同居 その1

はじまった・・・!1997年2月某日

引越しの当日、私には荷物の整理しか頭に無かった。そこへ主人がおじっちを迎えに行く

と言い出した。少しでも荷物の整理がついてからとも思ったが、出来たての家の1番風呂

にお年寄りを入れると長生きしてくれると言う(本当か嘘かは定かではない)。じゃあ、

と、主人は迎えに行ってお昼には新居に着いた。引越しの最中と言うこともあり、お昼ご飯

は、ほかほか弁当でチャーハンを買ってきてくれた。子供は、学校だったので、大人三人

のお昼とあいなった。おじっちは、眉をひそめてまずいと言う。ま・しゃーないやん今日は

引越しなんやし・・・と思いながら私はさっさと済ませた。なんやかんやと文句を言ってた

おじっちもようやくお昼を済ませた。業者さんが出たり入ったりのまあ目の回るような時間

を、私もまた、走りながら過ごした。午後三時頃だったか・・・郵便屋さんのチャイムの音

にハンコを持って玄関に行こうとしたその時、リビングの中央から玄関を覗いていたおじっち

の口からさっきのチャーハンが、ピューっと飛び出してきた。まっまるでホースのように・・

花火大会の時と同じように・・・。違うのは、ブツが落ちたのは、人の頭ではなく、そう・・

ぴっかぴかのフローリングの床だった。

「大丈夫やで、おじいちゃん 大丈夫!」

何が大丈夫なのか解らないが、なぜか私はよくそうやっておじっちを落ち着かせようとした。

案外顔色も変えずケロッとしているおじっちの体調は気になったものの、汚れた床にシミが

ついては嫌だという気の方が勝ってしまい、そそくさとぞうきんやらタオルでふきまくって

いた。建ったばかりやのにしみはいやや・・・。


   夕方バタバタと夕食を済ますと私は、おじっちの下着やらパジャマやら、部屋着などを仕入

に走った。おじっちには新しい家を見るために2〜3泊来るようにと、主人が言ったため、

おじっちは、なにも持ってきてはいなかったのである。まあ、そうでも言わないと来なかった

だろうと私も思っていた。自分がSOS電話を掛けた事などすっかり忘れていたのだった。

そうそう来た早々から、「仕事が忙しいし、すぐ帰らな」の連発だった。


1番風呂 [孫との最初で最後のお風呂]

 もともと腰の悪いおじっちだったので、お風呂はついていなきゃと思ってはいた。しかし

この頃のおじっちはまだまだ普通のおじっち(に見えていた)だったので、「手伝います」

の一言は、言えなかった。やっぱり私も女なんだしー(一応)。孫である息子がおじっち

とはいるんだと、おおはしゃぎだった。狭い浴槽に二人で入っている姿を覗きに行ったら

ぷ〜んと、う○ちの臭いが脱衣所に充満しており、すぐに気がついた。見てみると、普通

ではない汚し方で・・・うっ・・・であった。お風呂の扉を開けると、そこには息子と

おじっちの嬉しそうな顔が二つ並んで湯船に浮かんでいた。もちろん私は、湯船に浮かんだ

もう一つの浮遊物も見のがさなった。(よーく見ないと解らないくらいのちいさなブツが、

いっぱい・・・)息子もおじっちもきずかなかったようで、ジェットバスではしゃぐ息子と

その勢いで溺れそうになりながらも嬉しそうなおじっちに、「気持ちいい?」って微笑むのが

精一杯だった。この日から、バスタブ二度洗いは、今も続いている。もちろん私の仕事だ。


 上がり際に二人ともしっかりシャワーを浴びるよう言い聞かせ、脱衣所にて

残務処理とあいなった。みてみるとその下着たるや・・・コッペコペに乾いて貼りついている

う○ちが・・・とっ取れない・・・。これについては、早々にあきらめた。ズボンのシミについては

トライした。取れたかどうか・・・記憶にない。


 お風呂から上がった二人は、仲良くパジャマに・・・と思っていたら、なんとおじっちは、わしの

下着がないと言い出した。汚れてたから捨てたとも言えず、

「洗濯しとくし、帰るまでには乾くからね〜」

と、とりあえず、その場をおさめた。すると旅行達人のおじっちは

「洗濯はいらん なれとる。エジプト行った時は、砂だらけのバスタブでシャワーも出なかった。」

などと言い出し、新しい下着はもったいないのだそうな。思わずおじっちのんは、すでに洗濯機で

濡れており、これは主人のお古やし、気兼ねせぬようにと・・冷や汗をぬぐった。


 おじっちと子供が寝静まったあと、私は主人に、お風呂の事や下着のこと、やっぱり様子が

おかしい事など・・・報告し、話し合った。ずっと前から調子が悪かったのでは?今後の一人暮し

は絶対無理だ・・・などなど・・・かなり遅くまで話した。そして主人は、おじっちの仕事をすぐ

さま引退させることを思いついたのである。電話に怯える様子が見えたのもこの日だった。

この[長い一日]は、私と「介護」の出会いでもあったのだと、その時は気がついてはいなかった。

私は鮮明に憶えている、息子とおじっちの、湯船に浮かんだ笑顔を・・・。


出会いパート2 同居 その2 表紙