実用フランス語学習法


2003年5月8日改訂
フランスでの生活も6年余りになりました。この間の経験から得たフランス語学習のヒントを披露します。フランス語以外の外国語学習にも応用できる部分があるかもしれません。
仏検1級合格法(体験記)も載せました。仏検受験者の参考になれば幸いです。

目次

1.目的 「実用」
外国生活をしてみて
2.方針 学ぶ時は細心に、話す時は大胆に
書き言葉を重視
継続は力なり
3.学ぶべきこと 文法
単語
発音
4.方法 入門
初級
中級
辞書、参考書
語学留学について
5.仏検1級合格法 仏検とは
筆記試験対策
面接試験対策
実録・面接試験
6.補足 喧嘩の効用
教養について
外国語で考える(その功罪)
旅行会話について
リンク

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目的

「実用」

ここで述べるフランス語学習の目的は「実用」である。すなわち、外国暮らしで用を足すこと、具体的には、仕事をし、家庭生活を営み、子供を教育し、人と交際し、さまざまな交渉をすること、である。
反対に言うと、学者、通訳、翻訳家などフランス語のプロを目指すわけではない。そういうレベルを目指す人には、ここで述べることは全く不十分だ。
また、旅行会話を目指すものでもない。旅行が出来る程度の外国語の知識を得るには、私の学習法は重すぎる。(「補足」の「旅行会話について」参照)
外国生活をしてみて

実際にフランスに暮らしてみて案外簡単だったのは、弁護士や会計士との仕事上の会話であった。理由はいくつかある:テーマは明確で話も論理的だ、用語を知っていれば意味は通じる、相手は客商売だからこちらの言うことを理解しようと努める・・・

一番難しいのは、子供を学校に迎えに行った時、校門の前でするお母さん達との会話だった。話題は、近所のうわさ、最近の選挙、芸能、スポーツの話など様々で、どこから弾が飛んで来るか分からない。知らない固有名詞も飛び交う・・・これについて行けるようになるには数年を要する。

方針

学ぶ時は細心に、話す時は大胆に

私のように仕事でフランスに来ている者や、そうでなくても、外国生活を少しでも快適で充実したものにしたいと思う者は、いつまでも片言やブロークンな話し方でよしとするわけには行かない。「通じればいいのさ」といい加減な勉強をするのではなく、注意深く正しい言葉を学ぶことが必要だ。
なぜなら、いくら注意深く学んでも、実地では覚えたはずの事が上手く言えないケースがよくあるし、言った直後に間違いに気づくことも多い。勉強したことの50%も使えないというのが実感だ。だから、どんなに丁寧に勉強しても、しすぎることはない。

一方、実際のコミュニケーションの場では、間違いを恐れずに、大胆になろう。文法など間違っても、ほとんどの場合意味はちゃんと通じる。名詞や形容詞の単数・複数、男性・女性、動詞の活用など間違っても、意志の疎通にまず問題はない。
文法的な正確さより、むしろ大切なのは、手数(てかず)を出すことだ。キーワードを繰り返す、言い方を変えてみる、例を挙げる・・・そうすれば、意味は通じる。
知り合いの大学の先生は、一番のポイントは大きな声で、はっきりと話すことであると言っている。特に、聞き返されたとき自信をなくして声が小さくなると、余計に通じなくなる。そんな時は「察しの悪い人だな」くらいに思って、大きな声で返事をするとよい。
また、言葉以外によるコミュニケーションも、言葉以上に有効だ。身振り手振り、顔の表情、声の調子、図や絵を書くのもよい、実物を示すことができればベストだ。
こうして、持てる手段のすべてを動員して、大胆に、精力的に話す。それが、コミュニケーションの要諦だと思う。
書き言葉を重視

言葉によるコミュニケーションの九割以上は口頭で行われている。では、いわゆる会話を学べばそれでよいかというと、そうではない。実は、正しく書くことが出来なければ、まともに話すことも出来ない。きちんとした言葉は書くことによってのみ習得される、というのが、多くの反面教師から得た私の方法論だ。

書きながら学ぶのは、文法や綴りだけではない。さらに大切なのは、その言語の持つ論理だ。私達は、オウムや九官鳥になろうとしているのではない。初めに述べたように、実際にフランスで社会人として通用する言葉を身につけようとしているのだ。ぺらぺらと間違いだらけで内容も乏しい言葉を並べるより、ゆっくりでも正確で充実した話が出来るようになりたい。
継続は力なり

勉強していると、ちっとも進歩している気がしないことがよくある。が、辛抱して3ヶ月くらい続けていると、ある日ふと、以前とは違う自分に気がつく。どうも実力はリニアにではなく、階段状に向上していくもののようだ。
だから、くさらずに継続することが大切だ。ただし、一日も休まずに続けられれば理想的だが、仕事などの都合で2〜3日パスすることはよくある。そのときは、また再開すればよい。私の感覚では、1週間程度の中断はまだ継続しているうちに入る。完璧主義を目指すのではなく、少々間があいても気にしないで続けた方が、結局は成果が上がると思う。

学ぶべきこと

文法

文法は、大人が外国語を学ぶ早道であり、唯一の道であると思う。実は、子供でも文法を学ばないと、いつまでも不正確な話し方しか出来ない例が多い。

文法は、入門時に最後まで一通りのことをやっておくとよい。具体的に言えば、単純過去はもちろん、接続法大過去までやっておく。これらは会話では滅多に使われないから会話学校では教えないようだが、ちょっとしたものを読むとすぐに出会う。最初にやっておかないと、いつまでもコンプレックスになるが、勉強しなおすのは億劫だ。

フランス語の文法の中では動詞の活用が厄介だが(各動詞が90通りに活用する上に、不規則動詞が多い)、これは案外簡単にマスターできる。わたしは3日間集中的に勉強して動詞活用表の本を丸ごと覚えた。やっている内に加速度的に楽になってくる。いくつかのパターンを覚えると類推がきくようになるからだ。

名詞の性も、日本人にとっては頭痛の種だ。が、間違ったところで、意味は通じるから心配は要らない。今わたしが知っている名詞のうち、何も意識せずに正しい性にしたがって使えるのは、多分50%、性を頭の中で確認しながら使っているのが30%、その場その場で当てずっぽうの性で使っているのが20%くらいではないかと思う。それでも、全体としてみれば、90%は当たっている計算だから、実用としては取りあえず足りている。
単語

単語は、出会ったものを覚えるとよい。出会った、というのは、人の話に出てきた、読んだものに出ていた、自分が言う、または、書く必要に迫られた、という意味である。これには次の二つの理由=効用がある。

第一に、出会ったものこそが、自分が社会で暮らすのに実際に必要な単語であると言える(=実用)。また、一度出会った単語は再び必要になる確率が極めて高い。
他人に必要な単語と自分の必要とする単語とは、必ずしも一致しない。たとえば「EXECUTOIRE」というのは「強制執行できる」という意味で、日常生活で出会うことはないが仕事で使うから、私には必要な語彙だ。反対に、女の子の髪どめをフランス語で何と言うかは、家内や娘は知っているが(素材や形状によって幾通りもの呼び方がある)、私は用がないので知らない。

第二に、実際に出会った単語は、具体的な文脈の中で覚えるから、その用法やニュアンス、射程距離などが、単に辞書で単語を覚えるよりもよくのみこめる。

このような訳だから、反対に単語集などで網羅的に単語を覚えようとするのは、必ずしも効率がよくない。ただ、あるレベルになったら、興味の向くままフランスの小中学生用の百科事典などを読むのは役に立つ。フランス人にとっては常識なのに、外国語として学んでいるとなかなか出会わない単語が補充できる(汗腺、台形、三部会、等々)。この場合も、単なる暗記ではなく、実際の文脈の中で覚えていくという点がよい。

当たり前だが、単語はたくさん覚えるほどよい。何の話であれ、キーになる語を知ってさえいれば簡単に話が通じて便利である一方、知らない単語は聞き取ることさえ出来なくて苦労することがあるからだ。
また、固有名詞を覚えることも必要だ。歴史上の人物、有名な政治家や芸能人の名前、世界やフランスの主な地名、など。外国語を覚えるということは、ある意味で、その言語の担っている世界を学ぶことでもあるからだ。

なお、俗語には注意しないといけない。俗語を覚えると、何となく外国語が上達したような気になるし、映画やドラマもよくわかってくる。が、使っていいものといけないものとを、よく見極める必要がある。もし、日本に来た外国人が「マジギレ」「超むかつく」などと話すのを聞いたら、私なら、その人との付き合い方を考える。
一般的に言って、同じことを言うのに品のいい言い方とくだけた言い方がある場合、私たち外国人は、まず品のいい方を使うのが無難だろう。
発音

発音は重要だ。コミュニケーションの大半は口頭で行われるからだ。だから、通じるように発音しよう。通じるように発音できるようになると、聞き取りも上達する。ただ、ペラペラしゃべる必要はない。テレビで、街角の若者にインタビューしているのを見ると、ペラペラしゃべってはいるが、発音がくずれて品がない例が多い(内容も空疎で話に一貫性がない)。これは、私たちの目指す姿ではない。反対に、外国の駐仏大使などが話しているのを聞くと、スピードは遅いし訛りもあるが、言葉は明瞭で言っている内容がよくわかる。このような話し方が出来るようになりたい。

通じるためには次の二点が大切だと思う。

1.音と音との対立
日本語でも「オバアサン」と「オミヤゲ」とでは「ア」の音が少々違うが、私達は意識していない。反対に「ランボー」と「ダンボー」は私たちにとっては全然違う音だが、この二つを区別しない言語もあると聞く。これと同様に、フランス人が各発音のどこに感じて(感じないで)音を区別しているか(いないか)を意識して発音することが大切だ。

日本人にとって難しい区別(アイウエオで書くと同じになってしまうもの)の内、絶対に混同してはいけないものは、それほど多くない。
母音では、鋭い「ウ」(POUR:プール=〜のために)をそれ以外の「ウ」(PEUX:プ=〜できる、PEUR:プール=恐怖、PETIT:プチ=小さい)から区別することが何よりも大切だ。
子音では、「B」「V」を取り違えると全然通じない。たとえば、「BOIRE:ボワール=飲む」と「VOIR:ヴォワール=見る」など。
「R」「L」は、カナにするときは同じ字(ラリルレロ)を使うが、音そのものは日本人でも混同しようがないほど違う。「R」の方は実は「ハヒフヘホ」と書いた方がいいくらいだ。だから、変に頭の中でカナに変換しないのが、混同しないためのコツだ。

2.リズム
個々の発音のほかに、文のリズム、文章のリズムも大切だ。リズムが悪いと聞きにくいし、最悪の場合は意味が通じなくなる。反対にリズムがいいと、個々の発音が少々まずくても、全体の意味は伝わることがある。

なお、つづりと発音の関係も重要だ。文字を見て発音できるようにすること。フランス語は文字と発音の関係が複雑だと言う人がよくいるが、そう言う人は知らず知らずのうちに英語の発音ルールに従って読もうとするからフランス語が読みにくいと感じるのではないか。実は、フランス語の方が英語よりずっと規則的で、その証拠にフランスの辞書には例外的な語を除いて発音は載っていない。つづりを見れば発音が分かるからだ。基本はローマ字読みで、それから外れるルールを20ほど覚えれば、日常出会う例外は100程度しかないから、英語よりずっと楽なはずだ。

方法

入門

トートロジーのようだが、入門書をあげるまでを入門期と呼ぼう。この間に文法と発音の基礎をやってしまう。出来れば3ヶ月、長くても半年くらいでやりたい。この段階で時間をかけていると挫折しがちだからだ。(私はドイツ語で挫折した。)ざっとでいいから短期間で全体を見ることが大切だ。(ちなみに、大学の第二外国語の授業では、一年生の前期のうちに文法を終えた。実質4ヶ月というところか。)

そのためには、テキストは200ページ程度の薄いものがよい。ただし、先に述べたようにすべての文法事項に一通り触れているものを選びたい。
また、CDかテープがついていることは必須の条件だ。ある友人が「言語にはそれぞれ独特のリズムとメロディーがある。その感覚を学習の初期に身につけると、その後の上達が速い。」と言っていたが、全く同感だ。

これは後のレベルまでいえることだが、入門期からディクテ(書き取り)をまめにやろう。ディクテはフランス語学習の王道だ。ディクテをすると、自分がどれほど分かっていないかがよくわかる。フランス人もさんざんディクテで苦労しながら、正しいフランス語を身につけていく。

入門者がつまづきがちなのは次の3点だ。(1)つづりと発音の関係、(2)発音そのもの、(3)動詞の活用。これらの点さえマスターすれば、あとは難しいところはない。この3点を丁寧にやるのが上達の秘訣だ。いずれも既にコメント済みだが、発音について、本にあまり書かれていない消息を若干補足する。

まず、上述の鋭い「ウ」それ以外の「ウ」「B」「V」「R」「L」だけは、しっかり区別しよう。
これら以外は区別があいまいでも意味を取り違えることはないから、追い追いマスターすればよい。たとえば、
 (1)暗い「ア」(BAS:バ=低い)------明るい「ア」(BAT:バ=打つ)
 (2)明るい「アン」(AIN:アン=県の名前)------ややくぐもった「アン」(UN:アン=一つ)
 (3)狭い「エ」(MES:メ=私の)------広い「エ」(MAIS:メ=しかし)
 (4)狭い「オ」(BEAU:ボ=美しい)------広い「オ」(BONNE:ボンヌ=良い)
 (5)暗い「アン」(AN :アン=年)------明るい「アン」(AIN:アン=県の名前)
特に(1)はフランス人でも明確に区別していない者が多いし、(2)の区別も廃れつつあるというから、私たちが気にする必要はない。(3)や(4)は混同すると少々奇異に響くが、意味は通じる。(5)を取り違えると普通は誤解を招きかねないが、ベルギー人や地方の人の中には必ずしも区別せずに発音する人がいて、笑われることはあっても意味はそれなりに通じている。

意外と耳障りなのが、「ジュ」(舌が上の歯茎に触れない)を「ヂュ」(舌が上の歯茎に触れる)と発音することだ。「PETIT NICOLAS(小さいニコラ)」にイギリスから来た少年が自分の名前(GEORGE)を「ジョルジュ」ではなく「ヂョルヂュ」(DGEORDGE)と発音するといって笑われるシーンがあった。が、ここでも言わんとするところは通じているわけだから、初心のうちは神経質にならなくてもいいだろう。

それよりも気をつけたいのは、「C,G, P,B, T,D, F,V」に「L,R」(特に「R」)が続くとき、間に母音を挟まないことだ。母音を挟むと、絶望的なほど通じない。どうしても難しければ、初めのうちはCITRON(レモン)を「シットン」、CROISSANT(クロワッサン)を「コワッサン」というように、「R」を抜いてみると通じる。
(この「R」抜きはほかでも結構使える手で、私自身「AU REVOIR」(オルヴォワール=さようなら)が上手く言えなかったころは「オヴォアッ!」と「R」抜きで言ってすましていた。)
初級  

入門期の後、辞書を引き引きフランス語で何とか意思の疎通が出来るようになるまでを初級と呼ぼう。単語数で言うと3000語くらいか。入門期とあわせて2年くらいで終えたい。

「読み書き」の「読み」については、朗読、暗誦を勧めたい。気に入ったものを声に出して読む。短い小説なら(たとえば「最後の授業」程度)2〜30回読んでいるうちに全部覚えてしまう。詩もよい。プレヴェールなどは平易な表現で気の利いた作品が多いから、初学者にはお勧めだ。
朗読の効果は絶大だ。私は今でも「今日はフランス語が出ないな」と思うと、何でも手近なものを朗読する。たった2〜3分で、ぐんと調子がよくなってくる。

ただし、当然ながらまずい文章は朗読しない方がよい。私はへたな手紙を読んだ時ですら、上質のものを読んで口直しをする。そうしないと、こちらの文体まで乱れるからだ。また、サルトルの一部の小説のように、実生活で使うのが憚られるような表現が頻出するものも朗読には不向きだ。シャトーブリアンやプルーストなども実用からは程遠いが、上品だからいいだろう。文章の手本としてはスタンダールだったかが寝る前に民法(CODE CIVIL)を読んでいたというが、これは文体が素っ気ない上に、法律を仕事で使ってでもいない限りつまらないだろうからやめた方がよい。

「読み書き」の「書き」については、短文、基本例文をたくさん覚えよう。その際、同じ事を言うのに何通りも言い方がある場合は、自分で使う表現と単にわかればよい表現とを区別しながら覚えると負担が軽くなる。たとえば、依頼の表現は「POUVEZ-VOUS( = CAN YOU)〜?」だけ覚え、それ以外の言い方は人から言われた時わかればよいと割り切るわけだ。

ある程度基本表現を覚えたら、言いたいことをどんどん書こう。書くのが面倒なら、独り言でもかまわない。独り言は手軽にいくらでもやり直しが出来ていい。言いたいことを自分の知っている単語や表現で何とか伝える工夫をする。あれこれ言い換えをしてみる。

「聞き取り」については、リンガフォンやNHK講座などの テープ(CD)教材 を毎日聴くとよい。気分転換には シャンソンやプレンチ・ポップス もいい。歌はいつまでも記憶に残る。25年前に聞いていたシャンソンの歌詞を今でも覚えている。

「読む・書く・聞く・話す」という四つの言語活動のうち「話す」については、まだ述べていないが、以上を行えば自ずから話もできるようになるから心配要らない。
敢えて補足するならば、このレベルになったら「入門」では区別しないでいいと言っていた発音もちゃんとできるようになりたい。が、大人は「耳から」というのはあまり期待できないので、知り合いの大学の先生は「規則から入った方がわかりやすい」と言っていた。たとえば、「T」は、舌の先を持ち上げず下歯茎の裏につけた状態で発音するのだとか、次に有声音が来ると無声音が有声化することが多いとかいう風に頭で理解していくわけだ。そのためには、発音の仕方を図解入りで説明した本(後述の「フランス語ハンドブック」など)で勉強すると効果的だ。
中級

初級より先のレベルを中級と呼ぼう。この時期は、貪欲に読書の範囲を広げたい。好きな作家や興味のある分野の文献など何でもよい。フランスやヨーロッパの歴史、社会、宗教などについてのものなら、言葉とともにフランス語をささえる文化や世界観も知ることが出来て一石二鳥だ。出来れば何か一冊手ごたえのあるものを読破するとよい。私は、大学2年の時に「パンセ」を通読して、自信がついた。

もし入手できるなら新聞もよい。ただし、フランスに住んでいればともかく、日本ではフランスの新聞を読む実益は乏しいから無理には勧めない。もし、フランス語学習のために読むとしても、全部読もうとしないことだ(日本の新聞だって隅から隅まで読む人はそういないだろう)。興味のある記事だけ見ればよい。新聞を読み始めたころは、1ページ目の見出しを読むだけでくたびれてしまった。何ヶ月か続けるうちに、2ページ目以降の見出しや、いずれ本文も読めるようになるから、あせらずに継続することが大切だ。

「実用」からはやや離れるが、有名な詩を覚えるのは有益だ。フランス語の感性がわかるし、フランス人と話をする時さりげなく古今の詩に触れると、会話が豊かで楽しいものになる。

テレビドラマや映画は、同じものを何度も(20回くらい)繰り返し観るとよい。初めは分からなくても、繰り返すうちに少しずつわかる表現が増えていく。が、一度観るだけでは、何も得るところはない。私はフランスに来た当初、きれいな女優の出るテレビのシリーズものを毎日観ていたが、女優の顔しか覚えなかった。

あるレベルまで来たが差し当たりフランス語を実地に使う必要がないというときは、力がゼロに落ちない程度に維持しておくとよい。私は大学を出てから10年余りの間、「ふらんす」(白水社)という月刊誌を購読した。ごく薄い雑誌だが、これに載っているフランス語を、動詞の活用から話題の映画のシナリオまで、すべて音読していた。月に一度の音読ではフランス語の力は見る見る落ちていくが、必要な時が来れば短期間(3ヶ月くらい)で取りもどせるよう、いわば冬眠状態にしていたわけだ。

なお、私たちの目指すのは「実用」フランス語であって、フランス語を極めようとするものではないから、所詮「中級」どまりだ。それ以上のレベルに達するには、大学等で専門的に勉強しないとむずかしいと思う。
辞書、参考書

私が使って役に立ったものを紹介する。

1.辞書、事典

仏和辞典では、「現代フランス語辞典(LE DICO)」(白水社、2003年に新版がでて「ディコ仏和辞典」と改題)がよい。実生活で用いられる表現が充実している。「スタンダード仏和辞典」(大修館書店)は、歴史的な語義の解明が丁寧で語数も多い。ちょっと専門的なものや19世紀の小説を読む時など「現代〜」で間に合わないとき頼りになる。(私が使ったのは1977年の「スタンダード」だが、今は新版が出ている。)
和仏辞典では、「プチ・ロワイヤル和仏辞典」(旺文社)が、類語の分析がよく出来ており、また、作文のヒントが豊富で役に立つ。

仏仏辞典では、「LE PETIT LAROUSSE COMPACT」(「LE PETIT LAROUSSE ILLUSTRE」の軽装版)を手元においている。辞書と百科事典とを一冊にまとめたもので、なかなか実用的だ。ただし、フランス人のための辞書だから彼らにとって自明の語法などは載っていない。語法などフランス語そのものについて調べるには「LE PETIT ROBERT」の方がよさそうだが、私は持っていない。
中級以上になったら、「THESAURUS」(LAROUSSE)が役に立つ。フランス語の単語を意味によって十進分類して整理したもので、同意語、反対語、もっと意味の広い・狭い語、同分野の語などが芋づる式に出てくる。ものを書くとき重宝だ。

参考資料としては、「MEMO ENCYCLOPEDIE」(LAROUSSE)は便利な一冊本の百科事典、また、「QUID」(EDITIONS ROBERT LAFFONT)は教養のある家庭なら必ず備えているデータ集だ。小中学生用の百科事典では、「MEGA」シリーズ(NATHAN)が入手しやすいだろう。

2.文法、作文

入門書を終えたら、日常的に参照できるものとして「現代フランス広文典」(白水社、目黒士門)がある。より詳しいものでは「フランス文法事典」(白水社、朝倉季雄、2002年に新版が出た)がどんな疑問にでも答えてくれる。

作文には、まず「基本フランス文600」(芸林書房、福井芳男ほか)を推したい。基本的な表現を一通り覚えることが出来る。進んだものでは、やや古いが「和文仏訳の実際的研究」(大学書林、長塚隆二)が充実している。また、「仏作文の考え方」(第三書房(今は白水社から出ている)、松原秀治ほか)は、フランス語の発想、ものの見方を説いていて参考になる。

手紙を書くには、「フランス語手紙の書き方」(大学書林、長塚隆二)や「スタンダードフランス語講座 5 手紙と商業文」(大修館書店、石井晴一ほか)が役に立った。前者には「恋文」という章もあり、ミュッセがジョルジュ・サンドにあてたものが手本として載っている。

文法、解釈、作文、発音、言葉の背景などをコンパクトにまとめたものに「フランス語ハンドブック」(白水社、新倉俊一ほか)がある。特に、その「動詞の研究」(わが恩師、冨永明夫氏執筆)という章は、動詞の各時制の本質やニュアンスを説いて余すところがない。また、「VARIA」という章は、数式の読み方、フランス国歌、カトリック教会の祈りの文句、主な名前の各国語対照表など、ほかではなかなか得がたい記事が多い。

3.その他

フランス語の常識を知り表現の幅を広げるのに、次のようなものが役に立った。

まず、ことわざや古今の名文句を知るには、「フランスことわざ名言辞典」(白水社、渡辺高明ほか)、 「CITATIONS FRANCAISES 1, 2」(ROBERT)、「CITATIONS DU MONDE ENTIER」(同)。

詩集では、「ANTHOLOGIE DE LA POESIE FRANCAISE」(LIVRE DE POCHE, GEORGES POMPIDOU)が手軽な割に古今の名詩をよくカバーしている。入門期には「PAROLES」(FOLIO, JACQUES PREVERT)あたりが親しみやすいだろう。

礼儀作法(SAVOIR VIVRE)の本も一冊あると便利だ。
変ったところでは、笑い話集も有益だ。比較的上品な話をいくつか覚えて食事の時などに披露すると、ぐっと打ち解ける。

フランス語やフランス文学の歴史を知るには、「現代フランス語のできるまで」(白水社、家島光一郎ほか)や「フランス文学案内」(岩波文庫別冊、渡辺一夫ほか)が要領よくまとまっている。

フランスやヨーロッパの歴史や社会を理解するには、「世界の歴史と文化 フランス」(新潮社、清水徹ほか)や「ヨーロッパの歴史 欧州共通教科書」(東京書籍、フレデリック・ドルーシュ)が手ごろだ。ただし、後者は翻訳に怪しいところがあるので、中級になったら原著「HISTOIRE DE L'EUROPE」(HACHETTE, FREDERIC DELOUCHE)にあたるとよい。
今日のフランスの政治状況について理解するには、「フランス現代史」(渡邊啓貴、中公新書)がドゴール以降の政治史を概観していて参考になる。
語学留学について

語学留学が出来ればそれに越したことはないが、出来なくても実は日本でもかなりのレベルまで勉強することが出来る。教材は豊富にあるし、フランス語情報も今はインターネットでいくらでも手に入る。
私自身は、大学の第二外国語でフランス語をとり、2年生の時には古典劇や「LE MONDE」を読んでいたから、上に述べた「初級」には達していた。その後はもっぱら独学で学んだが、もしアテネ・フランセや日仏学院などの語学学校に行っていれば、実用語学の点ではそれで十分だったと思う。

では、留学のメリットは何か。それは、外国の社会、文化に直接接し、それを理解することだと思う。そのためには、最低限上述の「初級」程度の力はつけてから留学したい。そうでなければ、社会、文化どころか語学さえ満足に学ぶことが出来なくて、金と時間の無駄だ。ABC(ア・ベ・セ)もろくに知らないで来仏して、結局何も得るところなく帰国した学生を何人か見てきた。

一方、外国で暮らせば自然に外国語が身につくと思うのは、大変な誤解だ。何年も在仏し、ほとんどフランス語をしゃべらずにとおした人を何人も知っている。(かわりに英語で用を足すわけだ。その人の立場や年齢によっては、これは最も合理的な選択である場合が多い。)子供の場合でも、数年のフランス滞在中よりも帰国して日本の中学でフランス語を勉強したら一層上達したという例がある。(日本は英語中心の国だから、大変な努力をされたに違いない。)だから、留学さえすればフランス語ができるようになるなどというのは甘い幻想に過ぎない。意識して勉強しなければ、何も身につかない

私自身は、フランスに正式赴任する直前にプロヴァンスで1ヶ月ほどホームステイさせてもらった。フランス勤務の内示を受けた時は前述の「冬眠状態」だったので、ホームステイする前に「初級」程度までキャッチアップしておいた。
ホームステイ中は、ひたすらラジオニュースの書き取りをした。たった1ヶ月ではあったが、当時フランスが直面していた諸問題(失業、社会保障、財政赤字、移民、テロ、ユーゴの内戦、など)を理解することが出来て、すこぶる有益であった。

仏検1級合格法

仏検とは

仏検の正式名称は「実用フランス語技能検定試験」という。この名称のうち「実用」というところが大変重要である。1級について見ると、手元にある1999年秋季のパンフレットによれば、その要求水準は次のとおりだ。

「高度の内容をもつ文を含めて、広く社会生活に必要なフランス語を十分に理解し、自分の意見を表現できる。
学習時間600時間以上。(読む力と同時に、聞き、話し、書く力を総合的に要求されるので、4年制大学のフランス語専門課程卒業程度では不十分)」

が、この説明のうち、学習時間云々以下は無視してよい。フランス語を4年間専攻して600時間程度(週に3時間弱!)しか学習しない訳はないのだから。
それよりポイントは太字にした部分、すなわち「広く社会生活に必要」「自分の意見を表現」という箇所だ。これが、この試験の名称に言う「実用」ということであり、私たちのフランス語学習の目的とも符合している。
つまり、この試験は、フランス語の試験というよりも、むしろフランス語を使ったコミュニケーション能力の試験だと捉えることが出来る。フランス語そのものは、実用に耐えればよく、少々荒削りでもかまわない。フランス語の細かな知識やフランス文化についての広い教養がなくても何とかなる。
だから、パンフレットの言うように、大学の仏文科で4年学んでも不動産屋と管理費について交渉する厚かましさがなければ受からないかも知れないが、ユーゴーを一行も読んだことがなくても交通事故の示談をする度胸があれば合格する。

実際に受験し合格した体験から言うと、仏検1級のフランス語は囲碁で言えばアマチュアの初段クラスだと思う。つまり、
1.一応「やってます」と人に言うことが出来る。が、まだスタートラインに過ぎず、アマチュアでももっと上の人はいくらでもいるし、まして、プロとは全然レベルが違う。実際、私自身1級に合格した後に学んだことの方が、受験前に覚えたことよりずっと多い。
2.努力すれば、誰でも到達できる。

フランス語そのものの要求水準に関する限り、世間で信じられているよりずっと易しい試験だから、腕試しに受験するのはよい励みになる。が、落ちてもフランス語の力が不足しているとは限らないから、悲観する必要はない。ちなみに、私が合格したのは、フランスに来て丸2年たったころのことだった。
筆記試験対策

筆記試験は、60%得点できれば受かると聞いたことがある。「足切り」のようなものだ。「方法」のところで述べたような勉強をしていれば特別な準備は要らない。私が受験のためにしたことといえば、試験当日の朝、耳慣らしのためにフランス映画のビデオを一本観たことだけだ。ただし、最終的な合否は筆記と面接との総合点で決まるそうだから、なめ過ぎてはいけない。

仏検の問題集を見ると、よく、新聞を読めと勧めている。たしかに時事用語を書かせる問いもあるから、フランスの新聞を読んでいれば有利だろう。が、そういう問題の数はごく少ないから落としても気にしないでよい。

筆記試験の一環として行われる聞き取り試験は、明瞭な発音でゆっくり話してくれるから、実際の会話より格段に聞きやすい。
(なお、聞き取り試験の中にはディクテがある。フランスの学校ではディクテは中学までしかやらないそうだ。このことからも、仏検の要求するフランス語のレベルが推し量れる。)
面接試験対策

面接試験は、実用試験としての仏検の天王山だ。それにしては時間が10分しかないので、じっくりした話はできない。短時間で自分の力をアピールする必要がある。

直前に問題が2問渡され、好きな方を選ぶ。通常1問は政治経済関係、もう1問はフランス語や文化一般に関するものである。
多くの場合、フランスと日本を対比する問題が出るから、(私はやらなかったが)両国の比較について一般的な論述をあらかじめ作って暗記しておくと役に立つかもしれない。
また、日本に関することをフランス語で言う必要があるから、「フランス人が日本人によく聞く100の質問」(三修社、福井芳男ほか)など、日本の事情をフランス語で説明した本を読んでおくとよい。

私が面接に当たって心がけた点は次のとおりだ。

1.挨拶、握手
コミュニケーション能力を見る試験だから、コミュニケーションの基本である挨拶は重要だ。そして、フランス語で挨拶する場合、握手するのが普通だから、私は試験官席まで行って「ボンジュール、ムッシュー」と握手をした。試験官がやや驚いた表情を見せたから、握手をする受験生は少ないのかもしれない。それなら、なおさら、好印象を与えるよい機会だ。
また、返事をする時は必ず「ムッシュー(またはマダム)」をつける。これは敬語の基本だ。
試験の最後にも感謝の言葉とともに握手を忘れないこと。

2.自己紹介
面接の最初に必ず自己紹介を求められる。これは、面接試験のうちで唯一事前に準備が出来る部分だ。十分な準備をし、ここで自分のペースをつかみ得点を上げよう。また、ここで出来るだけ時間を使えば、後の問答の時間が減り負担が軽くなって好都合だ。

3.問題文を声に出して読む
問答に入る時に、自分の選んだ問題を大きな声で読む。問題の再確認になるし、自分を落ち着かせることも出来る。(そのはずだったが、私は問題の意味を取り違えてしまった=実録参照)。試験官にとっても、どちらのテーマで問答をするのか明確になってよい。

4.まず、結論を述べる
フランス語では日本語よりも、まず結論を述べることが多いようだ。その後で理由付けをする。こうすると頭がよく自信もあるという印象を与えることが出来るし、試験官も話が聞きやすいはずだ。

5.説得力
実用コミュニケーションの試験だから、自分の意見を説得的に表現したい。そのためには、いろいろなテクニックがあるが、試験の現場では二つのことを意識して実践した。
一つは「たしかに〜しかし〜」話法だ。自分の結論と反対の論述を「たしかに〜」と半ば肯定しつつ述べた上で「しかし〜」と新たな視点からそれを否定する。こうすると、大したことは言ってなくても、よく考えているように見える。
もう一つは実例を挙げるということだ。抽象的な議論に終始するより説得力が増すし、実例を述べている間は頭もあまり使わないで済む。

6.手数(てかず)を出す
「話す時は大胆に」のところでも述べたように、コミュニケーションの現場では手数(てかず)を出すことが大切だ。黙り込んではいけない。面接試験でも文法的な間違いは致命的ではないから、恐れずに話そう。事実、私は「政党」という意味の「PARTI」(男性名詞)という単語を「部分」という意味の「PARTIE」(女性名詞)と混同して、面接の半ばに試験官から指摘されるまで女性名詞扱いしていたが、それでも受かった。
実録・面接試験

記憶を頼りに私の面接試験の模様を再現してみる。どの程度の論述をすれば受かるのか分かっていただけると思う。「何だ、こんな程度でいいのか」と拍子抜けされるのではないだろうか。
私は在仏2年目1997年の秋季試験を受験し、面接は1998年初めにパリ(自宅のあるストラスブールから500キロ)で受けた。

問題

直前に渡された二つの問題の要旨は次のとおりだった。
1.フランスでは左翼連合が政権を取った。日本でも同じようなことがありうると思うか。
2.長野オリンピックではフランス語が公用語の一つとされた。フランス語が今後広く使われるようになるには、どのようなことが必要か。
私は1.を選んだ。

挨拶から自己紹介まで

(試験室に入る。試験官と握手。試験官がわたしの荷物を見て)
「どこから来られたのですか。」

「アルザスのストラスブールから来ました。昨夜のうちにパリに来て、ホテルに泊まったのです。」

「では、簡単に自己紹介をしてください。」

「ウィ、ムッシュー。名前は『ダイロクノタカシ』といいます。日本語の発音では『だいろくのたかし』です。2年前から妻と娘と一緒にストラスブールに住んでいます。妻も娘もアルザスの暮らしに満足しています。食べ物はおいしいし、街は美しく、人々は親切です。娘は地元の学校に通っていますが、友達に恵まれて学校生活を楽しんでいます。私はヤマハの工場で財務を担当しています。」

「オートバイのヤマハですか。」

「ノン、ムッシュー。オートバイのヤマハは同じグループの別会社です。私の工場ではオーディオ機器を生産しています。
日本を発つ前に知り合いのフランス人の神父様に『今度アルザスに行くことになりました』と申しましたら、『フランスで一番まじめな地方ですね』と言われましたが、本当にそのとおりでした。従業員は皆まじめで、よく働いてくれます。」

「ヨーロッパにはほかにも工場がありますか。」

「ウィ、ムッシュー。もう一つイギリスにも工場があります。そこではピアノを作っています。」

「ヤマハはピアノでも有名ですね。」

「ありがとうございます。」

問答

「さて、私が選んだ問題は、『フランスでは昨年来左翼連合が政権をとっている。日本でも同じような状況がありうると思うか。』です。なかなか難しい問題ですが、『ノン』とお答えいたしましょう。と言うのは、第一に日本の憲法はそういう事態を許していないからです。」

(「coalition」(連合)と言う単語を「cohabitation」(保守の大統領と革新の議会との保革共存、一種のねじれ現象)と取り違えて、トンチンカンなことを言っている。たちまち試験官が変な顔をする。おかしいぞと思って問題文を読み直す。)

「オップラー(アルザス方言の間投詞)!勘違いをしていました。初めからやり直します。(=JE REPARS A ZERO. エディット・ピアフの有名な歌)
でも、答えはやはり『ノン』です。
たしかに政権をとるには必ず複数の政党が連合する必要があります。日本の政党は分裂を繰り返して、今や単独で過半数を占める政党がないからです。」

「新進党は今も存在していますか。」

「ノン、ムッシュー。2,3日前の新聞で新進党が分裂したという記事を読みました。
このように、政権をとるには必ず連合しないといけないのですが、しかし、それは左翼連合ではありえません。なぜなら、日本には真に左翼と呼べる政党がもはや存在しないからです。右から左まで、どの政党も似たような政策を掲げ、差異を見出すことはほとんど出来ません。たとえば、かつての社会党は自民党の政策にはことごとく反対していました。安保反対、軍備と言うか自、自、自・・・」

「自衛隊ですね。」

「メルシ、ムッシュー。自衛隊反対、消費税反対、などなどです。ところが、社会党委員長の村山氏が首相になるや否や、これらの政策をすべてそのまま引き継ぎました。ほかの政党も大同小異です。唯一の例外が共産党です。」

「LE PARTI(=政党、男性名詞)ですよ。」

「あ、失礼しました。
ええ、どこまでお話しましたっけ・・・そう、唯一の例外は共産党ですが、彼らが他党と手を組むことはないでしょう。というのは、彼らはあまりに純粋というか理論的で、政治に大切な妥協の精神を欠いているからです。
このようなわけで、政権をとるには必ず連合しなければならないが、それは左翼連合ではないと考える次第です。」

「緑の党はどうですか。」

「やはり答えは『ノン』です。日本には環境保護を第一の党是とする政党はないのです。
たしかに、日本でも環境保護は重要な課題です。われわれ日本人は環境汚染で何十年も前から苦しんできました。たとえば水俣の水質汚染、四日市の大気汚染などです。
しかし、環境問題は、日本では政策上の論点とはなっていません。選挙の時はどの政党も斉しく環境保護を訴えます。しかし選挙が終われば、忘れてしまいます。環境保護は政治問題というより、むしろ経済問題、あるいは、司法的に解決すべき問題だとされているように思われます。」

終わりの挨拶

「結構です。時間になりました。」

「もう、ですか。トレ・ビアン。どうもありがとうございました。」
(別れの挨拶をし、握手をして退出)

総括

以上見たように、論述をするにあたっては多少事実を簡略化したりフィクションを加えたりしたが、差し支えなかったようだ。面接試験は、与えられたテーマについて本気で議論する場ではなく、自分のコミュニケーション能力を示しさえすればよいのだから。
また、私は大きなミスを三つも犯した。すなわち、(1)問題を読み違え、(2)「自衛隊」と言う単語を忘れ、(3)「政党」という語の性を間違えた。しかし、それでも受かったのだから、大して高い能力が要求されているわけではないということだ。
それよりも、臆せずに自説を展開しミスをしても慌てない厚かましさの方が大切なのではないか。「話す時は大胆に」というコミュニケーションの要諦を身につけているかどうかが試されているのである。

補足

喧嘩の効用

知り合いの大学の先生(英語、英米文学)が、「喧嘩をすると英語は上達する。自分の場合は怒りが原動力になった。」と言っていた。非常に示唆に富む言葉だと思う。

第一に、外国語を学ぶのには強い動機付けがいる。
第二に、喧嘩(とは言わないまでも論争)をするには、外国語そのものを自家薬籠中のものにした上で、さらに、しっかりした論理性、豊かな表現力、当意即妙の機転、相手を圧倒するオーラ、いざとなったら機関銃のようにまくし立てる口の運動機能、などが求められる。

これらは、平和的に外国語を学ぶ際にも大なり小なり当てはまるに違いない。私も研鑽を積んで、少しでも彼女(女性の先生です)のレベルに近づきたいと思う。

(なお、恋愛も喧嘩と同様に、強い動機付けとなり、さまざまなコミュニケーション能力を要求するものであるが、恋愛においては言語以外によるコミュニケーションが大きな役割を果たすから、外国語学習の効率は悪いだろう。)
教養について

同じ先生が、「語学の学習は単に文法だけでなく、教養も必要になってくる。」と言っていた。「だから、文学も学び、論理的な思考力も身につけたい。」と続く。耳が痛いと同時に、大いに勇気付けられる言葉だ。

「実用」と冠した方法論を縷々述べてはきたが、実は母国語におけると同様、文化的なコミュニケーションができるようになりたいという願いを込めて書いた。(それは各所に表れていると思う。)ところが、最近は、「ペラペラになりたい」(カンナ屑みたいだ)とか、「通じればよいのだ」とか言って、レベルの低いコミュニケーションを目指し、それを却って良い事だとする傾向がある。
外国語に限った話ではない。お手軽な音楽、お手軽な料理、お手軽な結婚・・・お手軽な「ハウツーもの」があふれていて、当座の用さえ間に合えば足れりとする。これは人間を矮小化するものではないか。
かかる軽薄な風潮に対するささやかな抵抗としてこのページを作成した。先の大学の先生の言葉は、この私の抵抗を側面から支持してくれるものだと、心強く思った次第だ。
外国語で考える(その功罪)

フランス語を話している時は自然にフランス語で考えている。これも良し悪しだ。
レスポンスが速いのはいいだろう。が、思考のレベルが落ちてはいないか。語彙や表現はもちろん、内容や論理までもが、フランス語の力不足のため制約を受けているような気がする。議論のあとで振り返ると、まるで竹馬でヨチヨチ歩いていたようで、暗澹たる気持ちになることがある。
それよりは、一旦日本語で考えた上でフランス語に翻訳した方が、私のレベルでは、しっかりした話が出来るかもしれない。竹馬を降りて走り、目的地に着いたらまた乗る、というわけだ。しかし、これは、かなり面倒なことなので、いよいよのときしか実行はしないだろう。やはり、正攻法、すなわちフランス語の力を向上させていくことが何よりの解決策なのだと思う。
旅行会話について

旅行会話は一週間もあれば十分だ。旅行中にすることは、観る、買う、食べる、泊まる、この四つだけだ。状況は決まっているから、基本表現を30個くらい知っておれば足りるのではないか。また、常にこちらが金を払う立場だから相手は一所懸命聞いてくれるし話してくれる。難しいことはない。

実は、私が外国(フランス以外の国)を旅行するときは、基本表現を覚えるどころか、単語をたった20個程度覚え、あとは英語で済ませている。覚える単語は次のとおりだ。

1.挨拶 :こんにちは、さようなら、おねがいします、ありがとう、すみません
2.呼びかけの言葉 :ムッシュー、マダムの類
3.疑問詞 :なに、どこ、いつ(「なぜ」「どのように」はあまり使わない)
4.数詞 :1から10まで
5.その他 :これ(それ)、大変結構、お勘定(これを知らないと食事が終わらない)

これらを組み合わせて、たとえば、「これ、これ、これ、お願いします」とやれば、買い物も食事も出来てしまう。
このほかに、「トイレ」「助けて」を覚えていく、という友人がいる。特に「助けて」は、女性には必須かもしれない。すりや引ったくりにあったとき「助けて」と叫んだら、まわりの人が犯人を取り押さえてくれたという例を時々聞く。
リンク

ここでは、ただ一つ
戸口民也氏のサイトを紹介したい。長崎外国語大学外国語学部教授、戸口民也氏がフランス語を学ぶ人のために設けられたサイトだ。(http://www.nagasaki-gaigo.ac.jp/toguchi/index.htm)
その中の「戸口おすすめサイト」は内外のフランス関係サイトを約300選んだ解説つきのリンク集、また「フランス語学習者のための参考図書」は辞書、参考書などを約200冊紹介していて、いずれも大変参考になる。コンピュータでフランス語を取り扱う方法も解説されている。



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