6号           00年5月24日            〈毎週水・土曜日発行〉
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                    ☆小説の作り方! ☆
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どうしても前に書き進むことができないところがあります。
そこには「知られたら恥ずかしいこと」があるのです。
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/         ディビッド・ホワイト
        「小説家・ライターになれる人、なれない人」同文書院から
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 こんにちは。6号をお送りします。今日大阪は快晴でした。
 今回のテーマは「リアリティのある作品を書こう」です。
 さて……この4回は自分なりに小説ってものの定義付けをやってきました。
こんなこと、しんどいし、聞いてるほうも退屈だろうなあとおもう。もう今回
で終わり。具体的なことを喋っているほうが楽しいだろうとおもう。ご意見と
かあったら掲示板にお願いします。アドレス、いらなくしたから。(^O^)
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   ■リアリティのある描写のしかた
  ---------------------------------
 小説とは何か、作者にとって小説を書くということは何か、イメージとは何
か、と基本的なものの定義をしてきました。それらは書くという具体的な話の
前に必要だったのです。小説の作り方を語る前に、これらの認識で一致してお
きたかったものですから、そうすれば話が早いかなとおもって。この項ではリ
アリティとは何かを考えます。
 
 小説の書き方はすごく簡単に言えるとおもう。
 作者が作った物語世界で主人公を事件に遭遇させ、それを乗り越えるのを描
写する、読者はそれを共感を持って支持するか批判的に読むか――そうです、
すごく単純なことなんです!
 図を描けば、作者――主人公――読者。
 作者が描く主人公に読者が共感しておもしろく読んでもらうためには、小説
の技術が必要だっていうだけのことです。小説を作るという本質はすごく単純
なんだとおもうんです。そしてそれって簡単で難しいことです。
 偉そうにこれはこうすりゃいいんじゃないかなんて言ってるけど、言うのは
簡単でやるのは難しいことです。

 さて、リアリティのある作品を書くためにはどうしたらいいか? 
 それは描写のしかたを述べたら足りると思う。

1 5W1Hがはっきりわかるように描く。
  いつ、どこで、誰が、何を、なんのために、どうしたのか。
2 映像的に描く。読者の目の前で人物が動いているような描写。
  生き生きと具体的に描写すること。
3 心理が読者にわかるように書く。
  今の心理はどうなのか、次に何をしたいと思っているのか。
4 比喩などの表現方法を加える。象徴的なイメージを作る。
5 五感を総動員する。音、光、匂い、痛覚、手触り、時間の感覚。
6 描かれているのはひとりでも、人間はひとりでは生きていけないので描写
の裏側にいる登場人物たちを意識しておく。
7 見えないものは描かない。

 これでいいと思うんです。これで充分リアリティはでるはずです。

 ですが、ここでもう一歩踏み込んで、リアリティとは何か、という話をさせ
てもらいます。現実をなぞるだけではリアリティはでない、ということについ
てなのです。テーマであるリアリティとは何かをぼくなりに考えたいのです。
  -----------------------
   ■リアリティとは何か
  ------------------------
 まず、まず……それを問題にする前に……

 3号で「主人公が何らかの事件に巻き込まれていく。問題を解決しようとし
ても、すごく難しい。あるいは主人公の力を越えている。彼、あるいは彼女は
悩む。どうすればいいのか……
 人間的であろうとするほど苦悩は深くなる。どこかに進むべき道――正しく
ゆけば解決の方法はあるはずだ――
 まわりには味方になってくれる人も敵になる者もいる。
 誤解もある。主人公は傷つき迷う。
 しかし、最後には彼、あるいは彼女は人間的な道を進もうと決心する。困難
に立ち向かう」と書きました。
 それがプロットの原則でもあるし小説の目的だと。
「読者が感動するのは困難に立ち向かう主人公の姿にです。『人間的で
あろうとするほど苦悩は深くなる』主人公の生き様です」と言いました。
 で、こんなふうに言うとすごく杓子定規でお説教がましくてつまんない。
 
 こういうふうに「困難」って言葉を使うと、すごい事件や解決しがたい問題
を持ってこないといけない、そう想像されるんじゃないですか。そういう言葉
は改まったときしか使わないし、そうじゃないんだってことを言いたい。
 ぼくが困難と言ったのは、困難――葛藤――対立――最後に立ち上がる(な
んと人間的な行為)の図式を述べたかったからなのです。

 ちょっとぼくの書き方はファナティックすぎました。人間を書け、人間を書
こうと声高に言い過ぎ? です。けれどこの構図そのものは正しいと信じてい
ます。

 ぼくの「人間を書け」というのは、ファナティックな人間を書けという意味
ではないんです。普通の人間です。
 明るい、楽しい、常識的で健康な人間を書くことでもいいんです。大事件に
巻き込まれ、超人的に活躍する人間を書け、なんて望んでない。そりゃ、そう
いうドラマチックなのを書けると作家冥利に尽きるでしょうけれど。
 常識的に生活しているように見えて、充分理性的で健康そうに見える人にも
悩みはある。そういう表面からは伺いしれない、裏の事情というのを、みんな
持っているということ。その表面からは見えない裏の事情、それが、困難に直
面しているということなのだと――そういうふうなことを言いたかったのです。

 日常性の背後にある困難を背負いながら人間は生活している。そういう視線
で物事を見たときに、リアリティというのはそういうところから生まれてくる
というのがわかるとおもうんです。
        
 身近な例をあげたほうがわかりやすいとおもう。たとえば片思いの恋ですね。
 これだってすごい困難なんです。個人的な、誰にも振り向かれないようなこ
とですが、すごく人間的なことですよね。これに陥ると誰でもせつない。
 誰だって愛されたい。好きな人に愛されたらどんなにいいだろうとおもう。
 それがうまくことだってある。苦しい。ここに、人と人とが生きるうえでど
うしようもない希望通りにはならないという、人間的な困難があるのです。

 その恋を、この先どうなるのかという読者の興味をひきながら、共感を得ら
れるように描くということは充分に小説になるのです。人と人との関係を描く
というのは重要な小説のモチーフなんです。それはリアリティというものをも
っているからだとおもうんです。

 たんに事件を描いただけのものにはリアリティはない――はずです。
 たしかに大きな事件を描けばドラマチックなものができるだろう、と考えて
しまいます。
 でも違うんです。設定がいくらドラマチックなものでも、そこに人間性が描
かれなければドラマとはいえない。そういう日常性の背後にある困難に深く関
わらない薄っぺらな人間性しか持たない登場人物がいくら活躍したからといっ
てドラマとはいえないとおもうんです。事件を描くだけではだめなんです。

 人間のドラマに読者も参加してもらう、読者に共感してもらうということが
小説の目的なんです。そして読者に共感を持って受け入れられるものが小説の
リアリティというものじゃないかとおもうんです。
 リアリティというのは読者の共感で支えられる――そう言いたいのです。
   -----------------------------------------
   ■リアリティとは現実をなぞることではない
   -----------------------------------------
(小難しいことばかり言ってだんだん頭が痛くなってきました? もうちょっ
と聞いてくださいね)

 リアリティとはたんにぼくらが生活している現実を文字で再現することでは
ない、ということです。
 小説世界におけるリアリティとは、物語の内容を現実に近づけることではな
くて、読者がその物語の人物・世界・ドラマをどれだけ身近に感じるかどうか
ということにあるのです。それは作者の側からいえば読者に小説世界との一体
感を感じさせるということなんです。そうすることで読者は現実の奥に潜む真
実を発見することになるんです。それが読者が小説に感動するということなん
だとおもうのです。 
 ここで「作家養成講座」(KKベストセラーズ)から、若桜木虔さんの言葉
を引用します。
『それでは、共感を覚える主人公とは、どんな人物を指すのか。
 まず、リアリティを感じさせる人物ということが、最大のポイントである。
しかし、「私もこの主人公と同じ目に遭った」などといった共感部分のリアリ
ティを小説の中で出しなさい、と言っているのではない。
 このような「現実にある」というリアリティと、「小説の世界に通用する」
リアリティとは別物である。小説では、読者に「体験してみたい」と思えるよ
うな虚構リアリティが求められているわけで、決して平凡な主婦の生活を丸ご
と写実したり、ごく普通の主婦に覗き見的な行動をさせることを意味してはい
ない。
 そんな世界を描いても、退屈なだけである。
 掃除、洗濯、家事、育児に明け暮れている日常を再現してみて「これこそが
リアリティだ」と小説にしても、面白みはない。
 極端な例では、「私は一時と五時と八時にトイレに行き、用を足しました」
という事実を、現実に人間は排泄行為を欠かせないから、といって事細かに書
き記すのと同じ次元の低さである。
 ところがプロ志向の新人たちの習作を読んでみると、「現実にあるリアリテ
ィ」に引きずられる人がものすごく多いのが実情である』
 これはほんとうに考えさせられるアドバイスです。

 リアリティのある作品を書くには、自分の一番書きたいものを考えて、それ
をどう書けば読んだ人に伝わるかlえることが必要だとおもいます。
「書きたい場面」「書きたい人」「書きたい光景」「書きたいせりふ」をはっ
きり見定めて曹揩lえて書くこ
とが必要です。

 それに、もう一つぼくのほうからアドバイスを。(生意気ですが)
 自分で設定したストーリーのなかで無理に登場人物を動かしたらだめという
ことです。そんなことよりo場人物に聞く、という方法をとったらというこ
とです。
「あなたはどういう人なのか?」
「どんな過去を背負っているのか?」
「何をいま考えているのか?」
「何を悩んでいるのか?」
「誰が好きでどうしたいのか?」
 たぶん、作者より登場人物のほうが自分のことをよく知っているはずです。
そうしてその人物と友達になれたら――このメルマガの最初の部分に戻ってく
ださい。これはぼくが提案したものですが、あなたならリアリティをもった描
写をするのにどうするか考えてください。そしてあなたなりの具体的な方法、
技術を見いだしてください。

----------------------------------------------------------------------
 この6号まで小説を書く前提の定義をこしらえてきました。これで定義は終
わりです。抽象的なことになりやすく退屈だったでしょう。お疲れさまでした。
 次号からは書くという具体的な実践のほうに一歩ずつ踏み込んでいきます。
 27日の7号のテーマは「小説には謎が必要」です。では、また。

◆◆まとめ◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
リアリティは読者の共感で支えられている。リアリティとは読者の共感を得ら
れたもの、とみることができます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ■編集雑記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆最近、関西は雨が多いです。22日は読書会の友人と会いました。詩誌も知人
から送ってもらっている。読まなくちゃ。でも、ついいいかげんになるんだな。
☆読者の数、多くなりました。今現在、1326人。ありがとうございます。でも
責任を感じます。プレッシャーにならないようにしたいです。
これまで読み返してみると堅い書き方だなあとおもう。もっと気軽に書けない
ものか。楽に楽にと心がけてるけど理論を知ることが好きだった昔の影響が残
ってる。こんなんじゃ魅力がない。もっと人を楽しませなきゃ。そういう優し
さがぼくにはないのかな。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
★再び、しつこいようだけど宣伝。明後日、ジャズヴォーカリスト、佐野智英
子さんが歌います。ジャズに興味があって好きな人、近くにお住まいのかた。
(関西・大阪府)聴きに来てくれたらうれしいです。昔、って若いころだけど
ジャズ喫茶に入り浸ったこともあります。もう、はるか昔。今はどう変わって
いるのだろうか? 若いヴォーカリストが人気を得ているってNHKでやって
いたけれど。▼ぼくも聴きにいきます。
26日(金)PM8〜から近鉄河内永和駅下車→東大阪税務署隣の→「Swing Sing」
チャージ1300円オーダー500円〜。
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す。そして名前も匿名でかまわないことにします。けれどあまりにひどいいた
ずらや公序良俗に反するものは削除しますから……そういうことでいけるとお
もっています。いままで後込みしていた人も利用してくれたらうれしいです。
小説についての想い、読んだ本の感想、悩んでいること、おれはこうやってる
ぜという方法について、みんなに発信したいこと、何でもかまいません。友達
ができるかもしれません。井戸端会議の雰囲気でやりましょう。
最近いじめについてぼくが過激な発言をしたからあきれちゃってみんな来てく
れなくなったみたい。さびしい……悪気はなかったんだけど性格が悪い(-_- 

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7号           00年5月27日            〈毎週水・土曜日発行〉
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                ☆小説の作り方! ☆
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ライターの役割は、他の人が言えることを言うことではなくて、言えないこと
を言うことなのです。                  アナイス・ニン
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 
        「小説家・ライターになれる人、なれない人」同文書院から
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こんにちは。7号をお送りします。
今回のテーマは「小説には謎が必要」です。
謎というと広辞苑では、
1 なぞなぞ。〈運歩色葉〉
2 遠回しにそれとさとらせるように言いかけること。
3 正体がはっきりしないこと。不思議・不可解なこと。
 という意味があるそうなんですが、ぼくが使った「謎」の意味がそれらに近
いようで離れているようで……ちょっと失敗したかな、とおもう。とにかく書
いているうちにわかってくるだろうと自分に言い聞かせ、始めます。
-----------------------------------------------------------------------
    ■小説を動かす力「なぜ」
    ------------------------
 小説を読んでいて「なぜなんだろう」とおもうことは多くないですか?
「うーん」とか「ふうん」とおもわず呟いてしまうこと。ぼくはたびたびあり
ます。読んでいるそういう部分って後から考えるとテーマとかに関係あるとお
もえるところなんですよ。
 小説に謎が必要だとおもったのは読者であるぼくの感想からなんです。
    ------------------------------------------------
    ■小説を面白いと思って読む場合、途中でやめる場合
    ------------------------------------------------
 小説を続けて読みたいという気持ちを調べてみると、これからどうなるんだ
ろうという興味であることがわかります。これから主人公はどう行動するのだ
ろう、事件はどうなるのか、はらはらどきどきですね。こういうことに読者の
興味をつなぎとめておくことができれば読者は読み続ける――
 これからどうなるんだろうっていうことは、相手の正体がはっきりしないこ
とからきている。うまく全体が掴めてないというか、その正体がわからん。そ
れは最初に言った広辞苑での3番目ですよね。
 つまり、そうなると読み続ける魅力というのは謎がもってる力ということじ
ゃないかとおもうんです。
 読者は常に「なぜ?」「どうして?」と小説と対話しながら読んでいるとお
もうんです。ここはなぜこうなんだろう? この人物はなぜこう行動するんだ
ろう? なぜ、この展開はこうなるんだろう? という「?」をつねに持ちな
がら本を読んでいるとおもうんです。
 そしてこのなぜだろうが、もっと正体をみたい、確かめたいということなら
ば読者の興味をひいてその小説世界から読者を離さないとおもうんです。

 じゃあ、読者が本を読みたくなくなる場合、興味が持続できなくなる場合は
どうか。ここにぼくがおもう原因をあげてみます。
1 事件そのものが起こらないか、些細な事件でつまらない。
2 あまりにも常識的なことだけが書かれていて新鮮さがない。
3 主人公に魅力がない。主人公が単純で間違った行動をする。愚かである。
4 悪を肯定している。または非人間的なものを賛美している。またはひねく
れた主人公である。
5 読んでみたら興味をひくテーマではなかった。
6 読んでみたら興味があるジャンルではなかった。
7 どうも表現がつっかかる。好みの表現でない。
 以上、事件、主人公、テーマ、ジャンル、表現とあげました。
 あなたもあげてみてください。それが小説を書くときのチェックリストにな
るでしょうから。
 
 1、2は小説としての完成度からは論外です。人間的なドラマがないんです
から。
 3は主人公のキャラクターの作り方を間違ったときに起こります。または作
者が無理に主人公を操り人形のように動かそうとしているとき。 
 4のような主人公とはつきあいたくないですよね。それは現実のこの社会で
も同じです。小説っていうのはバーチャルリアリティだから目の前にそんな人
間がいたら、小説の世界でもいやだとおもってしまうんです。
 5は帯やもうすでに読んだひとの言葉につられて読み始めたものの読者の興
味のある方向ではなかったという場合です。
 6は読者がミステリーだと思って読み始めたものがミステリーの雰囲気を持
った純文学であったというようなときです。この場合は読み続けるひともいる
でしょう。
 7はお互い様です。読者のほうの決めつけでそういう表現のしかたが嫌いな
のかもしれないし、作者があまりにも読者をないがしろにして自分の表現に走
っているのかもしれません。

 ようするにぼくらが小説を書く場合、これと反対であれば読者は興味を持っ
て読んでくれるわけです。ですから読者を意識してどう書いていくか、という
のは非常に大切なことになります。
 読者を大切にしてどうやって興味を持続したままでいてもらうかというのは
12号の「読者を意識する」という項でやりたいとおもいます。ここでは「なぜ」
が小説を動かしているんだということについて話したいとおもいます。
   ------------------------
   ■普通の小説にも謎はある
   ------------------------
 ここで「小説家になる!」(メタローグ)から中条省平さんの言葉を引用し
ます。
「どんな小説もミステリになりうるというか、ある謎が提起されて、それがど
う解明されてゆくのかが、小説のいちばん重要な力の一つなんです。小説には、
淡々と主人公の行動や出来事を記述していくやり方もあるけれども、謎の力が
あったほうがいい。どうやって、なぜ人が殺されたかという謎じゃなくていい
んですよ。主人公の正体は何か、主人公の過去に何があって、なぜこういう行
動を起こしているのか、なぜ主人公はこんな事件に巻き込まれたのかといった
謎を、小説の根本原理にすることができると思います。もちろんそんなことと
はまったく関係ない小説もありうるわけで、まったく関係ない例でいえば、が
フカの『変身』ですね。なぜ虫になったのかは一切問わない。そのかわり、虫
になるとどういう不都合が現れてくるかということだけを徹底して書くわけで
す。これはミステリと逆の方法で、冒険小説のやり方です。もちろん普通の小
説の場合はこの両者がうまく混ざりあって、何が起こったのかという面と、こ
れから何が起こるのかという両面から読者の興味を刺激しているわけです」
                            
 謎といえばジャンルでいうとミステリーです。
 ミステリーは謎解きの物語であるというのが、書く前提になっています。
 ミステリーの場合は犯人を捜すわけだけれど、謎は普通の小説にも必要なん
ですね。

 ぼくは謎のあり方は事件の大きさに関係がないとおもうんです。これは恋愛
小説とミステリーの場合ですが、小説として考えれば、恋愛の謎も殺人も謎と
しては同じであるとおもうんです。

 たとえばぼくは今、図書館から借りてきた重松清の小説「日曜日の夕刊」と
いう短編集を読んでいます。これは第一話が、きれい好きで物事をきっちりと
しないと気がすまない男の人と、何でも散らかしっぱなしにする、整理がぜん
ぜんできない女の人の話です。タイトルは「チマ男とガサ子」といいます。
 粗筋を言えば――
 チマ男は今、29歳。去年そのチマチマした性格のために7回目の失恋をした。
最初は女の子たちは「きちょうめん」「きれい好き」と感心してくれる。とこ
ろが結婚を考えるほどつきあいが深まるころ、きまって「あんたなんかチマ男
じゃないの」と言って去ってしまう。チマ男にはわからない。それならおまえ
たちはガサ子じゃないか、というのが彼の言い分。
 あるとき合コンでチマ男はヒロインのガサ子と出会うことになる。
 そして親しくなっていく。結婚という言葉が胸にちらつきだしたころ、チマ
男は迷っている。ガサ子の性格は治らない。ただ失敗しても立ち直りが早くて
おおらかなところがいい。でもやはりだめだろうなあ。結婚するか別れるか、
どちらかに決めかねている……
 そしてドライブに出かけることになる。これはやはりガサ子の遅刻で(じつ
はこれはおにぎりを夜中に作っていたからだが)散々な結果に終わる。
 今度はガサ子がレストランで食事をすることを計画する。それは予約の取り
違いで失敗に終わる。
 ガサ子はチマ男の重荷になっているのを恥じて別れようとチマ男に鍵を返す。
だがそれは自分の部屋の鍵だった。相変わらずだ――それでも気になったチマ
男はガサ子の部屋に向かう。待っているあいだにその性格故に乱雑な部屋の掃
除をしてしまう。そこへ帰ってきたガサ子は――ここがおもしろいのですが―
―ガサ子の言い出したことは花見をしようということだった。夜中の雨で花び
らを落とした近所の公園の桜。それを見ているうちにチマ男は初めて女の子に
結婚の申し込みをする……
 そういうお話です。ハートウォーミングな話。
 
 この小説の前面に流れるストーリーはチマ男とガサ子の話で、テーマは恋愛
だっていえるんですが、そこにも謎はちゃんとあるとおもいます。
 なぜチマ男はチマチマしているんだろうということ。ガサ子はなぜガサ子な
んだろうということ。
 人間の性格というかこうして成長するあいだに作られてきたものってしかた
ない。変えられないものなんだなっておもうし、じゃ、なぜ性格を変えた方が
いいのかって疑問も湧いてくる。
 それが小説を読み終わったら、こういう性格の違う二人が結婚することにな
ってよかったねとおもう。多少不安もあるけれど将来を祝福しようって気にも
なった。
 心に残るものがあるわけです。
 小説を読んでいるあいだに感じた疑問――謎はまだ解決されたといえないん
だけれど。クライマックスがあり、小説世界が終わると何かが見えてくる。わ
からないままなんだけれど、何か得ることができる。これって不思議でしょう。
そういうのが小説の謎だとおもうんです。
    ----------------------------
    ■謎はどういう役割を果たすか
    ----------------------------
 読者にとって小説を読む原動力になる「なぜなんだろう」「どうしてなんだ
ろう」っていう疑問は、作者にとっては読者の興味を引きつけておく伏線の役
目をしていることになります。
 クライマックスになるとそれまでの混乱がそこに統一され、カタルシスが訪
れることになります。そこに行くまで作者は読者に向かって謎を提供し読者の
興味を引きつけておかなければなりません。そうなんです、なぞなぞであり、
正体が見えないもどかしさ、それがテーマへの伏線になっています。
 これは言い替えたら「なぜ」と読者におもわせる謎があるから伏線が張れる
ともいえるんじゃないでしょうか。
 ミステリーでは、「誰が殺したのか?」という謎が最初にあります。でもそ
の深い地層では「なぜ殺されねばならなかったのか?」というもっと根本的な
問いかけがあるようにおもうのです。死体を作り、犯人当てをするだけではな
い。良質のミステリーではそういうことがあるようにおもいます。つまり、テ
ーマの深さというか。

 読者の側からいうと、どういう事件が起きるのかわからない。そういうこと
がサスペンスにつながる。正体が分からない、だけど何かが起こるんだという
雰囲気がある。事件が起こったら、それがどう解決されるのか――そういう興
味もある。
 作者は自分の伝えたいこと――テーマ――があるから事件を描くのです。で
すから作者が言いたいことはテーマなんですが、小説は論文と違ってそれだけ
じゃ読者は読んでくれない。何かが起こる、という興味で読者を引っ張ってい
かなければならない。また事件の過程で読者の「なぜ」という問いを予想して、
それに答えを与え続けながらクライマックスまで引っ張っていく。それが作者
の小説を書くときのテクニック、技術だといえます。じょじょに正体を明らか
にしながら、決して最後まで事件の全容は見えることがない。その事件の持っ
ている意味が明らかになるのは、すべてが終わって主人公がその意味に気づい
てからです。そしてその意味――それが作者の伝えたかったテーマです――を
理解することで深い人生の洞察に達した主人公は新しい生き方を選ぶことがで
きる。
 ここでまた失敗しそう。テーマっていうとすごい観念的で高尚なことを思い
浮かべそうな言葉だけれど、そうじゃないっていうことを言っておきます。具
体的なものなんです。たとえば「狂信的なファンは怖ろしい」――ミザリー、
ですね。「吸血鬼は生きていくのにたいへんだ」――これはあとで。

 作者は小さな謎、読者にとっては「なぜ?」という疑問を、小出しにして大
きな謎――テーマ――に行き着くまで読者をひっぱいっていかねばならない。
これは難しそうですが、だいじょうぶ。テーマについてよく考えられ構成され
た作品は自然にそういう流れになるんです。小さな「?」が伏線になって大き
な「?」に流れ込む。

 大きな事件を描くためには小さな出来事をいっぱい描かなくてはならない。
エピソードを積み重ねて行かなくてはならない。それが大きな事件の前触れに
なる。
 具体的な例をあげなくちゃわからないですよね。
 ぼくはそれがうまい小説家がスチィーヴン・キングだとおもう。彼の小説は
長編が多いけれどエピソードを積み上げじょじょにサスペンスを盛り上げてい
く腕は抜群だ。その長さを支えるディテールの描き方。彼はめちゃくちゃ書き
込む。描写が好きなんだ。本を読んで分析してみてください。
 このあいだ小野不由美の「屍鬼」を読んだんだけれどすごく感心した。一つ
の村の崩壊――いろいろ考えさせられた。現代という時代に忘れ去られ、置き
去りにされた何か。それを描いている。

 謎は小説をひっぱる力だとおもいます。謎を作るにはどうするか?それは構
成の問題に関わってくるとおもうんだけれど、簡単にいえばミステリーではど
ういう理由で死体を作るか、ということをまず考えます。
 では恋愛小説を書きたいのであれば、どうしたらすばらしい愛が完成するか、
を考えればいい。冒険小説ではどうしようもない危機からいかに脱出するか。
そういうふうに理想の形というのをまず考えて、発端を作る。それが事件にた
いする謎になるのです。このように考えることが小説の謎を作り出し、深めて
いく方法だとおもうのです。
 謎を作り出そうと考えることはもう小説のモチーフを見い出すという段階に
入っているといえます。このメールマガジンでは、もうすこし先のことになり
ます。モチーフを見いだし、プロット、構成を作る。いっしょに考えていきま
しょう。

-----------------------------------------------------------------------
 今回はいかがだったでしょうか?感想をお寄せいただければ幸せです。
 次回31日は「戯作者になろう」をお送りします。
 では、また。

◆◆まとめ◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
謎は小説を進める力です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ■編集雑記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○24日、25日と暑かった。初夏ですね。ぼんやりとしているからわからないけ
れど、九州では梅雨入りしてるとか。熱帯夜。
○本をひとりで読んでいるときのバックグラウンドミュージックは――ぼくは
ジャズだな。クラシックもいいけれど、だれるし。
○引き続き「リアリティとは何?」についてのご意見メールをいただいていま
す。またご紹介する機会もあるかもしれません。
○もうちょっとおちついて書かなきゃな――それが反省。
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ようにしています。もちろんアドレスをちゃんと打ち込んでくれることは大歓
迎です。そして名前も匿名でかまわないことにします。それでいままで気後れ
して発言しなかったひとが投稿してくれたらうれしい。ひどい非難や個人的中
傷は管理者のほうで削除できます。そういうことでいけるでしょう。
小説についての想い、読んだ本の感想、悩んでいること、おれはこうやってる
ぜということ、みんなに発信したいこと、何でもかまいません。友達ができる
かもしれません。井戸端会議の雰囲気でやりましょう。

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8号           00年5月31日            〈毎週水・土曜日発行〉
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
               ☆小説の作り方!8号 ☆
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もしも急に皆が賢い、成熟した人間になってしまったらどうだろう? もしそ
うなったらこの世には、「書いてみたい」「笑ってやりたい」「共感したい」
人は、一人としていなくなってしまうだろう
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/     スタンリー・B・スティーブン
        「小説家・ライターになれる人、なれない人」同文書院から
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 こんにちは。暑い日々が続いています。お変わりないでしょうか。
 8号をお送りします。今回のタイトルは「戯作者になろう」です。

 例によって、広辞苑を引いてみます。
げ‐さく【戯作】(ケサクとも) 
1 たわむれに詩文を作ること。また、その著作。
2 江戸中期以降、主に江戸に発達した俗文学、特に小説類。読本よみほん・
談義本・洒落本しやれぼん・滑稽本・黄表紙きびようし・合巻ごうかん・人情
本などの総称。
げさく‐ぼん【戯作本】
 戯作の本。江戸中期以降の通俗小説の類。
げさく‐しゃ【戯作者】
 戯作をする人。特に、江戸時代の俗文学作者。

 ふむ、ふむ。通俗ということですねえ。戯れに書く――いいじゃないですか。
 通俗ということは世間の人の興味に答えているということでしょう。独りで
誰も関心を持たないものを高踏的に書いているよりいいじゃないですか。
-----------------------------------------------------------------------
     ■戯作ということ
     ----------------
 じつは、ぼくがこの項目で喋ることはあまりないのです。言いたいことはこ
れからする引用を読んでいただければわかるとおもいます。この文章に感動し
て、どうしても紹介したっくてこの項目をこしらえたのです。
 引用する文章を読んでいただければ、それで言い尽くされている。それに付
け加えることはないもうないのです。

「小説の書き方」(講談社)から、伊藤桂一さんの言葉です。
 
『私は、小説家は戯作者なのだ、と思わなければいけない、と話した。自分を
読者より低い位置に置き、低い目線で作品を書き、だれに対しても「これは私
の下手な作品です。でも、ご期待に添うよう懸命に書きました。どうか読んで
ください」と申し出れば、相手の人は、いい気分で読んでくれる。そうして、
その作品が何らかの感動を与え得れば、相手の人は「驚いた、たいしたものだ」
と感心して、作者の名を覚えてくれる。つまり、頭を下げるのは、作者の作戦
なのである。
 作者は作品に、十分な自信を持っているから、姿勢を低く出られるのである。
しかし、内心では(読んで落胆させるようなものは書いていませんよ)と思っ
ている。たとえば、落語家を例にとっても、芸達者の人ほど、頭を低く、客を
だいじにして、自身を卑下しながら語る。しかし、語り終えれば、落語家の勝
ちになっている。落語家は落語家以外の人を「お素人衆」としか呼ばない。
 戯作者のつもりになれ、というのは、目線を低くしなければよい作品は書け
ない、作品さえよければ、いくらでも頭を下げられる。勝負はどっちみちこち
らの勝ちなのだ、という考え方。これが「されど小説」なのである。少くも、
選ばれた人間しか小説は書けないのだ、という認識と自信を作者自身が持たな
ければ、どうして力作が生まれよう。小説勉強でいちばん大切なことは、自分
で自分を鞭撻しつづけることだ、と、私は話した。人はだれも助けてはくれな
い。人は、あなたが挫折するのを待っているのだ、と。
 戯作――の意味を、別な立場で考えてみると、職人芸を磨け、ということで
ある。小説つくりも職人仕事なのだ、秀れた職人的技術、読みはじめたらやめ
られない、といった筋の運び方、たかが小説、なのだから、せめて、懸命に職
人技術を磨こう、ということである』                  

 ここで職人という言葉がでてきます。「小説つくりも職人仕事なのだ」とは
なんと魅力的な言葉でしょう。ぼくはこの言葉に触発されて、このメールマガ
ジンを始めたのでした。
 ぼくの考えはこうでした。小説をつくるということが職人仕事になぞらえら
れるなら、必ずその職人技といわれる技術があるはずだ。それを、どこまでで
きるかどうかわからないが自分なりに探求してみよう。
 小説は作られるものだ――それは大工さんが家を造るように作られる。大工
さんは木という材料を使うが、ぼくらは言葉を使う。小説は言葉の建築物。こ
う考えるといいのではないか。
 だから言葉で小説という建築物を造る技術を学びたい。真剣にそうおもった
のでした。

 それにこの文章から学べるものはまだあります。落語家を例にひいているこ
とです。小説家を落語家になぞらえている。それも新鮮でした。目から鱗が落
ちた気がしました。
 小説家のように、落語家もひとりで語るということ。
 これを逆に言えば、落語家のように小説を書き、語れということでしょう。
 読者をおもしろがらせろということでしょう。うけてもうけなくてもその責
任は自分にある。誰にも責任を転化することはできないということでしょう。
 話の内容は違っても、自分の語り口で聴いてくれる人をひっぱっていくとい
うのは似ています。
 舞台に上がれば自分のその語り口だけで、ひとに耳を傾けてもらわなくては
なりません。
 落語は古典的な芸だから形式は決まっています。そこが違うのですが……そ
の語り口が名人芸と呼ばれるか、前座でいることになるか――
 小説にはいろんなジャンルがあります。SF、探偵小説、冒険小説、ファン
タジー、伝奇小説、歴史小説、純文学、恋愛小説、青春小説……
 でも描かれるのはいつもひとつのことです。人間はそこでどう生きてるか。
 それは横町の熊さん八さんを主人公としてその世間を描きながら、武士もい
れば町人も殿様もいる落語の世界と似ているといえなくもない。
 そうです、人間が生きているということを描くことではひとつなのです。

 それに続いて出てくる文章は、「小説勉強でいちばん大切なことは、自分で
自分を鞭撻しつづけることだ、と、私は話した。人はだれも助けてはくれない。
人は、あなたが挫折するのを待っているのだ、と」という厳しい言葉です。
 ああ、ひとりなんだなあ、と感動的でした。そうだ、ひとりでやるしかない
んだ。
 自分が書くだろう作品は、自分しか生み出せない。だれも代わりに書いては
くれないのだ。それがどんなに稚拙なものであれ、自分が誰の力もかりずに生
み出したものだ。誇りを持っていい。
 そしてその作品を読んで誰かがよろこんでくれるなら、こんなうれしいこと
はない。
 ぼくはいつもこの言葉を忘れないようにしようとおもったのでした。
     -------------------------
     ■文学という言葉の悪影響
     -------------------------
 ぼくはあるとき、ゴミ置き場で本の束を見つけました。
 それはもう使い古した教科書を束にしたものだったのですが――たぶん中学
校の教科書だったのでしょう――それのなかに「新国語要覧」(大修館書店)
というのがあったので拾ってきました。

 ここに「近・現代文学の流れ」という目次があって、ぼくらが知っているほ
とんどの作家の名前が載っています。
 明治、大正、昭和と……文学史の流れとして小説も解説されています。
 文学として小説を捉える――それはある意味で正統なんですが……
 なんかこう、教科書に載っていると、居ずまいを正してその小説を読まなけ
ればならないようで嫌だな。
 この教科書では当然のことながら江戸川乱歩など出てきませんね。
 大衆文学は文学史のなかには入らない。
 何を言いたいかというと、こういうふうに小説そのものを「文学」として位
置づけて、それを学校で教えるから、楽しめなくなるんじゃないかということ
です。小説=高級なもの、になってしまっている。
 これは教え方が悪いんじゃないんですか。
 
 それにぼくらが、いざ、小説というものを作りたいな、っておもったとき、
その意識がじゃまになる。
 若いときに教え込まれたものは無意識に働いてなかなかそこから自由になれ
ない。エンターテイメントを書きたいとおもっても、それじゃだめなんじゃな
いかっておもうもとになっている。なにか高級なことをしなければならない、
って意識からまだ自由になれていない。これは国語の授業――教え方が悪いん
です。
 以前、通っていた小説講座ではみんなが力んでいたのだろうか、それとも小
説を書く←→文学をする、というふうに考えたのだろうか? 「この小説のテ
ーマは――」なんていうふうな考え方、問題の立て方をしていました。そして
「人間が描けてない」という痛烈な批評をもらうと自分の生き方が甘いんだと
自己嫌悪に陥ったものでした。
 いまはおもいます。誰もが文学者や芸術家になれるわけがないんだ。また、
どんなに人生への洞察力が鋭くてもそれが表現できるか、できないかは別の問
題だと。小説を書くことが=真実の人生を生きるというふうな堅苦しい考えは
捨てたいと。

 ぼくはこう考えています。テーマというのはもっと具体的なものなのだと。
 けっして具体性のない「生きることの不安」とか「社会からの疎外感」とか
いうような言い方で言い表せるものではないとおもう。
 具体的なもののなかにしかテーマはないのです。具体的に、人がこうである
とか、物事がこうである、ということのなかにしか。
 テーマという言葉に引きずられていたずらに疲れるようなら、むしろ大胆に
「テーマなんかいらない」と言いきってしまった方がすっきりする。この話を
伝えたい――ということだけでいい。

 日本には純文学の系譜があります。それが文学というひとつの権威を作って
きたとおもうのです。現代文学という名の難解なものもある。(でもぼくは笙
野頼子は好きです。話が楽しめるし、その難解なところもギャグだとおもえば)
 小説とは高踏的なものと考えている評論家もいるのです。いえ、ぼくもずっ
とその手の本を読んでいたから人を責めることはできないのですが……そうい
う高踏的なテーマを追求して読者より高見に立った純文学より、大衆の興味を
第一に考え、ときには過剰なサービス精神で自らの文学性を貶めることもある
エンターテイメントのほうがぼくは好きです。
 純文学もひとつのジャンルでしかないといまはおもっています。
 そういう「文学」という権威を検証も無しに受け入れ、自分では書けもしな
いのに追い求める、そういうご大層な自分の見栄。もう、そういうものから自
由になりたいのです。
     ---------------------
     ■駒田信二の小説教室
     ---------------------
「駒田信二の小説教室」野島千恵子(文藝春秋)はぼくの愛読書なんですが、
その本の28ページにに中国で初めて「小説」という言葉が使われたことが書い
てあります。「荘子」の外篇に初めて登場するそうです。
 このときの小説っていう意味は、大なる説に対する小さな説、つまり、つま
らないことを意味していた。
「荘子」には「小説を飾りたてて名声を求める」と書かれてあるそうです。

 再び伊藤桂一さんの言葉をひきます。
 『先輩の駒田信二は「たかが小説、されど小説」という言葉を、好んで使っ
た。解釈の仕方は、いろいろあるが、目線を低くして書け、ということが、ま
ず大事だと教える。目線を低くというのは、高所に立って、見下して作品を書
くな、ということである。つまり、たかが小説なのだ、偉ぶるな、遠慮して、
謙虚に書け、という意味だが、目線を低くすれば効果が大きい、という計算が
ある』

 つまりすごく正攻法で、したたかなんですね。                        
 たしかに、自分が読者の上に立ち、文学という言葉に酔っているようなもの
は小説とはいえないのじゃないかとおもう。
 また仲間内で喜んでいるようなそんな小説もだめだということです。伊藤桂
一の文章のなかにあるのは大衆を相手にしろ、ということでしょう。目線を低
くという言葉からは自己満足ということは出てこないようです。
 これは厳しいです。ぼくは仲間がいて小説をお互いに書くことが趣味であり、
楽しむことが悪いなんておもっていない。それだとたしかに狭い範囲での仲間
意識からは脱却できないわけですが。
 つまりここで言われていることは、小説の大道なんでしょう。
 そういうことを自覚しておくのも重要だとおもうのです。
 
 最後に「私の小説教室」(毎日新聞社)の目次から駒田信二の「私の文章心
得十章」というのを書いておきます。また、手にとって読んでいただけたらと
おもいます。
1 力むな
2 気をゆるすな
3 常套語を使うな
4 句読点に気を配れ
5 漢語は漢字で書け
6 漢字を使いすぎるな
7 辞書を引け
8 擬音や符号を乱用するな
9 言葉癖に気をつけよ
10 気取るな

 この心得はなんでもない常識的なことを言っているように見えます。でも、
基本だとおもうのです。とにかくのって書いていると暴走しやすいですから。
 基本をおさえたうえでは応用もあり得る。そうでしょ?

-----------------------------------------------------------------------
 ちょっときつい言葉と極論、暴論を吐いてしまったとおもいます。それはぼ
くにとって、であって、何が正しいかということとは無関係です。また感想を
お寄せいただければ幸せです。
 次回6月3日は「具体的に、小説を書く過程とは」をお送りします。
 では、また。 
◆◆まとめ◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
戯作者になろう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ■編集雑記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○暑いです。おもわず酒を飲んでしまう。ぼくは酒飲みなんですよ。それで寝
ちゃいますね。よくないことですね〜。
○9号を書いたけどうまくいかなかった。自分が書きたかったものとは違う。
書きあぐねているというか。言いたかったことは何だったのかな。ちゃんと考
えなくちゃ。書きたいものが見えてないんだろう。
○最近、テレビを見てないなあ。「永遠の仔」も2回見ただけだし……
――――――――――――――――――――――――――――――――――
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 ふとしたとき、気軽に書き込んでください。落書き感覚でいいです。ここで
誰かがまた書き込む。そうしてなんとなく知り合いになれたらいいなとおもい
ます。
 そうだなあ。メルマガの感想、意見。読んだ本のこと。小説についての意見。
おれはこうやっているぜ、ということ。みんなに発信したい何か。ひとり言。
なんでも。
 アドレスはいりません。名前も匿名でいいです。
 非難や中傷とおもわれる文章は管理者のほうで削除しますので安心して。
 のんびり、ゆったり、ぼちぼちと、やりましょう。
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 ぼく個人にメールを送ってくださるならここです。
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   今年のテーマは「いつも上機嫌で元気にやろう!」
  E-mail: YHY11050@nifty.ne.jp
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9号           00年6月3日            〈毎週水・土曜日発行〉
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               ☆小説の作り方!9号 ☆
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私は、誰かが言いそうな文句や切れ端を集めます――聞こえてきた会話、新聞
で読んだこと、思いついたこと、夢に出てきたこと、夜中に思い着いてそれで
目を覚ましたことの中から。私はその文句をノートに書き出します。これらの
ものを充分集めれば、人物像が浮かんでくるのです。
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/          リチャード・フォード
        「小説家・ライターになれる人、なれない人」同文書院から
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 こんにちは。大阪は7月上旬の暑さだそうです。夏ですね。
 今回は「では具体的に、小説を書くという過程とは?」というタイトルでお
送りします。 
 小説を書くためにはどんなふうに考え準備したらいいか、それを考えてみま
す。具体的には次号以降でやっていくのですが、そのその前書きともいえる版
がこの号です。
-----------------------------------------------------------------------
     ■書き始めるときに
     ------------------
 小説を書くことを特別なことと考えていません? 若い人はそうじゃないで
しょうが、ある程度歳をとると構えてしまいますよね。若い人のように日記を
書くような感じで気軽に書けない。
 机の前に座り原稿用紙あるいはワープロに向かう。それで何か書こうとして
も文章が出てこない。ぼくはいつもそうなんです。身構えてしまうんです。頭
を絞って呻吟しながら書き始めるというふうになる。それって昔ながらのやり
方だとおもいませんか? それで書けたらいいんですが……たいがい挫折しま
すよね。なぜそうなんでしょう。「書くこと」をあまりに重大事に受け取って
しまうんです。これは、まだどういうふうに書いていくのかの準備が不足して
いるからだとおもうんです。

 菅谷充さんの「電脳文章作法」(小学館文庫)では文章執筆のプロセスをこ
う分析しています。
「通常、ゼロから文章を書き上げるには、次のような工程を経る。

1)何を書くのか決める(企画)
2)必要な原材料を収集する(購買)
3)プロットを構築する(設計)
4)原稿を書く(製造)
5)原稿を推敲する(検査)
6)完成した文書を出版社に渡す(納品)」

 6にいくまでにはまだまだでしょうが、ぼくらの場合、小説を読者に読んで
もらうことと解釈すればいいのじゃないでしょうか。
 この本は、パソコンで文章を書くということについて書かれています。役に
立つ本だとおもうのでまた紹介することもあるでしょう。

 基本的には上の手順を踏めば無理をしたり苦労することなく合理的に進めら
れるのでしょう。ぼくのように最初に机に座るところから始めたらだめなんで
す。

 でも、こんなにうまくいくでしょうか。
 これはあくまで何を書くかモチーフが決まったときの流れでしょう?
 こういうものを書きたいというひとつの具体化したイメージがあって、それ
に対してエピソードを書くための資料を集め、調査する。プロットを考え、構
成をたてる。原稿を書いて推敲となるのでしょう。
 まだ何を書くかが決まっていなくて、モチーフも見つかっていない場合、そ
れをまず見つける準備が必要ですね。
     --------
     ■心構え
     --------
 大前提を作っておかなければならないでしょうね。
 それは小説を書こうと決意することです。最後まで投げ出さないと決心を固
めること。途中で書けなくなったらそれはどうしてかと考えること。自己嫌悪
などに陥って投げ出さないこと。初心を忘れずに戻って考えること。なぜ書け
ないのかをしつこく考え続けること。どんなヒントでもいいから周りから求め
ること。(これはまさしくぼくのことです。自戒の言葉です)

 そして方向が間違っていたと気づいたら、素直に方向転換して、一から組み
立てる素直さを持つことでしょうね。今までの苦労は決して無駄ではない、と
自分ほめてやる勇気を持つことも必要でしょう。

 次に必要なのは自分の作品を客観視できること。自己陶酔や、ナルシズムに
陥らないこと。
 言葉は言い意味でも悪い意味でも刃物だとおもうんです。自分はいいとおも
って書いていても、傷つく人がいるということをいつも覚えておいたほうがい
いとおもう。
     ------------------------
     ■何を書きたいのか考える
     ------------------------
★どういうものを書きたいのか。
【発見はあるか】
 それが読者にとって常識的でわかりきったものならあえて小説にする必要は
ないわけです。何らかの形での日常をひっくり返す視点、気づき、発見が読者
にもたらされなければならないでしょう。

【ネタ(エピソード)はあるか】
 ストーリーを作り上げるためには適当なエピソードが必要なだけないと構成
できないです。なによりも読者はそのストーリーのなかで主人公と一体になり
小説世界を体験したいのですから、それを構築できるだけの材料が過不足なく
あることが必要なのです。
 
【モチーフに深みがあるか】
 伝えたいものがあまりにも当たり前だと読者は退屈してしまいます。モチー
フがそれをこえて世界のメタファーになっていること。深い意味を感じさせる
こと。これは作者がどれだけそのモチーフを自分のものとして理解し、問題意
識を持っているかに関わってくるでしょう。それを伝えることで、読者はどん
なメリットがあるのかを考えることが大事だとおもうのです。
 
【それは読者にとっておもしろいか】
 小説はなによりもおもしろいから読まれるのです。おもしろくないと読者が
おもったら捨て去って当然です。作者に文句を言う権利はないわけです。読者
が何をおもしろいとおもうかについて作者は敏感でいなければならないでしょ
う。
 
★どういう方向で書きたいのか。
【どういう読者を想定するか。誰に向かって書くか】
 小説は読まれなければ意味がありません。誰に読んでもらってどう感じてほ
しいか。どういう読者に読んでほしいか。
 いいかえればすべての人にとってよいという小説はないわけだ、とぼくはお
もうのですが。

【全体か、個人か】
 社会の状況、あり方をテーマにするのか。個人の闇を描くのか。おそらく最
後は両者は一体となるにしても作者がどういう視点でテーマを掘り起こしてい
くのか、というのは重要でしょう。全体を描きたいのか、個人の生き様を描き
たいのか。

★どういう表現で書きたいのか。
【ジャンルはどこになるか】
 ホラーか、ミステリーか、恋愛ものか、冒険小説か、心理小説か、青春小説
なのか――
 自分が書きたいテーマにあったジャンルを選び、そこから逸脱しないように
する。そうしないと混乱するもとなのです。もちろん微妙にジャンルを越えて
入り交じるとおもいますが、メインになるジャンルへの意識はいつも持ってお
く必要があるようにおもいます。

【表現のタッチはどうするか】
 細かい心理描写を積み重ねた純文学的雰囲気でいくのか、心理描写を排した
ハードボイルドのタッチなのか。テーマにあった文体を選ばなくてはならない
でしょう。
     ----------------------------------
     ■どうすればモチーフを生み出せるか
     ----------------------------------
【他人の小説を読む】
 他人の小説を読むのはその小説を楽しむためではありません。どのように世
界が描かれているのか。どういう技術を用いているのか学ぶためです。構成、
会話、描写、そういうふうにひとつひとつにパーツに分けていって分析し、技
術を盗むためにあります。
 場面転換の方法、説明しないでも誰が喋っているか読者にわかる会話の技術、
伏線の張り方、語尾の使い方によるアクセント、文章のテンポ、そういうこと
に気をつけて読んでいく。そうすれば自分で書くときに応用できるからです。

【ノンフィクションを読む】
 ノンフィクションはモチーフを生み出す最大のきっかけとなるでしょう。そ
こでは現実に起こったことが調査され詳しく書かれてあります。作者の事実へ
の切り口も参考になる。それをあなたなりに想像力でふくらませるのです。

【テレビ、映画を観まくる】
 それは必ず無意識のイメージとなってあなたの脳裏に貯め込まれます。イメ
ージというのは不思議なもので、いつの間にか違ったイメージが融合し、スト
ーリーになっていく場合があります。無意識の連想の作用です。

【新聞からモチーフを得る】
 朝刊は文庫本一冊の文字が書かれてあるそうです。新聞にはさまざまな出来
事が書かれてあります。犯罪から死亡記事まで。たんねんに読んでいくと小説
のヒントになりそうな記事が見つかります。それを普段から集めておく。それ
はどこからでもモチーフを見いだせるという発想の訓練でもあります。

【裏本、おもしろ本を読む】
 日常生活では体験できないようなことが書かれた本。闇金融について書かれ
た本とか警察の暴露本、死体を載せたカタログ本、パチンカーの日記、SM嬢
の告白と銘打った本、詐欺犯罪の本、異常殺人者の記録……などなどを、イン
スピレーションを刺激するためのものとして目を通しておく。

【小説になりそうだとおもったら、日頃からメモを取っておく】
 たとえば知人の話を聞いていて小説になりそうだとおもえばメモを取る。電
車に乗っているときにふと聞こえてきた話でも、何かを感じたらメモにしてお
く。小説に使えそうなおもしろい人物を見つけたらメモを取っておく。小説を
書くことで役に立ちそうとおもったことはすべてメモに取っておく。アンテナ
をいつも立てておくのです。そういうネタをあたたませふくらませる。
 たぶんこれがいちばん創作活動への近道だとおもいます。メモを取るという
ことは自分のなかでひらめいたものがあるわけです。それをじっと見つめてい
くと、作品の輪郭が浮かび上がってくるのではないかとおもいます。
 
【事実だけを書き込んだ日記を付ける。それを想像力でふくらませる】
 これは井上光晴さんが「小説の書き方」(新潮選書)でいわれている方法で
す。3冊のノートを用意する。Aには事実だけを書き込む。何でも構わない。
歯を磨いたことでもいいし、どこそこに行ってどうだったでもいい。とにかく
事実だけ。Bのノートには、考えたこと、感想、おもったことを書く。Cのノ
ートには完全な創作(稚拙でもいい)を書いてみる。そして毎日3冊のノート
を書くのは無理だろうから、それぞれを交代でつけてもいい。書くときにノー
トの右のページを空けておく。左だけに書く。
 ある程度書き込みが溜まったら、左のページを見て、想像力でふくらませた
ものを右のページに書いていく。それを半年間も続けると、飛躍的に想像する
力が向上するだろう――というものです。
(これを試してみたのですが、ぼくには無理でした。ぼくには断片的なものを
メモしていくほうがいいようです。このように3冊のノートを作るとなると構
えてしまって……)
 こういう方法はいいようにおもいます。想像力の訓練になるのですね。皆さ
んも独自の方法を考えてみてください。

「何を書きたいのかを考える」ということを「どうすればモチーフを生み出せ
るのか」よりも先に書きましたが、これは渾然一体のものです。
 むしろモチーフを見いだしてこういう話を書きたいということが生まれた時
点で、何を書くかということも決められていくのだとおもいます。
     ----------------------
     ■モチーフをつかんだら
     ----------------------
【モチーフの芽生え】
 たぶんここではモチーフが芽生えてきて、見えてきた段階だととおもうんで
す。こういうものを書きたいなと思い始める。漠然とイメージが生まれてくる。
でも、まだ具体的ではない。それをもっと明確につかまえたい考える。
 それは恋愛ものなのか。冒険なのか。主人公を動かすのは恐怖か。何かへの
挑戦なのか。人間を動かしているもの、組織を動かしているもの――動機を考
えましょう。そういうふうに考えることが「何を書きたいのか」を具体化して
いく作業です。
 おもしろそうなストーリーが浮かんでくる。
「こうなのっていいな」「こうであったらいいだろうなあ」クライマックスの
シーンを考えます。まだ流動的です。いろんなケースを考えてください。
 小説はシミュレーションです。「こうしたらどうなるだろうか」「こういう
場合はどうだろうか」
 ストーリーはどれだけ出来ようと構いません。まだ頭のなかにあります。想
像の世界です、飛躍させて楽しんでください。
 話の輪郭が見えてきそうです。すごく飛躍したシーンも浮かんできます。
 断片的な走り書きを、ノートやパソコンにメモとして残しましょう。

【具体化する方向へ】
 いろんなシーンも想像で作ったはずです。
 主人公は魅力的な人物ですか?
 事件は読者にとっておもしろそうですか?
『「ミステリーの書き方」(講談社文庫)ローレンス・トリート』のP44で、
ホイットニーというひとがこう言っています。
「わたしはまず面白そうな場所を選んで、背景が心にくっきり浮かぶようにす
る。資料集めに訪れた所でも今住んでいる辺りでもいいし、架空の場所だって
いい。場所が決まったら、深刻な悩みを抱えたヒロインを考える。このヒロイ
ンを前もって決めた場所の中に立たせると、両方がひびきあってストーリーや
性格がふくらみはじめるのだ」
 ストーリーは人物と背景と事件の要素で成り立っています。5W1Hです。
それを具体的にしていきましょう。
 人物とそのキャラクターが見えてきます。他にも誰と誰がいるのか。どうい
う人間関係なのか。その場所で何をしているのか。
 主人公になる人物――彼が、彼女が自分のなかに住みついて、いつも頭を離
れないようになります。彼、彼女に聞きます。「なぜ、そこにいるの?」「何
をしたいの?」「今、どうおもっているの?」作者は友達になりたいわけです。
 そして心のなかにひっかかっていたモチーフとして取りあげたい事件に彼ら
は関わっているのがはっきりしてきます。事件を巡って彼らは行動する。
 
 映画のように彼らが行動しているシーンが浮かびます。

 そしてだんだん具体的になりストーリーが固まってきます。
 その粗筋をざっと書いてください。
 そしてそれを見ながら構成の段階に入ります。
     ------------------------------
     ■プロット、構成を考えるときに
     ------------------------------
 構成については、こうしろということは言えないんです。それは書く人の人
物、キャラクター、そして事件のありようによって、それぞれ構成のしかたが
違うからです。作者が自分でいちばんベストだとおもう構成が小説になるわけ
です。ですからそれの勉強方法は、プロの作家の小説を読んでそこから学ぶ、
盗むしかないということですが……
 基本的なことは言えるとおもうんです。ぼくなりに考えたそれをまずあげま
す。
【小説は登場人物の心理の流れに従う】
 小説は登場人物の心理の流れに従って組み立てられます。ストーリーを作っ
ていくのは主人公の心理です。ですから小説に登場してきた視点人物の心理に
忠実に構成する必要があります。

【小説は時間で組み立てられる】
 小説を作るのは時間の流れです。ファーストシーンから始まった現実の時間
が登場人物の回想によって、過去に戻り、また現実に戻ってくる。そういう重
層的な時間の構成が小説世界を組み立てています。空間的なもの、場所や土地
は主人公が活躍する舞台でしかないのです。

【小説は因果関係で展開、進行する】
(こんな自分だけの言葉を使ったらわかりにくいかもしれないですね。また、
適当な言葉を考えます。でもここではこう言ったほうがわかりやすいとおもっ
たです)
 第一に小説の登場人物は必ず明確なキャラクター、心理状態で登場します。
そして人間関係の葛藤、対立を経て成長します。それは心理の必然性です。
 そして第二に小説世界としての必然性も必要です。エピソードは伏線となっ
て次のエピソードを呼び、必ず、クライマックスへ向かって進行するというこ
とです。
 小説はクライマックスに向かわざるを得ない。小説のファーストシーンで自
覚され明らかにされた問題は、矛盾を含みながら葛藤、対立を経て、クライマ
ックスの解決へと向かうのです。
 
 この3つが構成するときの柱です。
 これを軸としてドラマが展開します。小説は簡単に言えば謎の解明、なぜそ
うなるのか、これからどうなるのかの謎(因果関係)の解明と言っていいでし
ょう。

 具体的な構成の作業としては、シーンを作ること、どういう会話をさせるか、
風景の描写、心理の描写、適当な説明、があります。それらのパーツを効果的
に――ドラマを盛り上げるように並べる、その技術。
 この号では構成、プロットにたいしては詳しく展開しませんでした。書き切
れないのです。24号からはひとつひとつ詳しくお話しすることになるでしょう。

 ぼく個人の関心は、いかにモチーフを得、いかに構成してドラマを作るか、
ということにあります。いっしょにやっていきましょう。

-----------------------------------------------------------------------
 今回はタイトル通りにはうまく展開できなかったな、とおもいます。この号
では、いかに書き始めるかということが言いたかったのです。プロット構成の
作り方はそれぞれ作者のモチーフが違うので、一括りにしてはうまく言えない
ですね。また感想をお寄せいただければ幸せです。
 次回7日は「他の小説を読むときには」をお送りします。
 では、また。
◆◆まとめ◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
小説を書くことは机の前に座る前に始まっている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ■編集雑記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○暑いですう。自然には勝てません、しかたないですね。(毎回、同じことを
言っている(o^.^o) )今日、大阪は27度です。真夏日。
○一昨日からずっとお酒を飲んでいました。今も飲んでいます。(*^_^*)
○高村薫の「地を這う虫」を読みました。短編集だけれど(93年頃オール讀物
に連載された)力が入ってます。中年の男の世界。薫さん、なぜ知っているん
だろう。
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 ふとしたとき、気軽に書き込んでください。落書き感覚でいいです。ここで、
誰かがまた書き込む。そうしてなんとなく知り合いになれたらいいなとおもい
ます。
 そうだなあ。メルマガの感想、意見。読んだ本のこと。小説について思うこ
と。おれはこうやっているぜ、ということ。みんなに発信したい何か。ひとり
言でも、なんでも。
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 のんびり、ゆったり、ぼちぼちと、やりましょう。
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10号           00年6月7日            〈毎週水・土曜日発行〉
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
             ☆小説の作り方!10 号☆
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_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
誰にでも才能はあるのです。
ただ、本当に芽が出るかどうかも分からないのに、その才能を信じきれる人は
稀にしかいないのです。     
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/       エリカ・ジョング
        「小説家・ライターになれる人、なれない人」同文書院から
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ■今回は「他の小説を読むときには」はお送りします■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 こんにちは。
 前回はぼくなりの小説をこしらえていく過程をたどってみたのですが、ちょ
っと書きあぐねました。ちょっと違うかな、という気持ちがあります。あんな
に論理的に、順序よく並んでいるわけはないので、頭の中はいつも混乱し整理
がつかない。ぐちゃぐちゃです、ほんとうは。他の人にとってもいちばん基本
的なやり方はなんだろうかと考えて書き並べてみることにしたのです。
 あれはぼくのやり方といえます。
 それぞれのかたが違うやり方を持っているとおもいます。これでないといけ
ない、というやりかたはないんです。自分にとっていちばん整理しやすいやり
方を作っていくほうがいいですね。
 最初に人物がひらめいて、シーンを思い浮かべ、その興奮が冷めないうちに
書き始めるほうがいいという人もいるだろうし……構成を緻密に練るほうがい
いという人もいるだろうし……
 とにかく、小説は書き始めるまでがたいへんなのです。書き始めたら、興に
のって書き進めることができる。そこで構成がちゃんとできていれば少しの軌
道修正ですむ、とおもうんです。ですから、それぞれのかたがいちばん自分に
あったやり方を見つけてほしいとおもいます。
 ぼくはモチーフと構成がとても大事だと考えているので、それをこの「小説
の作り方」では詳しくやっていくつもりです。
-----------------------------------------------------------------------
     ■小説を読むことは
     ------------------
 さて、自分が小説を読むときにはどうあるべきか、が今回のテーマです。
 前号で取りあげたことで、【映画やテレビを観る、メモを取る、想像力訓練
のための日記を付ける】以外ではすべて読むことに関わっています。
 【他人の小説を読む、ノンフィクションを読む、新聞を読む、裏本、おもし
ろ本を読む】それぞれがモチーフ発見のための手段です。特定の仲間内だけの
読者を想定するのでなければ、幅広く興味を刺激されることを掘り起こしてお
くことが必要です。
 なぜでしょう?
 この現実がどういうふうになっているのか知るためです。事実はどうなのか
を知る。
 事実を知ると、自分のほうから新しい見方でアプローチできる。新しい見方
と視線で現実を小説によって再構成出来るんです。
 小説は読者にとっては新鮮な体験です。
 そして作者にとっても新しい体験です。
 この矛盾に満ちた世界を再構成できる体験です。

 その事実という中に、すでに書かれた小説は含まれます。読者によって既に
体験された事実として。
 自分が、あなたが、まだその小説を読んでいなくても、すでに書かれたもの
は読者の共通の体験されたものとしてあるのです。

 そうおもうので――
「他人の小説を読むのはその小説を楽しむためではありません。どのように世
界が描かれているのか。どういう技術を用いているのか学ぶためです。構成、
会話、描写、そういうふうにひとつひとつにパーツに分けていって分析し、技
術を盗むためにあります。
 場面転換の方法、説明しないでも誰が喋っているか読者にわかる会話の技術、
伏線の張り方、語尾の使い方によるアクセント、文章のテンポ、そういうこと
に気をつけて読んでいく」
 という言葉が出てきます。

 小説を書こうとする者として「読む」のです。すでに書かれた小説から学び、
これからどういうものを書かなければいけないか、を考えるために読むのです。
 小説を漫然と読んでいても何も身に付かないとおもいます。
     --------------
     ■メモを取ろう
     --------------
 ですから読むときにはメモを取りましょう。
「この小説のモチーフはなんだろう?」
「作者はどんなふうにして、この小説の設定を思いついたのか?」
「読者を引っ張っていくために、どんな仕掛けが施されているか?」
 を、まず考えて読み始めましょう。

 気がついたことはすべてノートにメモを取りましょう。それはメモを取るこ
とに意味があるのであって、あとで読み返すためでもないんです。メモを取る
ことでそういう読書のスタイルを身につけるためです。書くということと考え
るということを、読むという行為で合体させるためです。
 自分がひっかかったところ、書くためにヒントになりそうなところ、を体に
覚え込ますためです。

【ポイント】
ファーストシーンはここから始まったけれど、効果的か。
主人公はどんなやつだと最初に作者は言ってるか。期待できそうか。
脇役が出てきたが、どんな役割を果たすんだろう?
最初のエピソード。葛藤が表面化しているか。問題意識はどうか?
服装とか、人物の説明は的確か。
これは何かの伏線じゃないか?
主人公のおかれた状況、対立関係はわかりやすく描かれているか。
風景描写は魅力的か。
会話は生き生きしているか。
どういう具合に心理描写をしているか。
カットバックの使い方はうまいか。
読者の興味をひく知識が書かれているか。
この視点は効果的か。
臨場感を与えるためにどんな描き方をしているか。
感覚的な表現について学ぶ。
クライマックスは感動的だったか?

 以上は読んでいる時に注意しておくところです。ざっと上げてみました。
 もちろん、そんなことをいちいちマジにやることはないんですよ。
 小説を書こうとする者は、そういうことを反射的に考えるようになります。
なぜなら、いつも自分の小説をどう書こうかとおもっているので読んでいても
比べて見てしまうのです。
 ですから気軽にやってください。自分のひっかかったところ、不満におもう
ところを書き出していってください。それが勉強になることは請け合いです。

 そして読んでから考えることは――
エピソードの流れで、うまく構成されていたか。
クライマックスの作り方。
人間関係の配置の仕方。
作者が見せたかったところ、伝えたかったところ。

 そしてぼくらが次にやるべきことは――以下のことです。
1 この小説の時間を変えてみる。
2 この小説の場所を変えてみる。
3 この小説の人を変えてみる。
 そこでどういうドラマを作り出せるか、自分で考えてみる。模倣するのでな
く、新しい視点で描けないかを考える。
 つまり、読み終わって、そのままにしないのです。それが重要なのです。自
分ならどう書くだろうかと考える。それが自分の作品を書くときの訓練になり
ます。
 なにかヒントになりそうなものが見つかればアイディアノートに書いておい
てください。
 またよい表現は書き写しておくことも必要です。

 ストーリーとかドラマとかはすべて出尽くしているといっても過言ではあり
ません。ぼくらが小説を書こうとする前にすでに多くの小説が書かれています。
それでも、常に新しい小説が生まれるのは、新しい視点で、新しい表現で描か
れるからだといえます。
 ストーリーを考え込むより、どう書くのかを考えた方がいいのです。「何を
書くか」ではなくて「どう書くか」です。
 極端に言えば、小説を作るということではなくて「こういうことを、こう伝
えたい」という想いです。
     ------------------------------
     ■オリジナルなものを生み出そう
     ------------------------------
「どんな作家でも、つねに数多くの他人の小説やノンフィクションに摸して、
自分の潜在意識を豊かにしていなくては、次々に黄金のアイデアを生みだすこ
とはできない。どんな小説からでも、無数の事実、登場人物、イメージ、語り
口、プロットのひねり方などが、君の潜在意識のなかに蓄えられ、それらが絶
えず意識下で作用しあう。こうして取り入れられたアイデアの断片は、独創的
なアレンジが加えられて、まったくちがうものに生まれ変わるのだ。
 また君は他の作家の作品のなかに、心ひかれることばをみつけ出すこともあ
るだろう。ある一行、ある一節のなかに他の作家がなにげなく放り出したこと
ばが、君の小説の中心となるのだ。もし君がそのアイデアを、その作家の作品
とはまるでちがう作品に発展させたのなら、盗作の罪を問われることはない。
つまり君は文字どおりフィードバックの恩恵に浴しただけで、これこそ全作家
のストーリー・アイデアの源泉なのである。
 読む本のタイプをひとつに限ってはいけない。たとえ君がSF作家志望だと
しても、SFだけを読んでいればいいと思ってはいけない。新鮮でおもしろい
ものを書きたいのなら、できるだけバラエティーに富んだものに接する必要が
ある」
    「ベストセラー小説の書き方」朝日文庫 ディーン・クーンツ

 例によって引用したのですが、ここで少し脱線して、裏本、おもしろ本とい
うものについて書いておきます。

 それらは基本的には業界の裏話などが書かれた本なのですが、一般の日常の
生活ではけっして、体験できないことが書かれた本です。そういう日常から離
れたことを疑似体験するためには必要なんですが、もちろんまったく興味がな
ければ読めないですよね。

 それについては思い出すことがあるんです。5、6年前だったか、高村薫さ
んがNHKテレビに出演してインタビューを受けていたんです。
 そこで高村薫さんは、イギリスの古い屋敷のドアに飾られている紋章をカタ
ログにした本を持っていると言っていました。(もし記憶違いならごめん)
 アナウンサーが聞きます。
「なぜなんですか?」
「いえ――自分の知らないこと、まったく関係のない世界のことを知ることに
興味があるんです……」
 そのときは、ああ、そうなんですか、ということで終わったんですが、なに
か作家の業というかそういうものを感じて興奮したのを覚えています。
 ほかにも「鉄の鍛造の仕方というような専門書を読むのはおもしろいですね」
と言っていたのですが、今おもえばそれが「照柿」になったんですね。

 作家は自分の書く世界を完全に体験しようとおもえば、知らない世界に踏み
込んでいくしかない。前号では裏本、おもしろ本として、業界の話、暴露本と
してあげたのですが、そういう専門書も含まれるんだと言いたかったのです。
     ------------
     ■速読しよう
     ------------
 小説を楽しむために読むんじゃない、と言いました。
 そうなんです。今までそのジャンルではどんなことが書かれているか研究す
るために読む。どんなアイディアを持ってきたらオリジナルなものができるか、
どういう描き方をするべきなのか。二番煎じじゃ魅力がないですから。そのた
めに多くの小説や本を読まなければなりません。

 昔、水上勉さんの講演を聴きにいったことがあります。
「少なくとも1000冊ぐらいは読まなければ作家にはなれない」そう言われてい
たと覚えています。
 そういえば、かっては「行李いっぱいの原稿を書いてやっと作家になれる」
「自分の背丈ほどの原稿を書きつぶすぐらいでないと作家になれない」という
言葉もあったようです。いまでいえば「フロッピー何枚分の……」でしょうか?

 多く読むためには早く読むことが必要です。ぜひともそれを身につけてくだ
さい。速読術の本は多く出版されています。でも、独断と偏見で言います。そ
れらは小説を読むための本じゃない。読んでも、多くは無駄です。しかし速読
は必要なんです。どうしたらいいんでしょうか?

 見分けることが必要です。
 これが自分にとって読んで役に立つ本か、どうしても記憶に残しておきたい
本か? これは勘のようなものです。そうおもったら詳しく読めばいいんです。
自分にとって関わりがなさそうな本だったらざっと目を通すだけでいい。

 拾い読み。
 斜め読み。
 ざっと見るだけ。
 一部分だけを読む。
 そういうふうに思い切ることがいい方法だとおもうんです。
 本は逃げるわけじゃないので、必要になったらまた読めばいい。それぐらい
のおおらかな気持ちでいきましょう。
 そして自分を捉えて離さないもの、そういう小説こそがあなたにとって価値
があります。
 読んで、読んで、読みまくりましょう。とにかく多く読むことを心がけまし
ょう。自分の関心のあるモチーフを探し出し、組み立て、書くために――自分
のなかでうごめいているひっかかるもの、違和感を言葉にするために。すでに
言葉になっている世界を新たに捉え直すためです。その「何か」を見つけたら、
まず、スタートラインに立ったといっていいのです。

-----------------------------------------------------------------------
 独断と偏見がだんだんきつくなっていくようです。反論や意見はあるとおも
います。けれどひとつのことを言ってそれが正しい、という書き方はしないつ
もりです。いろんな意見があってそれでいい。
 次回10日は「コンセプトを確認しておく」です。
 では、また。 
◆◆まとめ◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読んで、読んで、読みまくろう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ■編集雑記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○アパートの玄関前には野良猫が集まっています。人の姿を見たら逃げていく
のですが、じっとしている時もあります。のんきに寝ているときですね。なん
の夢を見てるんだ?
○昨夜はテレビで「永遠の仔」を見ました。辛いですね。小説をまだ読んでな
いので買いに行こうかとおもっています。図書館ではいつも貸し出し中なので。
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 ふとしたとき、気軽に書き込んでください。落書き感覚でいいです。ここで、
誰かがまた書き込む。そうしてなんとなく知り合いになれたらいいなとおもい
ます。
 そうだなあ。メルマガの感想や意見。読んだ本のこと。小説について想うこ
と。おれはこうやっているぜ、ということ。みんなに発信したい何か。ひとり
言でも――何でもいいです。
 アドレスはいりません。名前も匿名でいいです。
 非難や中傷の文章は管理者のほうで削除しますので安心して投稿してくださ
い。のんびり、ゆったり、ぼちぼちと、やりましょう。
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