高鷲インターとかます谷スキー場開発

〜高鷲インターの整備費はスキー場ではなく牧歌の里と温泉で支払うべきだ〜

平成9年12月14日
新川 雅之

 長良川の源流、高鷲村の貴重な自然資源でもあるかます谷地区を、なぜスキー場にしなければならないのか。
 それは、現在工事中の東海北陸自動車道の高鷲インターチェンジを、「開発インター方式」でつくることになった平成2年にさかのぼる。「開発インター方式」とは、インターチェンジの整備費用を、インターチェンジ開通によって生じる利益によってまかなおうとするものだ。インターチェンジ周辺に工業団地やレジャー施設などを整備して、その事業利益からインターチェンジ整備費用を捻出するやり方だ。言い換えれば、インター開発による土地の値上がりを前提とした、バブル時代でこそ成り立った方式なのだ。
 この方式には大きな問題がある。第一には、インターチェンジの開通により恩恵を受けるのは、新たにつくる工業団地やレジャー施設だけではない、ということだ。既存のレジャー施設の客の入りはよくなるだろうし、新しくできたインターチェンジを使う一般企業や住民も「便利さ」という利益を受ける。当然ながら、各主体が利益に応じた負担をすれば、わざわざ工業団地やレジャー施設をつくらなくても済むのだ。
 また、新たな開発によって、インターチェンジのすべての整備費用をまかなおうとするものだから、開発規模が大きくならざるを得ないことも問題だ。かます谷のスキー場は93億円もかけて整備するという。インターチェンジの整備費は、多く見積もっても十数億〜20億程度だろう。インターチェンジ整備費の5倍もの金を新たにつぎ込むことになることがわかる。大ざっぱにいって、高鷲インターを整備するために、約110億円(十数億+93億)もの投資がなされることになる。  投資というものは、回収しなければならない。インターチェンジだけであれば、十数億円を回収すれば済むものを、スキー場を作ることにより回収金額が110億円に跳ね上がる。回収できなければどうなるか。スキー場の事業主体は破産することになる。開発インター方式では、地方公共団体が出資した第3セクターが事業主体となることと定められている。これは、いざというときには自治体が肩代わりをしてインター整備費を支払わなければならないようにするためだ。110億円といえば、高鷲村の年間予算額の3倍だ。もし、スキー場の運営がうまくいかなければ、村は倒産するのだ。そこまでのリスクを冒して、なぜ高鷲村がかます谷にスキー場をつくろうとしているのか。スキー場経営が必ずうまくいくという確信があるのだろうか。
 レジャー白書により、スキー人口の動向をみてみよう。スキー人口を全国の15歳以上人口に対する参加率でみると、平成4年の17%をピークに徐々に減少傾向にあり平成8年には15.1%にまで落ち込んだ。しかも、年代別の参加率をみると、20代がもっとも多く34.4%、次いで10代29.3%、30代28.5%の順である。50代では7.6%、60代以上は1.5%しかない。今後はますます高齢化がすすみ、2010年には4人に1人が65歳以上になる。スキー人口が増えるという要素は見あたらない。
 また、スキー客もかつての宿泊滞在型から日帰り型にその主流が移ってきており、スキー場周辺の民宿やホテルへの経済波及はより少なくなってきている。したがって、かます谷にスキー場を開発したとしても、中京圏からの日帰りが主流で、高鷲村内の民宿への波及は微々たるものと予想される。
 さらに、過当競争も予測される。高鷲村には、ダイナランド、鷲ヶ岳、ホワイトピア、ひるがの高原、アクティブサンランド奥美濃と、既に5つのスキー場があり、合計で年間延べ100万人の入り込みを記録している。さらに、奥美濃全体では14ヶ所、年間延べ200万人を集客している。奥美濃のスキー場の商圏を岐阜、愛知、長野、静岡、三重、滋賀、奈良、京都、大阪の各府県とすると、15歳以上の人口は合計で約2,600万人、スキー参加率15%を掛け合わせると約390万人となる。つまり、東海から近畿までのスキーヤーのうち、2人に1人が、年に1回は奥美濃に滑りにきているという算段だ。スキー人口が減少する中で、集客力を増すには商圏を拡げるか、来る回数を増やしてもらうことだ。東は静岡、西は大阪という商圏は、東海北陸自動車道が開通しようとも、他地域のスキー場の立地状況から見た競合関係からみて、変わらないだろう。要は既存のお客さんに来る回数を増やしてもらうしかない。
 スキー場の魅力度は、ゲレンデの広さと種類の豊富さ、リフト待ち時間の少なさだと言われる。つまり、小さなゲレンデがあちこちにあるのではなく、リフトで行ける距離にいろいろなゲレンデがあり、その場で多くのコースから選べるようなスキー場が好まれる。蔵王などはその典型である。高鷲村のスキー場への集客を高めようとするのなら、新たに同じスケールのスキー場をつくるのではなく、既存のスキー場間のアクセス条件を改善する等により連携度を高め、村の5つのスキー場全体で相乗効果を高めることが有効だ。現在のように、各経営主体がバラバラで運営している状況を続けるならば、現状の集客を維持することさえ難しい。ましてや、かます谷に新たなスキー場ができた場合、既存のスキー場の経営が立ちゆかなくなる可能性が高い。

 以上、スキー場を新たにつくったとしてもその経営は非常に難しいことをわかっていただけたと思う。新たにスキー場をつくることによって、既存のスキー場もダメージを受けかねないし、ひいては村全体の財政危機を招きかねないのだ。かます谷の計画は平成2年、バブル華やかし頃に策定された。右肩上がりの時代はもう、終わったのだ。回収するあてのない金は絶対に使うべきではない。

 では、高鷲インターチェンジ整備に要する費用、すなわち高鷲村の借金をどうやって返済するか。
 もっとも賢い方法は、インター建設をやめることだ。傷は浅いうちに手当てすべきだ。高鷲インターがなくとも、白鳥インターから高鷲まではほんの15分。住民や観光客にとっての便利さは変わらない。
 どうしても高鷲インターをつくるというのであれば、村が所有する、収入のある公益施設(例えば、牧歌の里とか、温泉など)や土地を、かます谷スキー場の事業主体として設立するはずの第3セクターに売って、その代金をインター整備費にあてることだ。インター建設でも高鷲村の貴重な自然資源が壊されている。この上、スキー場を開発して孫子の代まで汚点と借金を残すことはない。

 最後に、もう一度繰り返す。開発すれば人がくるという時代はとっくに終わった。今、スキー場を開発するのは自殺行為だ。

注意:この論文は、著者の個人的見解であり、著者の勤務先企業ならびに所属団体 とは一切関係ないことをお断りします。

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 新川雅之(しんかわまさゆき)
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