
日本の厚生省が健康保険上認めている脳梗塞に対する治療
1:点滴治療
(1)脳保護的な薬剤治療
脳梗塞の症状が重くても軽くても(重傷度・程度の差に関係なく)、急性期には同じような点滴治療薬を用います。重症の患者さんを前にして「こんなことしか出来ないのか」と、無力感に襲われる医師が多いことは御存知の通りです。また、患者にとっても急いで病院に駆け込んだにもあかかわらず、ただただ点滴を受けるだけで後は自然経過に任せられるだけとなります。
点滴というのは、吊り下げたビンやプラスチックボトルに入った液体に薬を溶かしたものを末梢静脈にゆっくりと注入していくものです。入院してから1週間あるいは2週間の点滴治療を受けることが、薬の種類に応じて健康保険で認められています。医師は、患者さんの病態に関係なく上記のいずれかの点滴を施行することが多いのではないでしょうか。これと並行して、脳梗塞による脳浮腫が強くなってくると、多くの場合グリセオールやマンニトールなどを点滴することになります。
点滴に入れる薬には、ウロキナーゼ6万単位(10年以上前から薬量は変更されていない)や最近使われるようになったオザグレルナトリウム(トロンボキサンA2合成酵素阻害剤)やアルガトロバン(抗トロンビン剤)、エダラボンなどがあります。
病院としては点滴治療を行っていれば、健康保険上はなんら問題ありません。健康保険が最新治療の妨げになる場合があります。健康保険で認められていない治療を行えば、全て病院負担になりかねず、個人病院では経営がなりたたないからです。
もし、重症の患者さんやその家族の方が最新の治療を希望するなら、最新治療や病院の事情について知識を持ち理解し、最新の治療を希望する旨を救急病院に早期に申し出、その病院で最新の治療が出来ないなら、一分一秒でも早くその治療が可能な病院に転送してもらわなくてはなりません。ただし、患者さんは、最新の治療を選択する権利を当然有すると同時に、その治療を選択した義務や責任も負うということを認識しなければなりません。最新治療にはそれなりの危険性を伴うからです。
(2)tPA 点滴静注治療(静脈内投与)
米国に遅れること約10年、2005年10月11日に日本の厚生労働省は、発症3時間の脳梗塞に対してtPAの投与を認可しました。お薬ですが、再開通効果が期待できる治療です。一方で、脳出血などの副作用の危険性も高いことを知っておく必要があります。添付文書をみると、投与禁忌や慎重投与対象患者が非常に多いので、本人や家族が、患者本人の体重や病歴や内服薬などの情報を十分に知ってないと、投与してもらえない可能性があります。また、それだけの情報が揃ってないことを承知で投与を希望すれば、患者や家族側にも 当然自己責任があります。効果が期待できるが、どれだけ危険性が高そうか、添付文書をみればわかります。添付文書を参照してください。
日本の治療は最新か?
ここで間違えてはならないのは、厚生省の認可といっても健康保険が適用されるか否かということなのです。健康保険の精神というのは「国民の福祉」であり、つまり全ての国民に最低の医療を受ける機会(権利)を保証しようではないか、ということなのです。決して、最新の治療を全ての国民に保証しようと考えているわけではないのです。根本にある精神が「福祉」なのですから。最新の治療の医学的是非を審議するものでは決してないのです。米国FDAが認可すれば、国内使用を認可するアジア各国は多く、日本では使用できない欧米製の薬の使用方法、最新手術器具を用いての手術をアジア各国で受けられるのが最近の現状です。
情けない話です。日本はアジアでも 医療後進国になってしまったのか! 国民は何も知らない。
1’:選択的血栓・塞栓溶解術が2002年4月から健康保険適用されました!
ついにカテーテルを用いた血栓溶解療法が健康保険で受けられるようになりました。 しかし、これに用いる薬が保険に通ったものがありません。どうやって治療しなさいと厚生労働省は言うのでしょうか??
「厚生省の方の意見が聞きたい」ところです。
2.リハビリテーションの重要性
重症の脳梗塞の患者さん場合、発症1-4週間以内に死亡されることもありますが、命が助かる見通しがたてば、すぐにリハビリテーションを計画します。
1.急性期リハビリテーションと回復期リハビリテーション: 救急病院に入院中に行うリハビリテーションと、リハビリテーション専門病院で行う回復期リハビリテーションとがあります。社会復帰のために、あるいは少しでも家庭での生活動作改善も目指して訓練を受けるためにリハビリテーションを受けるなら、回復期リハビリテーション認定施設で受けられることを勧めます。可能なら発症1ヶ月以内に回復期リハビリテーション認定施設に転院し、発症3ヶ月以内に回復期リハビリテーションを終了され自宅に帰ることができれば最善と思います。 頑張っても完全な機能回復ができるとは限りませんが、努力すればリハビリテーションの効果は確実に現れます。
軽症の脳梗塞の場合は麻痺の程度も軽いので、リハビリテーションの効果も早く出ます。
3.再発予防
脳梗塞の直接原因を調べ、原因を除かなくては、せっかくリハビリテーションが効を奏して麻痺が良くなっても、再発して同じ目に遭うか、前回よりも重症の脳梗塞になるかもしれません。しかし、脳梗塞の直接原因を真剣に調べてくれる病院は案外と少ないので、患者の側で精査を希望することが肝要です。「点滴してリハビリして一丁上がり」、にされないように注意して下さい。医師側は、精査する事が当然の義務だと思います。よほど患者が早期の退院を希望しない限り。
最も重要なのは、頚部動脈や頭蓋内動脈に高度の狭窄が無いかを調べることです。もしあれば、近い将来閉塞し、もっと重症の脳梗塞になる可能性があることを意味します。
心臓の不整脈や心筋梗塞の既往がないか調べることも重要です。
原因によっては、脳神経外科や血管外科で手術を受けたり、血管内治療の専門医がいれば経皮的血管形成術(血管拡張術)を受けたりしたほうが良いかもしれません。いずれにしても、原因に応じた薬を内服しなければなりません。
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