脊髄損傷と排尿障害

A 排尿のしくみ − 膀胱のはたらきを中心に

 腎臓でつくられた尿は、尿管を通って膀胱に運ばれます。
 膀胱は筋肉組織でできている袋で、尿を漏らすことなく溜めておく(蓄尿)、溜まった尿を体外に排泄する(排尿)、という2つのはたらきがあります。蓄尿は、長時間にわたって無意識のうちにはたらき、一方、排尿は短時間に意識的に行われます。
 この相反する2つのはたらきは、膀胱の筋肉(排尿筋)や尿道括約筋に対する複雑な神経系統のコントロールによってうまく調節されています。
 膀胱壁の伸展により生じた蓄尿の情報は、仙髄の排尿中枢を経由し、脊髄を通って大脳にある排尿中枢へ到達します( 尿意 )。排尿中枢からの指令も脊髄を通って膀胱や尿道括約筋に 伝達されます。
 蓄尿量が少ないうちは、膀胱排尿筋の収縮を抑制しつつ、膀胱の出口を閉じるように命令が伝わりますので、特に意識しなくても尿は漏れることなく溜められるわけです。
 膀胱に 350 〜 400 ml の尿が溜まると、尿意が急速に高まり、準備ができると膀胱排尿筋を収縮させつつ、尿道括約筋をゆるめるように命令が伝わり、スムーズな排尿が開始されます。

B 神経疾患による排尿障害

 大脳、脊髄、末梢神経のいずれの部位に病変があっても膀胱のはたらきは障害されます。これを「神経因性膀胱」と呼び、蓄尿が障害されると、頻尿(尿が近い)、尿失禁(尿が漏れる)、排尿が障害されると、排尿困難、尿閉(膀胱に溜まった尿が出せない)などの症状が出現します。

C 脊髄損傷と排尿障害

 膀胱のはたらきを調節する神経は、仙髄から大脳までの長い経路をたどるので、脊髄損傷では損傷部位の高さにかかわらず排尿障害を伴います。
 受傷後急性期には膀胱は弛緩し、完全損傷の場合を除き尿道括約筋の緊張があるため、尿閉となります。
数日から数ヶ月を経過すると、損傷部位以下の神経機能が回復し始め、その後の排尿障害は損傷部位により2つのタイプに分けられます。

頚髄、胸髄損傷:膀胱排尿筋の緊張が強くなり、無意識に膀胱が収縮して尿が出る(無抑制性収縮)。膀胱は小さく萎縮する。排尿時、括約筋はゆるみにくい。何かの刺激で反射的な排尿がおこる
自動膀胱

腰髄以下の損傷:膀胱排尿筋の緊張が低下し、尿を押し出すのに十分な力がない。膀胱は大きくなり、括約筋はゆるむ。腹部に圧力がかかると尿がもれやすい
自律膀胱