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弦・今昔物語


1 はじめに

ウクレレの弦は何でできていますか?
ほとんどの人は「ナイロン」と答えると思います。
中には「フロロカーボン」と答えるマニアの方もいらしゃると思います(笑)

そうです。白弦も黒弦も現在では、そのほとんどがナイロンでできています。
「戦後、強くなったのは女性とストッキングである」という名言でも分かるように、ナイロンはそれまでの繊維を凌駕する強度をもった画期的な繊維なのです。

それでは、ナイロンが登場する前は何の弦を張っていたのでしょうか?
答えは「GUT(ガット)」です。
GUTとは動物の腸のことです。ヴァイオリンなどの弦楽器は羊の腸でできたGUTを張っていました。
ナイロン弦を張ったギターのことを「GUT GUITAR(ガット・ギター)」と呼ぶのは、かつてGUTを張っていた名残です。

このGUT弦は、すぐ切れるので、往年のウクレレプレイヤーはいつも予備の弦を用意しておくとともに、1本切れても、あわてず演奏できるように、技術を磨いていたそうです。
しかし、日本ではその姿を見ることはほとんど不可能な状態です。
(海外では細々と製造されているようです。)

その貴重なGUT弦が手に入りました!!
ご提供いただいたのは、NUA(日本ウクレレ協会)の小林正巳さんです。
さらに、最新の弦「コオラウ・ゴールド弦」もいただきました。
ゴールド弦はアキオ楽器の社長さんから小林さんへプレゼントされたものですが、私の方へまわしていただきました。社長さん、ありがとうございます。

それでは、これらの2つの弦について、レポートしていきます。
弦・今昔物語をお楽しみください。


2 画像

GUT弦

それでは、パッケージをご覧ください。
半透明なパッケージですが、ビニールではありません。
硫酸紙のようです。

小さなパッケージです。現在のghs弦のパッケージと比較してみました。

このパッケージを開けると、4つの袋が出てきます。

それでは、弦を取り出してみます。

パッケージにGolden Domeとあるように、金色(飴色)の弦が出てきました。
手触りは、たこ糸にロウを塗ったような感触です。
臭いはありません。

Ko'olau Gold 弦

続いて、最新のコオラウのゴールド弦をご覧ください。
目映いばかりの金色のパッケージです。

それでは、中袋を取り出してみます。
普通の紙の袋に弦が入っています。

弦を取り出してみました。名前のとおり、金色の弦です。

手触りは、少しザラついていて、ダダリオの弦に似ています。


3 形状

GUT弦、ゴールド弦の太さを計測してみました。参考に現在最もポピュラーな弦のひとつである、ghs弦のデータも載せました。

種類 1弦 2弦 3弦 4弦
ghs 0.63mm 0.81mm 0.91mm 0.71mm
Gold 0.65mm 0.85mm 0.95mm 0.70mm
GUT 0.75mm 0.85mm 0.90mm 0.75mm

ノギスにて測定(精度:0.05mm単位)
印はカタログ値 1inch=0.025399mで変換

ghs弦とGold弦は、ほぼ同じ太さです。GUT弦は弦ごとの太さの差はあまりありません。
参考までに、ghs弦とGold弦はハワイアンチューニング(GCEA)、GUT弦はアメリカンチューニング(ADF#B)です。

長さは、ghs弦がテナーにも張れるぐらいの長さなのに対し、Gold弦、GUT弦ともにスタンダードにちょうど張れる長さで、余裕はあまりありませんでした。


4 音

コオラウのGold弦は当然、コオラウに張ってみるのがいちばん相性が良いと想像できますが、残念ながら、そんな高価なウクレレは持っていません。
そこで、コア単板のカマカに張ってみました。

GUT弦は相当古い物なので、弾力がほとんどありません。
まずは、1弦からゆっくり慎重に張ります。チューニングメーターがA音の手前のGを示した瞬間、パチッ!
残念ながら切れてしまいました。

今度は、いちばん太い3弦を張ります。途中のA音になったところで、ミシッ!と音がしました。
辛うじて切れることは免れましたが、張ることができません。

そこで、妥協策として2弦をCで張って、他の弦と音を比較してみました。

録音方法は、カマカのブリッジ横にピックアップマイク(EDM製)を取り付け、Roland UA-100でAD変換(アナログ→デジタル)を行い、ハードディスクへ録音しました。

それでは、まず、音をお聴きください。FMラジオ並の音質に圧縮してあります。

ghs弦(196KB)    Gold弦(170KB)   GUT弦(53KB)

ghs弦とgold弦はハナコサン(GCEA)とハワイアンバンプ、GUT弦はC音を2回弾いています。
聴いてみて全体的な印象は、次のとおりです。

  • ghs弦はメリハリの効いた明るい音

  • Gold弦はふくよかなゴージャスな音

  • GUT弦はボンッと太鼓のような音

■波形

録音したC音の波形を示します。
横軸が時間、縦軸が音のレベルを表しています。

ghsは音がゆっくりと減衰し、しかも、余韻が長くなっています。
驚いたことに、GoldとGUTは似たような波形を示しています。2つとも速い減衰です。このことから、GoldとGUTは、はぎれの良い音だといえます。

■周波数分析

続いて、同じC音の周波数を分析してみました。
横軸が周波数です。右へ行くほど高い音になります。縦軸はレベルです。

ghsは高音域まで、倍音が良く出ています。音が明るく感じるのは周波数の高い成分が多いからだと思われます。

Goldはghsに劣らず倍音が出ています。そして、若干中音域が厚く出ています。このことにより、ゴージャスな感じがするのだと推測されます。

GUT弦は倍音があまり出ていません。高音域は全くありません。40年以上前の弦で、硬くなってしまったことに原因があると思います。


5 おわりに

ウクレレの古い弦と最新の弦を比較してみましたが、最新のコオラウのGold弦はGUT弦に何故か似たところも発見できました。
もしかしたら、コオラウ・GoldはGUT弦を意識して作られたのかな?と想像しています。
そうならば、まさに温故知新です。


6 謝辞

今回のレポート作成にあたり、小林正巳さんには、宝物であるGUT弦をいただき、ありがとうございました。本の世界でしか知らなかったGUT弦を自分のウクレレに張ってみるという、貴重な体験をさせていただきました。
残念ながら、4本全部を張って演奏することはできませんでしたが、GUT弦の特徴につきまして、わずかながらでも解明することができました。

なお、GUT弦を張ったヴィンテージウクレレによるCDが発売されたそうです。
いずれ、小林さんのサイトで紹介されると思いますが、そのときはリンクさせていただきます。

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