電子計算機研究会 発足の辞

 マイコンと聞いただけで、われ関せずと背を向けるのは五十代。何とか理解しようとキーボードに向かうのは三十代。これは便利だ面白いとすぐ使いこなすのは二十代。ーーーこれが常識らしい。そして、なにも秋葉原まで行かなくとも、県内のマイコンショップの一つに入って見れば、小・中学生が自由自在に操作しているのにお目にかかれる。それはもう驚きである。

 三千年の昔、孔子は学問上達の秘訣として、「これを知る者、これを好む者に如かず。これを好む者これを楽しむ者に如かず。」と喝破したが、大人どもがマイコンを理解しようと悪戦苦闘しているのに、小童たちはまさに楽しみながらスイスイ操作している。これほど格言がぴったりする例もなかろう。
 
 ひるがえって、高校教師、特に数学の教師を見ると、もちろん私を含めてだが、極めて保守的である。授業に対する姿勢の改革や社会環境の変化への対応には甚だ消極的な人種である。チョーク一本とおのれの頭脳さえあれば充分という信仰から脱却できず、いわんやコンピューターなど無縁のものとして知ろうともしない。果たしてこのままずっと偸安の夢をむさぼることが許されるのか、著しく疑問である。

 さて、私どもは、かくてはならじと相集い、敢えて社会一般の常識に挑戦し、コンピューターと仲良くつきあってみようと考え、本会を発足させた。従って、他人様まで啓蒙しようなどという高遠な目標は持たず、ただ同行の士によるワイワイ・ガヤガヤのクラゲなす、ただよえる状態から第一歩を踏み出したのである。扱う機種もバラバラ、研究内容も雑多。それでもよいのではないか、となかば開き直りながらの発足の辞としたい。

                           1981年頃か