Tatuaje

 

 

日本では、今現在はいざ知らず、数年前に若い人達の間でファッションとしての「刺青」が流行し、街角でも肩口や腕にドクロやバラ、ローマ字などを入れた人をけっこう見かけたものでした。もちろん、中には本物の刺青ではなく、かなり精巧にできた「シール」を張っていた人もいたでしょう。本物の刺青を、それも体の広範囲に渡って入れるのは、やはりなかなか抵抗もありますし、プールや銭湯などで「刺青のある方の入浴をお断りします」と書かれていたりして、一般的にあまりイメージの良いものではない気がします。

 

しかし、日本の刺青は色彩の面でもデザインの面でも世界最高峰の1つであることは間違いないらしく、ブエノスで頻繁に放映されているフランスのとあるテレビ番組では、伝統的なアイヌの唇を囲った入れ墨、ポリネシア系部族の幾何学模様の全身入れ墨、南米パタゴニアのシルクナム族(現在は一人も生き残っていない)の全身入れ墨等と並んで、日本の刺青は「芸術」と評価され、大々的に紹介されています。

 

さて、ブエノスアイレスでは、床屋と同様にごく普通の店として「刺青屋」が存在します。入り口付近に展示してあるデザインの一覧から好みの図案を選び彫ってもらいます。料金は、実際にやったことがないので正確には分かりませんが、かなり安い料金から色々とあると聞きました。5センチくらいで80ドル、20センチくらいの大きなものになると200ドル以上になるそうです。ブエノスの街角では、腕や手首に濃い緑色と赤色を使った刺青を彫っている男性や足首にブレスレット型の幾何学模様、お腹にハートマークやキスマークを彫った女性を頻繁に目にしますし、10代の若い男女の間でも付き合っている者同士が互いの名前を彫り合ったり、洗えば消える刺青シールを貼ったりと、様々に流行しています。

 

人気のテレビ番組では、自慢の刺青を観客に見せて、その評価によってお金がもらえるコーナーまで登場しました。しかし、概してそのデザインは稚拙で絵も巧くなく、見ようによっては「落書き」に近い、色調もドス黒い緑か赤で、とても芸術的な美しさとは言い難いものばかりです。

せっかく自らの肉体を差し出して生涯消えることのない絵を彫って貰うのなら、もう少しまともなデザインと色調にしたら良いのに・・・と、お節介ながらも思ってしまいます。日本のそれを「芸術」と表現したフランス人の感性に思わず頷きたくなるというものです。

 

刺青を彫った理由を実際にアルゼンチン人に質問したところ、『失恋したので割れたハートの刺青を入れた』(20代女性)などのかなり突発的な理由から、年輩者だと「兵役時代にみんな自分の名前を腕に彫った」(50代男性)という、時代を感じさせるような理由まで様々でした(アルゼンチンは比較的最近まで兵役の義務がありました)。また「子供を産んだ後のお腹の跡を隠すため、なんて人もいました。反面、「特に(刺青を彫った)理由はないけど・・・」という若い世代が多いことも事実です。

 

こうして見ると「刺青」に対する考え方や抵抗感など、時代と共に変化を遂げていることがわかり、なおかつ「自己表現」の1つとしてグローバルに受け入れられているのだなあと改めて思うのでした。

 

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