【神経症】

[身体表現性障害]

分類と診断基準は「こころの健康事典」(町沢 静夫 著/朝日出版社/1999年)によります。「こころの健康事典」による診断基準は、米国精神医学界による診断マニュアル「精神疾患の診断と統計の手引き」(DSM)に基づくものです。

 

心気症
Hypochondriasis

ある特定の身体の病気、たとえばガンや肝硬変、エイズでないかと心配し、 不安におびえる状態を心気症といいます。
自分でも完全に信じ切っているわけではなく、 疑問を感じてもいるのですが、だからといってその考えを払いのけることができません。
心気症の症状は、孤独や挫折、失恋などのストレス、実際にその患者を取り巻く環境によって 引き起こされるケースが多いのです。
本当は別のところに不安があり、その不安が身体の不安に 置き換えられたものと考えることができます。

【診断基準】

1. 頭痛や胃痛といった、ささいな心身の不調を誤って 解釈し、「重い病気にかかるのではないか」または「重い病気にかかっている」と思いこんでいる。 検査などで医学的に違うことが明らかになっても、考えを変えられない。
2. 1の確信は妄想のような頑固さはない。また、醜形恐怖のように、 外見についての心配とは限らない。
3. 1のように確信しているために強い苦痛を感じていたり、社会的、職業的、 そのほか重要な場面で支障がある。
4. この状態が6ヶ月以上、続いている。

 


転換性障害[転換性ヒステリー]
Conversion Disorder

転換性障害は、ストレスや心の中の葛藤が身体のさまざまな症状に”転換”されて、明らかな身体障害 (声が出ない、歩けないなど)になって現れるというものです。
転換性障害には「疾病利得」といって、いわば「病気になることで得られるメリット」がつきものです。 これには2つあり、1つは病気になることで、自分の内的な葛藤を意識の外へ置けること、 2つめは病気になることで、人の援助や愛情を受けられることです。

【診断基準】

1. 運動機能や感覚機能を損なう症状が1つ以上あり、神経の病気や身体の 病気であるかのように見える。
2. その症状が始まる前や悪化する前に、本人にとってストレスとなるようなことがあり、 原因には心理的なものが関係していると判断できる。
3. その症状は本人がわざと作り出しているわけでもなければ、 症状があるふりをしているわけでもない。
4. 検査など適切な方法で調べた結果、原因は身体疾患でもなければ 薬物などでもない。
5. 症状のために強い苦痛を感じていたり、社会的、職業的、 そのほか重要な場面で支障がある。



身体化障害
Somatization Disorder

身体表現性障害の一つに入る精神障害の一つです。
心気症がガンや心臓病など「特定の病気」を訴えるのに対し、身体化障害は「頭が重い」 「下痢がある」など「さまざまな身体症状」を同時に訴えるのが特徴です。

【診断基準】

1. 30歳になる前から症状が始まり、数年間続いている。
2. これまでに次の1〜4すべての症状を経験している。
なお、「疼痛」というのは「ズキズキする、うずくような痛み」のこと。
(1) 4つの疼痛症状:4つ以上の違うところか機能的に疼痛がある。たとえば頭部、腹部、背中 、関節、四肢、胸部。
(2) 2つの胃腸症状:疼痛以外の症状が2つ以上ある。たとえば吐き気。おう吐、下痢。
(3) 1つの性的症状:疼痛以外に1つ以上、性的な症状か、生殖器の症状がある。たとえば性的無関心。 勃起不全や射精機能不全、月経不順、月経過多。
(4) 1つの非神経学的症状:いかにも神経学的にみえるが、実はそうではなく、原因は精神的なものである。たとえば、協調運動や平衡運動の障害、麻痺や部分的な脱力、えん下困難(飲みくだせない)、失声(声が出ない)、排尿障害、幻覚、触覚や痛覚の消失。複視(ものがいくつにも見える)、視力喪失、聴覚喪失、けいれん、記憶喪失、解離症状、失神などの意識喪失。
※協調運動 動いているボールを観ながら手を出してつかむというように、視覚 などほかの感覚を同時に使いながらの運動。
※平衡運動 まっすぐ歩くなど、バランス感覚を使った運動。
※解離症状 心のまとまりがストレスのために解離してしまう症状。

このようにDSM−Wでは、診断基準に身体のさまざまな部分にわたる症状が入っています。
ですが、実際にはこれらすべてを満たしている患者はほとんどいません。
日本人にあっては、身体化障害の診断基準は、もっとゆるやかに考えられるべきでしょう。 実はアメリカの精神科医たちでさえも、この基準は現実的にはきついと考えている人が多いのです。
したがって、身体化障害とは、要は「身体のあちこちに痛みや違和感があるもの」と考えるのが 現実的だと思われます。


疼痛性障害
Pain Disorder

1つ以上の場所にズキズキとうずくような痛み(疼痛)がいつも感じられるのですが 、内科的にも外科的にも異常はなく、明らかにストレスが関係していると認められるものを 疼痛性障害と呼びます。

【診断基準】

1. 深刻な疼痛が身体の1カ所以上にある。
2. 痛みのために強い苦痛を感じていたり、仕事や社会的な 面で支障がある。
3. 心理的な要因が、疼痛の原因やその深刻さ、再発などに 大きく関わっている。
4. 疼痛は本人がわざと作り出しているわけでも、痛むふりを しているわけでもない。
5. 疼痛は感情障害や不安障害、そのはか精神病の症状として 説明できるものではない。



醜形恐怖[身体醜形障害]
Body Dysmorphic Disorder

醜形恐怖は自分の顔や身体が醜い、みっともないと思いこみ、 外出できなくなるなど、社会的に支障をきたすというものです。
醜形恐怖の人は、まわりの人が何度否定しても、考えを改めることができません。
その意味で一種の強迫観念といえます。


【診断基準】

1. 特定の対象や状況に対して、理屈に合わない強い恐怖を感じる。
2. ほとんどの場合、すぐに強い不安に襲われ、パニック発作が生じることもある。 本人も頭では、恐怖を感じるようなことではないとわかっているのだが、理屈よりも先に激しい恐怖に 打ち負かされてしまう。
3. 恐怖になる対象や状況を避けているが、強い不安や苦痛を 感じながら耐えている。
4. 1〜3のために、日常生活や仕事・学校、対人関係などで 支障がある。
5. 18歳未満の場合、6ヶ月以上続いていること。