MATADERO

 

ブエノスアイレスの首都圏であるカピタル・フェデラルCapital Federalは47の区域(バリオBarrio)に区切られていますが、その西の端に「マタデーロ」と呼ばれる区域があります。

 

歴史Historia

マタデーロとはスペイン語で「屠殺場」のことを指します。

1846年まで、現在のマタデーロ一帯は民家も何もない場所だったと言いますが、この年、大規模な屠殺場が設置され、以後100年以上に渡って使用されました。首都圏で2つあった大屠殺場の1つで、アルゼンチン全土から鉄道やトラックで牛を中心とした家畜が運び込まれ、ここで屠殺され、首都圏一帯の食用肉になったそうです。そんなわけで今でも周辺にはハムやソーセージの商店が建ち並んでいます。

 

鉄道が敷設される以前は、レセーロReseroと呼ばれる「牛追い人」が馬に乗って田舎から牛を引き連れて来ました。レセーロはカンポの人々独特の、ポンチョを着て馬の手綱を緩めたまま、実にゆったりとした様子でマタデーロへと近づき、早朝に到着するとすぐさま牛たちを分別し、朝8時からの競りに間に合わせた、という話です。マタデーロで行われるフェリア(蚤の市)の中心地では、このレセーロの銅像がひときわ目立っています。

 

現在は郵送・冷凍共に技術が発達したため、家畜は地方で屠殺し食用肉にしてから首都圏に運ばれるようになり(首都圏での屠殺が市の政令によって禁止となったことも重要な原因ですが)この辺りの屠殺場は使われなくなって、その跡地は公園として利用されています。

 

(蚤の市)Feria

このように10年ほど前から屠殺場跡地の公園と道路の一部を歩行者天国に使って、毎週日曜日には手工芸品や民芸品(アルテサニアArtesanias)などを集めた蚤の市(フェリアFeria)が開かれています。蚤の市はブエノスアイレス市内の大きな公園で週末になるとどこでも見ることが出来ますが、マタデーロの蚤の市では、田舎(カンポCampo)で昔から今に至るまで使われている様々な馬具類や、古い蹄鉄を利用して作った装飾品、カンポの生活を描いた絵画や荘園主の肖像画、各州の個性豊かなポンチョPonchoとガウチョの装飾品など、どこよりも地方色が豊かなことが特徴です。かつてガウチョGauchoが使っていた牛の角で作った水筒やコインが沢山付いた革の太いベルトなど、今では地方の蚤の市か、もしくは舞台やフェスティバルでしか見られなくなったガウチョの小道具類も手に入れることができ、興味のある人にとっては非常に貴重な場所と言えます。

 

博物館Museo Criollo de los Corrales

また、蚤の市の片隅には、こうしたガウチョらの田舎の生活を偲ばせる博物館(ムセオMuseo)も設置されており、田舎の生活の様子を描いた絵画や写真、ポスター、馬車の実物、プルペリアPulperiaと呼ばれる昔の酒場兼食料品雑貨屋を再現したコーナー、昔の生活を偲ばせる田舎の家を再現したジオラマなどをみることができます。(入場料Entradaは1ドル)博物館の隣ではクラフト教室なども随時開催されています。

 

(野外コンサート)Concierto gratuito y libre

マタデーロの蚤の市のもう一つの特徴は、毎週有名無名のフォルクローレ演奏家が多数出演する無料の野外コンサート(ライブ)があることです。舞台の周りには老若男女集って、フォルクローレを思い思いに踊り、楽しむ様子を見ることが出来ます。もちろん、誰でも自由に参加できます。衣装の持ち込みも歓迎ムードです。ステージでのイベントは昼頃から始まり、休憩を挟みながらも蚤の市が終了する19時までやっています。夕方にはもう足の踏み場もないくらいの混雑ぶりでした。

 

(郷土料理の屋台)Comidas Criollas Artesanales

  コンサートを行っている会場の裏手では、アサード(炙り肉)を始めとした様々な郷土料理を食べさせる屋台が並び、お客で賑わっています。アルゼンチン北西部の代表的な煮込み料理・ロクロLocro、とうもろこしの葉で包んで蒸した「ちまき」のようなタマーレスTamales、やウミータHumita、チョリーソChorizoという炭火で炙った太いソーセージをパンに挟んだだけのシンプルながら味わい深い(しかも安い!一個1ドル)チョリパンChoripan、誰でも知っている揚げ餃子(?)エンパナーダEmpanada、甘いジャムを挟んだ揚げ菓子パステルPasteles、庶民の間で最も良く飲まれているお茶マテ・コシードMate Cocidoなどを低料金で賞味することが出来ます。これらの料理は田舎に行くとどこにでもあるものばかりですが、ブエノスアイレス市内でこのような料理を扱っているレストランを探すのはけっこう骨が折れます。

また、手作りのアルゼンチン各地の菓子類(有名なところではアルファフォーレスAlfajores)や果物・サボテンの実(tuna)を使ったジャム、蜂蜜、山羊や羊のチーズなども売られています。これらのチーズもまた、市内ではなかなか出会えない逸品です。

 

マタデーロはブエノスアイレスの市内にありながら、今も昔もパンパ(草原)と都会を結ぶ接点になっていると言っていいでしょう。

 

住所: Lisandro de la Torre とAv. de los Corrales の交差点付近

時間:毎週日曜日12時から19時頃まで

 

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