PENINSULA VALDES

 

  ブエノスアイレスから南へ1500キロ、パタゴニアの入り口バルデス半島(チュブト州)へ行く。

金曜日、会社を早目に引き揚げて、家からタクシーで20分くらいのところにあるアエロパルケと呼ばれる国内線空港に到着、20時30分ブエノスを経ち、24時30分、目的地のトレレウに到着。

深夜のトレレウの町はさすがに静まり返っていた。ブエノスアイレスのような夜の賑わいはどこにも見られない。風の音だけが小さく耳を掠めていく。

その日は予約したホテルにチェック・インして、すぐに寝た。翌日の出発時間が定かでなかったが、旅行社には当然、この時間誰もいないので確認のしようもない。

 

しかし、出発は8時頃だろうと思い、翌日6時半に起きると、なんと6時45分に「迎えが来た」とフロントから電話があるではないか!

「いくらなんでも、そんなに早いはずはない!」と、眠い目をこすってフロントに行き、もう一度確認してもらうことにして自分は部屋に戻ると、数分後「やっぱり8時半でいい」と電話があった。

やれやれ。初日からこれでは、まったく心臓に悪すぎる。

ともあれ、大型バスに乗ってトレレウから更に南へ100キロくらい離れたプンタトンボへ。

 

バルデス半島まで来たその理由―実はここは動物の宝庫なのである!

Pinguino en Punta Tomboプンタトンボは、野生のペンギンの巣穴が何万とある広大な土地で、定められたルートに沿って(むやみに歩き回って巣を踏みつけないように)その中を奥へと歩いて行くと、やがてそこら中にいたペンギン達が目に飛び込んできた。数十万羽はいるそうだ。今、ちょうど母親が卵を温めている時期らしい。

「穴の中でペンギンが寝てるよ!」

「あ、よちよち歩きだー!」

「おお、仲良しペンギンが重なり合って寝てる!」

「あ、泳ぎに行ったのがいる」などなど、集まった観光客は興奮のるつぼ。

あまりのかわいさに、いちいち歓声を上げないと気が済まない状態で、これは生まれたばかりの赤ん坊が立った笑った、の興奮にちょっとだけ似ているような気がした。おかしな気分だ。しかし本当にカワイイのだから仕方ない。

フイルム1本分まるまるペンギン達を撮り続け、ビデオで追いかけた。傍によってもペンギンは逃げ出さず、じっと自分の世界に浸っている(ような顔つきをしている)。これだけ接近できるとは、純粋に感動してしまった。

 

そうこうしているうちに昼食の時間になったので、プンタトンボに一軒だけしかない売店でエンパナーダとペンギンのぬいぐるみを買い、そいつに「ぷん太」と名付けた。

 

その後、いったんトレレウの町に戻って、そこから35キロ内陸に入ったガイマンへ。

Gaimanここはかつてイギリスのウェールズ人たちが入植し、築いた町だとか。なるほど、イギリス風の花に溢れ、手入れの行き届いた庭を持つ家が多く、美しい家並みが続いていた。

この小さな町で一番のお気に入りは、なんといっても「Casa de Te(喫茶店)」のアフタヌーン・ティーである。

一人12ドルと少々高めだが、庭ではウェールズの民族衣装を着た男女のペアによる民族舞踊が披露され、こじんまりとした館内から、美しいバラが咲き乱れる庭とその傍を流れる小川を眺めつつ、本格的な美味しい紅茶と多種のケーキが食べ放題となっている。昼にエンパナーダ1個しか食べていなかったので、お腹中にじーんと染み渡り、嬉しさが込み上げてきた。

絶品は「クリームチーズケーキ」。いくつでも食べられそうな感じだが、4つで止めておいた。

アルゼンチンのケーキが概して甘すぎるせいか、ここのケーキに使用されているカスタードクリームが、日本の一般的なケーキや「ファミリーマート」の「チーズケーキプリン」を彷彿させ懐かしくなる。

12個(紅茶4杯)を平らげた。もう夕食は必要ないと思った。

 

その日はトレレウに戻って、更に70キロ北にある、バルデス半島の付け根の町、プエルト・マドリンの海岸沿いのホテルに宿泊。まだ新しいらしく、とてもきれいだ。

20時過ぎに着いたのに空はまだ明るい。さすがは初夏のパタゴニアだ。

久しぶりに砂浜の海岸に降り立って「湘南に来て夕暮れを見ているみたい」と感想を漏らす。

その後(やっぱり)食事に行こうと、レストランを探しながら歩くこと1時間半。

たった700メートルの道のりを、数メートル毎に並んでいる土産物屋のTシャツやペンギンの小物を見ながら寄り道しつつ、ようやくしてレストランの中に入った。 

既に22時過ぎ。シェフお勧めの、近海で獲れるというタコを使った酢漬けと舌平目など食べて満足しホテルに戻った。ペンギンづくしの一日であった。

 

日曜日は朝7時45分出発。バルデス半島のプエルタ・プラミデ(ピラミッド港:三角の山がある)までバスで行く。ここでうっかり集合場所を間違えて、ガイドさんに心配掛けてしまった。スミマセン。

Vallena en Peninsula Valdesしかし無事に船に乗りこみライフジャケットを付けて、クジラの見学を開始。

このツアーは天気の善し悪しがものを言う。だからもしも強風だったり雷雨だったりすると、危険なので船は出ないのだ。

運良く、この日は晴天で無風だったので、問題なく船は出発した。

まもなく、前方に見える入り江の中に、クジラのつがいが遊んでいる姿があった。初めは背中だけしか見えず、なんだか潜水艦のようにも見えたが、徐々に顔を出たりしっぽが出たりして、そのつど「おー」という歓声が上がる。

背中にカモメが止まり休憩する場面もあった。

思ったよりも沢山のクジラがいて、遠くの方では潮を吹き上げていたりするのも見えて超感動!

自然の雄大さを肌で感じ取るにふさわしいひとときだ。

 

Robo Marinoその後は更に半島の先端まで行ってアザラシの見学。

つき出した岬から真下を臨むと、石の浜を我がもの顔で数千頭。

望遠鏡で見ると、そのほとんどが昼寝をしているようだった。大きな欠伸をしては、また気持ちよさげに目を閉じる。雄の大きな雄叫びが風に乗ってかすかに響いてくる。

浜に降りて更に近くに寄ると、ゾウアザラシの巨大さが良くわかる。体長7メートルもあるそうだ。

子供のアザラシは目がかわいくて、ほんとうにぬいぐるみそのまんま。黒い体に付いた白い砂が、ゴマのおはぎを思い起こさせ、ふっとおかしくなった。日本的な発想だ。

眠っているところや、たまに目を開ける瞬間、手(?)をばたばたさせる瞬間を捉えて写真を撮っていると、またあっという間にフィルムが1本なくなってしまった。

 

途中、荒野でわずかな草をはむグアナコ(ラクダ科だけど、どちらかというと鹿に似ている)にすれ違い、カモメだけが棲んでいるという島を望遠鏡で見て、ニャンドゥー(だちょう)が走っていくのを見ながらプエルト・マドリンに引き返すと、ちょうど夕暮れ(20時半)になった。

 

ホテルに帰ると、急に空腹感が襲ってきたので、すぐに仕度をして出かけた。考えたら、今日一日まともに食事をしていなかったのだ。

昨日と違うレストランで魚料理を注文した。肉料理ならブエノスでも十分味わえるが、海の幸はなかなかいいものに巡り会えない。白ワインが疲れた体にほどよく廻ってきて気持ちよくなってしまった。

 

翌日、早朝2時50分に起きて5時15分の飛行機に乗り、一路ブエノスアイレスへ。

家に戻ってスーツに着替え仕事へ直行。ちょっと眠くて辛かったねえ。

 

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