
体長5ミリほどで、数百匹が木の枝を足場に焼く50平方メートルのシート網を 築く。現地の人は、これを切り取って窓につるし、雨季に家に侵入してくる蚊やハエを防 ぐのに使うという("el mosquero")。シートのあちこちに穴が開いており、産卵室や 隠れ家となる。メスグモだけが共同で狩りに参加し、ハエが動かなくなったと ころで、子グモが這い出してきて捕食する。オスは粘着性の糸を出せず、自分で 狩りをしない寄生的生活者。
体長1センチほどで、数百匹が潅木や生け垣などに5、6平方メートルの網をはる。 子グモははじめ、母親の口から「吐き戻し給餌」をうける。脚の間接のあいだから 体液をすすったという報告もある( Diaea ergandros についての同種の報告 "Gruesome Diets"の項も参照)。三令になると、親は獲った餌を子に与えて食べ させる。その後、成虫たちと一緒に狩りに加わり、網の修繕をするようになって いく。 この属は、各地に多くの社会性種が現れている。M.gregalis 同様に虫除 けに用いることができるが、気をつけないとキッチン全体に巣が広がったり、 取り除いても取り除いても車のトランクが網だらけのままだった、といったこと になるようだ( 体験談はこちら)。★ Agelena consociata, 西アフリカ
一次林のやぶに直径3メートルなる棚網に千匹が暮らす。卵のうは共同のシェ ルターに、多いときは百個もつるされる。最近、集団構造が研究され、ほとんど が血縁関係にあること、小さいコロニーは豪雨で消滅しやすいこと、などが判明 (Riechart et al 1986)。★ ヒメグモ科 Achearanea diaparata, アフリカ南西部ガボン
森の開けた空間に、数十のユニットからなる5×5×5メートル程の立体網をはる。 ヒメグモ特有の水平網とその上に落ち葉などをちりばめた不規則網内の隠れ家、 という構造が一つのユニットで、各ユニット手段が共同で狩りをし、ユニット間 では餌をめぐる争いが起こる。各ユニット集団が、直系の家族集団かどうかは 調べられていない。★ ヒメグモ科 Anelosimus eximius, 中米
森林の大きな樹から釣り下げられたハンモック状網に、何代にもわたり数百・ 数千匹で暮らし、アリがするような、個体間の触肢すりあわせによるコミュニ ケーション(同種確認)が確認されている。コロニー内の40%のメスしか受精して いないという観察もあり、子を産まずに他の個体の子を育てるメスたちもいる ことが推察される(Vollrath 1986)。★ ヒメグモ科 Anelosimus studiosus, 米国フロリダ
前者とことなり、一代限りの共同網を作る。成体になったメスグモ(娘)に対して、 母親グモは攻撃をしかけ、群れの外においだしてしまう(Brach 1977)。★ チリグモ科 Oecobius civitas
岩の下に共有のおおきな網をはる。200の卵を包む共有の大きな卵のうを作る と考えられる。(Shear 1970)<円網をはる種> ★ コガネグモ科 Eriophora bistriata, 南米
足場糸、わく糸を共同で使って、互いに接した円網をはる。円網は構造上、各個体 が一つの円網の主となるが、日中は、共同の隠れ家に密集して身を寄せ合って 過ごす。一頭で捕らえきれない大きな獲物がかかると、複数の個体が共同狩猟 し、一緒に捕食する。日本にいるタニマノドヨウグモも、渓流で共同の足場糸 を利用して互いに接した円網をはることがあるが、個体間でなわばり争いがお こる点で、社会性とはいえない。★ ウズグモ科 Philoponella republicana, 南米)
円網のコロニーの真ん中に不規則網の場所があり、オスがここに待機しており、
交尾・卵のうづくりがここでおこなわれる。
出典「スパイダー・ウォーズ」吉田真
「クモの話し II」梅谷献二・加藤輝代子
「クモの生物学」吉倉真
「真社会性(eusociality)の概念(集団生活における個体の自由が制限される ヒエラルキーを前提とする)には、明らかに肯定的な含蓄があり、他方で、ヒエ ラルキー型の発展の頂点に達していない社会形態を見くだす評価をしているということを 認めざるをえない。したがって、クモは、発展した、あるいは進化した社会という 地位を与えられてこなかった。実際には、逆の評価がされてもよかったのに、 である。 我々人類は、(明言することなく、あるいは意識さえせずに)一種の絶対君主制 型のヒエラルキー社会に賞賛をしめし、民主主義型の階級なき社会にはずっと低い 関心しか示さない、というわけである。しかし、大概の現代人類社会で、こんな 意見を支持する人はあるまい。この事実は驚くべきことで、「純粋」生物学におけ る研究さえも、無意識にある種の文化的偏見にとらわれることがある、といわざ るを得ない。そして誰もこのことに気づかないのは、全ての人々がこの偏見を 多かれ少なかれ内包しているからである。」そして、結論として、次のように書いている。
「クモ社会にみられる許容性、カースト・ヒエラルキー不在は、真社会性昆虫の 社会よりも低い段階にあると見るべきではなく、むしろ別の種類の社会性だ と見なすべきである。ここで社会性クモに関しておこる疑問は、なぜこの種の 社会性が自然界でもっと広く成功しなかったのか? 様々な科のなかに社会性クモが見 られるとはいえ、ごく限られた種においてだけ、社会性が進化したのはなぜか? 既になされた研究によって、クモ社会の利点としては、@産卵数の効率、Aう化の 成功率、Bメスの繁殖機能が制限されない、などがある。 異なる社会集団間の攻撃性がないという点、よって共存の可能性が高いという点を 考えると、こういう社会性がなぜ世界に繁栄しなかったのか、再度、疑問になる。 他の要因、たとえば広範囲に集団が分散することの困難さ(Vollrath 1982)など があるかもしれない。 最後に、許容性のメカニズムをもったクモの社会は、社会性昆虫のカースト を発生させた支配のメカニズムとは異なる、独特なものである。無脊椎動物の 世界においてもまた、民主主義とは到達困難な目標であるようだ。」 (Societies of spiders compared to the societies of insects. Journal of Arachnology, 14: 227-238, 1986)
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