< 戦略的「鎖国」論/西尾幹二(講談社)(1988/7)ノート >

小山光月 様 平成11年11月25日よりご投稿開始、29日完了

 1.今まで強かった側が自分の力の減少と後退をあらゆる局面で率直かつ公正に
   認めることの方が難しい。
 2.日本人が文化を説明の材料として強調し過ぎる傾向があるとすれば、米国人
   は反対にこれを軽視し過ぎた・・・
 3.欧米人の伝統的な生き方もじつは1個の「特殊」であり、互いに尊重し合う
   ・・・各民族が生存して行く最低の条件であり礼儀である。
 4.無差別に外国に自分を合わせるな・・・
 5.西欧人特有の主我的意識、過度の批判的精神、人間の意志的力が世界を形成
   するという人間中心の世界像・・・
 6.米国とか中国とか、外国の圧力を利用して、内敵を葬ったからである。これ
   らは概して利敵行為にになりがち・・・
 7.「外圧を利用して内敵を倒す」の域をはるかに超え、「外敵を城中に手引き
   して内敵と戦わせしめ、それに伴う流血の犠牲は敢えて問わぬ 」の過激な
   領域にする・・・
 8.外国人のものの言い方に乗せられて、自分の生命線を脅かされていることに
   気がつかないとは愚かもいいところであろう。
 9.昔からある日本弱体化政策の一部に属している。
10.フランスは戦後一貫して日本の経済進出に敵対的で、貿易障壁も高く・・・
11.今や日本は、自分の一番大切なものを涙を呑んで捨てなければならないほど
   か弱い存在ではなくなっている・・・
12.武力を持たない方がまず相手を倒す最大の武器が金の力であることは、ユダ
   ヤの昔から変わらない。
13.日本は軍事的に自分より下位に抑え、日本から資金だけを引き出したい米国
14.拒絶しつつなお学ぶそのしなやかさが大切だ・・・
15.外資系企業・・・勤労努力が、日本の社会に還元されるのではなく・・・生
   き甲斐を感じることができるのだろうか?
16.英国社会におけるスマートな生き方は田舎に籠った金利生活者のそれ、地主
   貴族文化を継承した暮らし方である・・・
17.英国における異邦人への寛大さ、ないし不感症に近い無関心主義はイギリス
   人の良さでもあるが共同体意識の衰弱の結果かもしれない。
18.イギリス一流の国際性は、この国民を蝕んでいる過度の個人主義と表裏の関
   係にある・・・
19.われわれが前者だけ身につけ、後者をいっさい近づけないなどということは
   できない相談だ・・・
20.長所を真似すれば、短所を招き寄せる結果となる。

(コメント)
 あいかわらず刺激に満ちている言葉の数々・・・中には「西尾先生がこんな言葉
 を?」「意外だ・・・」というのもあるかもしれません。ここに紹介されている
 言葉(今までのも含めて)は、「過激な言葉」「逆説的な言葉」に偏っている可
 能性が有るかもしれません。紹介者の私がそういう言葉(物言い)を好むので・
 ・・。その本の主張、トーンを理解する場合は、原本に当たって下さい。
21.イギリスが大英帝国の夢の後遺症として、インド人やパキスタン人を迎え入
   れざるをえないからといって、われわれが植民地主義の歴史的責任もないの
   に、東南アジアや南アジアの失業者を大量に受け入れなければ道義が成り立
   たないなどというのはおかしい。
22.と、自らがさながら国際人の立場に立って、日国際的な日本の一般人を叱り
   つける口調で断定しているが、氏の言う「国際的に通用しない」とは要する
   に、単に「米国世論に通用しない」ということにすぎないのではなかろうか・・・
23.米国の庇護に馴れた日本では、国際的な防衛システムと経済システムのコス
   トを負担すべきだという責任の意識が育たず、いつまでも庇護される弱小国
   のずるさを演じつつ・・・
24.自信をもった上で相手に譲ると、何もかも諦めた上で、敗北感を抱きながら
   相手にに譲るのとでは、大いに違いがある(後者の場合には、必ず危険なリ
   アクションを招く)
25.パリは人種による階級構造の都会である。
26.日本のようなごくありふれた普通の国が、パリとか、米国といった「例外」
   を模範とするわけにはいかず、またそれの真似ができないことに後ろめたさ
   を覚える必要もないのである。
27.始めからなければなしで済んでいた子供っぽい正義心や安っぽいヒューマニ
   ズムやこれ見よがしの暴露心理に・・・
28.英仏はともに国境を拡大した国である。英国はシンガポールや豪州やカナダ
   にまで支配権を確立した。フランスはインドシナ半島に進出しアフリカの多
   くをわが手に収めた。
29.人の厭がる労働を一度外国人が引き受けると、後で誰ももはやそれをやろう
   とする者がいなくなってしまうのである。
30.「わが民を強く逞しくするためにわが民に流血の試練を与えよ」これは神の
   みが口に出来る言葉であり、また神以外の何びとも口にしてはならない言葉
   ともいえよう。
31.人間が人間のためにする努力目標は、人知を尽くしてあらゆる災厄を防ぐこ
   とであり、また、よしんば災難を引き受ける場合でも、何らかの積極的な希
   望を目指して引き受けるのである。
32.結果的に、災疫を防げないこともあろう。希望を果たせないこともあろう。
   それはそれで仕方がない。求めて得られなかった希望に対しては、人は納
   得する。
33.災難と不幸だけが残ったとしても、人はこれを宿命として甘受し、ここで
   初めて、自分に対する試練が生じたと理解する。
34.試練は人間が授けるものではない。運命が授けるものである。
35.ということは、試練の内容は、人為的ではあり得ないのである。
36.人間の計画の外にある、人間の知恵や思惑を越えている。
37.それでなければ試練とは言えない。人間が人間を試すことは出来ないのだ。
38.試練という思想は、指導者にとってはいかに魅力的であろうとも、政策論
   にはなり得ないし、また、してはならないものである。
39.主観的、人為的な内容の試練であれば、それは国民に試練として受け止めら
   れる可能性も生じないであろう。
40.人間が選んだ運命は運命とはいえない。

(コメント)
今回の西尾氏の言葉は、かなり力が入っているような感じです。
日本の将来を真剣に考えている姿が目に浮かびます。

41.外国人労働者受け入れは、運命とは受け取られておらず、政策として理解さ
 れている。
42.歴史が人間に与えた試練としてではなく、やらなければやらないで済んだ人
間による選択の結果として判断されている。
43.私はロマンチストでは。しかし、空想と理想とは別だと言いつづけて来た人
   間であって理想をを失っているつもりもない。
44.真の理想は真の現実家のもとにしか訪れない。
45.古代社会以来、征服された民族は、征服者の神をわが神とすることによって
   生き延びようとする本能を具えていたといわれる。
46.日本人が最近やっと自信を回復し、外国の弱点や暗部をも堂々と指摘できる
   ほどに姿勢を正し得た状態を指して言われているのなら・・・
47.こんな風に単なる自信の回復状態を、日本人自らが「傲慢」と名づけて自己
   反省するほどにお人好しであることが、むしろ日本人が少しも「傲慢」でな
   いことの証拠だといえないだろうか。
48.いくら愛国心の発露とはいえ、度が過ぎていて、不快だった。
49.猫の目のようにくるくると、外国の価値を上げたり下げたりするのは、自分
   の自信の無さ、自分に対する不安に発しているのに過ぎない・・・。
50.豊かさの実感というような心理的満足度が文化の異なる国同士で果たして比
   較計量できるのかどうか・・・。
51.私たちはどうも惰性で比較できないものを比較するという論理上の過ちを犯
   していないだろうか・・・。
52.日本の文化は「空虚の念」(漱石)いつまでたっても「普請中」(鴎外)
53.原理上日本に持って来ることの出来ないものを理想化して、永遠に自分を劣
   等視しつづけるのは、ある意味で精神の怠惰である。
54.あらゆる民族を納得させる歴史はない。
55.戦争当事国の間で、完全に同一の歴史記述を行うことは不可能である。
56.とかく物事の長所がそのまま裏から見ると弱点につながっているという文明
   の全体構造を視野に収めて考察していない。
57.外国にそのモデルを探す自らの弱さを捨てよ。
58.外国の方式を理想化して「国際化=自由化」を実行したら、環境も条件も違
   うのだからとんでもない事態になる・・・。
59.弱点の反対側には長所があり、特殊な事実の表側には一般的な事実がある。
60.ところが弱点と特殊だけを組合わせ、それ以外を切捨てて構成した作文は何
   も知らない人間にさながら事実の全体像であるかのような効果を発揮する。
61.日本には日本独自の個人主義、自由主義があって初めてテクノロジーの発達
   を見たのだと私は思う。
62.物質的側面では好印象を与える。精神的な側面では醜悪化される。
63.物質文化面と精神文化面の二つは不可分にして結合しているはずなのだが、
   欧米人はこれを敢えて二分化し、前者の成功を承認せざるを得ない分だけ嵩
   にかかって後者への攻撃をしつづける。
64.基本モチーフが欧米の精神文化の優位という思想の枠内にあり・・・。
65.人間が生命の延長を図って、かえって生命力を涸渇させているという逆説・
   ・・。
66.死のないところには生もない。
67.一般的衰えを、英国、フランス、ドイツ、米国、日本という順番で産業革命
   の起こった時代順に活力の移動が行われているからだ・・・。
68.国家全体の経営をどうするかという観点は労働組合にはない。

(コメント)
 この本の紹介は今回で終わり。