国際看護学


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NO.1 国際看護学の誕生  どこで学べるか  国際看護学の構成  国際看護学への期待

国際看護学の誕生

国際看護学は、年々増える看護職の海外医療活動への参加、在日外国人の保健医療問題の増加などにより、関心が高まっている新しい分野である。興味を持つ人が多いにも関わらず、各学校でのカリキュラムもまちまちで、今まで系統的に教えられることは少なかった。

しかし、メディアを通じ世界のいたるところで、基本的な医療にさえ手が届かないために命を落とす人々、その国の社会・政治・経済・文化などの問題により安心して生きるという権利を奪われている人々、突発的な災害により緊急に医療を必要とする人々等の姿を目にする。こういった状況の中、手探りで国際医療協力活動をしてきた看護職は、第二次世界大戦以後およそ3000人にのぼると言われる。1)

厳しい現場で試行錯誤してきた彼らの経験や研究により、1999年「国際看護学入門」が出版され、国際看護活動を支える学問として誕生し、今後ますますの発展がのぞまれている。

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どこで学べるか

国際看護学はどこで学べるか。1997年の竹内ら2)の調査では、「国際保健、国際看護、国際医療、比較看護」という「国際」を視野に入れた科目を設けている看護系大学は45%であったが、「国際看護」の概念やイメージは確立されておらず、大学ごとに異なった概念で用いられていた、と述べられている。また、その科目で取り扱う国・地域別対象では、「先進国:15%」「先進国・途上国:10%」「途上国:35%」「地域の限定なし:40%」とばらつきがあった。内容も先進国の看護制度等が中心である科目や海外研修がある科目等さまざまであった。

「国際」という名がついても、内容については各学校でかなりの違いがあるため、詳しくは各学校に問い合わせるのが賢明であると考える。

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国際看護学の構成

途上国において、日本では看護職が行うことのない縫合や麻酔(アメリカの麻酔看護師とは別)を業務として要求されたりする場合がある。そこではその国における看護職の役割が異なるのである。また、日本ではなじみがないデング熱、マラリアなどの熱帯病も必ずと言っていいほど出くわすため、これらの知識も必須である。加えて、これらの病気を媒介する蚊を駆除する目的で啓蒙活動をする場合、識字率が低い地域であれば文字ではなく絵の活用をするなど工夫する必要がある。そしてこれらの活動の前後の変化を客観的に示す統計学や研究方法の知識も備えていることがのぞましい。

日本での看護職の常識、たとえば清拭は暖かいタオルでする、というものは水浴びをする習慣のある暑い国では非常識になる。また、身の回りの世話は身内以外にはさせない、という習慣のある国では看護職が患者の清拭をすることはまれである。

このように、自分の持つ常識を超えて、その地域のさまざまな背景をもとに、看護の知識・技術を柔軟に使っていくことが求められる。そこで、はいつまでも試行錯誤の個人の努力に頼らず、質の高い国際協力を実現するために「国際看護学」の構成の試案(以下:表)を提示している。

 T.総論

 国際看護の概念  国際看護と異文化看護  国際看護が必要とされる世界の現状など

 U.国際看護の対象の一般的特徴

 社会、民族、地理的特徴・自然条件(気候、周辺国との位置関係などを含む、政治、経済、国際関係、歴史、文化、宗教、教育、言語、ジェンダー、国際機関のかかわり、など

 V.保健医療の状況(Uがどのようにかかわっているのかの観点から考える)

 1)一般的状況

 人口構成、疾病構造、保健指標、保健医療にかかわる国際機関・援助機関。ローカルヘルスシステム、保健衛生上の課題、国家の保健政策、医療職それぞれの役割、看護の機能・看護職の役割

 2)特殊な状況

 自然災害、戦争被害、など

 W.国際看護方法論(Vから浮かび上がる問題をどのように解決するか)

 国際看護に必要とされる一般的な能力

 開発途上国で必要とされることの多い知識・技術、教育方法、管理方法

 プライマリー・ヘルスケア(PHC)と看護職の役割、PHC活動で必要とされる知識・技術

 異文化看護の方法

 調査・研究(アクションリサーチの重要性)

 X.その他国際看護が必要とされる状況

 緊急援助

 在日外国人医療と看護

 *国際看護学は下記の授業形態で教授される(特に海外実習は重要)

 1.理論の講義

 2.演習

 3.実習

  1)早期体験学習(スタディツアーへの参加)

  2)国内実習

  3)海外実習

 森淑江;国際看護学の概念と看護の国際協力に関する日本の現状、看護教育、p.1029,Vol.38 No.12,1997 .12より抜粋

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国際看護学への期待

このように、国際看護学を系統的に教授する柱は立てられてきているが、各学校で教える人材の不足があるのではないだろうか。海外で活動してきた看護職を講師に迎える学校も増えているようではあるが、全国的に展開されるにはまだ足りないと想像する。

研究室として国際看護学教室を設ける看護系大学もごく一握りであるため、この分野での研究者の育成が限られている一要因であると考えられる。

また、この分野の科目はほとんど選択科目として位置づけられており2)、必須科目として組み込まれていないことからも、この領域がまだ補足的にしかとらえられていないことのあらわれであると思われる。しかし、学生達の国際看護領域に関するニーズの高まりと国際看護学の確立・教授する人材の育成・確保により、その価値が認められ、広く学ばれる学問になることを期待する。

なぜなら、国際看護学の視点は、日本における地域看護にも通じるため、人間理解と看護活動の展開に大いに役立つものだからだ。

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