クリティカル・パス (critical pathway)    


 クリティカル・パスって何?

 「背景」:アメリカでDIG/PPS1)の導入により、コストを減らして質を維持する必要性がでてきた。          

1)DRG:(Diagnostic Related groups),PPS(Prospective payment System)

「診療行為別予見定額支払い方式」:患者を約490疾病の診断群のいずれかに

分類し、必要なサービスを予測して、入院日数や消費される医療資源に見合った

金額をあらかじめ定め、その一定の患者群(診断群)に一定の金額を支払う

システム。

……・決められた額よりも多く医療を提供してしまったら病院側の損失になる。


       
  一定の在院日数の中で、費用の削減と、同時に質の高いケアの提供、

さらによい状態で退院させなければいけない。

 

 クリティカル・パス表


・この体制の中で病院が生き残るために考えられたマネジメント・ツールの一つ
・ 患者が退院までにどのような状態になればよいのか、またその望ましい状態になっていただくために、 個々の医療チーム・メンバーは何をどう援助したらよいのか、についてチームのコンセンサス(全体の同意)を盛り込んだ表。
・ 患者の入院から退院までの実施内容、診断別患者の病院滞在のアウトライン
・ ある疾患で入院する患者に対して誰がケアに当たっても一定レベル以上の医療を適切な時期に提供し、それに対して医療の質を保証しようとするもの。
・ 患者への質の高い医療の提供とその医療内容の開示が求められるようになり、それらを保証する一つの手段。
・ 医師の治療計画、看護婦のケアプラン、コ・メデイカルの介入などを整理したもの。
・ 適切なアウトカム(期待される結果)を保証することを前提に、必要なケアを時間軸上に統合するも の


 「パス表の例」 (このページの作者による)

  例:乳癌患者のパス
  入院時(/) 術前2-3日前 手術前日(/) 手術当日(/) POD@(/) PODA(/)
検査 外科入院時一般          
食事 常食(DM等は指示確認)  

21時〜絶食

24時〜絶飲食

絶食

朝〜流動

夕〜七分粥

朝〜全粥

夕〜常食

内服

注射

点滴

中止薬等確認   21時眠剤・   下剤内服 麻酔科指示に準じる

点滴一本

末梢抜針

抗生剤内服 開始
安静 フリー     術後床上 リハビリ開始 リハビリ
排泄      

術前GE150ml

op室にてBa挿入

Ba抜去

蓄尿不要

 
清潔     入浴   全身清拭 全身清拭
その他 CT・MRI・シンチ等

opオリエンテーション

抗生剤キシロカインテスト

剃毛

麻酔科・op室Ns訪問

術後SBバッグ

酸素指示迄

ミルキングローラー準備

   

 「メリット(何をねらっているか)」
質の均一性の維持と向上:医師の間での医療内容の平均化
                   ベテランと新人でのケアの差をなくす
                   パスからはみ出した事柄(ヴァリアンス)のデータを集め
                    分析してパスの改善を図る
コストの減少:業務の整理による資源の有効利用
          入院期間の短縮化
患者満足の向上:患者オリエンテーション用パスを作成し、説明することで不安の軽減
医療者用オリエンテーション・ツール:新人看護婦・医師、学生、パート看護婦へのオリエンテーション
ケア継続性の維持:病棟内ばかりでなく、他の病棟に転科となったとき、術前・術中・術後に
               患者ケアの提供者が変更する時もケアの継続が維持できる。
医療チーム協力の強化:患者がパスのどの時期にいるのか、それぞれの職種が適切なケアを
                  提供できているか適宜話し合う。
看護記録・診療記録の負担の軽減:パス表にあらかじめ印刷してある観察項目の欄をチェック、
                          責任の所在を明らかにするためにサインする。
                          記録のルーチンワークの短縮化。フローシートの活用。


 「懸念されること」
個別性の配慮に欠ける:医師が特定の患者に使用するパスの決定を行い(中止の決定も)
                  一般化を避けるには看護婦が個々に合ったケアプランで表現
医療訴訟のおそれ:パス通りいかなかったとき。医師は職業上のリスクを負うことになる。
看護記録とパス:看護記録は義務。パスの所在は模索期。(カーデックス、カルテ)
新入院患者の増加、入院患者の重症化…在院日数の短縮化に伴う。ベッドの削減・人員を多く
                              配置する必要性も。退院患者のフォロー(訪問看護
                              関連病院との提携)


 「日本での可能性」
・ きたるべき医療ビッグバン(日本版定額制見込み支払い制度)への準備
ヴァリアンスの分析・研究、パスの効果測定(ヴァリアンス:パスからはみ出たこと。この原因を探り、分析することで、同じ失敗を繰り返さないよう努めることができる)

 「看護婦の役割」
・ パスによって、より適切な時期により効果的で合理的な援助をすることを考えると、個別性を表現する看護計画は重要
・ 標準的な状況に甘んじず、個々のケアの適切性の評価
目標とする患者の状態(アウトカム)を適切に設定
・ パスを適宜みなおし、内容のレベルアップ
・ 医療チーム内でのケア・コーディネーター的役割。(アメリカにはケース・マネージャーが独自に存在することが多い)

 「注意する点」
患者になされるべきことを提示するものではあるが、そこに設定されたことが漫然と行われることが本意ではない!
医師の協力がないと…本当の意味でのスタンダード化がなされていない。医療スタッフのコンセンサスが得られていないということ

 「参考文献」

今でも各病棟での「ルーチン」はあるはずです。パス表という名前でなくてもすでにそういった形のものを利用していた所もあるでしょう。クリティカル・パスはもともとコスト面から発生した概念ですが、パス表を作成するにあたり、患者に関わる医療者がコンセンサスを得るところに意味があると思います。そして誰が行っても一定レベル以上の看護が提供できるようなツールとするべきです。

   ただ、疾患によって一般化することにより個別性がなくなる、という懸念もあり、それに関しては個々に応じた看護計画として表し、評価していくことが望ましいと思います。また、看護記録としてもパス表の所在は明らかになっていないため、個々の病院で決めているのが現状のようです。

  もともとアメリカでの保険システムの変革によって考え出されたものであるだけに、そのまま日本で通用する とは思いません。しかし、パスの考え方によって医療者チームが結束しるきっかけとなったり、今ある「ルーチン」を見直すきっかけとなれば良いのではないでしょうか。 

新卒3年目の未熟な私の考えも多少入っています。ご意見のあるかたはどうぞこちらへ。