日経ゼロワン ライター
 I.S. 様


ゼロワン取材の件:


質問:
1-このホームページの狙いは? 何を読者に伝えたいのか?

  「こよなく蜘蛛を愛する人と、クモに関心を持ちはじめた人に捧げる」とペー
ジのはじめにあるように、クモへの興味を少しだけ持っている人がもっと関心を
深め、既にクモ好きな人はさらにこの世界にからめとられてしまうように、との
思いを込めて、でも、結局はこの生き物を愛してやまない自分の道楽のために、
始めました。
  クモは、神秘的な生物で、飼ってみなくても、自然界で見るときにちょっと注
意してみると、いろいろ驚くべき発見があります。世界中・自然界じゅうに視野
を広げれば、そのかたち、生き様、名前も興味深く、さらには人間との関わりも、
農業、文化、神話、映画、ペット、などなど、広がりは尽きないのです。日本古
代史に登場する「土蜘蛛」や、それを物語・演劇化した能・歌舞伎もとりあげた
のは、一つの生き物を、先入観で判断せず、色んな角度から見てみれば、「こわ
さ」の背景にある文化(人間の関わりかた)も見えてくる、と思うからです。
  クモというと、写真を見るだけで、「生理的」に、ぞっとする人もいるでしょ
うけど、少し勇気を出して、読みすすんでもらうと、ちょっとイメージが変わる
かも。  


2-ホームページを制作したいきさつと時期

  香港に滞在することになった一昨年からPC通信を始めて、アラクニッズ(ク
モ形類の生物学的総称)メーリングリストとアラクノロジー(クモ学)メーリン
グリストという、タランチュラ飼育者用と世界のクモ学者用の英文MLに加入し
ていました。HPも、英文ではタランチュラに関するものが、まあ100近くはあ
ろうかと思われますが、日本人は見あたらず、日本ではタランチュラを飼ってい
る人もほとんどいないんだろう、と思っていた矢先でした。英文ページからのリ
ンクで、ついに、タランチュラ飼育に関するHP(東京の方による)を見つけた
のです。
  これが、出会いとなって、日本のタランチュラ・ペットキーパーが出入りする
チャット・伝言板のページ(Keeper's Net)もあることを知り、アメリカからのタ
ランチュラ注文輸入なども、e-mailを通して共同購入のかたちで実現しました。
伝言板に記入する話題がスゴイ量になってきたので、この際、自分のHPを持ち
たいな、と思って、ジオシティーズで無料HPを開き、HTML文書の平うちから始
めました。昨年の年末休みのことでした。
  インタネットの効用は、距離と国境を超えるところにあるので、日本と香港、
さらに英語を読む人々ともつなぐため、日・英語バイリンガルのページとしまし
た。ジオシティーズがトラブルでデータ消去されたときは、焦りましたが、幸い
バックアップをとってあって、復旧できました。

3-更新の頻度

  週に1、2回でしょうか。始めたところですから。掲示板への返事は書きこむ
ようにしています。相互リンクも募集しているので、適宜、増やしていってます。
クモに関する様々なページへのリンクや、画像の拝借もしているので、メンテナ
ンスは結構手間を要します。仕事から帰って、夜中じゅうコンピュータに向かっ
ていた、という日もしばしばで、家族には少しにらまれています。クモの世話に
要する時間に加えて、ですからね。

4-読者(ユーザー)からの反響

  ページを読み進んでクモの写真に突き当たり、ぞっとして逃げてしまった方か
らは感想のメールはきませんから、いまのところ、良い反響ばかり、と勝手に悦
に入っています(気分を害された方、この場を借りて?お詫びしときまーす。)
  一番うれしかったのは、日本よりさらにタランチュラ飼育ブームの遅れている
香港で(なんせ2,3件しかその種のペットショップないんですから)、同好の士に
巡り合うきっかけになったこと(香港タランチュラ・クラブも準備中)。最近で
は、結構危険なタランチュラの種を飼っているという女子中学生や小学生からま
で、問い合わせのメールが来て、うれしい限りです。
  情報不足の日本や香港のタランチュラキーパーには、海外のページへのリンク
や、翻訳情報の提供を、重宝がられています。
  (クモに特段興味のない)一般の人がどんな感想をもったかは、私としても興
味津々ですが、「今まで考えたこともなかったけど、結構面白いかも」といった
コメントがときどきあります。動物ペット関連でないページからリンクをはって
くださったのは、「演劇・土蜘蛛」の話題に興味を持ってくださった「演劇集団
・前進座」さんです。

5-蜘蛛(特に、タランチュラ<毒蜘蛛>の魅力とは?

  よく「毒蜘蛛」っていいますけどね、これは人間を狙った毒じゃないんですよ。
小さなねずみとか蛇とか、タランチュラを野生で見つけて食べてやろうとする連
中に対して「防御」のために毒性のある液を牙から出すってわけです。それに、
大半のクモは強い毒を持っていませんし、タランチュラに噛まれて死んだ人は歴
史記録上、一人しかいません(それも直接の死因になったか、あやしい)。
  セアカゴケグモは、タランチュラよりももっと毒が強いですが、日本の皆さん
は気をつけてるから、今まで噛まれたって事故聞かないですよね。毒性の強いク
モとの共存は可能ってことです。彼女らにいたずらに手を出したり、けしかけた
りしなければ。熱帯魚ピラニアの水槽に手を突っ込まないのと同じこと。
  さて、クモは節足動物(他にエビ・昆虫・サソリなど)の一種で、様々な環境
に適応して、様々な生態(生き様)に発展した動物です。世界に三万種くらいい
ると言われています。多様な形、生態は、魅力の一つです。「クモと一口にいっ
てもねぇ、色々とあるんよ」...というのが、私の口上のはじまりです。(詳しく
は「驚くべき事実」のページをご参照)
  タランチュラは、世界の熱帯・亜熱帯に八百種ほどいて、比較的大型の原始的
特徴をのこすクモの一群です。この十年くらいの間に急速に、色んな種が、ペッ
トとして米国・ヨーロッパで広がり始めました。場所を取らず、世話がラクなこ
と(餌を2,3週やらなくても平気)、悪臭のないこと、静かなこと(餌になるコオ
ロギはうるさいけど)なども、ペットとしてのポイントでしょう。そのデザイン
も、シックな茶色、黒から、オレンジ、メタリックな青、「黄色・黒」の縞、な
どなど実に多様です。
  普段のノンビリした様と打って変わり、コオロギを捕まえる際に見せる俊足、
小さな「猛獣」という感じの牙使いは、あんのんとした私たちニンゲンを、ワイ
ルドな生物界の「現実」に引き戻してくれます。ペットといっても野生動物なの
だ、という自然界への畏怖を教えられる瞬間です。
  最も感動的なのは、脱皮の過程です。クモは外骨格といってエビと同様、体の
外側が固い殻でできているので、その殻を脱ぎ捨てて、新しいからだが中から出
てきます。分身の術をゆっくり見ているようなその光景は、何度見ても感動的で
す。脱皮したてのタランチュラは、あらたな毛がベルベットの様に輝いて、とて
も美しいものです。

6-なぜ蜘蛛に引かれるようになったのか? 蜘蛛との出会いは?

  私はクモに関しては特異な生育歴をもっているようで、ものごころついたとき
には、クモを特段好むようになっていました。ムシ一般というのではなく、特に
クモでした。巣をはってムシを取ることは幼い私の感動を呼びましたが、ウロウ
ロ歩き回るクモにも引かれました。林を歩くときは、注意してクモの巣を壊さぬ
ように気をつけたものです。巣を見つけると何十分も観察したりしました。
  大学で、生物学を専攻して、いろいろな動物を研究する中で、クモの知識もさ
らに加えました。どうして他人はクモを嫌う(そしてクモの好きな私を奇異な目
で見る)のか、という疑問から、世界のいろいろな文化や風俗のなかでクモがど
んな役割をしているかも調べはじめました。日本では、古代の中央政権への抵抗
勢力が「土蜘蛛」と呼ばれていたことも知り、権威に反発する傾向のある私は、
ますます蜘蛛のカタをもつようになりました。驚いたことに、蜘蛛に対する尊敬
の念は、アメリカ先住民と、西アフリカの民族の神話に、全然別個に平行して現
れています。蜘蛛に引かれるのは、ニンゲンの原初的な「血」なんですよ、きっ
と。(詳しくは、「土蜘蛛」のページおよび「神話・物語」のページを参照)

7-現在、飼っている蜘蛛の数と種類

  タランチュラ飼育に手を出し始めたのは、5年ほど前ですが、値段が下がった
最近、種類を増やしはじめました。アメリカからの個人輸入、日本・香港のペッ
トショップで買ったもの、タイ現地から持ち帰ったもの、香港原産の野生種まで
含めて、30頭程ですが、一部屋の隅にケースを全部積みかせねてありますので、
「家じゅうクモだらけ」ってわけではありません。
  原産地で大まかに性格が分かれますが、南米産のものは主にバード・イーター
と総称し、比較的おとなしい種が大半です。「メキシカン・ブロンド」はお気に
入りの一つで、手に載せても大丈夫な、おとなしい金色のフワフワの毛で被われ
た美女です(米国ではマリリンモンローのようなクモと呼ばれる)。
  アフリカ産は、地面に網を張り巡らし、派手な威嚇姿勢を取る、バブーン・ス
パイダーと総称されるものが主流です。背中に神秘的なユニコーンのような角の
生えた「ホーンド・バブーン」は、手当たりしだい何でも食いまくる大食漢です。
  アジア産は、いちばんよく知られていないのですが、インド・スリランカ原産
のオーナメンタル・ツリースパイダーの一属は、じつにカラフルなのが多く、値
段も張りますが、魅力的です。樹上性なので、ケースのアレンジを工夫します。
スリムな脚の色が、メタリックブルー・黄色・黒・白の四色という、俊足の超美
種がうちにいます。数年後には30センチくらいになるとのうわさです。

8-毒蜘蛛を飼っているとのこと、噛まれたり、逃げ出したりされる心配はない
のか?

  ニンゲンが噛まれる怖れのある種は限られています。毒性が怖れる程とされる
種はもっと限られます。でも、噛まれたら痛いのは確かですし、あわててクモを
床に落として殺してしまったりしたら、大変です。私のモットーは、「ペットを
恐れではなく、尊敬をもって扱うこと」です。恐怖心は自信を失わせ、事故をま
ねくもとです。特定の種の性質をよく観察し、熟知し、その上で、ケースの開け
閉めやクモの移動に必要な「注意点」を身につける様にしています。
  ケースのふたを少し開けてピンセットを突っ込むとします。クモの反応は種に
よって色々です。穴の中に逃げ込むヤツ、向き直って前脚を振り上げ威嚇するヤ
ツ、なかには、ピンセットを駆け上がってこようとするのもいます。性質を熟知
していれば、逃げ出したり噛まれたりする危険はほとんどありません。イヌ・ネ
コの事故より少ないはずです。
  ケースの不備から逃げられた経験が二度ほどありますが、部屋中探して見つけ
出しました。いずれもおとなしい種類でした。危険な種類のケースは万一倒れて
もフタが開かないように針金で固定するなどしています。

9-蜘蛛に関する、何か面白いエピソードがあれば、教えてください。

  クモのエピソードは、語りだしたら一晩でも終わりません(君はそういう奴だ
、と私の友人たちは言っています)。そこで、HPのエピソードを一つ、二つ。
某雑誌社が私のページを写真入りで取り上げようとしたところ、クモの写真を掲
載したときの読者の反応を考えるべきだということになり、編集会議で「写真な
しの扱いにしろ」と決まったそうです。クモはかくも差別されているのです。そ
こで、本誌日経ゼロワンのご英断に感謝。
  英文のHPでは、「ウェブリング」というのが最近はやっていて、同テーマの
個人HPが同一のロゴを表示して、これをクリックすると、次々にリングのメン
バーのページに飛んで順番に見て行ける、というシステムがあります。クモペー
ジのリングがつい最近登場したので、さっそく登録、友人の日本語クモページも
登録して欲しいと頼みました。ところが、英国人のリング主催者は、「英文が主
でないページは参加させない」というのです。せっかく、インタネットが国境を
越える可能性を持つのに、言葉が壁になるなんて。タランチュラのページなんて、
たいてい写真がメインですから、日本のネットサーファーも英語ページの写真だ
け見て楽しんでるのに、日本語ページ締め出し、なんて不公平ですよね。日本で
のタランチュラ事情は、アメリカ・ヨーロッパに比べ、「情報不足、値段が高い」
と不利なので、HPが情報公開の突破口になれば、と願っているんですが。
  クモそのもののエピソードの圧巻は、私のHP「アジア奇談」ページを見てく
ださい。クモを食べさせられる話があります。


10-今後のページ展開について(新企画をスタートさせる予定や現在の内容を変
更する予定があれば教えてください)

  まだ、自分でとってアップした写真が少ないので、我が家のクモの素顔をもっ
と多くアップするつもりです(デジカメもスキャナーもないのがイタい)。さら
に多くの人との接点を持つためには、「アラクノフォビア(クモ嫌い)は、心理
学的、文化的にどのようにして生じるのか」を論じるのが課題だと思ってます。
嫌いな人のアンケートなんかも取ってみたら面白そう。


11-プロフィール
(生まれた年、出身地、職歴、趣味、インターネット歴など、公表しても差し支
えない程度で結構です。)

  インタネット上では身分を公開しないことにしています。年齢、出身地、職業
のどれをいっても、趣味がタランチュラということで、「ああ、あの人だ」って
身近な人たちに特定されてしまいますので。



以上です。




なお、質問タイトルに「毒蜘蛛」というのがありますが、もしQ&A形式でまと
めるのでしたら、そちらの表現として使っていただいても、回答部分で指摘して
いるのでかまいませんが、私個人はこの表現を避けるようにしています。タラン
チュラ=毒蜘蛛というのは、誤りなので、ここに記した程度の解説無しに誌面に
出すことはさけて欲しいと思います。目次なんかも同様。(例えば、毒蜘蛛のペ
ージ出現!なんてのは、イメージが誤解のまま定着しますから、困ります。)私
はクモ嫌いの人の表現の自由は尊重しますが、事実を歪曲する誇大表現には反対
します。



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