LA FLORERIA

 

 

(街の花屋さん)

ブエノスアイレスでは、街角のあちらこちらに箱形の小さな花屋さんを見かけます。

新聞や雑誌を扱う売店「キオスコ」に混じって、そうした花屋さんもまた「キオスコ」と呼ばれます。急ぎのお客さんがすぐに持ち帰れるように、あらかじめ花束にして売っている店が殆どですが、友達の家を訪問する時や、ちょっとしたプレゼントにしたい時に気軽に利用できるので、このような「キオスコ」の花屋さんはとても重宝します。墓参の時、キクが5本くらい入った束を買う場合も、皆こうしたキオスコを利用します。価格も日本と比較すると安く、フリージア5本とかすみ草、それにレザーファンなど葉ものが2枚くらい入って3ドル程度です。夜も21時くらいまで営業している点もとても便利です。

ただ、日本人の目から見て若干気になるのは、プレゼント用なのにリボンがお粗末だったり、花束の持ち手の部分(切り口)がむき出しで、そこからポタポタと水が滴ってしまうなど、もう一歩「丁寧さ」に欠ける点です。こちらの人はあまり気にしないみたいですが、花を贈るのが好きな自分としては、ちょっと工夫して欲しいな、なんて思ってしまいます。

街なかにも、もちろん花屋さんはあります。

店内では切り花の他にアレンジメント、鉢花、観葉植物、それにドライフラワーも扱っています。予め注文しておくと、指定日に配達もしてくれますし、国内外に配送するシステム(FTDと呼ばれる協会など)に加入していれば、世界中に花を贈ることも可能です。この手の花屋さんはキオスコに比べると値段はずっと高いですが、花の種類もあり品質もいいものが揃っています。

ですから、ビジネス、冠婚葬祭やあらたまった席に招待されたときなどは、やはり店に頼んで製作して貰います。花嫁さんのブライダル・ブーケもこうした店で注文します。市内に幾つかある高級店では、アレンジメントも平気で100ドルくらいしますから、東京などの他の大都市とまったく変わりません。

営業時間はだいたい19時半くらいまでで、土日はお休みの店が多いです。

 

(道端の花屋)

交差点での信号待ちを利用して、花束を売りに来ることもあります。胸には大きく値段を表示したプレートを掛け、両手に花束を持って停車中の車の間を売り歩くのです。一回わずか2分程度の時間を利用してのことですが、それでも「母の日」などは結構売れています。値段は一束平均5ドルで、時には同じ値段を出してキオスコで買うよりも花の本数が入っているのでビックリしてしまいます。おそらく花市場で直接仕入れ、自分たちの手で花束にするため、余計にコストが掛からないからなのでしょう。春先にバスケットいっぱいのスイセンや沈丁花を売り歩く姿を見かけると、ついつい買ってみたくなるものです。

また、彼らは時にレストランやカフェテリアなどにも出没します。

 

(アルゼンチン人と花)

かつてアルゼンチンが最も華やいでいた頃、この国の花の需要は今に比べて遙かに高かったと聞いたことがあります。それは大都市・ブエノスアイレスのあちらこちらで、週に何度となく催される煌びやかなパーティーを演出するのに欠かすことの出来ないアイテムだったからでしょう。裕福な人々はヨーロッパ流にお抱えの仕立屋を家に呼び、婦人達が週に3度も美容室に通ったと謳われるそんな時代、日本からアルゼンチンに移住してきた人々は、花作りに最も貢献してきました。そして彼らの作り出す花はアルゼンチン人に高く評価され、現在に至るまで「花作りと言えば日本人」とさえも言われる程です。

 

(日系人と花作り)

花市場に並ぶバラ、カーネーション、キク、ユリ、グラジオラスといった年間を通じて出荷される花を中心に、その殆どは日系人の農園で作られています。ブエノスアイレス近郊のエスコバルと呼ばれる場所では、多くの日系人が花作りに従事していることで知られ、毎年9月下旬に行われる「花祭り」はエスコバルの名物として、他の州からも大勢の人が訪れるようになりました。開催期間中は農園ごとに品評会も行われ、それぞれに花作りの腕を競い合います。

アルゼンチンでは「盆栽」がそのまま「BONSAI」の名で定着し、またフラワーアレンジメントが「IKEBANA」と一般に呼ばれていることなどからもわかるように、花業界における日系人の貢献度と浸透度は想像以上に深いのです。

 

(花市場の様子)

ブエノスアイレスの花市場は、市内コリエンテス大通り4000番くらいを一本裏地に入った辺りに位置し、売買の始まる夜20時過ぎになると、買い付けにやって来た花屋のトラックやワゴン車で周囲の道路がごった返します。以前は市場も早朝にやっていたのですが、一昨年ぐらいから夜の営業に変わったそうです。日本の花市場と違う点は、セリが行われず(相対ということ)花屋以外の一般の人間でも入場が可能なので、誰でも花が買えてしまう、つまり非登録制という点です。ただし、常にまとまった本数(10本以上から)を購入しなくてはいけませんから、パーティーなどで大量に花が必要なときは有り難い制度とも言えます。広い市場の階上部には、ドライフラワーやバスケット、リボン、ワイヤーなど様々な資材も販売されています。

市場のすぐ近くでは、鉢花や苗ものを扱う場所があります。こちらもある程度まとまって買う必要がありますが、それほど厳密ではないようです。

 

(デザイン性)

花束やアレンジメントについて言うと、デザインの面で特に素晴らしいと感じることはありません。どの店でもだいたい同じような無難なスタイルのものが売られ、その際に使われる花も各店で殆ど変化がないのです。ウィンドーに飾る花くらいは、もっと季節感を出して演出したり変化を付けてみたらどうかと思うこともあります。けれど、イースター(復活祭)の日が近づく頃は、卵形をしたチョコレートと一緒に飾ってみるなどの工夫は少しずつ見られるようになりました。そんなわけで、デザイン方面ではこれからもっともっと改革して欲しいものです。

 

・・・春の訪れをアルゼンチン中の人々が指折り数えて待っています。

 

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