


4.全線開業で『りんかい線』は役に立つか〜ゆりかもめの陰で〜
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●まるで「不良債権路線」
『東京臨海高速鉄道』。この名前を聞いてピンと来る人は、東京に住んでいる人でも、少ないのではないだろうか?(ちゃんと調査したわけではないのでハッキリとしたことは言えないが) 『臨海副都心線』や『TWR』、『りんかい線』と言えば、少しは分かる人が増えるだろうか。それでも心許ない。JR京葉線と営団地下鉄有楽町線が停車する、新木場駅。ここから東京テレポート駅までを結ぶのが『東京臨海高速鉄道』。今年9月からは『りんかい線』という名称で呼ばれている鉄道だ。始発から終点まで乗っていてもわずか10分足らずという短い路線だ。この路線は、臨海副都心、つまりお台場へのアクセス手段として誕生した。お台場と言えば、今や東京ディズニーリゾートと並ぶ、東京屈指の観光スポット。ドル箱路線になる、はずだった。
しかしこのりんかい線、開業以来閑古鳥が鳴りっぱなし。日中に乗ると、乗客が10本の指で数えられるくらい、ということも珍しくない。乗客が乗るときと言えば、東京ビッグサイトでイベントがある時くらい。人がギュウギュウ詰めになるというのは、年にほとんどない。
お台場への交通手段はりんかい線だけではない。一番ポピュラーなのは、新橋から有明に向かって走る新交通システム『ゆりかもめ』。鉄道より一回り小さい車体だが、開業以来大好評。運賃に割高感があるのだが、週末や祝日になると、始発駅の新橋では切符を買うのにも乗るのにも(うんざりするくらいの)長蛇の列だ。次にポピュラーなものというと、やはり都営バスだろうか。東京駅、浜松町駅、品川駅からはそれぞれお台場に向かう路線がある。都営バスは200円の均一運賃制を採用しており、値頃感がある。当然ながら時間通りに運行する保証がないが、バスに乗るというのならそれくらいのリスクは承知の上だろう。また都営バスでは、東京ビッグサイトでイベントがある時には、東京駅八重洲口から直行バスも運行される。運賃は同じだ。混雑具合にもよるが、大体30分くらいで行ける。さらに、東京駅南口からお台場への急行バスを運行させている。これは運賃が300円と少し高いが、貸切バスで走るのでラクチンだ。この他にも水上バスという手段もある。晴れていれば、絶好の眺望があなたのものに。一度乗ってみることをお薦めする。
りんかい線は、ゆりかもめと都営バスというライバルに客を奪われて苦戦している。時間には正確だし(何せ障害になるものがほとんどない)、新木場での乗り換えも便利で、鉄道としては申し分ない。なのに何故か閑古鳥。全路線のうち8割が地下を走っているからか、運賃が高いというのはある。それであればゆりかもめも同様だ。ゆりかもめだって運賃は安くはない。ただし、ゆりかもめは景色が見えるという武器がある。ゆりかもめはお台場をぐるっと大回りする運行ルートであるだけでなく、ずっと高架を走るので、景色がよく見える。でも、それが決定的な差を生むとは考えにくい。ただ、ゆりかもめとかなりの差を開けられているのは事実。このままではずっと「不良債権路線」だ。
●起死回生は最強?
このりんかい線は、まだ全線開業した路線ではない。来年に天王洲アイルへ、再来年には大崎まで延伸して全線開業する。大崎からはJR埼京線と相互乗り入れすることになっている。これに伴いJR埼京線は、現在の恵比寿から大崎まで延伸する。天王洲アイルはホール『アートスフィア』やテレビ東京のスタジオがあるなど、ウォーターフロントの穴場的存在。ここでは浜松町と羽田空港を結ぶ東京モノレールと乗り換えできる。そうすれば、地方からのお台場観光客を取り込めるだけでなく、お台場にある企業にしても羽田空港への確実なアクセス手段を手に入れることになる。お台場への企業誘致にも有利というわけ。さらに大崎から埼京線に接続すれば、埼玉方面から、さらには渋谷の東急線、新宿の京王線や小田急線や西武線、池袋の東武線や西武線のお客も取り込める。また、りんかい線を使えば新木場経由で千葉方面へのアクセスも便利になる。山手線や中央線の混雑緩和に役立つ……かもしれない。
確かにこのプランは一見バラ色のように見える。しかし、その前に根本的な問題がある。それはこの路線の高コスト構造だ。りんかい線の初乗り運賃は180円。2駅乗ると230円もする。JR(東京近郊区間)が120円、営団地下鉄が160円、都営地下鉄が170円ということを考えると、かなり高い。都営地下鉄の初乗り運賃でさえ高いと批判が出るのだから、りんかい線は尚更だ。確かに埋め立て地や海に地下鉄を通すことがどんなに難しいか想像に難くない。工事費がかさんでいるというのも分かる。ただ、それにしてもこの運賃体系は納得できないのではないだろうか。何かしらの値下げ策を考えなければ、バラ色の起死回生策もバラバラになりかねない。
●臨海副都心計画の変更が悲劇を生んだ?
そもそも、りんかい線は『世界都市博覧会』開催にあわせて開業する、そういうシナリオになっていた。しかし、当時の青島都知事の中止決定によってりんかい線は宙ぶらりんになってしまった。その後臨海副都心は、先述の通り東京屈指のアミューズメントエリアとなった。何とも皮肉な話だ。臨海副都心開発には批判が強い。今更土地を増やしても……、あんなところに土地を作っても……、東京だって財政が苦しいんだから……と批判の声は絶えない。しかし、私はあえて反論したい。今の東京の相対的な“地盤沈下”は土地が少なくなってしまった点が大きい。つまり余裕がないのだ。防災面での不安があるものの、東京が新しい土地を手にしたという意味で、臨海副都心は大きな存在だったはずなのだ。ここを東京の“職・住・遊近接都市”として育てれば、今のような不良債権の固まりにならなかったはずだ。要は活かし方を間違えたのだ。テレビドラマや映画で人気を博した『踊る大捜査線』で舞台となった“湾岸警察署”。この別名は“空き地署”だった。臨海副都心に行くと、別名通り本当に空き地が目立つ。テナントビルも空きだらけだ。
今だから言えることだが、世界都市博覧会はやるべきだった。東京都は一大商品である臨海副都心の起爆剤として、新しい東京を内外にアピールする手段として、有効な手段を自ら手放した。東京都は当時の青島都知事に対して「中止にした方が高くつく」と進言したそうだが、その通りだと思う。もし開催するとしても開催期間を短縮するなどの措置を執れば、青島都知事の顔も立つ。その後の都政運営も円滑に進み、都の財政が土壇場まで追い込まれるというようなことはなかったはずだ。事業というものは、一度始めたら基本的な路線は変えるべきではない。計画の変更は大いにあり得ることだろうが、路線まで変更してしまったら周囲への影響は甚大だ。マスコミは「一度走り出したら止まらない」と批判するが、止まった後のことを考慮しているのかと疑いたくなる。
りんかい線は、バブルと、東京都の無謀な計画と、よく分かっていないくせに世論を煽動したマスコミの被害者とも言える。(かなり大回りしたが)自らが招いた高コスト構造をひきずり、りんかい線は全線開業をひたすら待つ。
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