生まれ育った場所を離れ、生きていこうとするならば、そこでも家族というものを求めるようとするのが人と言うものでしょう。

 それは、帰るべき場所を失った者ならば、より強い想いへとなってゆくものです。

 ですから、あなたにも甘える事が出来て、守る意味のある家族が必要ではないかと言っているのです。





「――ここの人達はみんな変だよ、僕なんかに媚びっているようにさえも感じられるじゃないか」

「だから、王子様と言う御職業は、慣れが必要なのだと……そう教えたわね?」

 ティア=エレナ=ファルシアは、静かな声で表情を曇らせている王子に告げた。

 レファンス=フィールド=ファルシアは、家事などの生業は、自分の力でやる事を信念としていたし、それは彼に染み込んでいる程の作業だった為に、それをやらせてくれない場所というものに声を荒げていた。境遇というか、待遇と言った言葉を使うなら、今の自分の心境も分かってもらえるだろうと、暖炉の明かりで揺れる部屋の陰に身を切らすのである。

 この城の部屋は、独特の造りをしていてレファンスの故郷の北国の部屋とは構造だけでなく、雰囲気そのものが違うように感じられた。部屋を支えるモノは壁であり柱であったりするはずなのに、ここでは目の前に自分と同じような椅子に座っている姫こそが、この城そのものまでをも支えているように感じられるのである。

 広い部屋の中央に添えられた美しい装飾された大きな柱なども、最初は彼の目をひいたが、今声を荒げている理由は、そんな建築技術のうんぬんではなかった。――天井が落ちてきて困るのは自分なのに、姫に抗議をしているのはレファンス本人なのである。

「こういうのって慣れてどうにかなるものじゃないかな」

「生まれつき……言うのなら、親の薫陶みたいなもの。宿命を背負っているのよ、王族に限らず、先天的に与えられた境遇というものは」

「――それってエレナの言い分じゃないの?」

「もちろんだけど。どうしてそう思うの?」

「ティア=エレナ=ファルシア姫と一緒に寝たときに、そのくらいの事は分かったよ」

 レファンスは、自嘲気味に笑って激しく動かしている肩の動きを止める。

「……私が、王様をやっているのが、楽しそうに見えるの?」

「うん」

 レファンスは声を静めると、音のない部屋に自分の鼓動だけを感じることで、無遠慮な言葉を続ける。

「……」

 微動だにせず、その言葉を受け止めたエレナは、ゆっくりと目を細めると、唇をキュっと強く閉ざす。

「何も言えないじゃないか、エレナはっ」

 それを見たレファンスは、座っていた豪華な作りの椅子から立ち上がり、息巻いて趣の変わらない声を並べる。

「レファンス様」

 名前を呼ばれた彼は、怒られるのだという直感が働いて身を縮める。

「ぼ、僕は……」

「色々教えてくれたわね?」

 しかし、硬直した彼の体は、優しいぬくもりに包まれる。王子の耳元で言葉をつづるエレナ。彼女は眠れないという彼に付き添って、夜更けまで身の上話に近いモノを聞かされた事を思い出して、可憐な唇を動かしている。

「色々って……僕の不幸話……愚痴だけど」

「私に会うまで、そういった事を話せる人は居なかったって、そう言ってくれたじゃない?」

「……そうか! 僕はエレナに甘えていたんだって……そういう事か」

「違うでしょ?」

「なんだっていうの……」

「あなたに、私の家族になって欲しいと言っているのでしょう?」

「……そ、そうなの?」

 レファンスは、エレナの言葉に声を震わせると、その胸に頬を埋めて、言葉を続ける。

「違う?」

「違わないけど、それは、親戚だからとか、許婚だからとか……」

「それはそう。でも、あなたを見ていたら、私が守ってあげなければ、と思うでしょ?」

「ま、守ってくれるって……僕って、そんなに頼りないかなぁ?」

 レファンスは、そう言って、今の自分の状態こそが言葉を立証している事に気づく。彼は、すぐにエレナの腕の中から逃げようとするが、彼女は許してくれなかった。ここに居ればいいのだと。しかし、直接的に王子の感性に触れたメッセージは、ここに居ても良い、という羅列かもしれないと、エレナは思った。

「ここは怖い所だって、あなたは言うのだから、そうなんでしょう?」

「うん……」

「でも、私の御手伝いもして欲しいのよ? 騎士団の人達が、あなたと若い戦力を連れて戻ってきたのだから、城内の雰囲気がそういう方向に向いてしまっているの」

「戦争の手助け……、フィリアードとやる理由なんて……。王子が凱旋したから、士気があがっているとは聞いたけど、王子は僕なんだよ」

「あなたの家族と私の家族を奪ったのが、あの国だとするなら、戦う理由になるのでなくて?」

「世論……みたいなもので、大陸の本来の支配者はファルシアだから、なんていうのじゃないの? それにエレナの公国を滅ぼしたのがフィリアードだとは聞いたけど、僕のっていうのは?」

 エレナは、レファンスを抱いたまま椅子に腰掛ける。そうすると、王子は彼女の膝に頬を預けるような格好になり、その両膝を床につける。こういう関係の二人なら、膝に縋っている方の男には、選択肢などを選べるはずもないのだ。

 ただ彼は、エレナの言葉が優しさのほかに、怖い一面も持っているのを感じたから、こうして色々と聞いているだけなのである。

「レティシア=フィリアードというのは、フィリアード公国の公女の名前。そして、あの日にスターレイク島を襲った軍隊は、フィリアードのもの」

「それは……」

 レファンスの金色の髪を優しく撫でながらエレナは諭すような言葉を綴る。

「あなたの名はフィリアードやファルシアの王族達には知られているの」

「……レティちゃんが、僕の事を国の誰かに言って、それで……!? でも、レティちゃんはそんな娘じゃないよ……。きっと戦争をするなんて言えば、反対するよ」

 レファンスは、膝に縋る力を強めて自分に言い聞かせるような声をあげる。初恋の少女のせいで、自分の家族や帰る場所が失われたらしいというエレナの声は、彼の心を強く締め付けたのだ。

 また、王子に成り切れないその少年は、そういった事実を凝視するだけの芯も持ってはいなかった。だから、エレナのように自分に優しくしてくれる人に縋りついているのだ。

「あなたは、その娘の事をどれだけ知っているの?」

「……え?」

「今、そんな娘じゃないって言ったわね」

「どれだけ知っているって……僕……好きだったんだ」

 レファンスは、消え入りそうな声で、独り言のような言葉を慎重に並べる。

「相手はどうだったの? 気持ちを察するだけの感性、必要なものよ。独り善がりは怖いのだから」

「き、きっと、レティちゃんも僕の事が好きだったんだっ。…………そうに決まってる。と、とっても聡明だし、素直で親切な娘だったんだよ」

「それは、誰に接する時にも必要な事ね」

「ちがうよっ! 違う違う違うっ!」

 レファンスは首を何度も横に振ると、徐々に声のトーンを押し上げて言葉を続ける。彼は頭を撫でるエレナの手を振り解くと、ヒステリックな音域までそれをあげて、立ち上がる。

「レファンス様」

「えぐえぐっ……ほんとに、違うんだよ」

 少年の泣き色を含んだ声が部屋を駆ける。それは同じ色であっても。故郷で 見せた物とは本質的な部分で異なっていると言えた。

「……ごめんなさい。少しキツく言ってしまって……さあ、そろそろベットにお入りなさい」

 彼女達のいる優美で広い部屋の中には、二つの天蓋のついたベットが置かれていた。昼間中、図書館で教養の勉強をさせられている少年は、それが終わって夜になると、エレナにこうして王子としての教育を施されているのだ。

 今のように彼がヒステリックな声をあげる時は、寝かせるのが一番なのだとエレナは心得ていた。それは、赤ちゃんにするのと同じなのである。

「……うん」

 そういうエレナの気持ちも理解できないレファンスは、涙を雑に手の袖で拭くと、ベットに足を向ける。




 ――――時計の針が11時を指している頃であった。



















第9話「王城の中で」



















「や、やめてくださいよ。なんだっていうんです」

 アルスは、馬上で襟を摘み上げられて声をあげた。

「新入りのお前が、姫様と楽しそうに話しているのを見ればっ。護衛を任されている私から、目を付けられることくらい分からないのか?」

 ある程度予想はしていたが、王女にぞっこんと噂のルディア隊長がこうも敏感に自分に絡んでくるとは思わなかった。

「戦前の願掛けですよ。姫様のスターブルーとか言う宝玉、ユーシアの守り神だっていうんでしょう? でも、赤い宝石なのにブルーって、変ですよね?」

「そういう新入りは、キツメに教育をしておかなければと言っておいた筈だ」

 アルスの言い分と、ルディアの怒声は同時に発生して、荒野の風に共鳴した。

「ひゃ、ひゃめてくだしゃいよ」

 綱をひいて馬脚を止めたアルスの口の中に、ルディアの皮の手袋がつっこまれる。彼は驚いて、咽ようとするが、その手は唇を広げるだけで喉を狙おうとはしなかった。

「明日にも、交戦だというのに。私はお前の口の中に手を突っ込んでいるっ。わ・か・る・か?」

「わ、わきゃりましひゃ……」

「よろしい」

 ルディアは、冷笑して口の中を解放する。

「もうっ、隊長は乱暴なんですから」

 そんなアルスの声を聞いたからといって、ルディアは表情を動かさなかった。真っ赤な岩に支配されているユーシア大陸東部の広大な荒野。ここを抜ければ、セシリアを擁している彼女達が目指すクリムゾンシティーは目の前なのだ。

 闘争心を失ってどうにかできる都市ではないというのも、彼女が噂に聞く旧コーネリア王国の不落の要塞都市故なのである。





「ふわぁぁぁぁ。……もうぅぅぅっ、いやっ」

 セシリア=ユーシアは、王女という生活にほとほと嫌気がさしていた。彼女は、優美な馬車の中で背伸びをすると、周囲の目が無いのを良いことに大きなあくびをする。

 ピューン

 そんなセシリアを気遣うかのように、彼女の膝に抱かれた赤い宝玉はふわふわと宙に浮いて、暖かい光を発すると奇怪な音を出す。

「なによぅ、励ましてるつもりなの? それとも文句があるって言うの?」

 目を擦って、揺れる馬車の椅子に身をゆだねると、浮いている赤い宝石を抱きしめて王女は言う。それは彼女の十八番のセリフであると同時に、完全な独り言でしかなかったのだが、赤い宝石は彼女の言葉に、輝くという形で律儀に応える。

 ピューン

「……なに? 私だって外で遊びたいわよ。でも大人には大人の事情があるんだから、我慢なさい。我侭はダメなんだからね」

 胸から飛び出して、ぴょんぴょんと馬車の中で跳ねまわる赤い宝石にセシリアはむすっとして言う。

 セシリアは、仕草から、意思を読み取るという事をしていた。自分を守る為に一枚の板から赤い宝石へと姿を変えたモノとであったから、それをやる気になれたのかもしれない。勝手に会話文を作る彼女は、馬車の中でそれを奏でている――。

「セシリア様、話し声が聞こえてますけど……」

 そんな風にして、馬車に打ちつけられている腰の痛みを紛らわしているセシリアの耳に、アルスの声が飛びこんでくる。

「なんでもないのよ」

 セシリアは、苦笑して窓を開けると、余所行きの声でこの夏に入隊したばかりの近衛騎士に告げる。

「新入りっ、何度言えばっ」

 その向こうで、恐ろしい目つきをしている近衛騎士隊長が、再び新入りの襟を掴みあげて、脅迫的に叱る。

「ご、ごめんなさい」

 アルスは首を縮めてそう言うが、その目は全く懲りていないようでもある。

「ねえ、ルディア。クリムゾンシティーっていうのは、昔の首都だったんでしょ?」

「そうでしょうが、私も姫様と同じく、プロフェッサーの教科書上でしか知らない都市でありますから……」

「旧コーネリア王国の首都で、難攻不落を誇った都市ですね。シベリアの冬期の寒さや、自給自足のできる立地条件の良さ……。篭城には最適。そんなのが不落の要因だったんですよ……あ、きっと、ですけど」

 がすっ

 アルスは、にっこりと王女に微笑みかけて、知識の羅列を奏でていたのであるが、馬で隣に並列していたルディアの拳がそれを遮る。

「貴様、ユーシアが都市国家並の規模だからと言って、ナメているな?」

 漆黒の鎧を纏った騎士隊長はそう言って、馬上で胸倉を掴むという器用な技を王女に献上する。

「いいじゃない。話させてあげて?」

 黒騎士の冷たい言葉をセシリアが宥める。変な役回りだと思った王女だが、『私もちょっと大人になったのかしら』と、得意そうな笑顔を浮かべてみせる。

「そう仰るなら……」

 ルディアは、王女の声に拳の力を緩めると、宙に浮かせたアルスの体を馬上に戻してやる。

 トン

 主人を数秒間失っていた馬の鞍に、体重が掛かる音がする。

「そ、それでですね? えっと、なんでしたっけ?」

 馬上に戻ったアルスがけほけほっと、喉を押さえて言葉を続けようとした時だった。

「待て……! あの土煙……。クリムゾンシティーの方角。先方隊っ、敵軍かっ!?」

 前方の視界に僅かに映る砂煙。それをいち早く見つけたルディアが大声をあげる。

 それに反応して、大行列となって荒野を横断していたユーシア王国軍の陣形が著しく変化をはじめる。

「……違いますよ。僕達は宣戦布告もしてないし、愚衆政治に陥っていたクリムゾン自治区です。おそらく……」

 王女の馬車の傍から離れ、前線へと駆け出すルディアを、一人冷めた視線で見送ると、アルス小さな声で言う。

「おそらく……?」

 その声を聞き逃さなかったセシリアは、言葉の続きを聞こうと声をあげる。

「野党の類かなんかかと……」

「あの馬印……。話には聞いているが」

「クリムゾン周辺に出るとか言う、ルードとかいう盗賊団なんじゃないのか?」

 アルスの声と同時に、前方からいくつかの声が響いていて、それに重なる。

「……なんだが、叔父様みたい」

 ちょっと頬を赤くしたセシリアは、ただ一人慌てずに状況を判断できていたようである新入りの騎士に感心すると、そんな言葉を彼に送る。

「アスエル閣下……ですか?」

「うん。ちょっとね」

 周囲の兵士達が、武器をひき抜いて馬を手綱をひくのを尻目にアルスは、にっこりと王女に微笑みかけた。

『やっぱ似てるわ』

 そんな微笑がそっくりなのよ、とセシリアは思った。そう考えることで、ある程度の数が生み出したようである砂煙も、そんなに怖くはなくなるのである。

「直接お会いしたことはないんですよ」

「騎士なんだから、いつか会えるわよ」

「ええ。――あ、姫様は馬車から降りた方が良いです」

「この馬車、目立つのね?」

「それもそうですけど、二頭の馬が興奮しだすと、暴走じゃ済まなくもなりますから。こちらへどうぞ」

 いくつかの悪い予想が脳裏に浮かんだアルス。表情は変えずに王女に告げる。

「……相乗りになるの?」

「それはそうです。どうぞ?」

 アルスは馬車を制止させて、その戸を開けると、セシリアに手を伸ばして言う。

「……うん」

 ちょっと頬を赤くて俯いたセシリアは、素直に差し伸べられた手を取る。

 その瞬間だった――。

 アルスの悪い予感が的中したのは――。前方の大きな砂煙が2つに分裂している。

「姫様は、馬車を盾にしていてくださいますか?」

「こちらは正規軍なのに、私は隠れてなきゃだめなわけ?」

 馬車から降りたセシリアは、赤い宝玉を抱きしめてアルスを見上げながら言う。彼女にも、先方の砂煙が二つに分かれた理由はある程度理解できていた。

「そりゃあ壊滅するのは向こうですけど。一応。警護は厳重にお願いします」

 アルスは、駆け寄ってきた兵士数名とセシリアにそう言い残すと、手綱を思いっきり振る。





「やあ、ルードさん。今は盗賊屋さんをしておられるのですか?」

「……アルス=リル=クイックステップか。お前は、お馬屋さんになったのかい?」

 黒色の鎧を纏い銀色の剣を構えたアルスが、ルードと呼ばれた男と対峙したのは、周囲が砂煙で覆われて、セシリアの居る本体の姿が見えなくなった頃であった。

「いいえ。残念ですが、馬を売りに来たわけではありません」

「ほーう。じゃあ俺様達を邪魔しに来たっ。てのね」

「貴方がうちの姫様を苛めるというのなら。そうなりますね」

 アリスは構えていた剣を下げて、にっこりと微笑む。それを見た皮製の鎧を着こんだ中年の男は、背筋を冷たくすると、ぎこちない笑みを返す。

 周囲ではすでに戦いが始まっているようで、金属が作り出す激しい音が荒野に木霊している。幸いアルス達のそばには誰も居ないようで、騎馬をゆっくりと後退させながら、彼等は言葉を続けることができた。

「姫様だぁ? まさかとは思ったが、獅子王の娘がいるのか?」

「とすると、目的はスターブルーの方ですか。あんなもの何に使います?」

「そそ、俺達の狙いは解凍したフレームの方。何に使う。というよりは、戦争の道具にさせない為にロスト関連の兵器は、俺達が回収しているってわけだ」

「たくさん集めて、国でも作りますか?」

「それはいいな。俺達は終わりの3日間の傷跡を背負っている。クリムゾンシティーって都市国家は、民主主義とかぬかすが、毎年あそこから身包みはがされた状態で、シベリアに打ち捨てられる人間の後がたたない」

「そんな人達まで、終わりの3日間の傷跡だといえるルードさんにお願いがあります。僕達のクリムゾン解放を手伝ってもらえませんか?」

「ああ?」

「今なら、双方ともに被害は最小限で済みます。でもこれ以上は」

「ヤダね」

 ルードは砂煙の向こうに、赤く輝いて戦場を駆け回る球状の光を見て、自らも真っ赤な舌を出して応える。

「理由は?」

「信用ならね。獅子王の娘ってのは、北の国から来たって言うじゃねえか。お人形なんだろ?」

「……その目で確かめてみてはいかがです?」

「もし……断ったらどうするつもりだい?」

「このまま退くならよし。しかし、姫様に何かあれば、貴行等の身の安全は保障できません」

「お前一人で十分だというのかい?」

 苦笑するルードは、アルスの瞳の色を伺って問う。教会にいた小さな子供が、今は黒い鎧を着て自分の前に立ちはだかっているという事実が直視できたからこそ、ルードの戦士としての勘がそうさせたのだ。

「どういう方法で僕を倒すつもりです? お考えがあるなら是非聞かせてください」

 そのルードの視線を後追いする形で、アルスの微笑みに携えられた言葉に鋭さが加わる。

「……ナンバー1とは違った魅力だよな」

 ルードは、ガクンと馬上で肩を落とすと、腰に添えてあった剣を鞘ごと地面に投げ捨てる。

「ありがとうございます」

 アルスは、自分の意を受け止めてくれた盗賊団の棟梁に精一杯の微笑みを送った。



 ――――荒野の空に信号弾の輝きが灯ったのはその直後だった。



















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