訪問指導の制度化

中途失明者を苦悩から救う制度です。

中途失明・・ショック

 静岡県では年間約500人が中途失明していると言われています。原因となるものは個々に違いますが、突然、闇の世界に放り出された人はショックを受けます。これは、網膜色素変性症の様に失明するかもしれないと言う告知を受けた場合も同じです。


後悔そして期待・希望・・怒り


 そして、「あの時、気をつけていれば・・・」などといった後悔をします。その後、ほとんどの方が「あそこの病院がいい」「あのクスリがいい」などといった情報を頼りに なんとか
治るのではないかと期待と希望を抱きます。金銭的に余裕のある方はここで、遠くの病院、はたまた海外までも出掛けていきます。それでも、治らない。「なんで私だけが」という怒りもこみ上げてきます。他の人の「がんばって」という言葉すらも苦痛です。憎しみすら覚える事もあります。

失望・絶望感 

 それでも、見えないという事実から失望の淵に陥ります。「何をやっても私はもう何も見えない。どこへも行けない。何もできない。」という絶望感の中で、「もういっその事死んでしまおう!」と自らの命を絶ってしまうケースもあります。悲しい事ですが、本当に亡くなる方も毎年おられるようです。確かな数字は私も知りませんが、そういうケースが少なくないという事は聞いています。


社会復帰へ


 そんな中でも見事に立ち直り十分に社会復帰や職場復帰・いわゆる社会参加を果たす方も多いのです。人生は判りません。今、健常者の人でもいつ事故などで失明するかも判らないのです。もしも、そうなった時にあなたならどうしますか?どんな言葉や態度で接して欲しいでしょうか。どんな手助けがあれば、社会にもう一度復帰できるでしょうか?その為の確かな制度があったらどんなに心強いでしょうか。「ボランティア」「NPO」などと福祉は前進している様にみえますが、制度として確立されていないものは、後に続く者がいなければ、長くは続きません。

障害を受け容れる

 失明者や中途視覚障害者が増える一方でそれを
支援する団体やボランティアも増えつつあります。しかし、そういう支援を受ける前段階で、障害を受け容れられずに苦しむ人を救えなければ、ごく一部の人だけが支援を受けるだけになってしまいます。自らの障害を受け容れる事が障害者の社会参加の第一歩なのです。


静岡県視覚障害者協会

 静岡県では、県視覚障害者協会の理事さんたちが、その役割をしています。つまり、中途失明・または視覚障害者となってしまった人の所を訪問し、歩行訓練(白杖を使っての歩行は意外と難しいんです)や点字指導などを行い、社会復帰を後押ししています。
 
 しかし、中には障害者である事を認めようとせず、訪問を拒否するケースも多いそうです。拒否されながらも、何度か通うと、障害を受容しはじめ、訓練を受け、盲学校に行ったりして社会復帰への意欲が生まれるとの事です。大変な苦労をして、少しでも多くの苦しむ中途視覚障害者・失明者を生き返らせられたらと頑張っておられます。

プライバシーの保護

 しかし、「プライバシーの保護」という理由で協会が 公的機関からそれらの方の名簿を入手できない事になってしまいました。「プライバシーの保護」はもちろんの事なのですが、その為に、この訪問指導の活動にも限界ができてしまいました。新規で指導を必要とする人の所へも行けません。家族が視覚障害者協会に「来てください」とでもお願いしない限り、協会はその人の存在すらも知り得ないのです。


 私自身もそうですが、まだ少しでも見えている人間にとって、今まで普通に暮らしていた地域の方には あまり知られたくないものです。(障害を)家族にとっても同じで、なかなか協会へ行く気持ちにはなれない方の方が多いでしょう。
 
情報障害者

 これが、全盲となれば、今度は、家族は「危ないから」と言い、本人は絶望から外との接触を断とうとします。完全に孤立していくのです。歩行訓練は基本的に通所訓練ですから行かなければいつまでも外を出歩く事はできません。耳が良ければTVでもラジオでも一日中聞いて過ごしているのでしょう。本も新聞も読めないままです。社会復帰も遠く、情報障害者となっていきます。


訪問指導

 こんな時に訪問指導してくれる方が来て、歩行訓練や悩みを聞いてくれたり、自分を外へと導いてくれるのです。家族にとっても、負担はずっと軽くなるはずです。自らの命までも絶ってしまう人もいなくなるでしょう。目は失っても自分を失う必要はありません。目のかわりに何かをつかめるはずです。普通の人間としての第二の一歩がはじまるのです


制度化実現に向けて

 今、協会では「プライバシーの保護」を守りつつ、少しでも多くの中途視覚障害者の社会復帰を推進する為に、この訪問指導の重要性を訴えています。この訪問指導が行政との連携によって、制度化される事を願っています。みなさんの理解と協力で、一日も早く制度化される事を私も切望しています。