Vendedores Ambulantes

 

ブエノスアイレスでは、昔懐かしい行商人の姿を、街なかや住宅街でしばしば見かけることがあります。いくつか紹介してみましょう。

 

包丁研ぎ屋

商売道具の自転車をゆっくりと手で押し、不思議な音色のする独特の笛を鳴らしつつ、時にはマンションの下から上に向かって「ご用はございませんか」と叫びながら歩いています。自転車のハンドル部分の近くに刃物を研ぐために使う円錐の砥石を設置し、車輪に革ひもを引っかけ、その回転を利用してリズミカルに包丁やハサミを研いでいくのです。遠くから聞こえる笛の音は、昔の日本でも良く見かけた「豆腐やさん」そのものです。

 

はたき屋

両肩にダチョウの羽根がびっしりと着いた「はたき」を何本も掛け、ふわふわと風にたなびかせながら「はたきぃ〜(スペイン語ではプルメーロpulmeroと呼びます)」と言って歩いています。ブエノスでは各家庭に必ず一本は、このダチョウの羽根ばたきがありますが、街なかでそれを買い求めているのは、もっぱら女中さんのようです(服装を見るとわかるのです)。買うときに良く見て選ばないと、ところどころ羽根が抜けていたりします。

 

パン屋

自転車の前部分に大きな籠を括り付け、その中にパンを山盛り積んで、馴染みの喫茶店やレストランを廻って卸しています。また、朝の通勤時に道行く人に売っていることもあります。時には、頭に直接その籠を乗せて売り歩いている少年もいて、人混みの中をすいすいと進んでいく姿は名人芸のようです。

 

野菜売り

ブエノス近郊に暮らすボリビア人の女性が大半ですが、こちらは売り歩いていると言うよりは、街角やスーパーマーケットの脇などを陣取り、地べたに風呂敷や木箱をひっくり返して並べ、自分たちが栽培したと思われる野菜類を「産地直産」さながらに売っています。日本人には身近でも、ここでは中国人街でしか手に入らない「ひね生姜」や、夏場には「空豆」を持っていることがあり、見かけるとつい買い求めたくなってしまいます。また、ボリビア独特の香辛料も小袋に入れて売っています。彼女たちはただじっと座っているのではなく、黙々とグリーンピースを鞘(さや)から取り出したりして、決して手を休めることはありません。

 

苗木売り

やはりボリビア人が多いですが、首都から50キロくらい離れたエスコバルなど園芸農家の多いところから来ています。観葉植物や苗木の入った大きなビニール製の袋を、多いときは一人で5〜6袋も持って歩き回り、幾つかまとめて購入するお客さんには、ちゃんと家まで届けています。マンションの呼び鈴を押してご用聞きをしていることもあるので、お得いさんもちゃんとあるのでしょう。

 

日本食

主にブエノス近郊で農家や商店を営む日系人達が、週末に新鮮な日本野菜や米、納豆などをライトバンに積んで、日本人駐在員の多い地域を廻っています。予め電話で必要な品物を伝えておくと、その日に合わせて持ってきてくれることもあります。

 

日本で「行商人」と呼ぶとき、それは主として「産地から直接仕入れたり、自らが栽培したり作ったりしたものを、または自分のある技能を、店や家々を訪ね売り歩く人のこと」を指すのでしょうか。アルゼンチンや他の中南米の国々では、まだまだこうした行商人や街角でモノを売って生計を立てている人が大勢います。店を持たずに自分の足だけで稼ぐ彼らの生き方は逞しく、日本人や先進国の人々が忘れてしまった何かを彼らの中に見出します。

スーパーで買いものするのもいいけれど、たまには街角で値段の交渉をしつつ、野菜を買ってみるのも新鮮な気がしてきませんか。

 

 

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