BAILANTA

 

「バイランタ」と聞いて、すぐに何を指しているか分かった方がいれば、かなりの音楽通、と言うよりアルゼンチン通です。「バイランタ」は、コロンビア発祥のクンビアと呼ばれるダンス音楽がアルゼンチンに伝わって変化し、独自の発展を遂げ出来上がった音楽なのです。

 

(バイランタの踊り)

「バイラ」はスペイン語で「踊る」という意味なので、まさに「ダンス音楽」のことなのですが、ダンスの内容は極めて単純明快です。4拍子のリズムに合わせて2歩右に歩いたら2歩左に歩き、これをひたすら繰り返します。

テレビ番組では、バイランタのバンドが演奏をし、同時にメンバー自身が曲に合わせて踊るため、ヴォーカルはマイクを手に、バンドメンバーはそれぞれの楽器を手に、この踊りを(もうほとんどただのステップなのですが)するわけです。見ていると、皆が同じ方向に右、左と移動しています。

番組では、多くの場合、バンドの後方にミニスカート姿のセクシーな女性が数人配置されており、腰を振りながらスカートを回転させ、お色気を振りまいて踊っているのも特徴です。番組の間ずっと踊りっぱなしなので、なかなか体力がいるのだと思います。

 

(バイランタのバンド)

バイランタはバンド形式で演奏されます。一般的な構成は、ヴォーカル、エレキギター、ドラムパッド、キーボードそしてパーカッションですが、サイドヴォーカルがいたり、伝統弦楽器のチャランゴなどを使うバンドも、ごく僅かですが存在します。

機械的なキーボードの音色がメロディーラインを奏で、ヴォーカルがそれに合わせて歌います。演奏技術や歌のうまさは、どちらかといえばほとんど重視されず、ノリの良さやバンドのカッコ良さが人気の決め手になっているようです。そのせいか、テレビ番組や公開録画の時、バンドは実際には演奏したり歌ったりせず、自分たちのCDを流し、それに合わせて口を動かす、いわゆる「くちパク」をするケースがまかり通っています。まだヴォーカルの声がテレビでは聞こえているのに、マイクを離して舞台下のファンと握手したりしている姿も非常に良く見ます。そんな時でも会場はいつも騒々しく賑わっています。

 

ではメンバー達が、アイドル歌手のようにカッコ良い10代、20代ばかりかと思うと、実はそうでもないのが面白いのです。中にはもうとっくに中年に差し掛かっていると見られるヴォーカリストや、長髪で今ふうにキメていても、よく見ると全然冴えない風貌の人も結構います。そのあたりがバイランタの奥深いところなのでしょう。

 

(バイランタのファン)

ファンは圧倒的に10代の女の子が多いです。もちろん男の子もバイランタを聞きますし、20代のファンも多いのですが、バンド別にファンの年齢層が明確に分かれているという話もあります。

街を歩いていると、昼時、休憩中の建設現場の奥からバイランタが聞こえてきたり、通りすがりのトラックから聞こえてくることもあります。また、少々迷惑な話ですが、タクシーの運転手が深夜の住宅街を大ボリュームでバイランタを鳴り響かせながら通り過ぎていくのも、かなり頻繁に目撃します。

そういう事実を総括すると、バイランタは実に広く、アルゼンチン人に受け入れられている音楽なのかもしれません。もちろん、人によって好き嫌いはあるのでしょうが・・・。

 

また、大きな横断幕を客席に持ち込み、キャーキャーと騒いでお目当ての男性の名前を叫び、リズムに合わせて肩を揺らしながら見いる様子は、日本のアイドルのライブそのものです。露店でもバンドのメンバーが勢揃いしたポスターやカレンダーが売られています。

 

週末になると、市内に幾つかある、バイランタのバンドが出演するディスコは、深夜から朝に掛けて一晩中賑わいます。どのディスコにどのバンドが出演するかは、新聞をチェックほかにも、街角の壁に張り出されるド派手な広告から知ることが出来ます。米国系ロックやラテンポップスのディスコなどと人気を二分しているのではないでしょうか。

 

そんなわけでバイランタは、タンゴ、フォルクローレと並ぶ、アルゼンチン生まれの第三の音楽なのです。

 

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