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あっと驚くクモの事実あれこれ(5)



・「益」虫・クモ利用の極致: 中国の蜘蛛農法
・クモの惑星 --- 蜘から蛛まで...クモの多様な生態
・「ヘン」な形の蜘蛛
・真のクモと偽のクモ
・クモと親戚は誰? 昆虫、カニ、三葉虫、ムカデ? --- 分類上の地位
・1メートルの巨大古代蜘蛛を見た?!--- クモの化石
・クモは一匹狼か? --- 社会性クモ
・アリとクモ --- ムシに見る奴隷制と民主主義
・クモの和名にみる日本むかし話(お姫様と鬼と戦争と植民地)
・最大のタランチュラは何か? --- 果てしなき論争
・セアカゴケグモに噛まれたら・・・ --- 毒虫との共生のススメ
・クモの糸 --- 自然界最強のファイバー
・参考文献
・クモ一般のサイト(Links)

・セアカゴケグモに噛まれたら・・・ --- 毒虫との共生のススメ

「結局、被害者は無く、オウムの沈静化、
APEC後のニュースの空白時に舞い込
んだ格好のタイミングに計られたイベン
トであったような気がする。
毒を持つ昆虫は数知れず我々の周りに生
存しており、仲良く、お互いを知って生
活すれば決して害を及ぼすことはない。
今回の狂乱劇は、マスコミで作られた感
が強い。行政の対応はマスコミに煽られ
た感がある。しかし、新聞、テレビを使
って迫りくるマスコミに対して行政は、
冷静沈着な対応など決して取れるはずは
ない。少しでも時間を置いた対応を取ろ
うものなら、批判の集中砲火を浴びてい
たに違いない。
「虫」と付き合えば、毒を有する「虫」
であっても愛着がわいてくる。
やみくもに殺せばよいということでなく、
被害をくい止めるための適度の駆除とつ
きあいかたへも目が向けられるべきであ
る。」
 「セアカゴケグモに咬まれてもアナフイラキシーショックを起こすことがないので、適切な診断と治療を行なえば死 ぬことはない。ほとんどの患者は少量の毒素を注入されるだけで、全身症状を呈したため治療が必要となるのは約2 0%と少ない。これらの患者は、もし治療を行わなくても、多くは1週間以内に回復する。稀に死亡することもある が、これは16歳以下の子供、60歳以上の高齢者や何らかの基礎疾患を持ったものに起こる。オーストラリアでは 、1956年に抗毒素が導入されてからは1名の死亡者も出ていない。オーストラリアの死亡例をみると、咬まれてから 死亡するまでの時間は6時間から30日までと幅があるが、24時間以内に死亡したのは、生後3か月の乳児に起こった この6時間の一例(1933年に報告)だけである。」

( 大阪府環境保健部環境衛生課員によるセアカゴケグモ・ページより)


セアカゴケグモが1996年11月、日本に進入していることが確認された。マスコミの パニックぶりは大変なものがあり、地元自治体や住民も踊らされて、「全面駆除!」 を叫んで、農薬散布、踏み潰してまわるなど、試みたりしました。当時、愛着のある関西を 離れて東京にいた私は、採集できないのを悔しがりつつ、虐殺に歯噛みしたものです。 次第にクモの日本定着が既成事実化すると、人々のパニックも収まり(だって、噛ま れたっていう事故、聞きませんよねえ)、全面駆除を強行しようという意見も、現実的 可能性も姿を潜めた。もちろん、私も家ゴキブリを片っ端からスリッパで叩き潰す 方だから、毒のあるクモを殺す人々を糾弾する資格はありません。しかし、愛する蜘蛛た ちのこと、やはり行き過ぎた「アラクノサイド(蜘蛛虐殺)」には、この国の蜘蛛嫌 いの潜在的文化を疑ってしまいます。

「毒」のある蟲(ムシ)は、既に日本にゴマンといます。マムシ、スズメバチでは 人が死にますし、ムカデ、ドクガ、クラゲ、ウツボ、から、アリにいたるまで。こ のうちで「全面駆除」の対象となった種がいるでしょうか。

もちろん、海外からの「帰化種」であることが話を複雑にはしています(そして、 「よそ者は悪者」という島国根性も、この騒ぎの背景にあるのでは、と私は思いま す)。日本のクモ学者にさえ、移入種は地元の生態系を脅かすおそれがある、と警告して、 駆除を示唆する人もいました。しかし、クモ学者・観察者の間でも、セアカゴケグモ が他のヒメグモ等と似た環境に共存し、しかも同じニッチ(生態的地位)を占めて、 在来種を圧迫(ないし駆逐)するということが起こっているかどうか、に関しての証言 はまだありません。クモの多様な環境すみわけ傾向を考えると、他人(クモ)に 迷惑をかけずにセアカゴケグモが「入り込む余地」は、十分あるのではないでしょ うか、というのが、海松橿姫の個人的な希望的観測です。


でも、セアカゴケグモは毒の強いクモではあります。
不必要に噛まれないよう、 いたずらに手を出さないでください。

Spiders of Medical Importance

Australian Spider and Insect Bites



・クモの糸 --- 自然界最強のファイバー



「御釋迦様は地獄の容子を御覧になりながら、このカンダタには蜘蛛を助けた事が あるのを御思ひ出しになりました。さうしてそれだけの善い事をした報には、出 来るなら、この男を地獄から救ひ出してやらうと御考へになりました。幸、側を 見ますと、翡翠のやうな色をした蓮の葉の上に、極楽の蜘蛛が一匹、美しい銀色 の糸をかけて居ります。御釋迦様はその蜘蛛の糸をそっと御手に御取りになって、 玉のやうな白蓮の間から、遥か下にある地獄の底へ、まっすぐにそれを御下しな さいました。」

               (蜘蛛の糸 芥川龍之介)




極楽の蜘蛛ならずとも、クモの糸(特に、Dragline=しおり糸と呼ばれる、クモ 自身が空中を伝って降りるのに使う、いわば命綱)は、強力なファイバーである ことが知られています。その強さは、同じ太さなら鋼鉄よりも強じんです。自然界でも、ヘビを吊り上げるヒメグモや、飛行中の鳥・コウモリを捕らえた円網などが観察されています。クモの糸は、しおり糸のほかに、卵のう用、補虫網のねばねばした伸縮可能な糸と、構造保持上の強い糸、などいろいろありますが、これらが、異なったファイバーの組み合わせでできていることが分かっています。また、篩板(しばん)類と呼ばれるグループは、物理的に吸着力の高い特殊なちぢれた糸を出す篩板という器官を持っています。

さて、お釈迦様と地獄のカンタダ以外にも、クモの糸の利用を考えた人々はいます。ニューギニアでは、巨大な円網を木の輪の間にはらせて魚網にする、という昔の博物記報告があります。生きたクモからしおり糸を引き出して、これでハンカチを編んで女王に献上したという英国のクモ学者の話も聞いたことがあります。また、ナイロンよりも細いという細さに着目して、顕微鏡のレンズの垂直・水平線をしるすのにも使われているそうです。

もっと広範な実用化への難点は、生体から抽出する繰り出し法は、大量生産が不可能ということです。草食性でしかも、生体そのものではなく繭から糸が取れるカイコと違って、生体クモの大量飼育・糸抽出は容易ではありません。しかし、現代先端科学は、大腸菌等への遺伝子組み込みによる、クモ糸物質の遺伝子工学的生産を可能にしました。未だ実用化段階ではありませんが、将来には、クモ糸生地の下着なんていうのが登場するかもしれません。 (クモの糸は驚異的な伸縮性と、絹なみの吸湿性がありますから、下着には超高級生地といってよいでしょう)。

また、NASAだか米国防省だかが、 ゴム化させたクモ糸物質で、最強の防弾チョッキ布地を作ろうという計画もあると聞いています。



糸の顕微鏡写真

Bacteria Developed to Produce Spider Silk

BIOENGINEERED SPIDER SILK

Secrets of Spider Silk May Teach Scientists How to Make the World's Strongest Fiber Says UMass Researcher

Spider silk as rubber


絵をクリックすると原寸大の画像に
はらだけいいち/はせがわひろし共作



驚くべき事実(6)へ続く

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