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弦・今昔物語・2


1 はじめに

前回は、40年以上前のガット弦についてレポートしましたが、時間の経過による劣化が激しく、満足のいくレポートができませんでした。
ガット弦は、今はもう日本では入手が困難になっていますので、諦めていましたら、日本ウクレレ協会の小林正巳さんから荷物が届きました。

なんと、新品のガット弦が2種類と三味線の糸が入っていました。
それでは、これらの弦について、レポートします。


2 Aquila弦

大きな鳥(タカ?アホウドリのようにも見える)がアルプスの山をバックに飛んでいるマークが印象的。裏は金のシールで封印されています。イタリア製。

封印を解き、表のパッケージを開けると、白い封筒に弦が入っています。
丁寧な梱包です。

小林さんによると、Aquilaでは多彩なゲージのガット弦を作っているそうです。
ウクレレにはどのゲージが合うのか不明でしたので、とりあえずナイロンと密度が同じと考えて、1弦:0.64mm、2弦:0.82mm、3弦:0.91mm、4弦:0.70mmを選んだそうです。
1弦、2弦、4弦は羊のガットを単に撚った弦ですが、一番太い3弦は在庫がなかったので、細いゲージの弦を編んだ弦が入っていました。

1弦、2弦、4弦はワックスが塗ってあるようで、表面が硬くなっています。
3弦は編んであるため、しなやかな感じです。
なお、このAquila弦は1本120cmなので、ウクレレ2台分の弦が取れます。

注意深く、カマカへ張っていきます。ペグを回していくと、ピシッと今にも切れそうな音をたてます。GCEAまで上げるのはつらいので、いったん、1音低いFBbDGで様子を見ることにしました。
既にテンションはギリギリの所まで来ています。しばらく、このチューニングで慣らしてから、一気にGCEAまで上げます。
弦はパンパンですが、どうにか切れずに張ることができました。
どうも、ガット弦はナイロン弦より密度が高そうです。

それでは、音をお聴きください。

はなこさん(67KB)   クレイジーG(102KB)

いかがでしょうか。ナイロン弦と同じような音が得られました。
テンションが強いので、音の伸びはありませんが、音の輪郭がハッキリしています。

■追記
その後、細い弦にしてテンションを下げたら、音の伸びが良くなり、音の粒立ちの良い音になりました。弦・今昔物語3参照


3 Savarez弦

ジェイク・シマグクロさんが愛用されている、フランスのSavarezにもガット弦がありました。
パッケージに「UKULELE」とありますように、ウクレレ専用弦です。各弦の長さはAquila同様、120cmありますので、2台分が取れます。

ゲージは、1弦:0.58mm、2弦:0.74mm、3弦:1.10mm、4弦:0.63mmで、3弦は銅線の巻弦になっています(右上写真の右側)。

Aquila弦は表面がワックス処理されて硬くなっていましたが、Savarez弦はしなやかです。
また、Aquila弦は撚ってあるので、螺旋状に撚りの模様が見えましたが、Savarez弦は少し色がついていますが透明です。

それでは、カマカに張っていきます。
Aquila弦のときは、破線する恐怖がありましたが、Savarez弦はぐんぐん伸びていきました。
一気にGCEAまで上げます。

それでは、音をお聴きください。

はなこさん(67KB)   クレイジーG(101KB)

いかがですか。テンションが適当なので、Aquila弦よりクリアに感じます。マーチン弦に似た感じです。音量も十分に得られます。


4 絹糸(三味線弦)

小林さんにお聞きしたところ、第二次世界大戦後は、しばらくガット弦の供給がストップし、また、外国では入手できるようになっていたナイロン弦は貴重品であったため、日本のウクレレ奏者は三味線の「糸」をガットの代用品としてウクレレに張っていました。

三味線の糸は絹でできています。最近は細い糸にナイロンやテトロンが使われていますが、今回はすべて絹糸を張ってみました。

左上の写真は見にくいですが、パッケージに「最高級三味線糸 富士糸」と書かれています。
滋賀県産の伝統産業の作品です。

三味線の糸は太い方から「一の糸」、「二の糸」、「三の糸」と呼びます。
今回は1弦、4弦に「十三−三」(十三は太さ、三は三の糸を表します)、2弦に「十三−二」、3弦に「十五−一」を張ってみました。

特に不安もなく、スムーズに張れました。見た目は黄色いので、コオラウのゴールド弦のようです。

さて、音ですが、三味線のように「ベン、ベン、ベン」と鳴るのでしょうか。
お聴きください。

はなこさん(55KB)   クレイジーG(93KB)

期待を裏切られましたね(笑)
少し高音が強調されていますが、ウクレレの音が聞こえてきました。


5 ghs弦

比較のために、最もポピュラーなナイロン弦のひとつであるghs弦の音をお聴きください。

はなこさん(61KB)   クレイジーG(102KB)


6 分析

各弦の諸元をまとめてみました。

  1弦 2弦 3弦 4弦 備考
Aquila 0.64mm 0.82mm 0.91mm 0.70mm 3弦は編み弦
Savarez 0.58mm 0.74mm 1.10mm 0.63mm 3弦は銅巻弦
絹糸 0.45mm 0.65mm 0.90mm 0.45mm  
ghs 0.63mm 0.81mm 0.91mm 0.71mm  
※絹糸はパッケージに太さの表示がないため、ノギスで測定(精度0.05mm)

Aquila弦はghs弦とほぼ同じゲージ、Savarez弦はそれよりワンランク細いゲージ、絹糸は3弦意外は極端に細くなっています。

(1)波形分析

「はなこさん」のデータをもとに、各弦の音の波形を調べてみました。
音はウクレレに貼り付けた、ピックアップマイクでパソコンのハードディスクへ録音しました。

最初は4弦です。

4弦 G

波 形

発音時間

Aquila

  438ミリ秒

Savarez

  705ミリ秒

絹糸

  873ミリ秒

ghs

  870ミリ秒

Aquila、Savarezのガット弦とghs弦は非常によく似た波形を示します。ただ、Aquilaの発音時間が短くなっていますが、これはテンションが強いためと思われます。
絹糸は徐々に音が減衰しています。

次は3弦です。

3弦 C 波 形 発音時間

Aquila

 534ミリ秒

Savarez

 2034ミリ秒

絹糸

 1393ミリ秒

ghs

 870ミリ秒

Aquilaの波形が他の3つとは全く違います。
発音開始から最大振幅になるまで、時間がかかっています。
これは、Aquilaの3弦が編み込みであるため、弦全体に振動が伝わるのにタイムラグが生じるためだと思われます。
波形のとおり、丸みのある音が出ます。

また、銅線巻弦のSazarea3弦は長いサスティーンが得られています。

次は2弦です。

2弦 E

波 形

発音時間

Aquila

 1042ミリ秒

Savarez

 1576ミリ秒

絹糸

 1677ミリ秒

ghs

 1227ミリ秒

Aquilaだけが、他とは若干違う波形を示しています。

最後に1弦です。

1弦 A

波 形

発音時間

Aquila

  484ミリ秒

Savarez

 1117ミリ秒

絹糸

  809ミリ秒

ghs

 1044ミリ秒

4弦と太さ、テンションがほぼ同じであるため、4弦と同じ様な傾向が見られます。

(2)周波数分析

続いて、各弦の周波数分析を行ってみました。

  4弦 G 3弦 C 2弦 E 1弦 A
Aquila
Savarez
絹糸
ghs

どの弦の各弦ともに、倍音がよく乗っています。
特徴を述べていきます。
  • 2種類のガット弦はghs弦より多くの倍音を含んでいる。
  • 絹糸はghs弦とほぼ同じスペクトラムを示している。
  • 3弦はAquila以外は第2次倍音が基音と同じぐらい出ている。
  • 2弦はAquilaの第5次倍音が基音より大きくなっている。他の3種は第6次倍音が強く出ている。
  • 1弦はSavarezの第2次倍音がはっきり出ている。

7 まとめ

今回の実験を通じて、ガット弦はナイロン弦以上の実力を発揮することが分かりました。
ピックアップマイクでは、うまく測定できませんでしたが、耳で聴くと、Savarea弦はghs弦より、音量がありますし、クリアできらびやかな音が出ます。

また、戦後、代用品として使われた、絹糸もナイロン弦に劣らぬ性能があることが分かりました。
私の測定環境では大きな差は見つかりませんでしたが、絹糸は中音域の厚みが弱くなっています。

最後になりましたが、貴重な弦を求め、世界中を奔走して探していただきました、小林正巳さんに感謝申し上げます。

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