
選択必修科目:地域文化論 講師:許山秀樹(情報社会学科)
課題内容:情報という観点から中国の文化を一つとりあげ論じなさい。
評価:可
字数:指定なし(但し、レポートの長さも評価に含める)
近年、中国の「改革・開放」政策によって、ようやく中国にもインターネット網が普及し始めた。まだまだ発展途上で、全国民がインターネットという膨大なネットワーク資源に触れることはできないであろうが、急速に中国市民のネット人口が増加してきているのは確かである。本レポートでは、中国における最新のインターネット事情を中心に中国のコンピュータ文化を追ってみることにする。
中国の商用ネットワークの現状
中国で、一般民にもインターネットが開放されたのは1995年7月1日に郵電部に所属する北京データ通信局が正式にインターネットサービスの申し込みの受付を開始した時からである。このデータ通信局はCHINA NETという商用のネットワークを管理しており、商用にインターネット環境を提供することを政府直轄のサービスとして解放したのである。CHINA NETは国際標準のネットワーク技術に基づいて建設された中国の公用インターネット幹線網絡となっている。(1)
その後CHINA NETのバックボーンは次第に増強されていき、1997年10月の統計によると、国内回線の幹線通信速度が2048Kbps、国際専用線のアメリカにいたっては8Mbpsとかなりの水準まで、ネットワーク環境が整ってきている。また、CHINA NETは一つの受けつけ窓口で登録すれば、中国のどの省に行ってもダイヤルアップによるアクセスポイントへの接続を通じて、インターネットへの接続を可能にするという、ちょうど日本の商用プロバイダーサービスと同じサービスを行っており、それが広大な国土を持つ中国のパソコンユーザーに大きな"福音"となっている。(2)
中国の商用ネットワークはCHINA NETのみではない。1996年9月6日、中国で唯一の通信衛星と光ファイバを幹線網とした公用商用ネットワークCHINA GBN(中国金橋(Golden Bridge)信息網)がインターネットサービスを開始。China GB Netという名称で広くインターネットサービスを行っている。(3)その他、中国には教育・科学技術ネットワークのCERNetと科学技術ネットワークのCTSNETがあり(両方とも商用ではなく、一般民は使用できないのでここでは割愛)、CHINA NET、China GB Netと併せて、4大ネットワークを構成している。そしてこの4大ネットワークが、中国で政府よりネットワークとして正式に許可されているのである。
1997年9月末までの統計では、4大ネットワークに接続しているホストコンピュータの数は4万9000台、ダイアルアップ接続端末が25万台、インターネットユーザが62万人となっている。(4)しかしながらコンピュータの普及台数は国民千人あたり6台と(5)、依然まだまだ庶民の間には普及していないのが現状である。人口12億人を抱える中国にとっては、インターネット人口はまだまだほんの一握りなのが現状である。
しかしながら、私はこの統計のデータが3年前と古いことと(これでも見つかる限り最新のデータを使用したが)、現在の中国でのインターネットの普及速度を考えると、今現在のインターネットユーザーはこの数を遥かに上回っており、中国国内で新たな文化として広がりつつあるのではないかと思う。
中国特有のコンピュータ文化
中国でインターネットに接続するには、前述の学術系ネットワーク(CERNetとCTSNET)を利用するか、商用ネット(CHINA NETとChina GB Net)のサービスを利用するしかない。しかしながら、学術ネットワークの使用は大学等の研究者、学生等に限定されており、一般の中国民は利用できない。そこで、一般の中国民はここ数年中国内でも急速に発展してきた商用ネットワークを利用するしかないのだか、接続料金が高く、またパソコン本体の値段も庶民には手が出ないことから、北京や上海などの都市部では、インターネットカフェの出店が相次いでいる。利用者の中心は若いサラリーマンや学生で、主にインターネットを介して行われる対戦ゲームに励んでいる(6)。貴重なネット資源をゲームに使用する。これは一見勿体無いように思われるが、Webページの閲覧の規制がまだまだ厳しい現状では、このようにネットゲームに耽ることが、中国市民のささやかな楽しみなのかもしれない。
また、ネットワークに接続していないパソコンを店内で利用させる、時間貸しパソコンゲーム屋も大流行している。このような店舗は、中国語表記で「電脳租用店」と書き、「電脳」はコンピュータ、「租用」は「賃借する」をそれぞれ意味している。この貸しパソコンゲーム屋は、ネットワークの発達度がまだまだ低く、業者でもインターネット接続がなかなか困難な中国のコンピュータ事情をわかりやすいものとしているのではないだろうか。
さて、その店の仕組みであるが、客は店内に設置されているパソコンを時間単位で借り、そこにインストールされているゲームで遊ぶ仕組みになっている。料金は1時間6元(約90円)で、やはり客筋は20代の若者が多い。店は24時間営業で、平均1人2時間ほど遊ぶらしいが、中には夜の10時ごろにきて、朝の出社時間までやっていく人もいるらしい。
店に置いてあるパソコンは「無名電脳」(ノーブランド・パソコン)という、部品を寄せ集めて作ったパソコンになっている。中国では、正規メーカの製品は1万5000元(約22万5000円)もするが、こうした無名電脳だと、1台6000元(約9万円)で購入できるという。そしてパソコン内に入っているゲームソフトは、ほとんどが違法コピーである。(7)
このような違法コピーが公然と出まわっているのは、海賊版が大量に流通する中国市場ならではのものであろう。中国では、テープ、CD、ビデオCD等の海賊版が広く横行している。中国に留学中の兄から聞いた話によると、庶民の間では、著作権の意識は全くないという。安く作れるなら、なぜコピーして悪いというのが、庶民の一般的な感覚らしい。実際に兄も土産として海賊版のCDを大量に持ち帰ってきたが、1つ10元(約150円)で、露天で売られているらしい。
私はここに中国のメディア文化を理解する上で、重要なヒントが隠されているのではないかと考える。違法コピーは、確かに著作権に抵触する違法行為であるが、中国の莫大な人口を考えると、ある意味それは仕方のないことなのかもしれない。このようなメディア系商品の流通を正規ルートのみの商品に厳しく取り締まると、莫大な需要に供給が間に合わず、市場価格が高騰、メディアを楽しむということが庶民からはかけ離れた一部の共産党幹部、高所得層に限られた存在になってしまう恐れがあるからだ。つまり、中国のメディアを支えているのが、そしてこれからも支えていくだろうものが、したたかな庶民性に裏打ちされたこの違法コピー文化なのかもしれない。
注
(1)・・『中国インターネット案内』何徳 倫/日本エディッタースクール出版部・1997年/P114〜5.
(2)・・同著P121〜3.
(3)・・同著P130〜1.
(4)・・同著P143〜4.
(5)・・『全地球資料 2000年 ワールド・アトラス(imidas2000別冊付録)』集英社・2000年/P99.
(6)・・『チャイナNOW』読売新聞社中国取材団/中央公論社・1999年 扉ページ4.
(7)・・『日本人が知らない「普通の中国人」の私的事情』田中信彦/講談社・1997年 P43〜5.
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