屋のドアの隙間から晋平の目が覗いている。入ってこない。

17 梅雨が明けた。眉さんとすれ違った。眉さんの部屋からは刺青を入れる女
  のうめき声が聞こえてくる。不安だった。セイ子が来た。「あんたは眉さ
  んがどんなに怖ろしい人か知らんのや」ゴウさんという男に聞いたという。

18 アヤ子の姿を見るようになった。無視されているようだった。8月になっ
  た。眉さんに箱のことを訊きに行く。「なんや」「大事なもんやからもう
  ちょっと預かっといてくれ」「アヤ子が生島さん、生島さん言うての」 
  「あんたあいつのオメコさすったってくれへんか」眉さんは自分の言葉が
  罠であるというところまで私に見せた。疑っているだけなのか。

19 東京でいたときの知り合い、山根が訪ねてきた。「あなたは小説を書くべ
  きだ」女を取り合った仲だ。セイ子が来る。「この人わざわざこんなとこ
  ろまで訪ねてきはったんやで」焼き鳥を持ってきていた。

20 盆栽が枯れ始めた。セイ子が来る。眉さんから何か預かってないか、と訊
  かれるが否定してしまう。晋平が奈良に里子に出されたと言う。もうさい
  ちゃんは来えへん、と言う。「どこぞ、行くあてあるか」アヤ子を見かけ
  たら連絡してくれと頼まれる。セイ子が帰ると入れ替わり男がセイ子を訪
  ねてくる。今ある串の分だけ拵えて部屋を出ようと思う。

21 翌日、眉さんが箱を大物まで持っていってくれと頼みに来る。「渡しても
  らうだけでええや」その場所は暴力団の事務所だった。外に出ると男が近
  づいてきて「なんか言うとったか」と訊く。部屋に帰るとアヤ子の置き手
  紙がある。明日、天王寺駅で会いたい。逃げるなら今なのだが……

22 翌朝、アヤ子の兄が眉さんの部屋のドアを叩いている。もう猶予はなかっ
  た。出屋敷から電車に乗る。反対行きだったが――西宮に着いた。天王寺
  に行くことが怖ろしかった。芦屋川で下りた。高級住宅地である。中流の
  生活のことを考える。海に出た。夕方、環状線に乗った。天王寺の駅。ア
  ヤ子が私を探していた。「生島さん、うちを連れて逃げて」駅を出て歩い
  た。料理屋に入った。「うち、1千万円いるね」アヤ子の兄が競馬に手を
  出して組の金を使い込んだ。500万をよその組で借りた。アヤ子は借金の
  カタに博多に売られたという。博多に行かなければ兄が殺されるという。
  ホテルに入った。刺青の鳥の話――カリョウビンガのことを聞く。「生島
  さん、あんたうちといっしょに逃げてくれるわね」

23 翌朝、目が覚めるとアヤ子はもう出かける用意をしていた。「うち一人で
  先にここ出よ思てたのに」駅の方に歩いた。定食屋で飯を食った。四天王
  寺の境内に出た。アヤ子がしゃがんだ。私もそうした。子供の頃の思い出
  をアヤ子は語る。貯金通帳をもう一度見せてくれと言う。私は差し出した。
  「あんた、あんなことしてもうたら気持ちええの」「気持ええんやったら
  気がすむまでしてあげるから――」アヤ子はあの夜、生島が震えていたこ
  とを言う。「ほんまは人間の皮被った毛物やもん」「いえ、あなたは蓮の
  花です。いい人です」松屋町に出た。愛染堂を歩いた。ホームレスを見て
  アヤ子が子供の頃、廃品回収のバタ屋長屋で育ったことを話す。動物園を
  巡り新世界に出た。「あれ、アヤちゃんやないか」パンチパーマの男が声
  をかけてきた。アヤ子の兄が事務所に来ていたことを言う。彫眉も来たら
  しい。天王寺駅に来た。ロッカーから荷物を出しながらアヤ子が「あんた、
  どないすんの」「私はどこも行くとこありませんし」ポスターを見たアヤ
  子が明日、赤目四十八瀧に行こうかという。居酒屋に入った。晋平に石を
  投げられた顛末を話した。生玉神社の横のホテルに入った。アヤ子は兄の
  嫁に電話した。「なんでうちが行かなあかんの」「あんたが、行ったらえ
  えやないの」アヤ子を抱くと、刺青は痣のように見えた。

24 ホテルを出たのは8時過ぎだった。「ひとつだけ用事を済まして来なあか
  んね」天王寺駅で、待っててくれへん。アヤ子に置き去りにされるのでは
  ないかと思った。アヤ子はタクシーで走り去った。窺い知れぬもの。あの
  刺青の鳥の目。事務所へ行ったのか、それならもう戻って来れないだろう。
  アヤ子は来た。「待っててくれたんやな。うち一生忘れへん」鶴橋から赤
  目に向かった。私たちは死にに行くんです――そう心のなかで言っていた。
  車窓に野山の緑が輝いていた。赤目駅から歩いた。川沿いの道を登ってい
  った。きれいな瀧を見て上へ上へと。「生島さん、うち、もうええの」あ
  んたといっしょに死にたいと思ててん。ほんまにそう思ててん。レストハ
  ウスに戻ってきたときは日は落ちていた。バスが来た。電車に乗った。私
  は匂い袋を取り出した。「これ、セイ子ねえさんにあげよ思てたんです」
  「ええ匂いするわ」「生島さん、これ、うちに頂戴」「うちは、なんでも
  生島さんから取りあげてしまう女やな」八木駅に着いたとき、アヤ子はプ
  ラットホームへ飛び出した。「うちは、こッから京都へ出て、博多へ行く
  からッ」咄嗟に私も起ち上がろうとした。電車は動き出した。私はドアの
  ガラスにへばりついた。アヤちゃんがフォームを5、6歩駆けてきた。見
  えなくなった。

25 その後、私は4年間大阪を転々として、東京へ行き、ふたたび会社員にな
  った。2年後に会社の用事で大阪に行った時、アマを訪ねた。セイ子の店
  は駐車場になっていた。アパートに行った。一階には人の気配がしたが、
  二階は真っ暗だった。私は闇の中に立っていた。

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           ちょっと文句をつけたい
           ───────────
 ここに出てくる登場人物はまったく類型的です。それも市民社会に属する者
らがこうだろうと思い描くような典型的な常識的イメージです。やくざ。朝鮮
人。パンパン。売春婦。
 こういう描きかたをすることで差別を見据え、えぐっていると作者はおもっ
ているのでしょうが……

 作者とおぼしき主人公は観念的な苦行僧のように、並の人間にはわからない
認識と自意識を空転させるので、いっこうに主人公の苦しみや空虚感が伝わっ
てきません。

 やくざを描くなら馳星周ぐらいの意気込みで描いて欲しい。

 でも、小説はどんな切り口、視点もありです。純文学もOKです。

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          純文学プロットの有り様
        ─────────────── 

 まず、こういう純文学小説に多いのはカットバックの手法をたくさん使うこ
とです。それによって現在を意味づけられます。

 心理描写を優先する。それで、エンターテイメント性を犠牲にしています。
 話が進まなくてもいいのです。まず、そこにいる人間の心理を描くことを優
先させる。ストーリーとしておもしろいかどうかは問題ではありません。「心
理を描くことこそ真実に到達する道である」という命題。
 ですからこのメルマガで追求しているドラマの公式は当てはまりません。

 ここでドラマチックに話が動くのは、アヤ子と生島が寝てからでしょう。
 そして心中への道行きでしょう。けっきょくは中途半端に放り出されてしま
うのですが。

 純文学としてはうまく構成されているのじゃないでしょうか。
 1〜25まで、それぞれの章にテーマがあるのです。ただ、それが具体的では
なく心理を中心に描いたものだということです。これで話を進めていく。

 つまり、出てくる小道具やエピソードに、あるいは風景を心象描写にして意
味を持たせると、ストーリーを盛り上げなくても、小説として成立するという
ことがわかります。

───────────────────────────────────
【おまけ】
 小説の構成が「プラモデルの組み立て」なら、ドラマは「絶叫マシーン」で
す。作者は読者にスリルとサスペンスを与えなくてはなりません。それは設計
され計算され尽くしたものでないといけないです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ■編集雑記■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 夜はだいぶ涼しくなってきたようです。
 寝冷えなどしないようにしてください。
…………………………………………………………………………………………
  ☆ミ         ★☆彡     ☆ミ       
            ☆ミ                           ☆ミ
    SAO  ヾ(^^ )
   今年のテーマは「いつも上機嫌で元気にやろう!」
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 00年9月6日                      〈毎週水・土曜日発行〉
─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─
          ☆小説の作り方!32号★彡 
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:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:
 自分の欠点を考えないように。他人の欠点はもっと考えないように。そうで
はなく他人の長所を探すのです。そしてそれを真似るのです。そうすれば、ま
るで枯れ葉が木から落ちるように、あなたの欠点は消えているでしょう。
             ジョン・ラスキン

      【小説家・ライターになれる人、なれない人(同文書院)から】
:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:
 こんにちは。今回は「小説のプロットを読む」の3回目です。
 たぶん、若者たちがこういうところから小説の楽しさを学び、書くことに入
っていくのではないかという小説を読みましょう。エンターテイメント、純文
学と読んできて残るのはファンタジーです。
 でもぼくはファンタジーをまだ読んだことがありません。
 もちろん、一部の、ファンタジーに含まれるのではないか、という小説を読
んだことはあります。でも「ゲド戦記」とか読んだことがない。

 今回は栗本薫「魔界水滸伝1」を考えてみます。


   ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
         ■「魔界水滸伝1」を読む ■        
    ────────────────────────────
    目次 ・エンターテイメントの語り口
   ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

 小説というのはさまざまありますね。そして読者の好みもある。どうしても
読むジャンルというのは決まっていきます。
 「地を這う虫」「赤目四十八瀧心中未遂」のプロットを前二号で書いたので
すが今回は書くのをやめにします。
 じつはプロットを書いても仕方がないとおもった――
 というのは、長くなるし、プロットを詳しく分析するほどのものでもないと
おもうので。これは、バカにしているんじゃないです。それほど読みやすく、
わかりやすく構成されているということです。読んでもらえればわかります。
完全なエンターテイメントです。ぼくは支持しています。

 魔界水滸伝の目次はこうです。(完全な3人称で語られます)

  プロローグ1 2 3 4
第1章 呼び声1 2 3
第2章  徴 1 2 3
第3章 襲 来1 2 3 4
第4章 魔 性1 2 3 4

 プロローグ1では、伊吹凉が「体が溶ける」夢でうなされるシーンです。
      2では、うなされる夏姫をまり子が起こします。「何か悩んでん
          の?」「恋?」夏姫は笑って否定します。「こんどさ、
          バイト先、いっしょに来ない――見てもらいたい男の人
          がいるの」と、次のシーンへの流れを作っています。
      3では、藤原隆道邸です。お手伝いの春さん。浮気している雅子
          夫人(第1章でわかります)婚約者にふられ、気が狂っ
          ている華子が登場人物。華子がまたうなされています。
          様子を見に行った春さんに華子は「絵を描きたいの」と
          唐突なことを言います。
      4では、防音壁にした部屋に伽耶子が入ってきます。大和がいま
          す。二人の話から眠っている者を起こすためにコンタク
          トをとっているらしいのがわかります。妖怪との戦い…

第1章 呼び声1では、風太(弟)に起こされた凉。凉の思いのカットバック
           で風太が優秀なこと、村松弘という親友との話が出て
           きます。学校へいく道でも気分が悪くなります。伽耶
           子が声をかけてきます。「絵が好きだったわね」幾日
           か経って銀座の画廊へ出かけます。その隣の喫茶店で
           夏姫を見かけます。画廊では伽耶子、大和が出迎えま
           す。「あなたは目覚めたのよ」凉にはさっぱりわかり
           ません。
       2では、隆道が借りたマンションです。「暗黒祭祀書」を手に
           しておののいています。華子がやってきて、絵を描い
           たので画廊に持っていくと言います。みるとキャンバ
           スには何も描かれていません。華子はコキュである隆
           道、気が狂った自分にしたのは雅子夫人だと言います。
           隆道は嘆き悲しみ、ついに呪文を唱えますが、何も起
           こりません。華子が画廊を訪ねます。
       3では、画廊を訪ねたまり子と夏姫のシーンです。夏姫は葛城
           繁という画家の描いた絵に惹かれます。伽耶子と夏姫
           は一目見てわかりあいます。部屋に帰って、まり子は
           不機嫌です。大和をとられたとおもったのですが、夏
           姫が惹かれたのは伽耶子だとわかって機嫌を直します。
           また二人で画廊を訪れます。凉がいます。気がつくと
           伽耶子とテレパシーのような言葉で話しています。目
           覚めたのです。「奥の部屋にまいりましょう」

第2章  徴 1では、部屋には凉、華子、夏姫、大和、伽耶子が集まってい
           ます。凉は他の者が話すことが理解できません。葛城
           繁が描いたという絵を見せられます。奇怪な……「こ
           の子はまだ目覚めてないの?」山の民の老人が机の上
           の空間から出現します。天狗のようです。「大和、お
           前たちは誤ったな。この子は火の長ではない。風太と
           いう者がほんとうの長だ」伽耶子は「夢で呼びかけま
           したわ」「それを吸ったとしたらなお悪い。間諜かも
           しれん」「どうなさる」「始末せねば……」凉の首に
           手がかけられます。そのとき異形のものが……
       2では、安西雄介の部屋です。弟の竜二と暮らしています。雄
           介は原稿が書けません。フリーライターなのです。竜
           二がネタを提供しようと、村松から聞いた気が狂った
           ようになっている。凉の話をします。葛城繁の絵と関
           係があるらしいとわかって雄介はあわてます。葛城夫
           人に雄介は恋慕しているようです。雄介はいったんは
           断られますが風太が追いかけてきて凉を連れてくると
           言います。
       3では、雄介は凉の話を聞きます。凉に葛城財閥の話をします。
           凉はすべてを話そうとします。

第3章 襲 来1では、雄介と凉は画廊のあった場所に行きます。カットバッ
           クで雄介が元過激派で超能力も少しあることが語られ
           ます。凉のカットバック――あの異形のものが出てき
           て――それで気がついたらベンチに寝ていてどうして
           家に帰ったのか……雄介は画廊の会った場所へ乗り込
           みますが、そこは事務所になっていて、化け物の魚人
           間がいます。しかし闘おうと身構えると普通に見えま
           す。
       2では、雄介は起こったことを凉に話します。「では、大和た
           ちも化け物の仲間でしょうか?」「わからん」雄介は
           とんでもないことが起こっているのだ、と予感します。
           雄介はとことん調べてやろうと決心します。まり子が
           アルバイトしていた喫茶店で聞き込みをします。二人
           の行方はわかりません。雄介と凉はいったん部屋に帰
           ります。


───────────────────────────────────
 粗筋を書くのはもういいですね。(^_^; 
 
 このテンポの良さ、栗本薫はストーリーテラーです。うまい。

 
★ぼくは前前号から3作を読んでこう考えました。


エンターテイメント                 純文学 
  物語性強い  ←──────────────→ リアリティ性強い
 読者寄りで語る                  作者寄りで語る



 この左側のほうに行くほどエンターテイメント性を強めます。
 右側のほうはリアリティを大事にするので作者のほうの主張が強まります。
 こういうふうに図を描けばわかりやすいのではないでしょうか。
 たいがいの小説はこの中間に位置しています。

 小説の部品は変わりありません。描写と説明と会話です。
 この部品の並べ方、この部品をどう持ってくるか、です。
 
 そして小説世界への切り口、作者の語り方でしょう。それによってエンター
テイメントのほうに行くのか、作者が思いこんでいるテーマを強力に打ち出す
方向へ行くのか、でしょう。
 それはほんとうに語り方とでもいうべきものです。
 文体、表現がそれを表します。
 テーマをどう解釈し、語るのかということです。

───────────────────────────────────
 こういうファンタジーに近い小説を読んでわかったことは、すごくわかりや
すいということです。構成がわかりやすいので理解しやすいのですね。ストー
リーにはまるというか、ストーリーそのものが構成になっています。そんなに
ぴったりと一致しているんです。
 読者はストーリーをたどって楽しく読んでいけばその小説世界をすんなりと
理解できる。

 これにはそうとうな技術が使用されています。

1) カットバックでエピソードを持ってきて現在の状況を説明してしまう。
2) 会話で小説世界の設定を読者にわからせる。(火の民、山の民……と)
3) 人物のキャラクターもお互いに会話のなかで言い合っています。

 これらの技術が使われているから、読者は読んでいるだけですべてのことが
わかってしまうのです。
 ようするに読者に負担をかけてない。読者はこれはどういうことだと考えな
くてもいい。

 これらの技術というのは普遍的なものでエンターテイメントの小説だけに使
われているわけではないのですが、純文学となどでは見えにくいんです。なに
かごちゃごちゃしているんです。

───────────────────────────────────
 これで構成についての項は終わりです。
 24号から9号分を構成を作るということに費やしました。
 まだまだうまく説明できていませんが、ぼくとしてはいちおうしめておきま
す。また、気がついたときに追加するかわかりません。

 次回はファーストシーンを考えます。
 4日から仕事に行き、その後タイへ行っていますので23日まで大阪にいませ
ん。それでメルマガは発信できません。お休みをいただきます。m(_ _)m
 次回の発行は9月27日です。
 ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。
( そんなに待ってくれてないか……(^_^;うう  )

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ■編集雑記■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 天候が不順です。
 関西は異常に暑いです。残暑っていうものじゃありませんね。水不足だし。
 お身体に気をつけて。
 では、また。
…………………………………………………………………………………………
  ☆ミ         ★☆彡     ☆ミ       
            ☆ミ                           ☆ミ
    SAO  ヾ(^^ )
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 00年9月27日                      〈毎週水・土曜日発行〉
─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─
          ☆小説の作り方!33号★彡 
─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─
:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:

 私は、自分の人生がどうしてもうまく行かない時、小説を書くことができな
いのなら、死ぬしかないと思います。私は小説を書いている時に、その中に入
り込むことができれば、別世界に行ったような気になれるのです。そして書き
始めるたびに、小さな戸が開いて、2時間の素晴らしい休暇が与えられるよう
な感じに浸れるのです。
                 リー・スミス

      【小説家・ライターになれる人、なれない人(同文書院)から】

:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:
 こんにちは。
 発行が遅くなりました。すみません。

 ぼくはアル中みたいなものなので酒を飲んでいるあいだ(極端にですよ)は
なにもできません。今回は4日間飲み続けました。意志が弱いし、くだらない
人間です。愚かだし。人を傷つけるつもりはなくてもそうなってしまう。辛い
です。

 でも立ち直ろうと努力を。(まあ、こんな自分はいなくてもいいんですけど)

 小説なんて書けるのかなあと考えてしまう。
 もっとすてきな人が書くのじゃないか。

 でもメルマガはお約束したので基礎編が終わるまで続けます。
 来週から京都で仕事なのでまた部屋にいません。それで発行のことはちゃん
と考えますね。

 では、「ファーストシーンの書き方」です。

   ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
          ■ファーストシーンの書き方■        
   ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

 ぼくらが小説を読んで印象に残るのはファーストシーンとエンディングです。
これは当然のことですよね。
 始まりと終わり、その中にドラマがあります。
「どう始まってどう終わったか」――読者はそれに興味があるのです。
 それによって小説世界が成立する。
 それに一切の意味が含まれています。世界の意味。人間が生きる意味。

 ファーストシーンはドラマが成立する設定の提示部です。
 それさえ提示できればどう書いてもいいのですが、やはりいい書き方はある
でしょう。

┌─────────────────────────────────┐
│できるだけ早いうちに作品の舞台となる世界や登場人物などについて説明│
│する                               │
└─────────────────────────────────┘
 これがないと読者は何を読みとればいいのかわからなくなって想像力を酷使
します。読者はわがままですからそんな疲れるような小説を読みたくないので
す。

┌────────────────────────────────┐
│できれば最初から状況に投げ込まれているシーンから始めるほうがいい│
└────────────────────────────────┘
 
 
 小説はハードル競争だと考えてみましょう。(オリンピックが開かれている
ので)
 とにかくゴールを目指すことは決まっています。そして幾多のハードル(エ
ピソードの串刺し)を飛び越えてクライマックスを目指すのです。
 
 作者の言いたいこと(テーマ)は最初にあります。
 もちろん、言いたいことがなければ小説なんて書かないほうがいい。

 粗筋を書きますね。
 その時にファーストシーンに辿り着くまで主人公は何をしていたのかを考え
て(バックストーリーです)いい書き出しを考える。
 ドラマはそこから始まります。


 書き出しには次のような要素を盛り込みましょう。
1) 読者に次の展開を期待させる。
2) 読者に多くの情報を与える。
3) 魅力的な謎を提示する。
4) 印象的なシーンを描く。
5) 魅力的なキャラクターを登場させる。

 その作品が何を描こうとしているのかがわからなくてはなりません。
 それとやはり魅力的な登場人物ですね。
 この現実の世界を壊して新しい世界を見させてくれる登場人物。

 
┌───────────────────────┐
│ファーストシーンはクライマックスへのきっかけだ│
└───────────────────────┘
 なぜファーストシーンが重要かというと、すでにテーマが盛り込まれている
からです。
 主人公がこれからどういう目標を持ち行動するのか。どういう希望を抱いて
いるのか。それらが提示されるからです。
 それがないファーストシーンは単なる話の枕に過ぎません。

 小説においては最初に提示された問題意識が解決されるまでは世界は終わり
ません。

 探偵小説では簡単です。まず、事件が起こるのでそれを解決することに全力
を尽くすことになる。
 恋愛小説でもそうでしょう。
 出会いのきっかけになるものが提示される。

 ほとんどの小説ではまず事件が起こり、主人公は予想もしない状況に投げ込
まれることになる。これが小説のセオリーです。


┌──────────────────────────────┐
│要するにクライマックスへたどり着けるかどうかが重要になります│
└──────────────────────────────┘
 ファーストシーンはクライマックスに行くための出発点です。


 でもそう考えない作者もいるでしょう。
 つまり冒頭シーンとは、読者にする紹介シーンみたいなものだと。
 こんな町に住んでいるこんな人物をまず読者に紹介するんだ、と考える作者
が。
 常識的にはよく言われるように、最初の一文ができたら、それに引きずられ
て次の文章が自然に出てくるという書き方。
 でもそれは昔に言われていたこと。もっと意識的にやったほうがいいんじゃ
ないか?

 読者にとっては最初に読むファーストシーンが大事です。
 それでその小説の世界と何が書かれようとしているのかを見てしまう。


┌────────────────────────┐
│読者をつかんでひっぱるにはどうしたらいいんだろう│
└────────────────────────┘

1) 読者に小説世界の設定を伝えろ。
2) 読者の興味をそそり、それに続くストーリーに期待させろ。
3) インパクトのあるシーンから始めよ。 
4) 会話から始めよ。


 要するに「小説の書き出し」とは、読者に「何だろう?」と好奇心をいだか
せるための方法なのです。

 1は、「この小説がどこに向かうか」をはっきりさせるということ。
 ホラーなのか、恋愛小説なのか、探偵小説なのか、はたまた純文学なのか、
その方向性を示すことです。
 読者の趣味というものがありますから、どんな小説でも読んでもらえるとは
かぎりません。

 2は、テーマ、問題意識、主人公の目標、どういう言い方で言ってもいいの
ですが、それがおもしろいかどうかを、読者がすぐわかるかです。
 はっきりと「こういうことで主人公は行動していくのですよ」と書かれてあ
ること、また描かれてあること。

 3は、まず事件です。
 これは強烈ですからね。読者の興味を引くものでなければなりませんけど。
 状況にすでにとらわれた状態。それが人間にとっていちばん自然な状態です
から、それを壊すきっかけになる事件を勃発させる。

 4は、なぜかというと、小説というものは「ただ描くだけ」ではドラマは始
まらないからです。常に他人がいる。常に他の誰かとの関係のなかでしかドラ
マはあり得ないからです。
 ぼくはこれを勧めますが、だからといっていつも会話から始めよ、といって
いるわけではないのですよ。
 作者の頭のなかで次のシーンとして会話している主人公を思い描いておけと
いうことです。



 けっきょくは、ファーストシーンに要求されることは、相も変わりない言い
方ですが、
┌────────────────┐
│状況の手際いい説明と、スピード感│
└────────────────┘
 ということになるでしょう。

 ストーリーとプロットをつめて、けっして破綻しないで、途中で投げ出さな
いまでにつめておいてファーストシーンを書き出してください。

───────────────────────────────────
 なにも特別なことはありません。世間で言われて常識となっているファース
トシーンの書き方です。(^_^; 
 では次回は「短編小説の書き方」について考えます。
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ■編集雑記■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 人を愛することを考えています。
 ぼくは周りの人間を傷つけてばかりいる。嫌だな……
 でもあまり酒を飲んで自分から逃避しないようにしよう。
…………………………………………………………………………………………
  ☆ミ         ★☆彡     ☆ミ       
            ☆ミ                           ☆ミ
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 00年9月30日                      〈毎週水・土曜日発行〉
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          ☆小説の作り方!34号★彡 
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:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:

 それは放射能測定器のように反射的なものです。「これは私が書かなければ
ならない」と思えるところに来たら、そのボタンを押すのです。
                       スティーブン・キング
      【小説家・ライターになれる人、なれない人(同文書院)から】

:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:

 こんにちは。
 今回は「短編小説」のことを考えてみます。
 小説を書くということでは、長編と短編に執筆上の違いはありません。それ
で、ひとつの考え方をたたき台として提出してみることにしました。

   ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
           ■短編の書き方を考える■        
   ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

 短編とは原稿用紙30枚から100枚までの作品をいいます。これには考え方が
いろいろあって100枚までより少ないと考える人もいますが、まあ、それぐら
いの枚数ということです。
 問題は、中編や長編よりも枚数が少ないぶん作り方としては少々違う考え方、
方法が必要だということです。
 短いので一つのテーマに絞り込まなければなりません。

 短編小説の書き方も基本的には長編を考える過程と同じです。
1) 粗筋を書く。
2) クライマックスは何かを考える。


┌───────┐
│構成的にいえば│
└───────┘
 シーンは5つか6つにするとちょうどいい具合でしょう。
 そうすれば原稿用紙50〜60枚ぐらいになり、短編が出来ます。

 起で1つ、承で3つ、転、結、と1つずつ。


┌─────────┐
│短編はこれでできる│
└─────────┘

 長編を書くつもりでプロットを練り構成する。あるいは実際に書いて、削る
という書き方をする。

1) その中の山場の部分を切り取ってくる。

2) いきなり人間の「対立」ですごく盛り上がっている――
   それでいいのです。多少説明不足でわからなくてもね……(^o^)

3) 大胆に、起承転結にこだわるな――
  (「構成的にいえば」の反対のことを言うようですが……)

   ここまでは「起」ここまでが「承」と考えて作るものじゃないのです。
   つまり、型にはめず、勢いがあればいい。

4) 作者の書きたいこと、言いたいこと(テーマ)がまだできあがっていな
   いのに書き始めると失敗する。

   最後の到達点がわかっていればどういう構成をとろうと平気です。
   作者の視点は「到達点」から見ましょう。


┌──────────────────┐
│絶対にやってはいけないことはこれです│
└──────────────────┘

 ――枚数が足りなくて話を引き延ばしたり、付け足すということ。
 それでは内容が薄くなります。関係のないエピソードをを入れるぐらいなら
短いままのほうがいいのです。


┌──────────┐
│余分なものを入れない│
└──────────┘

 テーマを訴える力が弱くなるからです。
 テーマに関係のないものがはさまっているとだめです。短いのですから、読
者の集中力と印象が弱くなります。
 テーマに関係のあるエピソードで埋めてください。スピード感とクライマッ
クスを準備できる話の運び。それで一気に乗りきってください。


┌──────────────────────┐
│短篇小説とはプロローグとエピローグのことです│
└──────────────────────┘

 プロローグとエピローグさえうまく描ければ短編小説はできます。

 小説のなかでいちばん印象に残る書き出しと終結部。
 
 書き出しによって読者は非日常性にぶち込まれます。小説世界の始まりなの
です。「ここからは日常とは離れた小説世界の始まりだよ」というわけです。
 ですから印象深い、インパクトのあるプロローグを作ってください。
 ファーストシーンの重要性については前号で言いました。ですからくり返し
ません。

 短編小説とはプロローグとエピローグとによって閉じられた世界だともいえ
ます。これは長編小説に比べてそうなのです。
 そしてそのあいだにある内容――それが切り取られた、現実への作者の視点
です。まんじゅうの餡のようなものです。
 でもこういう言い方では抽象的でわかりにくいかもしれませんね。

 で、その餡の部分を生かすにはどういう技術があるか、言ってみます。



┌────┐
│その技術│
└────┘

1) 回想シーン(カットバック)を上手に使う。

 短編小説は短いのでテーマを訴えるには、長編のように現在時の時制で書き
つづっていくことが不可能なのです。
 テーマを鋭く強く訴えるためには、より鮮明な、テーマに関わるエピソー
ド、カットバックが必要なのです。


2) 空間的移動を上手に使う。

 1と同じ事ですが、場所の移動。
 短いぶんだけ、同じような雰囲気を持つシーンが続くと単調になります。メ
リハリをつけるには違う雰囲気を持つシーンを入れてやることが必要になりま
す。
 
3) ストーリーの流れにメリハリをつける。

 語句や文体に注意する。
 純文学的な緻密な心理描写や情景描写を見せるシーンを挿入したり、またテ
ンポよくストーリーを語る要約、説明が必要です。


4) 五感を駆使して盛り上げる。

 五感とは視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚です。うち視覚と聴覚は小説にはよ
く使われています。ですから使い慣れない触覚や嗅覚の描写を入れるどうでし
ょうか。短いなかでもリアリティが出てくるとおもいます。
 村上龍の「料理小説集」などのように味覚から展開するという構成の小説も
あり得るのです。


5) 「謎」を早く提示する。

 これは言わずもがな、ですね。

6) クライマックスが大事。

 短編小説では、作者の世界観を悠長に語っている暇はないかもしれません。
 現実を鮮やかに切り取るクライマックスを見せることに全力を注ぐべきです。
このぼくらがいる現実をスパっと切り取る手口を見せなくてはなりません。

 アイディア(発想)が勝負だといえます。
 どういうクライマックスが現実を鮮やかに切り取るのか――

 これについて考えると、23号で書いた「どんでん返し」というのに興味をひ
かれるのです。
 どんでん返しとは“真実を突く”もの。

 あらかじめ作者によって二重の構造が用意されていて、読者に最後で裏の構
造を見せる。そうすると見えなかった真実が見えてくる――
 これは探偵小説でのうまいトリックの仕掛けなのですが……こういうふうに
短編小説を論理的な方向から考えることも必要だとおもいます。


 読者をクライマックスという見せ場で引きつけること。
 そのためには読者を「おおっ」と感心させる意外性が必要かもしれません。
 それは作者が意外なことを作り出そうとするのじゃなくて、作者が「何を書
きたいのか」「なにを訴えたいのか」というテーマを深く考えたときに出て来
るものだろうとおもいます。


7) 余韻を残すようにする。

 エピローグの大事さ、です。
 短編では長編のように「読み切った」という充実感を読者に与えることがで
きません。
 それでどうするか。
 余韻を残す最後の一行を作るのです。

 短編は現実を鮮やかに切り取ったものです。余韻を残す終結部を作ることに
よって読者に鮮やかな印象を与えるものとなるでしょう。

───────────────────────────────────

 うーん、うまく書けなかったかもしれませんね。
 いずれにしても長編が短編の集まったものと考えてもいいように、短編は長
編の山場を取り出したものと考えてもいいのです。ぼくはそう考えています。

 次回は「主人公」について考えます。

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     ■編集雑記■
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 人を大事に想いたい、そう願っています。
 ぼくのアパートの玄関には野良猫が集まります。それは階下のおばあちゃん
が餌を与えているからですが、天気のよい日にのんびりと昼寝している姿を見
るとほっとします。
 猫は人間の赤ちゃんと同じように一日に16時間?も眠るそうです。
 人もそのようであればいいですね。(^o^)
 元気でやりたい。
…………………………………………………………………………………………
  ☆ミ         ★☆彡     ☆ミ       
            ☆ミ                           ☆ミ
    SAO  ヾ(^^ )
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 00年10月4日                      〈毎週水・土曜日発行〉
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          ☆小説の作り方!35号★彡 
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 本当の文学は、旅行のように、必ず驚かせてくれます。
              アリソン・ルーリー
      【小説家・ライターになれる人、なれない人(同文書院)から】

:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:

 こんにちは。
 小説の登場人物を作るということを考えたいとおもいます。
 小説にとってはどんな登場人物を作るかということは非常に大事なのです。
 ドラマは登場人物が拵えるものです。

   ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
            ■「主人公」を考える■        
   ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


 主人公を作りたいとおもいます。

 プロットを作ること、構成すること、主人公を造型することはほとんど同じ
ような作業の中にあります。
 プロットが先にあってそれから主人公を考え出そうとする人もいるでしょう。
物語先行型と名付けましょうか。
 それとは逆に魅力的な主人公を描きたいからお話を作ろうとする人もいるで
しょう。

 主人公ができればストーリーが動き出すし、構成をどうするかというのがで
てきます。そしてプロットができあがる。


┌────────┐
│主人公は小説の命│
└────────┘

 主人公が行動することで小説世界は先へ、先へと展開していきます。描写は
大事ですがそれだけだと読者はけっして満足しないでしょう。
 行動です。
 読者は主人公の視点、あるいは他の登場人物の視点で小説世界を体験します。
 人物の視点も「世界の見え方」という「見る」という行動の一部なのです。

 多くの小説では主人公の視点によって世界が語られます。
 読者は主人公に成り代わって主人公の行動を体験することになります。
 もちろん共感するだけじゃなく、主人公を批判的に見ながらです。

 主人公が魅力的であればあるほど、読者は小説世界にのめり込み、テーマを
共有し体験することになります。
 だからこそ、主人公は小説の命だ、といわれるのです。


 主人公が行動する――それが小説において具体的に表れてくるテーマです。
 主人公が小説のテーマそのものであると言いきっていいのです。


┌───────────────┐
│もう一度、小説の構成のおさらい│
└───────────────┘

 小説は人間と人間の対立関係で成り立っています。それでこそ矛盾があり、
問題があり、葛藤がある。

 主人公はテーマを体現しています。テーゼですね。
 主人公と対立関係にあるものはアンチ・テーゼとして表れます。
 この矛盾は止揚されます。新しい存在に生まれ変わります。弁証法ですね。

 ですが、「主人公」と「主人公と対立する者」が真正面からぶつかりあって
主人公が勝利するというパターンの話は単純すぎて面白くないです。それでは、
まるでスポーツみたいです。
 小説はそういう設定やルールからははみ出していくでしょう。

                ┌──┐
 小説で描かなければならないのは│背景│ではないでしょうか?
                └──┘
 作家の腕の見せ所はここです。いかに重厚な背景を作るか。


 テーマを分析します。
 そこから背景が生まれてきます。
 それでもそれを考えていただけでは動き出しません。描けません。
 ┌──┐
 │脇役│を考えなければだめなのです。
 └──┘
 背景のなかで、それを支え、維持し、また変えようとする人間たち。小説世
界のなかでは脇役なのですが重要です。


 小説は単純化すれば、「主人公」と「主人公と対立する者」との闘争なので
すから、脇役は二つに分けられます。
「主人公に味方する者」と「主人公に対立する者に味方する者」です。
   ┌─────────┐
 その│集団のダイナミズム│こそが小説世界を豊かにし、魅力的にします。
   └─────────┘
 そういう集団を作り上げることが、プロットを複雑にしはらはらどきどきさ
せるサスペンスを生み出すのです。

 背景と脇役は小説の重要な構成要素です。


 脇役は主人公を助けたり、主人公に降りかかる苦難を代わりに受け止めたり、
問題の克服の支援をしたりします。
 脇役は対立する者を援助したり、主人公を部分的に攻撃したりします。



 まとめてみましょう。
 ドラマは人間の関係の中にしかありません。
 小説の登場人物として――

1) 「主人公」 ――テーマを追求します。
2) 「副主人公」――主人公の代りにアンチテーゼを受けとめます。
3) 「味方」  ――主人公にアンチテーゼの克服を援助する者たち。
4) 「敵」   ――対立する者、アンチテーゼを提出します。
5) 「敵側の者」――主人公に部分的な攻撃をする者たち。

  (これらはもうわかっておられることですよね(^-^)v )


    ────────────────────────────

 小説の命はいかに魅力的な主人公を作れるかです。

┌───────────────┐
│主人公には魅力とリアリティーを│
└───────────────┘

 主人公の魅力とリアリティ――これは読者の憧れと共感とも言い替えられる。
 読者は現実の日常生活にはない魅力を持った主人公を求めています。

 読者がその主人公に感情移入できるかどうかなのです。

┌─────────────────┐
│どういう主人公を作り上げればいいか│
└─────────────────┘

1) 読者よりも問題に対して賢い解決方法を持っていること
   主人公が馬鹿では話が始まりません。

2) 人間的な――弱みがあること
   あまりに完全無欠では魅力がないのです。

3) 問題に対して真剣で苦悩できること

4) 人間的であること
   悪魔的人間を主人公にしてもいいが動機は人間的なものであること

5) 読者が魅力を感じ憧れるような部分をもっていること
   常識的、世間的な意味での魅力です


┌────────────────┐
│主人公はなんのために行動するのか│
└────────────────┘
              ┌───────┐
1) まず動機の一番の原因は│他者に対する愛│です。
              └───────┘

2) 自己を防衛するためです。
   人間的なことで追いつめられた主人公は、やむにやまれぬという意味で
   自己を防衛しなければなりません。

3) 復讐。
   根底には愛の記憶の回復があります。愛する者を殺されたとか――

4) 義務――社会的義務です。

5) 快楽――誰もが憧れる快楽。


 5は個人的な動機になるわけですが(これは誰もが望むこと)これも当然な
事です……恋、性愛、欲望。
 おおまかに分けると動機はこういう分け方でいいのじゃないでしょうか?

           ┌───┐
 読者を共感させるのは│正当性│です。「人間的に正しい」という感覚です。
           └───┘




    ────────────────────────────

┌──────────────┐
│主人公のイメージをどう作るか│
└──────────────┘
 は15号の「主人公のチェックリスト」を見てください。

 主人公の性格は、背景の中の具体的事実で描きます。
 キャラクターというものは作者が説明するものでなく、読者に想像させるも
のだからです。

    ────────────────────────────



┌───────┐
│書くときの技術│を考えてみましょう。
└───────┘

■どんな短編でも登場人物は主人公以外に2人は必要です。
 つまり三人ですね。三人は人間関係の基本形なのです。
 そして中に一人、異性を混ぜること。2対1です。


■三人の主要人物の描き方の比重は5対3対2ぐらいで書きます。


■では、どれぐらいの登場人物が必要なのか。
 目安ですが、原稿用紙十杖につき一人。そしてプラス1。
 30枚の原稿なら四人ですね。
 100枚の原稿なら11人。これぐらいの登場人物は必要でしょう。

───────────────────────────────────
 小説というドラマを作り上げることにおいて、人間の取りあげ方は作者固有
のものです。どんなドラマを作ってもいいのですが、人間的であるという一点
だけは絶対に譲ることができないでしょう。

 次回は「登場人物の作り方」を考えてみましょう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ■編集雑記■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 雨です。秋の雨。
 濡れるのは好きなんですが、なにもしないときにかぎります。
 それで電車に乗るのはどうも……

 最近、小説を読んでないからなあ。反省しています。

…………………………………………………………………………………………
  ☆ミ         ★☆彡     ☆ミ       
            ☆ミ                           ☆ミ
    SAO  ヾ(^^ )
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