外積





 外積というのはベクトル同士のかけ算で内積とは違って結果がベクトルになるというおもしろいものだ。
(あんまりおもしろくないけど)

 外積の前に高校で習った内積の復習からはじめよう。




 1 内積とは?

 内積とは a=(a1,a2,a3)、 b=(b1,b2,b3)としたとき、

a1b1+a2b2+a3b3

で定義される量で、結果は見てのとおりスカラーになっているため別名スカラー積とも呼ばれる。

 通常a・bと表現される。

 また2次元や3次元の内積は図形的には

|a||b|cosθ

と言う表現も可能であることは習っているだろう。
(むしろこっちで内積を定義していた気もする)
|a|や|b|はそれぞれのベクトルの大きさで、θは2つのベクトルのなす角だということも覚えているだろう。


 2 内積の使い道

 内積の意味を見るには、|a||b|cosθの表現が分かりやすい。

右の絵を見れば分かると思うが、|a|cosθというのは ab方向の長さを意味している。
と言うことは|a|cosθを|b|にかけて得られる内積の意味は 「ab方向の成分を取り出して|b|にかける」と言うことになる。
もちろん逆の見方もできて「ba方向の成分を取り出して|a|にかける」 と言っても同じことになる。

 例えばaと単位ベクトルnの内積をとると言うことは、 an方向の成分を取り出すと言うことを意味している。
(別の言い方をすればan方向に及ぼす影響と言ってもいい)
なぜなら単位ベクトルは長さが1だから|n|をかけても|a|cosθに影響がなく 純粋に成分を取り出すという作業だけができるからだ。

 もっとも単純な仕事の定義を例に内積の意味を見てみる。
まっすぐな経路に沿って常に同じ力で仕事をする場合その力のする仕事は

W=F・s

となる。

 仕事の定義上「力をいくら加えても動かなかったらだめ」となっているので、 仕事を求めるとき意味があるのはあくまで経路方向の成分だけとなる。
(経路以外の方向には動くはずがない。だって動いた方向を経路と呼ぶのだから)
そこで経路の方向だけを取り出すのに内積が有効なのだ。

 電磁気学には「ベクトルの面に垂直な成分だけを取り出す」とか「ベクトルの接線方向だけを取り出す」 とかいう作業が頻繁にでてくるようになる。
こう言うときにも内積が役に立つ。




 3 外積とは?

 内積の復習は終わって外積に進もう。
こっちはちょっと計算としても概念としても厄介だ。

 まずは外積の定義から。
a=(a1,a2,a3)、 b=(b1,b2,b3)としたとき、

(a2b3-a3b2, a3b1-a1b3, a1b2-a2b1

で定義される量で、結果がベクトルになるためベクトル積と呼ばれることもある。

通常はa×bと表現する。

 まずこの定義を覚えるのが一苦労だろう。内積より格段に複雑だ。
しかしもちろん規則性はある。
ほら例えば1番目の成分の添字には1が入っていないし、2番目の成分の添字には2が入っていないだろ。
そしてしばらく眺めているとかなり対称的な形になっているのが分かるはずだ。

 外積も図形的な意味があって、外積の大きさは

|a||b|sinθ

となっている。
(証明はそれほど難しくない)
これはちょうどabが作る平行四辺形の面積に等しいというで、 こういうことも知っておいて損はないだろう。

 また、外積はベクトルなのだから方向を持つわけだがa×bの向きは abが作る平面に垂直な方向を向いている。
さらにaの方向を向いて見るとbから見て時計回りの方向にa×bは伸びている。

 そういうわけでa×b=-b×aが成り立っている。
これはまあ定義の式を見ても明らかだろう。

 外積についての数学的な部分での説明はこんな程度だ。
他には外積計算を簡単にするためにレビ・チビタ記号という テンソルを使うというテクニックもあったりするがここではそれについては放っておく。
興味があれば調べてみればいい。




 4 外積の使い道

 やはり意味を掴むには

|a×b|=|a||b|sinθ

で考えた方がいいだろう。

 外積のイメージは内積をひねったものととらえておくといいだろう。
内積はある方向の成分を取り出してそのままかけたものだった。

 それに対して外積は右の図のようにある成分に対して垂直な方向を取り出してかけるという作業をするわけだ。

 こういう風に垂直成分が必要になる場面とは一体どんな場面だろうか?
本当に必要な概念だろうか?
と思うかもしれない。

 しかし物理では以外と垂直成分が意味を持つ場合が多い。

 例えば1点で固定された剛体に働く力のモーメントを考える。
このとき右の図のように位置ベクトルと同じ向きの成分は回転には無関係となる。
回転させる能力を持つのは位置ベクトルに垂直な成分のみだ。

 こういう場面では外積が威力を発揮することになる。

 ちなみに力のモーメントでも分かるが、 外積はひねってかけるという作業をやっているため回転にからむ概念としてでてくることが多い。

 例えば電磁気ででてくるローレンツ力という力は外積を使って表現されるが、 ローレンツ力のみを受けて運動する物体は等速円運動をする。
他にも電流の作る磁場も外積であらわされるがその磁場は電流を中心とした渦を巻いている。

 まあその辺はあとで見ていくとして、 とりあえず外積には回転がつきまとうと言うことは知っておいて損はないだろう。


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