Habla Castellano

 

アルゼンチンに暮らし始めて良く耳にするようになったのが、「一度ブエノスアイレスを訪れると、その独特のイントネーションが耳について離れない」と言う話です。

殊にある一定の期間ブエノスで暮らしたことのある人であれば、なおのこと耳から離れない、というのは実は納得できることかもしれません。

というのも、本国スペインに始まり、南米中探しても、こんなにイントネーションのハッキリした国はないと言えるからです。

この独特のイントネーションは、遡ってみると統治国であったスペインからの独立後、アルゼンチンに最も多くやって来たのがイタリアからの移民者で、彼らの影響に拠るものとされています。

確かにイタリア語によく似たイントネーションがあり、派手なアクションを交えて話すその様子は、特に外国などで見かけると即、アルゼンチン人だと識別がついてしまうほどです。

 

例えば、英語のHi!にあたるHola!という表現ですが、ブエノスアイレスでは「おぉ〜らっ!」と、やや大袈裟に引っ張るような言い方を良く耳にします。

初めて聞く人は、「まるで歌っているみたいだね」などと、ほんのちょっとおかしいのを我慢して、そうつぶやいてしまうかも知れません。

ちなみにスペインでは、もっと短く「おら!」と言っています。

電話を掛けると、電話向こうの相手が大抵まず最初にこの一言を発しますが、その時は少しだけ語尾が上がり気味になり、「もしもし?」というニュアンスを含んでいます。その後、電話相手が誰であるかを確認するや、今一度、「おぉ〜ら!こも て ばぁ?Como te va?(元気かい?)」と声高に挨拶するのもアルゼンチン人らしい表現の仕方と言えるでしょう。

喋るときの声は概して皆大きく(このあたりもイタリア人的要素が入っているのでしょうか)、バスの中や駅のホーム、待合室などにいても平気で普段と同じトーンで喋り、最近は普及の一途をたどっている携帯電話での通話のせいで、益々賑やかに(時にうるさく)なってきています。

 

また、よくある「相槌(あいづち)」や「つなぎ言葉」にbueno.という言葉を頻繁に使っているのも特徴的です。スペインではこの言い方の他にもvale.などと言うこともあるし、お隣りの国・チリではドイツ移民の影響か、ya!と言ったりもしますが、ブエノスアイレスの人は男女問わず、抑揚をたっぷり効かせて「ぶえ〜の」と言います。これがとても耳に残る一言で、外国に行った際、傍でこの言葉を連発している人がいると、すぐにアルゼンチン人(ブエノスの人)だとわかってしまう程です。それ以外でも多くの独特なニュアンスがあり、その強烈なパーソナリティーと共に、ひときわ異彩を放っていると言えるでしょう。

 

日本でアルゼンチン的なニュアンスに触れる機会があるとすれば、主にそれは「タンゴ」という分野を通じてでしょうか。訴えかけるような力強さ、かと思えば泣きが入ったような痛切な叫び等、タンゴの魅力を挙げればキリがありません。どれも、アルゼンチン人の日常と切り離せない、普段の話し言葉に通じるニュアンスの数々が盛り込まれているのです。

アルゼンチン人と話すとき、そのことを改めて感じ、テキストでは習えない、生きた「カステシャーノ※」に触れることがきっと出来るはずです。

※アルゼンチンではスペイン語のことを「エスパニョール」とは呼ばず「カステシャーノ」と呼んでいます。

 

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