00年11月22日                      〈毎週水・土曜日発行〉
─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─
          ☆小説の作り方!46号★彡 
─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─
:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:
 人は実際に行動を起こすことで、学ぶことができるのです。というのも、知
っていると思っていても、実際に行動を起こしてみるまでは、それが本当かど
うかが分からないからです。
                          ソフォクレス
      【小説家・ライターになれる人、なれない人(同文書院)から】
:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:

 こんにちは。
 秋田はいいところですね。お酒もうまいし……いい人が多い。
 けれど、ちょっと寒い。

   ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
          ■「表現の技術」を考える(2)■         
   ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

 ぼくらが陥りやすい間違いを挙げてみます。



          ★難解な表現について
          --------------------

 なるべく読みやすく易しい文章がいいとおもうんです。
 インパクトを与えようと難解な語句を使ったり、微妙な心理を表すために細
部まで書き込むと、かえって伝わりません。
 読者がとまどいと違和感を感じるからです。
 言葉というのはそれ自体で自立しているものではないんです。一つの言葉は
それにつながる次の言葉との関係のなかで生きてくるものなのですから。

 読者が、なぜ難解だと感じてしまうかといえば、その言葉ですべてを言い切
ってしまおうという作者の気持ちが先行しているからですね。



            ★重複する文章
            --------------

「その誰もいないと思っていた体育館に黒い影が座り込んでいるのを見て、晶
子は一瞬戸惑いを感じたが、近寄っていくと、肩を震わせて泣いている理恵だ
ったので戸惑いはますます高まった」
 というような文章。(ぼくが書いたのですが――(-_-メ) )

 こんなふうに書いてしまうことがあります。なぜでしょうか?
 作者が伝えることに性急になっている――
 イメージ(対象)との距離感がとれてないんですね。
 作者が自分の言葉で読者に伝えようとおもっている。そうなると作者→読者
の通路しか開かれていないことになる。対象がどこかに行ってしまっているん
ですね。作者は自分のなかのイメージを伝えようと躍起になっている。

 描写は具体的なもの――ということを考える必要があるようです。
 



       ★話し言葉で地の文を書いてしまう
       --------------------------------

 一人称小説以外は、地の文章で話し言葉を使ってはいけないんです。
 作者が意識しないとおうおうにして三人称の小説に話し言葉が紛れ込むこと
があります。「なんて」とか「いろんな」とかの言葉ですね。

 一人称での使用もケースバイケースです。多用すると読者がついていけなく
なるから……
 しかし、吉本ばななは、すごくうまく使っていますね。
『「……じゃ、とにかくうかがいます。」
  悪く言えば、魔がさしたというのでしょう。しかし、彼の態度はとても 
 “クール”だったので、私は信じることができた』
                    「キッチン」



           ★主語について
           --------------

 できるだけ短い文章で書いていくほうがいいでしょう。
 自分の文体ができあがれば長い文章を書いても正確に書けます。

1) 主語と述語は、なるべく近くに置くという鉄則を守ってください。
   長い文になりそうなときは、二つに分ける。 

2) 同じ主語を使った文章が後にくる場合は、なるべく主語を省略しましょ
   う。そのほうが文章がすっきりします。

3) 間違いやすいのは、ひとつの文に二つの事柄を入れる場合です。
   ぼくも間違っていたのですが――
   「睡眠時間を調べたら、一日平均6時間だった」というのは誤り。  
   「睡眠時間を調べたら、一日平均6時間であることがわかった」が正し
   い文章だそうです。 
   ややこしいんですね。(この例を挙げてくれた人にお礼申し上げます)
   ですから、こういう文章は避けた方が無難です。



         ★接続詞もなるべく使わない
         --------------------------

 前に形容詞をなるべく使わない、と言いましたが、接続詞も使わないほうが
いいです。
 基本的に小説の文章は、会話を除いて、具体的なものを描写、説明する文章
です。
「それにしても」「が」「だが」「としても」「にもかかわらず」「つまり」
「すると」「そして」……
 これらはリズムを作って行くにしても、読者にとっては鼻につく語句です。



            ★リズム、読点
            --------------

 小説のリズムは描写する文脈のなかで自然に拵えるようにしましょう。

 リズムを確かめる一番いい方法は声を出して読むことです。
「なにか発音しにくいな」という違和感を感じるときには、推敲する必要があ
るのではないでしょうか?

 読点は、その文の呼吸、息づかいなんです。




             ★漢字は……
             ------------

 たしかにひらがなが多いと読みやすいです。
 漢字で全面覆われていると、読む気が萎えてしまいます。ひらがなで書かれ
るところと漢字で書かれるところのバランスをとる必要があるのではないでし
ょうか? コツはこうです。

1) やさしい漢字はひらがなで。難しい漢字はそのまま使う。


 漢字というのは象形文字なので意味を含んでいます。その形そのものが文脈
とは別に意味を主張しているのです。
 これを、読むという行為のなかで収まりのつくところに納めてやる、そうい
う必要があるとおもいます。




            ★説明は会話で
            --------------

 多くの作家が、事件のややこしく面倒な説明は、登場人物同士が会話をする
というなかで行っています。
 話者がわざわざ説明するよりも、そのほうが自然に読者に受け入れられるし、
人間関係も際だつからです。

 小説は事件を登場人物の視線で語るものです。
 それを話者が要約して説明してしまっては、いちばんおいしい部分を捨てて
しまうことになります。

「説明は会話でする」ということを心がけてください。




            ★筆を押さえて
            --------------

 張りあげた声よりも静かな声の方が、感動を伝えることができます。
 おおげさな表現は読者をしらけさせるだけです。
 作者が自分の文章に陶酔しないこと……
 リアリティはそこにこそあります。


  --------------------------------------------------------------------
 今回は少し短かったですね。
 手元に参考にする本もないので、これぐらいで……
 表現についての留意点を挙げていくと、書ききれないほどたくさんあります。
 でもそれは、みなさんが「文章の書き方」などの本を読んで、自分なりのリ
ストを作ってください。それぞれが違う文章を書くように注意することも違う
でしょう。
 ここではその入り口になる基本の基本を書いてみました。

 次回からは描写について考えたいとおもいます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ■編集雑記■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 たまに仕事をする。
 まったくぼくは怠け者です。それはすごく贅沢なことなのですが、いちおう
貧乏の責任は自分で負っているので許されることなんだろうとおもっています。

 いつも小説のことが頭から離れないんだけど……書くという行為にまで昇華
されていかない。難しく考えすぎ。だめだ。(でも弱音は吐かない)
 世の中には多くの人がサラリーマンをやりながら、こつこつと書いていると
いうのにね。m(_ _)m

…………………………………………………………………………………………
  ☆ミ         ★☆彡     ☆ミ       
            ☆ミ                           ☆ミ
    SAO  ヾ(^^ )
   今年のテーマは「いつも上機嫌で元気にやろう!」
  E-mail: YHY11050@nifty.ne.jp
  --------------------------------------------------------------------

  ■このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用し
  て発行しています。  ( http://www.mag2.com/ )まぐまぐID:0000034024
 ■Macky!メールマガジン立ち読みスタンド から発行しています。
    ☆登録・解除・アドレス変更はこちらです。 http://macky.nifty.com/

 
  ■バックナンバーはここです。
  http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Himawari/2181/backnumber.htm
  ■登録・解除・アドレス変更もこちらのホームページでどうぞ。
    http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Himawari/2181/
「ちょっと、聞いてよ、ね」伝言板はここです。また書き込みを。
======================================================================


バックナンバーのページに戻る
 00年11月26日                      〈毎週水・土曜日発行〉
─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─
          ☆小説の作り方!47号★彡 
─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─
:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:
 私たちは、快適さと贅沢が人生で最も必要なものであるかのように振る舞い
ます。しかし、本当に幸せになるために必要なものは、自分が打ち込めるもの
を持つことなのです。
              チャールズ・キングスレー
      【小説家・ライターになれる人、なれない人(同文書院)から】
:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:

 こんにちは。
 発行が遅れたことをお詫びします。昨日は柏崎から京都へと北陸道をトラッ
クで走っていたのです。夜、着いたのですが読書会の予定があって参加した後、
お酒を飲んだのでそのまま寝てしまった。

 今回から、いろんな描写の在り方について考えていきたいと思っています。


   ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
           ■「心理描写」を考える■         
   ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

 登場人物や主人公の心理を読者に伝えることは難しいことです。
 というのは小説はあくまで時間軸によって並べられた事件の語りであり、そ
れがストーリーを構成する内容となっているからです。
 小説は事件を語るものです。

 しかし、ぼくらが小説を読んでおもしろいと思うのは、登場人物が魅力的だ
からです。人間が描かれているからです。

 小説で描かれる人間はあくまで外側から見られたものです。
 ですから、人間の内面を描くことは難しい。
 どうするのか……

 一人称小説で、自分の内面をことごとく披露するというパターンがあります
ね。それが成功すればいいんだけれど、たいがいはその内面の吐露に辟易して
しまいます。
 たぶん読者といえども、そんなに他人の心理に興味があるわけじゃないんだ。
 だって、その小説の主人公であれ読者にとっては他人だもの。それが魅力あ
る人物なら別だけどさ。
 人は自分のことしかわからないし、他人を救えない。たぶんね。

 まるで恋愛している男女のように、人の心理がわからないで悩む――
 人の心理は複雑。
 そんなのうまく表せないよ。

-----------------------------------------------------------------------

 ええーと、愚痴みたいなことを言っていてもしかたないんで、小説において
心理描写をどうするかを考えたいとおもいます。(( i_i)\(^_^) )

┌─────┐
│関係を描く│
└─────┘
 人間の心理は関係性の中にしかない。
 そうです。
 すべての人間の感情は、関係のなかで生まれ、消滅していくものなのです。
 愛、憎しみ、友情、勇気、連帯、侮蔑……
 それらの感情は独りでは生起しないんです。

 だとしたら、登場人物の心理を描くということは、関係を描く=ドラマを描
くということだとおもいます。

 登場人物は作者が設定した事件とドラマのなかで成長します。
 その葛藤がいかに表れるか。それを具体的に描くことでしょう。

 勧善懲悪ドラマには、悪者と善人がいて、最終的に善人が勝つのですが、そ
こでよく、悪者が改心したりしますよね。
 そんなに都合よく人間というものは変われるものでしょうか?
 ぼくはよほどの改心を促す起爆剤が必要なようにおもいます。心理を変える
ほどのインパクトのある何か――
 人の心理は追いつめられなければ変わりません。

 悪の方になびいていく弱さを越える何か――
 それを見出すことがドラマだとおもいます。

 -----------------------------------------------------------------
 以上はプロットを作る上での意識しておかなければならないことでした。
 ------------------------------------------------------------------


 小説を書く上での技術としての心理描写というのはあります。
┌──────┐
│自由間接話法│です。
└──────┘
 地の文のなかに登場人物の内面の言葉が直接書かれる。
 地の文の中に独白が入ってくる。
「そうか。あのケイ子も、とうとういなくなるのか。正一は父親が手をつけな
かったお好み焼きをつつきながら考えた」
        (「高円寺純情商店街 本日開店」ねじめ正一)


 近代文学では、人物の心理は神の視点に立った作者が読者に説明するもので
した。
「その言葉を聞いて、彼は憎んだ」というふうに。

 これだと読者にはわかりやすいのですが、等身大の視点を持つことができま
せん。読者の感情移入がなされにくいのです。
 フロベールが最初に試みたといわれるこの間接話法は、今では当たり前に小
説のなかにみられます。

 しかしこれが便利だからといって、こういう形で心の中を言葉で直接表現す
るのを乱発すると、読者への印象が薄くなります。

 やはり、
┌────────────┐
│具体的な描写があってこそ│です。
└────────────┘
 この間接話法をいかすコツは、それまでに具体的な状況を描写しておくこと
です。

 そこに置かれた登場人物の状況、それまでのエピソードが語られていてこそ
力を発揮するのです。

 ほんとうはそれらの具体的描写が人物の心理を表わすといってもいいのです。
 登場人物の具体的な行動描写、登場人物の視点で見られる心象風景などが人
物の心理を表わすわけです。
 それを積み重ねることによって、目には見えないものが立ち上がってきます。
 そういう心理の襞を書くことが心理描写の醍醐味なんですね。

 小説は、細かく心理をかき分けるのに適している芸術です。
 映画なら映像でしか捉えられない。心象風景を映し出すのにも限界があるで
しょう。それが小説では、言葉という抽象的なものをつかってイメージを作る
ことができます。
 これこそ小説がいちばんやりたかったことなのです。

 表情・視線・仕草・独白によって、登場人物の心理を効果的に表現してくだ
さい。それと登場人物の置かれている立場、状況で。


 ドラマを作る上で、登場人物の心理描写ができてない小説はほとんど書く意
味がないといっても過言ではないのじゃないでしょうか。(-_-メ) 



       -------------------------------
 表現上の注意点。
 ですから――

 小説における記号、「……」や「――」はなるべく使わないようにするほう
がいいのです。(ぼくはついつい使ってしまう)
「小説は、視覚で訴えるより先に、文章で読ませることを考えるべきで、記号
を多用すればするほど作品の質が落ちていく」
             「作家養成講座」KKベストセラーズ 若桜木虔



       -------------------------------

┌─────┐
│スピード感│
└─────┘

 小説で自由間接話法などをつかうと、そのぶん文章のスピードが落ちます。
 ですから、これをいかに効果的に使うかというのが腕の見せ所です。
 小説は時間の芸術ですから、時間を自由に操作できることが身上だといえま
す。読者に読まれるスピード感の調節が大事なのです。

 考えてみてください。
 会話だらけの小説は意外とつまらないと感じるものです。
 それは、最初から最後まで読者が感じるスピード感が同じだからです。
 メリハリが必要なんです。

┌──────┐
│会話について│
└──────┘


 会話=セリフは、必ずしもその人物の心理状態を的確に表しているとは限ら
ない。なぜなら人間は嘘をつきますから。
 ですから、複雑です。
 作者が登場人物に会話をさせる楽しみ――読者に謎をしかけ――読者がそれ
をいかに読み解くかという、小説の楽しみもあるわけなんです。
 

       -------------------------------


 小説はストーリーを語るものと言いましたが、登場人物の内面描写、心理描
写は小説の大切な部分です。

 プラスの感情とマイナスの感情。
 主に人間の悪意や増悪、怒りや嫉妬といったマイナス感情の爆発が作品のク
ライマックスを作りあげるでしょう。
 物事の二面性を見なければなりません。
 愛とエゴイズムのかねあい。。
 優しさと優柔不断という問題。
 善意には無神経と鈍感さが潜んでいないか。

 ドラマを作るのは人間です。
 表面的に流れるストーリー=事件を支えるのは人間です。

-----------------------------------------------------------------------
 心理描写という特別なものはない、そうおもっています。
 人間の心理は表面から伺い知ることしかできない。
 会話や、独白でも人間は嘘をつきますから、ね。
 小説において心理描写って、作者が読者にしかけるものでしょう。

-----------------------------------------------------------------------

 前号の★主語についての(3)
            * * *
   間違いやすいのは、ひとつの文に二つの事柄を入れる場合です。
   ぼくも間違っていたのですが――
   「睡眠時間を調べたら、一日平均6時間だった」というのは誤り。  
   「睡眠時間を調べたら、一日平均6時間であることがわかった」が正し
   い文章だそうです。 
            * * *
 が、わかりにくいというメールをいただきました。これは(私が)を入れる
とわかります。誤りの文は二つの主語が混同されているんです。
「(私が)睡眠時間を調べたら、(私が)一日平均6時間だった」というのは
誤り。  
「(私が)睡眠時間を調べたら、(私が)一日平均6時間であることがわかっ
た」

-----------------------------------------------------------------------

 次回は風景描写についてです。
 では、また。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ■編集雑記■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 無事、帰ってきました。
 秋田県は能代。きりたんぽを食べました。おいしかったですよ。はたはたの
しょっつる鍋も。はたはたはもう獲れないので一匹600円もするんですって。
 地方に行くと地酒がうまい。
 毎日、酒を飲んでいました。いつものことですが。
 12月は仙台、福島に行きます。

 メルマガはちゃんと書いておきますね。ホームページも更新しなきゃ。
…………………………………………………………………………………………
  ☆ミ         ★☆彡     ☆ミ       
            ☆ミ                           ☆ミ
    SAO  ヾ(^^ )
   今年のテーマは「いつも上機嫌で元気にやろう!」
  E-mail: YHY11050@nifty.ne.jp
  --------------------------------------------------------------------

  ■このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用し
  て発行しています。  ( http://www.mag2.com/ )まぐまぐID:0000034024
 ■Macky!メールマガジン立ち読みスタンド から発行しています。
    ☆登録・解除・アドレス変更はこちらです。 http://macky.nifty.com/

 
  ■バックナンバーはここです。
  http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Himawari/2181/backnumber.htm
  ■登録・解除・アドレス変更もこちらのホームページでどうぞ。
    http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Himawari/2181/
「ちょっと、聞いてよ、ね」伝言板はここです。また書き込みを。
======================================================================


バックナンバーのページに戻る



 00年11月29日                      〈毎週水・土曜日発行〉
─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─
          ☆小説の作り方!48号★彡 
─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─
:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:
 私は、たとえ数行しか書けなくても、毎日2時間書くことにしています。毎
日書いていると、いずれインスピレーションが湧いてきます。とにかく2時間
は書きます。毎日書くのをやめるわけにはいきません。毎日書くというのは面
白いことではありませんが、書きたいと思うまで待っていると決して何も書け
ないのです。
                デーブ・バリー
      【小説家・ライターになれる人、なれない人(同文書院)から】
:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:

 こんにちは。
 今回は風景描写をすることについて書いてみます。

   ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
           ■「風景描写」を考える■         
   ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

 風景描写の部分は、小説を読んでいてほっとするところですね。
 基本的に小説はドラマを語るものなので、風景描写は本来、無駄な部分です。
 でも、それでほっとする。息抜きができます。

 あまりにドラマ=人間の対立、葛藤ばかりを並べられると読んでいる読者は
しんどい。ドラマというのは人間の確執なのでその関係から逃れられない、と
いうことがあるとおもいます。息が詰まってしまう。

 自然の描写や人間以外のものの描写を入れる。
 そうすることで、読者の意識をそこから離れさせ、ほっとさせる効果がある。
 気分の転換なんです。風景描写の部分は小説において他者の意識が介在しな
いところですから。

┌───────┐
│心象風景を描く│
└───────┘
 ところで、ここでも作者は手をゆるめません。
 風景は心象風景なんです。心理の表れです。
 おもに主人公の心理が風景に仮託された形で描かれます。

 どんなふうに――
「感覚表現辞典」東京堂出版(中村明)編 から引用してみます。

-----------------------------------------------------------------------
1 光は、暗澹と横たわる大気を射抜く力も失せ、逆にすべての光沢を覆うか
  のように忍び降りては死んでいく。時折、狂ったような閃光が錯綜するこ
  とはあっても、それはただ甍の雪や市電のレールをぎらつかせるだけで終
  ってしまう。         (宮本輝「螢川」)

2 芝生の草いきれと、目をそむけたくなるような濃い緑のてりかえしの中で、
  ここは昔、学ぶ者の最高学府だったのだとでも言いたげな、白い時計台だ
  けが時を刻んでいた。
         (玉岡かおる「夢食い魚のブルー・グッドバイ」)

3 雪は二人の男女の顔の高さとすれすれに降り積もっており、四辺は少し蒼
  味を帯んだひどく静かな世界だった。
                 (井上靖「あすなろ物語」)

4 この街は大昔のポリスのまわりに、まるで磁石に鉄屑がくっつくように付
  着して、そのまま無定見にぼわぼわと発展したような都市だから、観光客
  にとって興味のある場所ははっきりと中心部に限られている。
                 (村上春樹「遠い太鼓」)

-----------------------------------------------------------------------
 4はほとんど説明なのですが、風景を切り取る方法としてあげてみました。

 わかるのはいったん視点が登場人物の内面から離れていること。ものや自然
に主格が移っていること。
 そこからまた「人間の置かれた状況が眺められて」いるということです。

 主人公の心理が風景に託されているばかりではない。
 45号で引用したように、風景は「自分だけが見る特権的な風景」ではないん
ですね。(「小説家になる」中条省平)
 見えるものは非常に内面が表される風景だけれど、かえって世界←→自分の
境目が際だつというか、そういうものとして見られるということなんです。
 世界の中に立つ自分に返ってくる。



 小説の機能としては、

┌─────────────────┐
│風景描写は時間の流れを作り出します│
└─────────────────┘
 これは作者や登場人物、読者にとっても必要なことです。
 テーマに絡め取られて身動きできなくなる登場人物に、自分を反省する機会
を作り出すからです。もちろん読者にとっても。
 作者にとっても次の段階にテーマを発展させるために必要でしょう。



 描写は時間の流れを遅くするといいますが、

┌─────────┐
│余韻も作り出します│
└─────────┘

 つまり、心理が収まるところです。
 ラストシーンではこれが必要なのです。余韻をもって終わること。
 登場人物の気持ちが収まるところに収まり「事件が終わったな」と読者に感
じさせる。そこで、湧いてくるのが「新しい出発」です。
 長く苦しい葛藤はそれ以上発展せず、結末がおとずれる。

-----------------------------------------------------------------------

「僕は川に沿って河口まで歩き、最後に残された五十メートルの砂浜に腰を下
ろし、二時間泣いた。そんなに泣いたのは生まれてはじめてだった。二時間泣
いてからやっと立ち上がることができた。どこに行けばいいのかはわからなか
ったけれど、とにかく僕は立ち上がり、ズボンについた細かい砂を払った。
 日はすっかり暮れていて、歩き始めると背中に小さな波の音が聞こえた」

        「羊をめぐる冒険」村上春樹 講談社文庫

-----------------------------------------------------------------------


 ところで、技術的にはどのようにすればいいのでしょうか。
 風景描写というのは単なる「見られたもの」というだけではおもしろくない
のです。

┌────────┐
│視線の動きが大事│です。
└────────┘
 それが独立した物としてある風景に動きを作り出すのです。

 まず、全体を見る。その総体的な印象を描写する。そして、視点を絞ってい
く。それから具体的な個々の感覚で甘受した描写をする――それが基本です。
 そうすれば、立体感がでます。緊張感も生まれます。
 ここでも、静と動なのです。
 それによって登場人物の心理の揺らぎが表せる。

 ぼくらが印象的な風景を見た場合にどうだったか、考えてください。
 まず「美しい」とか「すげえな」とかの感想が先に来るでしょう。それまで
にいろんな方向に視線は彷徨っているんだけど、頭のなかで総括した印象、感
想がまず浮かび上がってくる。
 そういうものなんですね、人間は。
 そういう人間の生理に合っているんです。まず、全体の印象を前に置くのは。

 総体的な印象から徐々に複雑な集中した描写へと移る。
 --------------------------------------------------

 読者の興味の持続というのは後になるほど薄れていきます。
 ですから、後になるほど、濃い描写を作っていくことが必要なんです。


 これはすべての描写においてそうなんです。
 風景描写、人物描写、行動描写。
 ずべてにおいてそういう順序でやるのが正解なんです。
 なぜかというと、語りというものは読者に余計な負担をかけず、なるべくわ
かりやすい形で、というのがベストだからです。

 でも、もちろんいつでもその約束を破っていくという冒険はしなければなり
ませんが……


 表現に凝るよりも、具体的な映像が目に浮かぶように描くほうがいい。

 人間の五感ですね。
 その具体的な感覚を描写のなかに入れると風景は際立ちます。



┌────────────┐
│具体的な場所を作りだそう│
└────────────┘
 というのは、風景は土地と分かちがたく結びついているからです。

 具体的な場所を描かない、どこかわからない抽象的な場所にしか感じられな
いいものを描いてもだめではないでしょうか?

 小説は現実の写し絵という部分も持っている世界です。
 読者の頭のなかで、現実と、それを越える想像の場所というものが対比させ
られるからおもしろさを感じるのです。

 ですから「ここはあの場所なんだな」と想像させるものを描く。

 ようするに「具体的に場所を描く」ということですね。

 作品のリアリティを支えるのは背景の具体性です。

 読者を惹きつけようとすれば――行ったことがない場所、読者の興味がある
場所のほうが効果的だし、読む楽しみもあります。

 いちばんいいのは、エキゾチックな場所。体験したい風景。
 渡辺淳一はそれを効果的に使っているとおもいます。
 主人公が女の人と旅館に泊まる。そこから見える夕陽や山、谷の静けさ。
(ぼくは渡辺淳一の作品が好きなんです(^_^; )

┌─────────────┐
│知らない場所 知らない風景│
└─────────────┘

 読者をなるべく日常の生活から離れた場所に連れて行ってください。
 
 たとえば、働く場所にしても――
 アルバイトの工場、企業、事務所、専門的な知識を持つものが集まる会議室、
西成の労働者の寄せ場、建物の建設現場、魚屋のおっちゃんが集まりセリが行
われている早朝の市場、深夜のクラブ、キャバクラ、空港管制塔、タクシー、
学校の職員室、警備室、新聞配達員、トラックで走っている運転手……
             職業の数だけあります。
 
 住む場所にしても――
 アパート、マンション、路上、一戸建住宅、団地、うらぶれた長屋、寺、簡
易宿泊所、田舎の古い家、牧場……

 だから誰もが知らない違う場所がいいのです。
 そこで違う風景が見られる。

 原子力発電所。山岳。地下のマンホール。砂漠。違う宇宙空間。沼地。温泉。
観光地。
 いちばんいいのは外国――そこでは違う風俗、風習、慣習がありますから。

 想像を膨らませましょう。

-----------------------------------------------------------------------

 このメルマガを楽しんでくれているでしょうか。書いているのは基本的なこ
とばかりなので役に立たないのじゃないかと――危惧してます。
 小説作法というテーマで書いていくというのは難しいですね。
 こう書けば小説が書ける、というものでもないでしょうから――
 でも、書くときになにかのヒントになれば、ぼくは幸せだな、とおもってい
ます。

 では、次回は「人物描写について」です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ■編集雑記■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 なにか仕事から帰ってきてからお酒ばかり飲んでるなあ。ビジネスホテルの
夜はずっと宴会だったから、その続きかも。
 こんな、酒飲みの、ふうてんのメルマガを、読んでくれてありがたい、って
つくづくそうおもいます。
 一番安いノートパソコン(DynaBook DB50C/DC8)を買いました。今持ってい
るデスクトップと同じように使える環境にするのに一日かかりました。
 これでいつでも小説が書けるかなぁ。(^_^; 
……………………………………………………………………………………………
  ☆ミ         ★☆彡     ☆ミ       
            ☆ミ                           ☆ミ
    SAO  ヾ(^^ )
   今年のテーマは「いつも上機嫌で元気にやろう!」
  E-mail: YHY11050@nifty.ne.jp
  --------------------------------------------------------------------

  ■このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用し
  て発行しています。  ( http://www.mag2.com/ )まぐまぐID:0000034024
 ■Macky!メールマガジン立ち読みスタンド から発行しています。
    ☆登録・解除・アドレス変更はこちらです。 http://macky.nifty.com/

 
  ■バックナンバーはここです。
  http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Himawari/2181/backnumber.htm
  ■登録・解除・アドレス変更もこちらのホームページでどうぞ。
    http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Himawari/2181/
 「ちょっと、聞いてよ、ね」伝言板はここです。また書き込みを。
======================================================================


バックナンバーのページに戻る
 00年12月2日                      〈毎週水・土曜日発行〉
─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─
          ☆小説の作り方!49号★彡 
─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─
:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:
 人は、自分が本当にやりたいことをやっているときは、いい人なのです。
                      サミュエル・バトラー
      【小説家・ライターになれる人、なれない人(同文書院)から】
:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:

 こんにちは。
 朝夕、寒くなってきました。本格的な冬ですね。
 東北を旅している友人からメールが届きました。これから長野を経て愛知に
帰るそうです。仙台では、ホタテは300円もするそう。青森では100円なのに。

   ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
           ■「人物と描写」を考える■         
   ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

 47号でこう言いました。
「心理描写という特別なものはない、そうおもっています。人間の心理は表面
から伺い知ることしかできない」
 人物描写についても同様な気がします。

「心理描写がまずい」とか「人物描写がいい」とかよく言いますよね。
 それは読者の側から寄せられる感想、批評としてです。

 描写をすることにおいて「こういう人物はこういう描写をすればいいんだ」
という正解はないようにおもうんです。
 人物描写のやり方が、独立した技術としてある、と考えるのは難しいのでは
ないでしょうか。

 何故って、それぞれの作者の文体や描写の技量にによって読者のほうの感想
が違ってくるからです。


 でも、基本的な考え方はあります。
 人物像というのはどういうところから出てくるのか、を考えてみると「あり」
です。

1) キャラクターの設定から
2) 人物が選び取っている選択、境遇から
3) 人物の置かれた周りの環境、状況から
4) 人間関係の位置づけから
              です。ですから――

 明確なキャラクター。
 その人物が何を目標とし努力しているか。
 周りの困難な環境。
 人間関係の葛藤。

 こういう情報を読者が与えられると、人物像が明確になってきます。


 人物描写の絶対的な必要条件は、
┌────────────────────────────────┐
│作者の頭のなかで登場人物がしっかりイメージされ、造型されているか│
└────────────────────────────────┘
 なのです。
 ようするに人物の身上調査(37号)が細かいところまで作られているかです。
 そして作者がその人物を友だちのように、生き生きと感じることができてい
るかです。

 人物描写はその登場人物が作者の頭のなかでしっかりと作られていれば、
     ┌────────────┐
     │そのシーンにあった描写が│できます。
     └────────────┘
 その登場人物が為すべきことを為している――話者はそれを、ただ書き写す
だけなんです。まるで映画を観ているように。ですから作者にとって人物の描
写は自然にできてしまうことになります。
 


----------------------------------------------------------------------
┌──────┐
│そのシーンで│
└──────┘
 伝えたい情報――読者に与えたい情報――が書かれていればいいんです。

 ここで例を引きたいとおもいます。ファンタジーの書き方の本からです。
 ぼくは、この部分を読んですごく感激したので……
 久美沙織「もう一度だけ新人賞の穫り方おしえます」(徳間書店)の――
「読者を上手にだますコツ」――の部分。
----------------------------------------------------------------------
┌────────────────────────────────┐
│ ルビスは寝間着姿のままひとり窓辺に立って、コウデマ山の向うに沈│
│んでゆく夕陽に、赤い瞳を細めていた。              │
│ 太陽は、ナスタナウムの丘の懐にある生家から見る時よりも、幾分小│
│さく霞んでいた。しかし、ちょうど今時分のカショーロの実のように、│
│重たく熟れきった色をしている。年に一度の収穫祭のはじまりには、ま│
│ことに相応しいみごとな姿だった。                │
│ もはや横になっていなくてはならない頃合であった。太陽はイデーン│
│のこの季節には、夜半をすぎるまで隠れることはないのだ。     │
│              (ドラゴンクエスト 精霊ルビス伝説)│
└────────────────────────────────┘
 さぁ。この最初の一文で、作者の最も言いたかったこと、伝えたかったデー
タとはなんでしょう?
 聡明なみなさんには、もうおわかりですね。
 そう。実は、「ルビスは赤い瞳をしている」ってことなのです。
 寝間着を着てるのも、窓辺に立ってるのも、窓の向うにコウデマ山とかって
山があるのも、夕接が沈んでいくのも、みんなみんな、わたしにとっては、実
はどーでもいいこと、ここであえて語らなくたっていいことです。
 わたしはただ、読者に、ルビスって子の第一の身体的特徴を、とっとと飲み
込んでもらいたかったのです。それも、さりげなく。
----------------------------------------------------------------------

 伝えたいことをいうために描写がある――それが、感激した内容です。

 人物描写もそうじゃないかな。
 いっぺんに何もかもわかってもらおうとする必要はないのです。
 つまりその場面ごとに少しずつ人物を描写していく。伝えたいデータを読者
に与えていく。
           ┌───────────┐
 プロットを作るときに│ここではこれを伝えたい│というのを決めておくで
しょう。       └───────────┘
 それとの兼ね合いなんです。人物もそのプロットの中で生きているものだか
ら。


 シーンは、作者の頭の中に細部まで思い描かれている必要があります。
 その上で、読者に伝えるべき大切なデータだけは箇条書きにでもしておく。
 小説を書くってのは、意識してそういうことをしておかなければならないん
ですね。


 もうひとつ、同じ作者の「これがトドメの新人賞の穫り方おしえます」から
引用します。
「第二の冒険」で、描写を問題にしている部分です。
----------------------------------------------------------------------
┌────────────────────────────────┐
│ 新しい浴衣を着せてもらった愛子は嬉しくってはしゃいでしまったが│
│、そんな愛子を、父はこんなに大きくなりやがってと眩しくながめずに│
│いられなかった。                        │
└────────────────────────────────┘
 という文章を、説明臭く、回りくどく、臨場感も感動もない、読んでて、ち
っとも面白くないではないか、と言い、こう書き直せ、と指摘しています。
┌────────────────────────────────┐
│ 愛子は浴衣を着せてもらつた。愛子はとても嬉しそうだ。はしやぐ愛│
│子を見ていると、父は胸がいっぱいになる。            │
└────────────────────────────────┘
  わかりやすいでしょ? ここまでシンプルに分解すると、逆に、おもいき
って飾りをつけ、化粧をほどこすことができる――と言って、
┌────────────────────────────────┐
│ 鎌倉の小母がきて、愛子に、新しい浴衣を着せてくれた。青い水草の│
│間を、真っ赤な金魚が楽しそうに泳いでいる柄だ。「見て、見ておとう│
│さん!」愛子はひらひらと袖をなぴかせながら、縁側を何度もいったり│
│来たりした。ふっくら結んだ絞りの帯が、それこそ金魚の尾のようだ。│
│「愛ちやん、かわいい?」「ああ」信吉は短く、うなずいた。「似合う│
│よ」それ以上何か口にすれば、涙声になってしまいそうだった。……こ│
│んなに大きくなりやがって。                   │
└────────────────────────────────┘
----------------------------------------------------------------------

 引用したのは書くことがないからではないですよ。(^o^)
 まったく、描写の原型がこれだ、とおもうからです。

┌────────────────────────┐
│キャラクターの見せ方は、会話と行動によって出す。│
│地の文で説明したりしない。           │
└────────────────────────┘
 これが鉄則です。

 人物描写は、外見を描くより、行動です。また、特徴ある癖や態度なんです。
それが基本でそれでわからせる。もちろん服装や表情、声なども大事なんです
が……

 顔の描写――表情を描くというのは、小説では難しいんです。ほとんど正確
に表すことができません。
 たとえば、本を読んでその登場人物の顔を絵に描くことはできますか?
 作者が伝えようとする映像が、そのまま読者にストレートに伝わることはな
いんです。

 風景にしてもそうなのです。
 作者が思い描いた風景がそのまま読者に伝わるとは限りません。

 言葉はすべての人に同じイメージを喚起するとは限りません。それぞれの人
がその個々の言葉に対して想起するのは、微妙に違う個人的なイメージです。
 それが正確に伝えられない理由です。

 ですから、詳しく正確に描くことより、どれだけ読者のイメージを引き出す
ように描けるかなんです。

 つまり細部にこだわって詳しく正確に描いたからといって伝わらないのです。
 人物描写に関していえば「読者がこちらの思うとおりの人物を思い描けるよ
うに」データを与えていく――そういう方法しかありません。

 描写って、読者の想像力を作者が支援していくということなのです。

----------------------------------------------------------------------

 小説の要素は、描写と説明と会話です。これで、いちおう描写のほうは終わ
ります。

 次号は「説明について」です。
 説明についてはどの小説作法の本も、あまりページをさいていません。言わ
ずもがな、ということなんでしょうか?
 でも、なんとか書けたらな、とおもっています。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ■編集雑記■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 寒いです。
 今日、数えてみたら55号が最終号になりそうです。順調に発行できれば、22
日に終わるんだけれど、7日から福島、仙台に行って仕事。ノートパソコンを
買ったから出先でも発行はできそうです。
 でも書きたいことが増えれば少し年末にずれ込むでしょうか……
 風邪を引かないようにしてください。日曜日はもっと寒くなるらしいから。

……………………………………………………………………………………………
  ☆ミ         ★☆彡     ☆ミ       
            ☆ミ                           ☆ミ
    SAO  ヾ(^^ )
   今年のテーマは「いつも上機嫌で元気にやろう!」
  E-mail: YHY11050@nifty.ne.jp
  --------------------------------------------------------------------

  ■このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用し
  て発行しています。  ( http://www.mag2.com/ )まぐまぐID:0000034024
 ■Macky!メールマガジン立ち読みスタンド から発行しています。
    ☆登録・解除・アドレス変更はこちらです。 http://macky.nifty.com/
 
  ■バックナンバーはここです。
  http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Himawari/2181/backnumber.htm
  ■登録・解除・アドレス変更もこちらのホームページでどうぞ。
    http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Himawari/2181/
 「ちょっと、聞いてよ、ね」伝言板はここです。また書き込みを。
======================================================================


バックナンバーのページに戻る
 00年12月6日                      〈毎週水・土曜日発行〉
─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─
          ☆小説の作り方!50号★彡 
─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─
:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:
 もしもあなたの生活がつまらないものに思えても、自分が書けないのをその
せいにしてはなりません。そうではなくて自分を責めるのです。自分はまだそ
こから豊かなものを感じられるほどの詩人ではないのだと。というのも、創造
者にとっては貧困というものも、つまらない場所もないからです。
                     レイナー・マリア・リルケ
      「小説家・ライターになれる人、なれない人」(同文書院)から
:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:**:*:*:

 こんにちは。寒いですね。こんなときは電気ストーブじゃなく炬燵が恋しい
です。ぼくの部屋にはないので……

   ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
            ■「説明」を考える■         
    ────────────────────────────
       目次 ・話者が「説明」するのだ
          ・「説明、要約」と「シーン」の違い        
          ・描写せよ
          ・説明と感じさせないために
   ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

           話者が「説明」する
          ----------------------

 まず始めにおさらいをしましょう。(#^.^#) 
 ぼくらは小説を書きます。この小説は作者が語っているのでしょうか? い
え、違います。
 作者は構想を立てたり、プロットを作ったりするけれど、それで役目は終わ
りです。
 小説を語るのは話者(ナレーター)です。

 近代文学では、作者が話者となり語っていたこともありました。(作者=神
の視点)(41号を参照)でも現代は登場人物の視点に寄り添うのが普通です。
 
1) その小説の主人公が話者なら一人称小説になります。
2) 登場人物の誰かの視点によりそうなら、三人称小説になる。

 ところで、登場人物は事件に巻き込まれて、登場人物の視点で見える範囲で
しか事件について他人に話すことができません。
 それじゃあ、小説が客観的なリアリティあるものにならないですよね。
 ですから、
┌─────────────────────────────────┐
│三人称の話者は、ときどき登場人物の誰かの視点に寄り添うのを離れ、事│
│件や事物の説明をします。                     │
└─────────────────────────────────┘


 で、なにが言いたいかというと――
 ----------------------------------------------------------------
 話者は、登場人物と違い、物語の結末を知っている、ということです。
 ----------------------------------------------------------------
┌─────────────────────────────────┐
│だから読者に、物語の情報を与え、説明、要約をし、折にふれて事情を教│
│えることができる、ということ。                  │
└─────────────────────────────────┘
 そのようにすることで、読者にとっての謎を作り、読者の興味を引っ張り、
事件の推移を明らかにして、結末までもっていくのです。
 話者は超越した存在なのですね。




       「説明、要約」と「シーン」の違い。
       ----------------------------------
 前号の、
┌────────────────────────────────┐
│ 新しい浴衣を着せてもらった愛子は嬉しくってはしゃいでしまったが│
│、そんな愛子を、父はこんなに大きくなりやがってと眩しくながめずに│
│いられなかった。                        │
└────────────────────────────────┘
 これが何故、説明かというと、すでに話者が知っていることを要約して語っ
ているからです。
 それに対して、
┌────────────────────────────────┐
│ 愛子は浴衣を着せてもらつた。愛子はとても嬉しそうだ。はしやぐ愛│
│子を見ていると、父は胸がいっぱいになる。            │
└────────────────────────────────┘
は、シーン(場面)です。
 ここでは、話者は、一連の動きをたどり最後に父の気持ちを発見するという
過程を語ったのです。
 愛子の様子――それをきっかけとして――父の心理の発見。
 読者はそれがいかに起こったかを「提示された」のです。

 これで、説明と描写の違いがわかりますよね。

 説明とは話者が人物や事物を感覚で認めた後で、それについての判断や感想
をまとめたものです。
 描写は、話者が発見していく過程です。

 ですから描写は、話者が前もって判断を加えず、語ることによって、読者と
共にその本質を知っていく読者との共同作業だといえるのです。
 説明より描写のほうが、読者と手をたずさえていっしょに物事の解明に向か
います。
 これのほうが読者の共感を求める度合いが増すのがおわかりでしょう。
 そしてうまくいけば読者の共感を引き出すことができます。


1) 描写は具体的で、空間的。
   説明はこれに対して時間的。
 
2) 具体的に語られた説明は、ほとんど描写と変わらないほど似ています。
   それで説明か描写かわかりにくいほどです。
   でも「最小の説明!最大の描写!」がいいのはおわかりでしょう。誰で
   も話者が一方的にわかっていることを説明されて、「おもしろいと思え」
   と要求されるよりは、いっしょに考えていくほうが楽しいですから。



           描写、描写を!
          -----------------

 説明ばかり多い小説は退屈してしまいます。ちょうど粗筋を読まされている
ような感じで。
 小説には、描写を読む快楽というのがあるんだとおもいます。


「駒田信二の小説教室」文藝春秋社(野島千恵子)のなかに、説明的でイメー
ジが全然浮かばない文章として、次の文章があげられています。
┌─────────────────────────────────┐
│正子の思春期は、父の破産状態と、母の病弱の日々の中にあった。父の工│
│場は戦災によって焼失し、財産の目ぼしいものはほとんど灰燼に帰してい│
│た。戦後の立ち直りも、腹心の寝返りにあって破産への道がはやまった。│
│母は正子がものごころついた頃から常に胃弱の病身でありながら、気丈な│
│人であった。お人よしでもあった。                 │
└─────────────────────────────────┘
 まさかこんな文章を書く人はいないでしょうが、この文章の「破産状態」
「母の病弱の日々」「財産の目ぼしいもの」「腹心の寝返り」などの言葉を概
念的でイメージが湧かないと指摘しています。
 そのとおりです。
 作者自身はわかっているのですが、読者にその内容を伝える努力をしないで
書き流しているのです。

「母は――胃弱の病身でありながら、気丈な人であった。お人よしでもあった」
 と常套句を使っているのも、なんのイメージも湧かないと言っています。


 そして、文章を作るときに注意しなければならないものに、観念的な言葉と
いうものがあります。
「人々は熱狂的な声をあげた。だが、女優は軽蔑したような目で周りを見渡す
ばかりだった」
 これだって何も具体的なイメージを伝えていませんよね。
 つい地の文で使ってしまいそうになる説明的な表現です。

1)概念的な言葉
2)常套句
3)観念的な言葉
 は具体的なものに置き換えなければならないのです。

 どうすればいいんでしょう。
      ┌─────┐ ┌─────┐
 ものには、│固有の場所│と│固有の名前│が必ずあります。
      └─────┘ └─────┘
 ですから、それを常に意識しておけば、けっして抽象的な表現に陥ることは
ないでしょう。




     説明を説明と感じさせないどういう技術があるのか       
    --------------------------------------------------

┌─────────────────────────────────┐
│地の文で形容詞を使うときはその具体的な内容をイメージして置き換える│
└─────────────────────────────────┘
 形容詞――きれい、寂しい、嬉しい、危ない、ありがたい、苦しい、騒々し
い、楽しい……「い」で終わる言葉です。
 なるべく形容詞は使わないようにしたいものです。
 具体的で臨場感のある描写に置き換えた方が、読者に共感を感じさせること
ができます。

┌──────────┐
│センテンスを短くする│
└──────────┘
 ややこしい「地の部分」(説明的部分)はセンテンスを短くし、段落をたく
さん作って区切る。
 短いと確かに読みやすいです。
 それに複雑なものも簡単に見えるんです。

┌────────────────┐
│ややこしい説明は会話の中でさせる│
└────────────────┘
 読者にとって、あまり複雑になりそうな説明は「会話の中」でさせる。
 読者には初めてで理解しがたいものも、人物同士の会話ならすんなりと受け
入れられます。
 会話だとややこしい話でも、人物を想像する楽しみがあるので読者は読むも
のなのです。

 その会話は登場人物の心理、個性から発言されているものでなければならな
いのはもちろんです。個々の会話は自立していなければならない。登場人物の
生活、生き方から出てくる言葉による会話で、結果的に説明がされているとい
うことです。

 いい例を選んだかどうかどうかわかりませんが、「魔法飛行」加納朋子(創
元社推理文庫)から引用させていただきます。
----------------------------------------------------------------------
「ねえねえ」何やらおとなしく考え込んでいた愛ちゃんが、ふいに言いだした。
「どうしてコーンパイプがそんなに怖いの?」
 マッカーサーじやないってば。いったい何を聞いていたのだ、この子は。さ
すがのふみさんも、これには苦笑した。
「コーンパイプじゃなくって、ターンバイク。箱根に、ひたすら急な坂道とカ
ーブの連続っていう場所があるのよ。まあ愛ちゃんは車の運転しないから、ぴ
んとこないかもしれないけど、そういう場所に行くと、人間心理としてはブレ
ーキを踏みまくって、スピードを落としたくなるのよね。だけどフット・ブレ
ーキって、使い過ぎるとさっき駒ちゃんが言った……」
「フェード現象」
 すかさずクチバシをはさみ、じろりとふみさんににらまれた。
「……ていうのが起こって、ブレーキがまるで効かなくなっちゃうわけ。これ
は恐怖よ、実際」
「だからそれを防ぐにはね、フット・ブレーキの多用を避けて、むしろブレー
キやアクセルのペダルを全部離しちゃえばいいのよ。そうするとスピードは自
然に落ちてきます。これはフット・ブレーキに対してエンジン・ブレーキと呼
ばれています」
「教本の丸暗記も、そこまでいくと、いっそあっぱれだわ」
 感心したとも呆れたともつかない口調でふみさんが言う。
「う−ん、だけど、やっぱり促成栽培方式の記憶って駄目ね」
「実技面に応用がきかない?」
----------------------------------------------------------------------

┌─────────┐
│全体から細部へ進む│
└─────────┘
 物事を説明するときの手順です。
 人間は、全体を総括的、概括的に捉えるので、印象を述べるときにその方法
がいちばんやりやすい。
 でも、それにリアリティを与える意味でも細部を描いておくのが大事です。

┌─────────────────────────────┐
│粗筋やプロットを考えるときに、常に具体的な内容を作っておく│
└─────────────────────────────┘
 説明的な文章に陥らない方法はやはりこれでしょうね。
 プロットを考えるときに、具体的なシーンをイメージしておく。それを描写
していけば粗筋のような説明的な文章を書かずに済みます。

----------------------------------------------------------------------
 今回はここまでです。
 ぼくは思うんですが、作家は手品師なんだ。
 伏線や謎を提示しながら、手品のネタのように隠しながら、手を変え品を変
えて、読者を引っ張っていく。仕掛けていく者です。
 それで読者が楽しんでくれるように――

 では、次回は「会話について」書きます。また。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ■編集雑記■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 前号で「あと、5回ぐらいで終わります」と言ったので、メールをいただい
たりします。ありがとう。ヽ(^o^)ノ 
 でも、終わるのは「小説の作り方!(小説作法編)」です。
 来年から「小説の作り方!(文体編)」をやりますから。まだまだ続けます
よ。よければ続けて購読をお願いします。m(_ _)m

 今日はほんとうに寒くって、ウィスキーを飲んでいたら頭がぼんやりしちゃ
った。これではいかん!とお風呂に行ってきてサウナに。すっきりしました。
……………………………………………………………………………………………
  ☆ミ         ★☆彡     ☆ミ       
            ☆ミ                           ☆ミ
    SAO  ヾ(^^ )
   今年のテーマは「いつも上機嫌で元気にやろう!」
  E-mail: YHY11050@nifty.ne.jp
  --------------------------------------------------------------------

  ■このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用し
  て発行しています。  ( http://www.mag2.com/ )まぐまぐID:0000034024
 ■Macky!メールマガジン立ち読みスタンド から発行しています。
    ☆登録・解除・アドレス変更はこちらです。 http://macky.nifty.com/
 
  ■バックナンバーはここです。
  http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Himawari/2181/backnumber.htm
  ■登録・解除・アドレス変更もこちらのホームページでどうぞ。
    http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Himawari/2181/
 「ちょっと、聞いてよ、ね」伝言板はここです。また書き込みを。
======================================================================


バックナンバーのページに戻る