リアル!戦国時代 Vol.27

中世のキーワード・座シリーズ 第11回 味噌屋(四府駕輿丁座)

前回、酒屋について見てみましたので、今回は同じ麹を使った味噌屋について書いてみようと思います。
それでその前に、酒屋にも少し関連しているので、都にあった四府駕輿丁座について少し触れておきます。

四府駕輿丁座は禁裏駕輿丁座とも呼ばれ、もともと天皇などの行幸の際に、天皇の乗る鳳輦(ほうれん)を担いだ人々が禁裏駕輿丁と言われていました。
左右の近衛府と兵衛府という四府に属していたことから四府駕輿丁とも呼ばれ、身分は雑色というはなはだ低いものでした。
課役は免除されていたものの、その給料はとても低く、これに中世以降、行幸が極端に少なくなってしまったことや、国衙領からの朝廷収入も激減したこともあって、彼らは存亡の危機に追い込まれてしまいました。
また、もともとの本業が当時としても大変特殊な仕事だったため、頭人である兄部(このこうべ)の統制を強く受けているものの、実は生活のためには別の仕事をしなければ生きていけないというジレンマに陥ってしまったのです。

しかしながら禁裏の駕輿丁という、低身分ながらも課役免除の特権を世襲的にもつ彼らは、それぞれ別々の仕事を見つけて、それを駕輿丁の座として組織し、都での商工業の競争に加わるという離れ業をやってのけたのです。
座を構成してから課役免除してもらう他の座と比べて、彼らはもともとが個人として課役免除の特権を持っており、しかも禁裏守護の一端をなす仕事でしたから駕輿丁らの鼻息は荒く、場合によっては他の座に対して課役をかけるというようなこともしていました。
こういう荒っぽさは数多くある諸座の中でも珍しく、他商人との軋轢もままあったようです。

彼らは酒の醸造販売にも手を出し、南北朝の頃から酒屋になるもの、麹屋になるものが現われてきました。
当然彼らの酒や麹販売は、前に見てきた山門や五山などの保護下にあるものとは一線を画しており、組織的にも全く別物でした。
その収入から高利貸を兼業するのは同様でしたけれど、朝廷の造酒正である中原家を本所とし、集住して一つの町屋を形成していました。
彼らの一部は麹を使った味噌屋を営むものもあり、酒屋などに比べて数は少なかったものの、やはり高利貸を兼業していたのです。
ただ「手前味噌」という言葉があるように、味噌じたいは寺院をはじめいろいろなところで盛んに作られていたようで、さすがの駕輿丁たちも独占販売というわけにはいかなかったようです。

同じ調味料として日本を代表する味噌と醤油ですが、その詳しい製法は、まだ史料上でははっきりと確認されておりません。
近世以降の製法から類推すると、味噌の場合、基本的には大豆を煮て、十分に水分を含んだところをすり鉢ですりつぶし、これに塩と麹を加えて団子状に固めて丸め、軒先など風通しのよいところで陰干しするようにして発酵させたのだろうと考えられています。
時期的には晩春から初夏にかけて作り、1年間寝かせて出来上がりだったようです。
団子状といっても、大きさはコンビニなどで売っている肉まんなどよりも少し大きかったようで、意外と大きいもののようで「みそ玉」と呼ばれていました。

塩分を適度に含み保存もきくことから、味噌は戦国大名に大変重宝がられました。
しかも米飯に足りない栄養分に富み、消化吸収にも優れた日本型発酵食品の1つで、魚や鳥肉などの生臭みを消す効果もあり、なおかつ「うまみ」成分を含んでいますから、塩分が多いことを除けば完全食品に近く、大変優れた食品でした。
しかもこれに漬けておくと、塩分が多いものですから肉類でもある程度の保存がきき、香りやうまみも染みこんで、肉食の禁忌のない武士たちには必須の調味料だったことでしょう。

魚汁などを主原料とした肉醤(ししびしお)ではない、大豆を主原料とした醤では米麦や麹など作る材料も似ているのですけれど、醤油についてはその完成は、味噌よりも遅かったのではないかと考えられています。
また「手前味噌」の言葉のように、あちこちで零細な家内工業として作られていた味噌には味の違いも大きく、近世初期に大量生産されるようになった醤油とは似て非なるものがありました。

その意味で、当れば大量収入の見込める酒屋よりも、駕輿丁座に属する味噌屋の数は大変少なく、また京都には奈良の「法論味噌(ほうろみそ)」座人が日帰りで振り売りに来ていました。
これは主に黒豆を主原料とした黒味噌で、1度焼いた味噌を天日干しにして細かく刻み、その中に胡麻の実やクルミの実などの細かく刻んだものを混ぜたもので、奈良の名産として土産品にもなっていました。
ちなみに、この法論味噌座は興福寺大乗院を本所としており、興福寺での法論の時に食されたことから「法論味噌」と呼ばれ、その色合いから「黒味噌」、作っていた場所の名をとって「飛鳥味噌」とも呼ばれていました。

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