重度身体障害者(特に四肢麻痺者)にとっては、数時間おきに必ず褥創予防のために行わなければならない体位交換は大きな負担である。
 そこでこのページでは、一般的にほぼ同じ性能であるといわれ広く使われている二種類のエアマットについて、実際の使用状況を観察し比較検討してみるものである。検討してみる二種類のエアマットは、ビッグセルとアドバンである。
 ビッグセル-Exは株式会社ケープ(CAPE)が販売しているものである。アドバンは株式会社モルテンがを販売しているものである。どちらも性能は、ほぼ同じであると流布されている?。
 
ビッグセル-Exとアドバンの概要を紹介する。
     

ビッグセル-Ex

ご使用の環境に合わせて、リプレイスメント(ベッドに直接敷く)タイプとオーバーレイ(ベッドマットの上に敷く)
タイプが選べる。

 


ノッポセル(2層式エアセル)
トリプルシステム(三連圧切替)により身体の有効保持面積を広く確保。これにより、腰が落ち込まない安定姿勢を実現できる。
従来の交互切替と比較し、圧力切替時でも、マット面積2/3以上で身体を保持するため、有効保持面積は、30%拡大。同じ内圧でも単位面積あたりの圧力を低下させることを可能にした。

 


操作パネルはキーロック機能付き。
寝具や身体の接触による誤動作を防止します。
また、換気セルからの空気を循環させてマット外部に排出。マット内の熱や湿気をこもらせない新機構を開発。


 


人間工学に基づいた角度設定により下腿全体を広い面積で支え、踵への圧力集中を防ぎます。さらに、ベッドの背上げ時に働く、踵へのズレ・摩擦も低減できます。

 
         

アドバン

褥瘡ケアーを目的にしたハイポテンシャルなエアマット


エアーマット破損時の緊急対策
エアーマットをお使いの利用者にとって万が一、マットに穴があき、セル交換のためにエアーマットを数日間取り除くことは危険です。アドバンは破損が発生した場合に附属の補修シートにより簡単に緊急処置が出来ます。また、独立した3層構造(ABC)のため、いずれかの層に穴があいたとしても他の層にエアーが残ることで利用者を底着きから守る安全構造となっています。

バンプ形状

  

独立3層構造

 

 


湿潤への対処
ポンプの除湿ボタンを押すとトップカバー表面の無数の穴からエアーが噴出し、寝床内の高湿度を室内の低湿度と入れ替えます。


ムレ対策と衛生面への配慮
@ トップカバーの素材は透湿性を持たせムレ対策に効果的です。
A 防水性も兼ね備えているので失禁・嘔吐・吐血時のマットレスの汚染を防ぎます。
B トップカバーは制菌仕様で衛生的な環境をつくります。また、洗剤やアルコールを使って簡単に清拭(消毒)ができます。トップカバーに汚れがついた場合は、丸洗いも可能です。

 
         

@A

BC

 上記の四枚の写真は、私自身のベットにピックセル-Exをセットした時に撮った写真である。
 @が全体像で、従来のピックセルと同じく24本のセルが横に走っている構造である。従来と違うのは、足元の部分を見てもらうとわかるが、膝から踵の部分にかけて7%の傾斜が付けてあることである。それによって踵を浮かせなくても褥創の心配がなくなった。またセルが3連圧切り替え式になったため、体をベット全体の三分の二で支えるため安定した寝心地が得られるようになった。
 Aは全体の構造を横から撮った写真である。一番下にマットがあり、ビッグセル-Ex自体を黒っぽい特殊なカバーで完全に包み込む構造になっている。
 Bは新構造の換気機能のための細部である。ベット左側に写真のような縦に延びるセルがあり、そのセルから換気機能をONにすると小さな穴から空気が噴き出し、湿気と熱をベット右側の穴から排出する。
 Cは上記の換気機能によってベット右側に付いている空気の吹き出し口を撮った写真である。

 

 私の個人的な判断を述べる。一ユーザーとしての主観的な意見であるが、これから買おうとしている重度障害者のみなさんにとって一つの判断材料になればと考えている。
 価格面をみるとピックセル-Exもアドバンも最上位機種がともに\188.000である。ただし、横幅がほぼ同じサイズで比べるとアドバンは、\168.000と\20.000安い。要するに価格的にはほとんど同じと考えてよい。そのため購入するときの判断材料は、当然性能面となる。
 性能面をできるだけ客観的に判断すると、ピックセル-Exの方が格段に良いと考えざるを得ない。実際にアドバンの方を試用した人が、すぐにピックセルに変更した事例がある。
 アドバンは構造的に完全な除圧ができないため、説明とは違い危険な部位が赤くなることがあり体位交換の必要が発生する場合がある。また形が少し蒲鉾型になっているため、中央に寝ていないと不安定感がある。左右どちらかによるとすべり落ちるような感覚が発生することもある。個人的には、設計段階において欠陥があるのではないかと考えている。
 ピックセル-Exは、旧ビッグセルよりも価格面で大幅なコストダウンがあったため割高感が全くなくなった。構造的にもかなりの進歩がみられる。
 まず第一にセルが3連圧切り替え式になったため、寝ていて格段に安定感が増している。当然ながら15センチのセルにより完全な除圧が可能なため、危険な部位が赤くなることは私の経験では全くない。
 第二に膝から下に角度をつけたため、踵を浮かさなくても赤くならず褥創の心配がなくなった点である。私も初めは半信半疑であったが、実際に使用してみて踵が赤くならないので驚いているぐらいである。画期的な進歩だと思っている。
 第三にポンプに改良が加えられ、静かで安定感がある。深夜でも音と振動とも個人的には気にならない。それに自分の体重を直接入力するため、アドバンと違いより使用者の体型にあわせた最適な体圧分散ができる。またロック機能がついたため、介助者が無意識のうちにポンプに触れ、設定した値が変わってしまうことがなくなったため、安全性が向上したと考える。
 第四に今までアドバンにしかなかった、除湿のための換気機能が付いたことが大変ありがたい。現在は冬場なので通常使用していないが、夏場のムレが気になる季節に効果を発揮するものと考えられる。個人的には、冬場に換気機能は使用しない方が寒くなくて良いと思われる。
 以上の比較検討により、私個人としてはビッグセル-Exを強く推奨する。実際に使用してみて、まず褥創ができないという安心感があり、体位交換が全くなくなったことにより生活自体が大きく向上したと断定できる。両者を星印の数で比較するとすれば、アドバンが☆☆に対して、ビッグセル-Exが☆☆☆☆☆と考える。