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イフィーデル・ムーンシェイド
【夢みる仔】 No,162 イフィーデル・ムーンシェイド


 悪夢、という言葉を知っているか?
 それは人の弱点を鋭く突いてくるものさ。

 夢って言葉を知ってるかい?
 それは未知への好奇心を満たしてくれるものさ。

 じゃあ、
 現実って、何?




「わが 祖霊まもりし この聖峰ヴァーツェラウル
 フェルデ・ザル・グローツェ・ナンディゥ
 英霊達よ われらまもりたまえ
 アルフレィア・シレィザナ・ディラフィ・ナザンザ
 母なりし血よ
 絶えざるながれを 約束したまえ……」

 細く、凛とした声がうたいあげるそれは伝承(サーガ)
 やわらかな頬の幼い子は、両手を天に突き上げるようにして石のステージで舞い踊る。

 彼はシャマン(巫子)。
 地をなだめ、祖霊を敬う。
 細く、しなやかな指先がひらめき、手に足に付けられた鉄の輪はしゃらりと涼しげに鳴った。

 地面を打ち鳴らす人々の手足、複雑に反響する声、声、声。
 汗は飽和し、熱は籠もり、意識は飛散する。

 トランス状態に陥った幼子は、やがて地に伏し……。




 月の夜。
 銀の光が、まあるい庭を照らしていた。
 それを見上げて、ただ、ぼんやりと思った。

 なぜ、自分は踊るのだろうと。
 なぜ、自分はここにいるのだろうと。

 たとえば、自分がいきなり消えても、この祭りはおこなえるのだ。
 自分じゃない誰かがそこでは踊るだろう。
 あの石のステージで。

 誇らしいのだ。
 あのステージは誰もが登れる場所ではなくて。
 そこに居る自分は確かに誇らしい。

 しかし。
 望まれているのは……自分ではなく適性であり。

 幼子は思う。
 ならば自分はどこにいる?
 自分を望む場所はどこにある?

 幼子の見る悪夢。
 誰かがあのステージに登る夢。
 お前などいらぬと言われる声。

 銀の耳、力強い尾も銀で。
 彼の住まう狼の一族の中でも聖なる色だと言われていた。
 褐色の肌に、それはとても似合うと褒め称えられた。
 崇拝、畏敬、恋慕。
 全て与えられる権利を彼は有した。

 しかし、それでも幼子は。
 その暗闇にひかる目をみひらき夢を見た。

 昼に見る夢?
 現実に近い夢。

 旅立つ場所を求めて、ただ、あがくだけの、幼子。

「イフィーデル、強き尾を持つしろがねの仔」
 うたうように、そのひとはいう。
「お前はえらばれた仔。伝説のフェルデ、母ナザンザとおなじ色を持つ」
 ややすすぼけたような、すこしだけ白い色の混じる黒い尾のひとが、幼子に囁く。
「お前はこの邑を背負うもの。よく、覚えておおき。しろがねの仔よ」
 名をよぶのは、まるで確認のようにいちどきり。

 夢を見る幼子は、まだ知らない。
 夢は現実を呼ぶのだという事を。

 イフィーデル・ムーンシェイド。
 つきかげに踊る銀の尾のイフィーデル。

 彼がちいさな世界から旅立つ日は……まだ、遠い。


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「彼」とは単に人を表すMANとかそーいうので、イフィが男だからとかそーいうのではないのですよ(笑)
イフィの性別は・・・さて、どちらなんだろ(笑)
Pもわかんねーや(火暴)
1999/03/24 ma-chi as Iffydel




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