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新種発見か?
香港のタランチュラ
Theraphosidae Gen. Sp. 香港新界沙田大圍にて採集 1998/1/1
・リック・ウェスト氏からのメール 1996年9月11日
「中国から報告されたオオツチグモ類(タランチュラ)は二例あります(北ベト
ナム-中国国境から発見されたHaplopelma minax<タイランド・ブラック>を
除いて)。1962年に Chilobrachys tschankhoensis Schenkel の幼体が2頭、
Tschank Hoaにて、また1988年、Chilobrachys hubei Daxiang & Jingzhao
が湖北省バドンからオス2頭。(1980年代に)香港で採集されて、私のところに送られてきた
個体は、クイーンズランド博物館の Raven 博士によって、セレノコスミア一種(Selenocosmia sp)
と同定されました。(香港での再度の)発見に成功しますように! 地元の爬虫類
屋の人たちにも、これらのクモをみつけたかどうか聞いてみてください。数えき
れない程、石をひっくり返す手間が省けるかも。」
・第一発見者・ボガデック神父 - リックのメールで触れられていた香港タラ
ンチュラの発見者を探し当てて、手紙をだしたところ、返事が来ました。1997年10月22日
「自然保護区か郊野公園で見つけたと記憶しています。大きめの石をひっく
り返すと、わずかな網で作った巣の中にいました。レッグスパン2.5センチくらい。
全体が茶色で、全身に毛が生えていました。」
同神父は、長年月香港の学校の先生をしてこられて、もう退職年齢なのですが、
一種のボランティアで生物と聖書を教え続けておられます。師は主に爬虫類・
両生類が専門で、「香港の両生類・爬虫類」という本も書かれました。一時は
クモにも関心を持って探索したとのことですが、「もう私はそんなに若くあり
ません。」 そして、かつては学校の生徒たちも一緒に山野で採集をしたそう
ですが、「最近の学生はコンピュータに関心もつ子ばかりで、生物学など誰も
見向きもせず、私はもっぱら一人でフィールドに出ます。」 返事をもらって
うれしかったけど、少しさびしいお手紙でもありました。
・ついに発見! 香港タラちゃん 1997年11月15日
ある晴れた秋の(香港の秋です)日、娘と香港の城門水塘(貯水池)へ行ってきました。香港最高峰の大帽山の
すそ野にあたる森林地帯を歩き、道端の石をひっくり返しては、クモを探して
周りました。かれこれ、1、2時間も歩いたあと、いました、いました!石
の下に糸でチューブ上の巣を作った中に、原蛛亜目(Mygalomorphae)とおぼし
き小さな蜘蛛が別々に二頭。一頭は、黒で長い紡績突起(おしりの糸いぼ)が
めだつ、ジョウゴグモ(Dipluridae)らしきもの(レッグスパン約3センチ)。もう一頭は、
うす茶色でレッグスパン1.5センチほどの幼体、よりタランチュラ(Teraphosidae)
的体型に見えます(こころなしか、セレノコスミアっぽい)。少し離れて、
落ち葉のなかを歩いていた別の形態の黒い糸いぼの長い個体を発見。こちらは
腹部が卵上に膨らんで、つや光りし、毛の生えた他二種とは別のようです(レ
ッグスパン2センチ)。
うす茶のやつは、ボガデック神父の描写に近く、同種のタランチュラである可能性も十分。ジョウゴグ
モとタランチュラの分類上の違いについては、(日本にいなかっただけに)私も
よく知らないのですが、クモ分類の洋書でしらべてみます。見かけでは、黒3
センチがジョウゴグモ科の中国名・触形粒突蛛(Macrothele palpator)に似
ていて(「中国蜘蛛原色図鑑」を参照)、ちゃんと同書に香港も産地となって
いました。
とりあえず、各一頭だけなので、大切に試験管内で飼育してます。コオロギ幼
体を与えてみたところ、すでに巣を張りはじめた黒3センチは3匹ペロッと食べ
ました。うす茶1.5センチはしばらくして食べ(巣は未だ)、黒光り2センチはま
だ巣も張らず、餌もとりません。気の早いことですが、早くたくさん食べて、
大きく(ウズラを獲るとウワサされるオーストラリアの同属くらい)成長して
欲しいものです(って、そりゃいくらなんでも無理か)。
そして、数日後。探せば、いるもんですね。なんと、新界沙田白田村の山のすそ
のにある私の職場で(もともと小川の流れる渓谷だったとこですが)、道端の石
ひっくり返したらおりました、また。今度は、少し大きく、レッグスパン2センチはありま
す。同じくうす茶色で、石の下の巣の中にいました。これは、かなり一般的に棲
息しているということになりそうです。問題は、どこまで大きくなるか、という
こと。野生では多分小さいと思うけど、例の
「パワーフィーディング」(過給餌)で、大きい個体を作ってやろう。他地域のセレノコ
スミアは、レッグスパン10センチ近くなるんだから、こいつだって。。。それで、
CBで代々大きくして、そのうちにタランチュラ市場に撃って出る、と、珍しが
られて、一世一代の財産を築く、と(珍しがるのは、このHP読んでくださるような数人
の変わり者だけか...いやいや、北米にも欲しがる連中いるしな)。
その後、ケースの中で、巣を作って中に潜むようになりました。小さなミールワームも
採って頭だけかじったりしているので、とりあえず、ひと安心です。早く脱皮
してくれるといいな。外出のたびに、小さな香港タラちゃんを採ってまわることになりそうな、海松橿
姫 ^_^;です。
・脱皮しました! 1997年12月23日
待ちに待った、脱皮、無事にしました。背甲と脚がまだ透明感のあるうすい
色です。クモは脱皮がらで種・雌雄の鑑定ができるので(幼体では困難ですが)、
さらに脱皮を繰りかえして大きくなるのを楽しみに待ってます。友人にスキャン
を頼んだ写真をカナダの専門家・リック・ウェスト氏にみてもらったところ、
まちがいなく、Theraphosidae(オオツチグモ科)のタランチュラ(属の同定
は写真では無理)である、とのこと。
もっと大きい個体が見つかったら、また報告します。
・元日から今年は縁起良し。レッグスパン4センチを採集!! 1998年1月1日
灯台下暗し、というのでしょうか。自宅周辺の樹下を調べていたら、木の根の割れ
目につくった巣を発見。掘り返すと、ダッと走り出すクモ。「まちがいない!」落ち葉
をひっくり返すと、足を縮めて「死んだふり」のタランチュラが(今度は見かけ
から間違いなくTheraphosidae科と見分けがつきました)。サイズは、体長23mm、
レッグスパン40mmというところ。ピンセットにガリガリッて噛み付いたり、
「タランチュラ /≧^_^≦\ 」って風格(?)あります、小さいなりに。
こいつは、元日から縁起が良いですねえ。今年は、香港タランチュラ新記載
にむけ、快調な滑り出し! 名前は、もう、学名 Selenocosmia mirukashii
(予想通りSelenocosmiaの新種だったら、ですけど)、和名・ミルカシヒメ
オオツチグモ(海松橿姫大土蜘蛛)と、かってに決めてます。
・卵のう作りました。 1998年3月14日
なんと、元日採集の香港タランチュラ、交尾済みだったんですね。地下トンネル
の中で産卵、卵のうを作りました。直径5mmくらいの白いだ円形で、表面にで
こぼこがあります。ということは、このサイズで成体だったということです。「シ
ンガポールのクモ」という本でやはり成体サイズ(体長2cm)の地中性種 Phlogiellus inermis
が紹介されていましたので、小型の地中性種というのは東南アジアには色々いるようです。
・卵のう食べてしまいました。 1998年3月15日
なんと、翌日には卵のう食べちゃいました。跡形もなくなくなってます。これは、
授精してなかった場合、蛋白質を無駄にしないための普通の行動なんです。でも
少しさびしい。ちなみにこいつの好物は、ミールワームの成体(甲虫)、次にコオ
ロギ、ミールワーム幼虫自体はほとんど食いつきません。
・成体がついに脱皮しました。Selenocosmia属と判明! 1998年6月22日
元日採取の成体が、ついに脱皮しました。すこし温度・湿度を上げてやった
直後でした。色は、ずいぶん薄くなったようです。さっそく、脱皮がらを、リック・
ウェスト氏に送って鑑定してもらったところ、Selenocosmia属である、という
オスミツキをもらいました。香港から帰国してきたので、これが貴重な一頭だけの
生体標本です。大切に育てて、寿命が尽きたらこんどは種の同定、ということに
なります。新種であれば、ミルカシヒメオオツチグモ、"Mirukashi Princess Tarantula"
の誕生です!
セレノコスミア属の他の種について
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