スイスの国防力

 要塞・自転車連隊など独自の国防防衛を追求する

 

【永世中立と国民皆兵の義務】

  スイス連邦は、人口711万人(1995)、面積約4万q2、人口は日本の17分の1、面積は9分の1の小国である。精密工学やコンピューター関連の高度な技術力を持った世界トップクラスの豊かな先進工業国である。人口のうち、65%以上はドイツ系、18%がフランス系、10%がイタリア系、1%が土着のロマンシュ系(スイス東部人)から構成されている。

  したがって公用語は独仏伊の三カ国語である。各民族はそれぞれの祖国の文化を守り続け、比較的同族が特定の地域にまとまって居住している。しかしドイツ系が過半数以上なのでドイツ語が全土で通用し、スイス人が世界一の旅行好きである要因になっている。

  日本人にはスイスはアルプスの恵みを授かった観光国、あるいは永世中世国としてのイメージが極端に強いであろう。確かにスイスは1815年のウィーン会議から永世中世国を180年以上堅持してきた。ちょうどスイスはフランス、ドイツ、オーストリアに国境を接し、南のイタリアに遠征する軍隊がアルプスを越える経路に位置していた。古くはカルタゴのハンニバル、ドイツ王、ナポレオンなどだ。永世中世はスイスが欧州列強の覇権争いの渦中において生き残るために選択した歴史的国策である。その効用は賢明な判断として評価が定まっている。同時に永世中世はすべての国から見放される恐れも内在しているため、国民皆兵が義務づけられて今日に至っている。

 

【新防衛構想の誕生】

  ところが、1980年代末から始まった東西冷戦体制の崩壊は、これまで不可侵とされてきたスイスの皆兵制度の存続をも含めて、見直されつつある。この動きの嚆矢となったのが、国防長官カスパー・ヴィリガーの発表した「変化する世界におけるスイスの安全保障政策」である。具体的にはスイス軍の基礎的軍事組織の編成、戦略を規定していた「アーミー61」を全面改訂して、「アーミー95」を新たにつくりあげたのである。結果的に国民皆兵制度は維持されるものの、有事動員の即応兵力を減らして、国民の兵役負担をかなり軽減している。

  アーミー95は、少ない兵力でも効果的な国防が可能で、PKOや大自然災害にも柔軟に即応できる軍事組織を目指している。具体的にはそれまでの防衛構想「トータル・ナショナル・ディフェンス(総合国家防衛)」から新防衛構想「ダイナミック・エリア・ディフェンス(拡張地域防衛)」への転換である。新防衛構想は、第1に、指揮官は能力を強化したC(指揮・統制・通信・情報)から敵の情報を得て、無駄なく的確な兵力を重要地に投入する。第2に航空軍の戦闘機と防空部隊の火器が、友軍地上部隊の移動・配置をエアカバーする。第3に要塞旅団がアルプスを抜ける主要ルートを守る。第4に地域防衛部隊が重要施設を守る。第5に機動軍団が敵への反攻を開始する。この構想によってアーミー95では、有事における初期動員兵力が60万人体制から40万人体制に縮小することができたという。

 

【スイスの動員体制】

  平時のスイス軍は職業軍人約3400(将校と下士官)を中心に徴集された予備役兵からなる。有事に即時動員(48時間以内)される予備役兵は、アーミー95にしたがって396300人となっている。国民の兵役期間は、生涯に二度ある。まず現役兵として1920歳の間に、新兵徴集訓練を15週間行わなければならない。新兵の15週間の徴集訓練は、年に二度実施され、それぞれ1万1000人と1万7000人が徴集される。新兵訓練が終わっても、その後予備役兵として2042歳の22年間の間に、3週間の再訓練を任意に10回行わなければならない。様々な形で毎年、軍事訓練に参加する予備役兵の人数は約31万人ほどだという(1994)。改革前に比べると格段に兵役義務が緩くなっている。以前は新兵のリクルート・スクールの期間が、17週間であったし、三度目の兵役もあったのである。年齢は4350歳で、年間1週間の再訓練を二度やらなければならなかったのである。

  スイスには軍隊の他に民間防衛部隊として38万人が登録されている。またスイスの兵役可能な人的資源は149万人だという。

 

【スイスの国防体制】

  スイスの軍事組織は、野戦軍事省(FMD)の統制下に置かれ、その下部に各軍部隊を指揮する参謀本部がある。FMDは軍事政策の立案を行う軍政組織であり、軍隊の指揮を実施する軍令組織である。スイスは海に面しない山岳国家であるため、海軍も空軍もない。防空任務を行う航空軍と防空部隊は陸軍に所属しているのである。参謀本部は地上部隊参謀部、航空部隊参謀部、装備グループ参謀部を指揮下に置いている。現在、制服組のトップは参謀総長のアルトゥール・リーナー陸軍大将である。

  アーミー95に基づいて改革されたスイス軍部隊の編成は、陸軍直轄部隊、野戦軍団3個、山岳軍団、航空・防空軍構成され、すべて陸軍に属している。

 

【陸軍は4個軍団の防衛体制】

  陸軍は保有する4つの軍団に担当区域を設定して、スイス全土の防衛体制を構築している。3つの野戦軍団は、東西に第1野戦軍団、第2野戦軍団、第4野戦軍団が配置され、南部のアルプス地域一帯は第3山岳軍団の担当区域である。

  中核となる野戦軍団は、各野戦師団2個、機甲旅団、自転車連隊、砲兵連隊、工兵連隊、要塞連隊、通信連隊、地域管区師団(5〜6個連隊)から編成されている。

  野戦師団は、歩兵連隊3個、機甲任務部隊、砲兵連隊からなる。歩兵連隊は歩兵大隊3個、対戦車中隊の編成である。これまで歩兵部隊は軽歩兵ばかりであったが、アーミー95構想に従って、兵装の近代化(装甲化・大火力化)を推進している。各連隊の歩兵大隊のうち1個は、スイス・モワーク社製の最新型八輪駆動のピラニア装輪装甲車が配備されつつある。また対戦車中隊は9輛のTOW対戦車ミサイル搭載装甲車(ピラニア)を装備している。野戦師団配属の機甲任務部隊は、戦車大隊2個に機械化中隊(歩兵戦闘車)、120o重迫撃砲中隊が配属されている。貴重な機動打撃戦力であるため、作戦によってこの機甲部隊は独立運用される。ただし装備している戦車は旧式なスイス国産のPz68戦車である。師団砲兵連隊は3個大隊編成で、各々M109・155o自走砲18輛を装備している。したがって師団の火力は自走砲54輛となる。砲兵部隊には防空兵器としてスティンガー肩撃ち式地対空ミサイル、20o高射機関砲が配備されている。師団司令部付き大隊としては偵察中隊、衛生中隊などの支援部隊が配属されている。

  軍団の機甲旅団は、最も強力な機動打撃部隊で、戦車大隊2個、機械化大隊、砲兵大隊、軽防空大隊、工兵大隊から編成されている。特徴的なのは戦車、機械化大隊は諸兵コンバインドされた編成を取っていることである。戦車大隊の場合、戦車中隊(レオパルト2戦車10輛)3個の他に機械化歩兵中隊(歩兵戦闘車M63/89型)、対戦車中隊、偵察小隊が加えられている。対戦車中隊の兵装はTOW搭載ピラニア12輛であり、偵察小隊は最新タイプのイーグル偵察装甲車が4輛配備されている。同様に機械化大隊には戦車中隊が混成されているのである。機甲旅団が完全充足された場合の戦力は、兵員が5283人、レオパルト2戦車74輛、M113装甲車/改修型歩兵戦闘車109輛、TOW搭載ピラニア12輛、自走120o重迫撃砲12輛、M109・155o自走砲18輛、ドラゴンATM発射機30基、パンツァーファースト3対戦車ロケット弾発射機173基。

  スイス軍オリジナルのユニークな部隊としては、自転車連隊がある。彼らの役目は、軍団の後方地域を守ること、軍団と機甲旅団などの後方連絡線を警備することである。スイスの狭隘な地形、山岳地帯ならではの忍者部隊であり、買い物のためでなくて、正式な戦闘組織としてこれだけの単位を維持しているのはスイス軍だけであろう。基本的な編成は自転車大隊3個で、各大隊は自転車中隊(小銃歩兵)2個、81o迫撃砲中隊、対戦車中隊(パンツァーファースト3)、衛生中隊からなる。主役の自転車はバイシクル93と呼ばれる新型車で、日本でも「コンドル」の商品名で販売されている。値段は40万円のマウンテンバイクだが、重量も約40sある超頑丈な軍用自転車である。100sを超える荷物を積んで野外を駆け巡ることができるらしい。スイス軍バイシコーズは、完全武装のまま戦場を移動する。地形を熟知した彼らが、森林の陰や隘路に隠れて対戦車兵器を構えて待ち伏せしたならば、未知の土地を前進する敵にとっては脅威である。当然ながら自転車部隊は、状況に応じた移動隊形を確立しているらしく、縦隊で移動する場合、各自転車の車間距離は最低20p開ける。部隊と部隊の間隔は50〜100m。スイスには自動車、あるいは戦車が入り込めない地域も多い。しかし自転車であれば人間が担ぐ量の数倍の装備・補給品を軽快に運搬できるのである。最近、自転車連隊は、自転車大隊を減らして対戦車中隊(TOW対戦車ミサイル搭載ピラニア9輛)を配属しているようだ。

  地域管区師団は山岳地帯を担当範囲とする軽歩兵部隊のようで、装備などはロバの背に積んで移動する。これもスイス・オリジナルの一つに数えられるかもしれないが、自転車同様に役に立つ兵装なのであろう。

  4つ目の軍団である第3山岳軍団は、アルプス地帯の守りを任務としている。主な戦闘部隊は山岳師団3個、要塞旅団3個、山岳歩兵連隊2個、要塞連隊2個、工兵連隊、地域管区師団、地域管区旅団2個。山岳師団は歩兵連隊2個、砲兵連隊からなるが、山岳地での作戦を前提に軽量部隊となっている。砲兵連隊は18門の野砲を備える大隊3個からなるが、野砲は自走砲ではなく、M46/90・105o牽引砲である。

 

【陸軍の装甲戦闘ウェポン】

  スイス軍の主力戦車は国産を目指していたが、結局、ドイツ製のレオパルト2戦車の採用に決まり、1987年から380輛を調達している。スイス軍正式名称はPanzer87(Pz87)。Pz87は70%がスイスの生産分担となっており、ドイツ・オリジナルの戦車から以下の装置が交換されている。無線機、機関銃、操縦手ハッチ、ドイグラ自動消火システム、改良型NBC防護装置、油圧式履帯緊張装置、ベールド操縦用夜間潜望鏡、そして独製アナログ・コンピューターがデジタル・コンピューターに取り替えられている。走攻守にわたる相当な改良である。レオパルト2は野戦師団ではなく、独立機甲旅団5個に優先配備されている。スイスはさらなる改良の目玉として、レオパルト2の主砲ラインメタル製120o滑腔砲を140o滑腔砲に載せ換える試験を実施した。この世界最大の戦車砲は、スイスのSwiss・Federal・Armament・Works・Thunが開発したもので、1989年にはレオパルト2の砲塔に搭載して試射を行っている。実験では1000oの鋼鉄装甲板を貫通したという。現在、公開された140o砲戦車はスイスのレオパルト2改だけであろう。スイスには国産のMBTとしてPz61/68戦車が製造されている。Pz61は1961年に制式採用された初の国産戦車で、西側の標準戦車砲であるL7・105o砲を搭載していた。Pz68はその改良型で、現在スイス軍が現役で使用しているのはPz68が186輛、改良型のPz68/88が186輛である(Pz61は117輛)。Pz68戦車は、乗員4人、戦闘重量39.7トン、独製MTU・MB837ディーゼル・エンジン(660馬力)を搭載し、105o砲、アナログ・コンピューターを備えた第二世代戦車である。最新改良型のPz68/88は攻撃能力の大幅向上を狙ったタイプで、砲塔が大型化され、砲安定装置、デジタル・コンピューター、レーザー距離測定機、NBC防護装置の強化などの最新システムが導入されている。つまり自衛隊の可哀想な74式戦車と違って、アップグレード対策により第一線戦闘力が蘇ったのである。スイスのMBT戦力は、自衛隊の約850輛に対して752輛となる。

  戦車を支援する歩兵戦闘車(ITV)は、M63/73が192輛、M63/89が315輛である。この歩兵戦闘車は、米国製M113装甲車の車体にスウェーデン・ヘグルント製砲塔(20o機関砲装備)を搭載した簡易型のIFVである。M63/89はM113A3型のように、M63/73のエンジンなどを強化した改良型である。諸国のIFVに比べると旧式であるためモワーク社開発のトロージャンIFVを後継にしようとする計画が進められている。APC(装甲兵員輸送車)タイプとしてはM113装甲車が各種仕様型、836輛が配備されている。

  以上、1653輛の装甲車はいずれも古い世代の戦闘車輛である。そこで近代化対策として、最近、スイス軍は新世代の装甲車、二種を調達しつつある。一つは、モワーク社の改良型ピラニア装輪装甲車。これは兵員輸送型の八輪駆動装甲車で、旧来のピラニアよりも装甲防護力と機動力が優れている。車体はやや大きくなり、タイヤもさらに幅広いタイプに交換され、追加燃料タンクが車体後部に増設されている。さらに防護能力を強化するため装甲板が車体にびっしりボルト止めされている。足回りは、後ろ2軸がトーションバー・サスペンション、前2軸がコイル・スプリングで、前の2軸が操舵する。出力300馬力のエンジンを搭載し、時速100q、航続距離780q、水陸両用の高機動能力を誇っている。戦闘重量は12.3トン、兵員輸送タイプの場合15人もの兵隊を収容できる。スイス軍では、兵員輸送、指揮統制、ドラゴン対戦車ミサイル班のための装甲車として使用が考えられている。いずれの仕様でも車体には、360゜旋回するKUKA一人用砲塔が搭載される。砲塔の武装は遠隔操作式の12.7o重機関銃と煙幕弾発射機。現在、ピラニア装甲車(Spz93と呼ぶ)は205輛配備されているが、調達計画数は615輛である。自衛隊でも八輪駆動の装甲車が調達を開始したが、それでも総装甲車数約1800輛のスイス軍に対して、陸自の装甲車保有数は約1000輛にすぎない。二つ目の新型車は、モワーク社のイーグル偵察装甲車で、機甲旅団の偵察小隊に4輛が配備されている。イーグルは米国製ハマー汎用車(4×4)のシャーシにモワーク社オリジナルの装甲車体と偵察砲塔を組み合わせたものである。大きさは、戦闘重量4.8トン、出力160馬力のエンジンを搭載し、最高速度125q/hを発揮する。問題の乗員コンパートメントの耐弾能力は、距離30mから発射された小銃のボール弾を阻止し、距離100mから発射されたスチール弾の直撃から防護するという。イーグルの砲塔は、MBK2監視キューポラと呼ばれ、火器ステーションではない。もちろん重量320sの防弾砲塔であるが、主兵装は全天候の監視能力を有するサーマル・イメージャー(熱戦暗視装置)が装備されている。自衛兵器は遠隔操作式のMG7.62o機関銃と煙幕弾発射機が取り付けられている。イーグルはPKOなどにも威力を発揮する偵察装甲車といえよう。

  装甲戦闘車としては、TOW対戦車ミサイルを搭載した国産のピラニア装輪装甲車(6×6)を310輛保有している。この対戦車ピラニアは、ミサイル2発を装填する装甲発射砲塔(ALT)を六輪駆動の車体に搭載しているが、予備ミサイル8発と地上設置型のTOW発射機を車内に収容できる。対戦車ピラニアは31個対戦車中隊に106o無反動砲とともに配備されている。

  以上から、特にスイス軍は、対戦車阻止戦力の充実に力を注いでいるのが分かる。83o、106o無反動砲は1万3800門、90o対戦車砲は850門も保管している。確かにこれらの火器は、最新のMBTには無力である。しかし敵は戦車ばかりではない。装甲の薄い装甲車や補給トラックなどは、無反動砲を持って待ち伏せする軽歩兵や民兵にとっては格好の標的といえよう。米国製のドラゴン対戦車ミサイル発射機(有効射程2q)は2700基保有する。

  砲兵はM46・105o牽引式榴弾砲216門とM109・155o自走砲を558輛(581輛の数字もある)保有している。自走砲は初期型の装甲榴弾砲 Panzerhaubitze66 から数度の改良を経て、現最新改良型の88タイプが就役している。その数は165輛で、最大の特徴は155o榴弾砲が、39口径から47口径砲身に交換されたことである。最大射程は20q程度から30q級に大きくアップした。

  この他に陸軍には、アルエートVヘリ60機、偵察・観測用の無人機スカウト/レジャーが配備されている。また湖の警備部隊にはアクエリアス級哨戒ボートが11隻配備されている。

 

【スイス流の現代の要塞】

  スイス南部のアルプス地帯を守る第3山岳旅団には、スイス流の要塞旅団3個が編成されている。彼らは、この地域を通る重要幹線ルートを防衛するために建設された3カ所の要塞に配置されているのである。場所はサルガンス、ゴットハルト、セント・マウリスで、「バイソン・システム」と呼ばれる要塞砲システムが8基建設されている(現在タイプ93砲システムに改良中)。砲は52口径の155o榴弾砲が2門で、山岳地の要所にある岩盤をくりぬいた堅固な要塞に組み込まれている。給弾・照準システムは広い要塞の中に整えられている。砲の射程距離は35qを超え、山岳地に持ち込める通常の砲でこの砲の射程をアウトレンジすることは不可能である。火器は他に2連装の120o重迫撃砲が備えられており、榴弾砲の死角から接近する敵に頭上から砲弾を集中できるようになっている。この他に要塞旅団には、M46・105o牽引式榴弾砲を装備する砲兵大隊、歩兵大隊4〜5個が配備され、外側から要塞の防衛にあたっている。こうした山岳地の要塞を空爆で破壊するのは極めて難しい。

 

【航空・防空軍】

  国土防衛戦力として航空・防空軍は、陸軍に所属しており、現在組織が改編中である。動員時の兵力は3万2500人、作戦機は153機。組織は、次の5つからなる。第31航空戦闘旅団(航空作戦と統制)、第32航空基地旅団(航空基地と航空機整備)、第33防空旅団(SAM・防空砲兵)、第34指揮情報旅団(CI)、FFP35部隊(航空兵器とパイロットへの支援)。

  第31航空戦闘旅団が作戦機を運用する。主要航空部隊は防空、偵察、地上攻撃、輸送を担当する航空連隊から編成されている。第1航空連隊は3個航空団の下にF5タイガーU戦闘飛行隊4個、ミラージュVS戦闘飛行隊、偵察飛行隊(ミラージュVRS18機)が配属。第2航空連隊は3個航空団の下にF5タイガーU戦闘飛行隊3個、ミラージュVS戦闘飛行隊、偵察飛行隊が配属。第4航空連隊はヘリコプター飛行隊(アルエートVヘリとスーパー・ピューマ輸送ヘリが12機)3個、輸送・連絡飛行隊(PC6B17機、リアジェット36 2機、Do27 3機)、第17パラシュート偵察中隊からなる。およそ戦闘飛行隊は10機編成を定数としている。この他に第12飛行隊はピラタスPC9レシプロ機とタイガー戦闘機によって標的曳航とアグレッサー部隊を務めている。第14飛行隊は航空計器訓練部隊である。現在編成されている9個戦闘飛行隊には、7個戦闘飛行隊にF5EタイガーU戦闘機89機とF5FタイガーU戦闘機12機が配備されている。2個戦闘飛行隊には、ミラージュVS戦闘機29機とミラージュVDS4機が配備されている。偵察機にはミラージュVRS18機。ヘリはアルエートVヘリ72機、AS332スーパー・ピューマ輸送ヘリ15機。訓練機はホークMk66が19機、PC7が38機、ピラタスPC9が12機。

  1996年、スイスの防空作戦を近代化するため、ミラージュV戦闘機の後継として米国製F/A18ホーネット戦闘機の導入を開始した。今後ミラージュはF5とともに対地攻撃に振り向けられる。調達数は34機で、26機が単座のF/A18C、8機が副座のF/A18D。F/A18戦闘機は自衛用のサイドワインダーAIM9P5赤外線誘導空対空ミサイルと迎撃用のAMRAAMレーダー誘導空対空ミサイルで武装する。99年には3個戦闘飛行隊がそろう予定となっている。現役(即応任務)のパイロットの飛行時間は、年間200〜300時間。全パイロットの75%の平均飛行時間は50時間ほどである。

  防空部隊は、任務に応じてSAMと砲システムが組み合わされている。広域防空任務は、SAM連隊1個が引き受けている。この連隊はブロードハウンドMk2・SAM大隊2個からなり、大隊は3個中隊編成で、配備地点は固定されている。野戦部隊に配備される防空部隊は、防空旅団1個に配備されている。防空旅団は、短SAM連隊1個と防空連隊7個で編成されている。短SAM連隊は英国製レイピア短SAM装備部隊で、3個大隊からなり、2個大隊は2個中隊、1個大隊は3個中隊編成をとっている。7個の防空連隊は、GDF005改良されたエリコン製35o連装対空機関砲の装備部隊である。防空連隊は2〜3個大隊編成で、各大隊は3個射撃中隊からなる。射撃中隊は、2個射撃隊からなり、射撃隊には35o連装機関砲2基とスカイガード射撃指揮システム(捜索レーダーと射撃指揮装置)がペアを組んでいる。

  今後、戦場監視システムの主役になる無人機(UAV)は、現在4機のレンジャーUAVがテスト中であるが、31個の旅団に配備される計画となっている。レンジャーは、7機のレンジャー機体、2基の射出ランプ、2基の機動地上コントロール・ステーション(自動着陸システム)、2基の受信ステーション、支援キットから構成されている。

<スイス軍データ>

総兵力(航空軍団は陸軍の一部を形成している)

 現役:職業軍人3400人余、徴集兵(1万1000人1回と1万7000人1回、各々15週間だけ2回徴集)。兵役期間:19〜20歳の時に15週間の新兵徴集訓練、その後20〜42歳の22年間にわたり3週間の再訓練10回。1994年の訓練参加者は約31万3100人。ちなみに予備役(全軍種):39万6300人。国防支出:94年で43億米ドル、国防予算:96年推定で51億3000万米ドル

 陸軍:動員時36万3800人。総軍コマンド(全部隊は予備役扱い)コマンド直轄部隊:機甲旅団×2個、歩兵連隊×2個、砲兵連隊×1個、空港連隊×1個、工兵連隊×2個。野戦軍団×3個:各、師団×2個(歩兵連隊×3個、砲兵連隊×1個)、地域管区師団×1個(連隊×5〜6個)、機甲旅団×1個、砲兵連隊×1個、工兵連隊×1個、自転車連隊×1個、要塞連隊×1個。山岳軍団×1個:山岳師団×3個(各歩兵連隊×3個、砲兵連隊×1個)、要塞旅団×3個、山岳歩兵連隊×2個、要塞連隊×2個、工兵連隊×1個、地域管区師団×1個(連隊×6個)、地域管区旅団×2個。

【装備】 ▼主力戦車:Pz-61×117輛、Pz-68×186輛、Pz-68/88×186輛、Pz-87(レオパルト2)×380輛。▼装甲歩兵戦闘車:M-63/-73×192輛、M-63/-89×315輛(全て20o砲搭載のM-113)。▼装甲兵員輸送車:M-63/-73(M-113)×836輛、派生型を含む、ピラニア×若干輛。▼牽引砲:105o=35型×216門、46型×341門。▼自走砲:155o=PzHb-66/-74/-79/-88(M-109U)×558門。▼迫撃砲:81o=M-33×2750門、M-72、120o=M-87×402門、M-64(M-113)×132門。▼対戦車誘導兵器:ドラゴン×2700基、TOW-2自走式(MOWAGピラニア搭載)×303基。▼ロケット・ランチャー:83o=M-80×2万基。▼対戦車砲:90o=50/57型×850門。▼高射砲:20o砲×1700門。▼地対空ミサイル:B/L-84(レピア)×56基、スティンガー。▼捜索レーダー:グリーンアーチャー(対迫)。▼無人機:スカウト。▼ヘリコプター:アルウェットV×60機。▼水上部隊:アクエリアス級哨戒ボート×11隻。

 航空軍団:動員時3万2500人(航空基地守備部隊を含む)。作戦機×153機、武装ヘリコプターなし。航空団は陸軍の一部であり、航空旅団×1個、防空旅団×1個、航空基地旅団×1個、指揮統制旅団×1個からなる。年間平均飛行時間:150〜200時間、予備役50〜70時間。

 ▼戦闘:飛行隊×9個:7=タイガーU/F-5E×90機、タイガーU/F-5F×12機、2=ミラージュVS×29機、−VDS×4機。▼偵察:飛行隊×1個=ミラージュVRS×18機。▼輸送:飛行隊×1個=PC-6×17機、リアジェット36×2機、Do-27×3機。▼ヘリコプター:飛行隊×3個=AS-332M-1(スーパーピューマ)×15機、SA-316(アルウェットV)×12機。▼練習:ホークMk66×19機、PC-7×38機、PC-9×12機。▼空対地ミサイル:AGM-65A/Bマーベリック。▼空対空ミサイル:AIM-9サイドワインダー、AIM-26Bファルコン。

 防空部隊:地対空ミサイル連隊×1個[大隊×2個(各、中隊×3個=ブラッドハウンド)]。防空旅団×1個:地対空ミサイル連隊×1個[大隊×3個(各、中隊×2〜3個=レイピア)]、防空連隊×7個[各、大隊×2個(各、中隊×3個=スカイガード射撃統制レーダーと連携した35o砲)]。

【在外兵力】 国連及び平和維持活動:ボスニア(国連保護軍):オブザーバー6人。グルジア(国連グルジア監視団):オブザーバー5人。朝鮮半島(朝鮮半島中立国監視委員会):スタッフ6人。中東(国連休戦監視機構):オブザーバー8人。マケドニア(国連予防展開軍):オブザーバー1人、さらに文民警察6人。タジキスタン(国連タジキスタン監視団):オブザーバー3人。

 準軍隊 民間防衛隊:48万人(30万人が訓練完了者)。

以上、『ミリタリーバランス 1995-96』

    『軍事研究』 1997年3月号より

 

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