朴葉みそ・もちの話


    飛騨高山の名物料理といえば、朴葉みそじゃな。
    特に、民宿なんかに泊まらはった方は、朝食に朴葉みそ出んかったかな?
    都会の人には、ちょっと考え付かん料理やもな。みそ焼いて食べるなんてな。でも、美味かったやろ?
    あれを、都会で食べるとそー美味うないとおりも思うで。そやけど、高山で食うとなんや美味いんやさ
    な。ありゃ、やっぱ面白れえもんやな。何でそうなんか、おばあが話てやるさ。

    朴葉みその由来朴葉みその由来
    朴葉もちの由来朴葉もちの由来


    冬風景










    朴葉みその由来

      高山に限らないかもしれんけど、昔、山仕事なんかにいく人は、御弁当持っていった先で焚き火
      をして暖を取るでしょ。そんな時に蕗や朴の葉を使ってお皿の代わりにしたんやさ。火の側に置
      いておくと何時の間にか暖まって良い匂いも移る。これは美味しいと、家に帰ってから暖炉の上
      でまた焼いてみたんやろうな。
      そんな事が伝わったんやろうけど、第一は、高山がとっても寒いという事やさ。寒い上に、冬は
      何にもお菜が無い。そりゃ、大根やかぼちゃを室(むろ)に入れたり土に埋めたりしてたばっとく
      けど、何時もかもそれは食べれん。ともかく、冬は漬けもん(漬物)とみそ食っとったんや。
      そやから、さっぶい朝に漬けもん取りにいくと、桶がカチンコチンに凍っとって、金槌でたたいて
      割って取ってきたんやさ。それをどんぶりで出すんやけど、氷が入っとるで冷とうて食えんし、第
      一に硬くてだちかん。食えりゃせん。
      しゃあねえで、あぶって食おうという事になるわな。そしゃ、朴の葉が便利やったぞ山でも、て事
      になるわな。なら、味噌も焼かまいかなとなり、味噌と漬けもんがまたえ〜具合に混ざり合って、
      美味くなったんじゃ。こりゃええ、そしゃ、干し椎茸入れてみんかとか、油少し引いてみんかとか
      色々やったんやろうけども、一番相性がえかったのが「葱」やったんや。「飛騨葱」は、今でも朝
      晩の温度差が大きいので甘みが増して美味いと評判じゃが、こっちでは「ねぶか(根深)」って言
      うくらい白い所が多い葱を作るんじゃ。じゃから、薬味じゃなくて食べる葱なんじゃな。
      この葱と、美味い地元の味噌が朴の葉に乗って、今の「朴葉味噌」の原形が出来たんや。
      そりゃ、昔は味噌もてんでに自家製で作っとったで、家々でてんでのみそ焼きやっとったわな。
      おばあの子供の頃はみんな葱の朴葉味噌食べて学校に来るもんで、教室中葱の匂いがプンプ
      ンしとったわ。その位、当たり前にこの辺では朝は朴葉味噌やったんや。
      今の子は、パンに牛乳で外人さんみたいな朝ご飯食べるが、もう民宿だけかな、朝、味噌焼くの
      は。御時世やな。
      いろり

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      朴葉もちの由来

      朴葉はほんとに重宝なもんや。食べ物くるんだり、皿代わりに敷いたりな。
      そやもんで、だんだんに香りが移っておいしゅうなったりするのにも気が付いた訳や。その上、
      腐ったりしにくくなったんじゃな。桜餅や柏餅みたいなもんかのう。香りに殺菌作用があるのか
      のう?学者さんでないで、ホントのとこはよう分らんけどな。
      そんでな、朴葉もち作るのは夏なんやけど、こんときに冬みたいに取り粉使ってもち伸ばしとっ
      たら、すぐにカビ生えてまうんやさ。夏は、もちはすぐわるうなるのかと思ったんじゃろな。そこ
      で、朴葉に包んで粉つけんかったら、空気にも触れんでずっと長持ちする事に気が付いたんよ。
      そういう事に気が付いた人は賢かったんやさな。皆さんも飛騨の朴葉もち(飛騨では「あっぽ」っ
      て言うんやけど、もちの事)買ってってな。
      ただ、ちょっと気を付けてもらわんならんのやけど、焼くときは本当に弱火でゆっくり焼いて欲し
      いんや。強火で焼いてまうと、朴葉が引っ付いてまって取れんようになってまうで、気ぃ付けねえ
      よ。ゆっくりほっこり焼くと、貝が口開けるみたいに自然に剥がれてくるでな。
      後は醤油焼きで磯辺巻きでも、きなこもちでも、お雑煮でもほんのり朴葉の香りのするお餅、美
      味しいよ。朝市で買ってってな。

      ついでやで書いとくけど、農家のおばあは、今年の農作業が一段落すると「秋餅」をついたもん
      や。米や野菜がたくさん出来てありがたいという感謝を込めて、大きな小豆餅作ったんや。子供
      に近所にも配って歩かせたんや。ここの亭主も子供の頃、おかあの実家で配るの手伝っとった
      んやけど、ええ小使い集めになって喜んどったわ。
      今も田舎ではやっとるんやろうか?ええ風習やったけどな。

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