平成 11年 (1999) 4月12日[月] 先負

主張 東京再生へ石原氏に重責

【統一地方選】
首長は改革へしのぎを削れ
 統一地方選の最大の焦点となった東京都知事選は、事前の予想通り石原慎太郎氏が他の候補を圧倒した。抜群の知名度とその強烈な存在感が勝因と思われ、都民は「強い知事」を選択したといえるだろう。だが、都の財政事情は財政再建団体に転落必至といわれるほど最悪の状況にある。青島都政の“空白の四年間”を取り戻し、東京を再生させていくために石原新知事の責任はきわめて重い。

 都がこの三月にまとめた「今の東京を色でいえば何色か」という世論調査では、もっとも多かった答えが「灰色」(三六・九%)だった。知名度の高い多彩な顔ぶれの中から、都民が新たな「首都の顔」に石原氏を選んだのは、混迷と閉塞感を突き破るリーダーシップに期待したものとみられる。

《国との対決姿勢に懸念も》

 その石原氏の首都再生のキーワードは「ノーと言える東京」である。政治の混乱と官僚主導のかじ取りが、国だけでなく地方の発展も阻害しているとし、「国の反対や干渉に“ノー”と言い切る主体性を確立する」と主張してきた。

 明治以来の中央集権体制を見直し、地方の自主権を拡大することは、政府の取り組む地方分権の流れにも合致する。ただ、地方自治の枠を越えて、いたずらに政府との対決姿勢を強めることは、かえって都政の停滞を招くことになりかねない。石原氏が二十四年前に果敢に挑戦した美濃部革新都政は、まさに「ストップ・ザ・佐藤」を旗印に掲げて登場し、中央政権と対峙していた。だが、最後は巨額のばらまき行政のツケと、自ら「惨憺たる幕引き」という退任の弁を残して都庁を去った。この二の舞いは許されない。

 国と地方の役割分担を明確にした上で、日本の首都として、世界の拠点都市としての東京のあるべき姿を考えることが必要だ。国会決議に基づく首都機能移転計画への対応を含めて、二十一世紀の首都像をどう描くか、幅広い都民の意見も取り入れたビジョンづくりが急がれる。

 当面の緊急課題は、いうまでもなく財政危機の乗り切りである。十一年度予算は財政健全化債など多額の借金でかろうじて編成したが、一般会計予算額は六兆二千九百八十億円と前年度比五・六%減の過去最大の削減幅となった。財源不足額が三千二百億円を超えると再建団体に指定され、財政運営は国(自治省)の管理下に置かれる。

 都の試算によると、来年度は危険ラインをはるかに超える六千二百億円の財源不足が見込まれ、このままでは“破産”は必至の状況だ。青島幸男知事が異例の一期で退陣したのも、財政運営への自信喪失が理由ともされる。

《ばらまき行政にもノーを》

 石原氏は選挙戦の公約で、財政再建については、「職員削減などすでに発表されている行政改革は、いかにも能がなさすぎる」として、東京都の資産を債券化して売り出す方式や、都主催の債券市場で海外の資金を吸収し財政再建と雇用促進をはかるといったユニークな発想を打ち出している。

 交通機関、福祉事業、病院、公立学校などの民間運営への移管、さらに地方への偏重が指摘されている地方交付税の見直しや地方消費税の引き上げなどの方策を挙げているが、いずれも即効性は期待できない。やはり、当面は徹底した歳出削減や組織・機構のスリム化を進めることが迫られよう。同時に、硬直化した財政運営を根本的に改めることが重要だ。

 そのためには、都民の行政依存や議員の選挙対策がらみの要求を排除し、優先度に応じた予算の重点配分を敢行する気概が求められる。青島知事が打ち出した七十歳以上の約七十四万人に交付している交通機関の無料パス(シルバーパス、年間経費約百五十三億円)の見直しも、議会の反対に阻まれた。

 栃木県足利市では高齢者に対するアンケート調査で、実に八割が「バスの無料制度は必要ない」と返上の意思を示したことを受けて廃止に踏み切った。都民の世論調査でも、今後の都政運営について「予算の効率的な執行」を求める声が三三・四%を占めている。行政への甘えに対しても、きっぱりと「ノー」を言えるかどうかが、石原都政の真価をはかることになる。

 危機的状況にあるのは東京だけではない。大阪府は新たに四百億円の財政健全化債の発行で何とか急場をしのいだ。神奈川県も来年度二千二百億円の財源不足が見込まれ、再建団体転落の危機が迫っている。ともに二期目の横山ノック、岡崎洋両知事にとって、これからが正念場だ。

 今世紀最後の統一地方選で選ばれた首長や議員の任期は、二十一世紀につながる。財政再建など当面の課題解決とともに、新世紀の活力ある地域社会への“かけ橋”として、重い役割を負っていることを肝に銘じるべきだ。