<精神分裂病>

A.概要

B.成因(脆弱性−ストレスモデル)

C.自我防衛機制という側面から見た症状論

D.分裂病の病型

E.症状各論1:症状の時間経過

F.症状各論2:客観症状

G.症状各論3:主観症状

H.経過・予後

I.診断と治療

A.概要

B.成因(脆弱性−ストレスモデル)

 精神分裂病の成因論でもっとも有力なものが、Ciompiが提出したこの脆弱性−ストレスモデルです。矢印が色々あって判りにくいですが、まずここから「分裂病の成因というのは単純に何とは言えないんだ、極めて複雑なものなんだ」ということを理解して欲しいと思います。

 そしてその上で、大雑把に次のように理解してください。精神分裂病というのは、自我の安定性・統一性が持続的かつ極度に脅かされた結果発症してくると書きました。その自我を脅かすものをここでは「ストレス」と呼んでいます。ところで、このストレスに対する耐性は、人によって異なって当然で、そのストレスに対する耐性の低さのことをここでは「脆弱性」と呼んでいます。脆弱性−ストレスモデルとは、自我が持っている耐性を超えるストレスに見舞われた時、その人は分裂病を発症するのだという主張なのです。

 脆弱性は、遺伝的因子も重要なのですが、その人の生育歴、性格などによっても影響されてきます。一方、ストレスは、その人の社会的適応能力の問題もさることながら、そして周囲の人間がいかなる人間であるかによっても変わってきます。その時点における身体的障害(妊娠・出産・産褥や、発熱を伴う急性感染症)や事故も大きなストレスになり得ます。「脆弱性」や「ストレス」と一口にいっても、その内実は極めて複雑です。分裂病の発症とは、非常に複雑なメカニズムが関与しているのです。そしてまた、分裂病患者は一人一人抱えている問題が違うという、個別性を孕んでいます。

 では分裂病の治療とは、このモデルを下敷きにした場合、どのような方法が考えられるでしょうか。分裂病発症は、その人の脆弱性とストレスとのバランスで決まってくると言いました。とすると、一つには、その人に、ストレスに対する耐性を身につけてもらえるよう、トレーニングすることが考えられるでしょう。これは、脆弱性克服を目的としたものです。あと一つは、その人の周囲の状況を、よりストレスが低いものへと調整することです。分裂病の治療は、こうした心理・社会的次元によって行われる必要があるのです。

 薬物治療があるじゃないかと思われるかもしれませんが、薬物治療は分裂病治療においては副次的意味合いしか持ちません。薬物治療の目的は、反応性の症状によって、患者本人も周囲の人間も戸惑いうろたえてしまい、結果として心理・社会的なケアが受けられなくなってしまうようなそうした状況を改善することで、悪循環を打開するというものです(今の社会は、分裂病患者が、そのままの形ですんなり受け入れられるようなものではありません)。あくまでも患者が社会に受け入れられやすいようにすることに過ぎず、それ自体は何ら原因治療になり得ません。それどころか、(反応性の症状は自我防衛機制の一つなのですから)かえってマイナスということもありえます。

 ここで頭に入れておいて欲しいことは、精神分裂病の発症には極めて複雑なメカニズムが関与しているということ、それはとても患者個別的なものであるということ、治療には薬物は副次的なものに過ぎず、心理・社会的次元で行われる必要があるということ、です。こうした対応が充分に為されなかった結果が、分裂病の残遺状態である、人格荒廃なのです。

 

C.自我防衛機制という側面から見た症状論

 精神分裂病の症状のほとんどは、自我防衛機制によるものであると述べました。ここでは、その自我防衛規制という視点から、精神分裂病の症状発現のメカニズムについて、整理します。

 精神分裂病の症状が自我防衛機制であるとして、では何から自我を守っているのかというと、それはその人の周囲の環境からです。何故周囲の環境から自分の身を守らねばならないのかというと、精神分裂病の基礎障害によって外界が自我に脅威的なものへと変貌を遂げたからであると考えられますが、その精神分裂病の基礎障害というものが具体的になんであるかは、まだはっきりとはしていません。様々な文献から、おそらくは認知枠組みの何らかの歪み、すなわち、外界を知覚し、それに意味付けを与え、概念に置き換え分析し解釈し、状況にふさわしい反応を投げ返すという一連の行為の中での何らかのズレが、精神分裂病の基礎障害であろうと考えられています。(これを「自明性の喪失」と表現した精神病理学者もいます。「あたりまえ」におこなっている様々な行為の、その基盤である「あたりまえ」がわからなくなったのだ、ということです)

 基盤についてはしたがってまだよく判っていないわけですが、それによって自我が脅威にさらされ、なんとか存続しようとして様々な防衛機制を働かせるその内容については、かなり整理できます。具体的に一つ一つ見ていくと、

  1. 基礎障害によって、自我が直接外界に触れることが出来ない、外界との直接的接触はあまりに自我にとって負担が大きすぎる場合には、自我は周囲の環境と関係性を断ち切って、自分の中に閉じこもることでなんとか存続を果たそうとします。この結果が自閉であり、離人体験です。離人体験というのは、物事に実感が伴わない、行為をするにしても自分でそれをやっている実感をもてないというような症状でしたが、これはつまりリアルな周囲環境から身を引き離すものだと考えられています。
  2. 次に、この基礎障害がマイルドに進行した場合のことを考えると、自閉以外にも自我を保護する方法はありえます。それは、そのままでは脅威的な知覚する外界の情報を、自我保護的に作り変えることです。それが、幻覚であり妄想であるわけです。幻覚や妄想は、特にクリエイティヴと言ってもよい側面を持ち、自我を保護するに足るほど体系的なものを作り上げるにはそれなりの時間が必要になります。こうした幻覚や妄想によって、自我の周囲の環境を安定化することで外界から自我を守っているのです。
  3. だが時に、自我は自我それ自体を作り変えることで、周囲の環境への適応を模索することがありえます。自我構造の変革ですから、非常に激しい内的抗争が起こり得るでしょうし、周囲から見てもはっきりそれとわかる症状を呈してきます。それを通常は緊張病症候群と呼んできました(緊張病性興奮や緊張病性昏迷など)。こうした激しい体験を経ることで、自我はその危機から逃れようとするわけです。

 このように、危機に直面して、自我は様々な防衛機制を(反応性精神症状として)行うわけです。ただしそれが結果的に周囲からの心理・社会的支援を受けにくくすることにも繋がりえます。いずれにせよ、そのような自我の必死の抵抗も、周囲からの支援がないままであれば、最終的に自我は防衛し切ることが出来なくなり崩壊していきます。それが二次性の陰性症状と呼ばれるもので、心理・社会的な対応不全の結果として、感情鈍磨・意欲減退・社会的引きこもり・会話の貧困化・注意力の低下などの症状をきたしてきます。その一つの例が臨床的貧困症候群と呼ばれるもので、分裂病患者が無為のままに病院に閉じ込められた結果として生じてくるものです。体も使わなければ機能が衰えてくるように、脳も使う機会を与えられなければその機能を減じてくる、それが二次性の陰性症状の本質だろうと言われています。

 

D.分裂病の病型

 上で見てきたように、分裂病の症状は自我防衛機制としてまとめられるわけですが、歴史的にどの症状を呈しやすいかによっていくつかの病型に分類されてきました。病型によって予後が決まるわけでもないし、病型が移行することもありうるので、病型分類そのものにそれほど意義はないのですが、症状の意味合いを理解するのには有益なので目を通して欲しいと思います。上のシェーマで挙げた自我防衛機制と病型とは比較的対応していますので、対応して読んで頂けるといいと思います。

 

1.破瓜型分裂病hebephrenic schizophrenia(あるいは解体型disorganized)

 精神分裂病の中核群と考えられている病型である。陽性症状の出現が少なく、自閉傾向・感情鈍磨・意欲減退など陰性症状が前景に立つ。発症は早く青年期に発病し、直線的にあるいは数回の病勢増悪を繰り返しながら、慢性に進行して末期状態へと至る、予後不良の型。

 症状の特徴をいま少し挙げるならば、原始的な状態への退行や、抑制のなさ、まとまりを欠く行動・言動などがこの型の主たる特徴である。一般にこの型の患者は行動的であるが、目的が伴わず挙動が予測できない。思考障害が見られ、現実との接触が希薄である。人格の表出や社会的な行動が荒廃している。情緒反応は不適切で、よく訳もなく突然笑い出したり、状況に不釣合いにニヤニヤ笑ったり、しかめ面をしたりする。結果として患者は孤立し、自閉的生活を送ることになる。

 

2.緊張型分裂病catatonic schizophrenia

 緊張病性の興奮もしくは昏迷など、主として精神運動性の障害(意欲・行動の異常)を呈する型。破瓜型と同様に20歳前後で発症する。病勢増悪を繰り返し、周期性の経過を取るが、症状が消退している間歇期にはほぼ完全に近い寛解に達する(この点が破瓜型と異なる)。一回の症状自体は数日から数ヶ月で寛解する。

 緊張型分裂病の症状は緊張病症候群と呼ばれ、緊張病性興奮(運動心迫や常同症など)と緊張病性昏迷(カタレプシーや常同姿態、拒絶症、無言症、反響症状など)の一方もしくは両者が交代して出現する。しかし、こうした古典的な緊張型の病態は現在では珍しい。

 

3.妄想型分裂病paranoid schizophrenia

 妄想・幻覚という陽性症状を中核とし、感情鈍磨・意欲減退・自閉傾向などの破瓜型で見られる陰性症状は目立たず、緊張病症候群も呈さないもの。発症は破瓜型や緊張型よりも遅く、30歳あるいはそれ以降に発症し、慢性に経過する。妄想型の患者は自我の源泉が一般に破瓜型や緊張型より豊かであり、知能・情緒・行動の劣化が少ない。そのため何とか社会状況に合わせて行動・生活できる。

 ここでの妄想は一般に被害的な内容を持った関係妄想である(他に嫉妬妄想、心気妄想、誇大妄想など)。長期間経過するうち、こうした妄想は過去や現在の出来事を取りこんで発展し、一つのまとまった妄想の体系を形成することが多い(妄想構築)。患者はこうした妄想を抱えながら生きることになるが、障害によって社会的な関係が徐々に途絶されていくと、それに従い自閉的となって自分の妄想の中だけで生きるようになっていく。

 

4.その他

 上記3型のほか、DSM−Wでは鑑別不能型、残遺型が、ICD−10ではさらに単純型、分裂病後抑鬱などがあげられている。

 単純型分裂病とは、感情鈍磨・意欲減退・連合障害・自閉など陰性症状を中核としつつ、破瓜型よりも更に陽性症状が少ないものをいう。20歳前後に発症し、潜在性に進行して無感情・無気力などの人格の貧困化を引き起こすが、破瓜型とは違って高度の人格障害に至ることはない。これを分裂病の基本型と考えることもできる。

 

 ……と、教科書的な特徴を述べてきましたが、これはこれまで歴史的に典型例だと言われていた特徴です。こうした典型例は現在ではどんどん減ってきていると言われますから、あくまで大枠で、症状の性質として理解しておくのがよいでしょう。試験的には、上で述べたようなことだけ理解していけば良いと思います。症状について、もう一歩踏み込んで理解するため少しだけ追加説明をします。

 破瓜型は、陽性症状をあまり呈さず、主として陰性症状のみを示してくるタイプで、教科書的には意欲・感情面の障害としてまとめられています。この型の中核症状は自閉です。自閉を中核症状とするということは、心理・社会的サポートが得られ難いということを意味しています。破瓜型は一般に予後が悪いと言われていますが、それは破瓜型が心理・社会的な面において周囲の的確な対応を得にくい症状を呈しているためです。

 緊張型は緊張病症候群を呈してくるタイプですが、緊張病症候群は前にも述べたとおり、自我自身による主体的な変革であり治療であり、社会適応を企図して生じてくる症状なわけですから、それが過ぎた後は寛解状態に至りやすいと言えます。緊張型が、3つの型の中で最も寛解に至りやすいことは理由のないことではなく、たとえ慢性精神分裂病に移行した患者でも、この緊張病症候群の症状が出現した場合には回復の見込みがあると言われています。

 妄想型は、上二つと発症年齢が異なることから示唆されるように、おそらくは基礎障害がよりマイルドな形で出現してきたものではないかと考えられます。それゆえ、急激に自閉や緊張病症候群で対応しなくとも、時間を掛けて妄想・幻覚を構築して安全な自我環境を作り出すことができるのでしょう。自閉の度合いは最も低いというのは、自閉の必要がないからでしょう。破瓜型よりも予後が良いとされるのは、自閉の度合いが低いため、社会的サポートを得られやすいことを反映しているものと考えられます。

 予後や経過については後に述べますが、ここでは自我防衛機制で呈して来た症状に対して、周囲の人間がどう反応するかが予後にも反映してきているという視点を確認しておきたいと思います。

 

E.症状各論1:症状の時間経過

 一応講義でやっていましたので、発症初期、急性期、慢性期に分けて分類します。大雑把には理解しておいて欲しいと思います。ただし、これは歴史的に典型例とされてきた症状を示すだけであり、これに当てはまらない経過を示すケースはもちろんたくさんあります。

 

1.発症初期 = 神経衰弱様状態期

 この時期は、精神分裂病に特有の症状はない。したがって、この時期から精神分裂病であるという診断を下すことは出来ない。ただし、遡行的には、次に挙げるような症状が見られるとする人もいる。

(1)生活態度の変化

  1. 生活パターンが変わり、不真面目・ふしだらな生活を送るようになる。
  2. はっきりとした動機・理由なく学校や職場を休む。
  3. 積極性が欠如し、落ち着きがなく怯えた様子を示す。
  4. 常識を欠いた言動をする。行動が粗野になる。話しかけても返事をしない。

(2)神経衰弱様状態

  1. 抑うつ的、思考力低下。
  2. 易疲労感、頭痛・頭重、不眠。
  3. 離人体験、強迫現象、恐怖症、解離性症状(ガンザー症候群など)。など

 以上のように、はっきりとそうだとは言えないながらも、「少し何か違う」と周囲には感じられる程度の変化が起きてくるといわれる。ただ、本人としてはおそらく何かを予感し、何らかの内的異常体験を持っているだろうとは推測される。

 

2.急性期症状(もしくは急性の病勢増悪期)

(1)接触性(疎通性)の異常(時には昏迷)

 自閉。患者はいわば固い殻に閉じ篭っているように見える。しかし、その内部では非常に複雑な動きが活発に営まれていると考えられる。

(2)内的体験の異常

  1. 妄想気分(=特有の不安緊迫感。差し迫った強烈な不安感)
  2. 様々な内的異常体験:幻覚(特に幻聴)・妄想(特に関係妄想)。妄想気分と内容的に合致する。
  3. 内的異常体験に関連する異常な行動や興奮
  4. 一見感情鈍磨があるように見えても、内的体験に関連したことには非常に敏感(相矛盾する傾向が同居)

(3)その他

  1. 思路の障害:連合弛緩、思考滅裂、言葉のサラダ(観念表象の関連付けの緩み)
  2. 感情の障害:両価性、感情鈍磨
  3. 欲動・意志の障害:意欲低下、精神運動興奮、昏迷

 

3.慢性期(いわゆる残遺状態)

(1)著しい崩壊に陥った人格像を示し、精神内界は全く空虚

  :欠陥状態、荒廃状態、末期状態、欠陥分裂病

(2)不安緊迫感が色あせて、内的異常体験は消退していくかわずかに残存する程度

  :妄想構築、幻覚も当然のものとなる

(3)感情鈍磨、自発性欠乏、無関心、無為、自閉、思考滅裂、児戯的爽快、徘徊、独語、空笑

 

F.症状各論2:客観症状

 これも一応講義でやっていたので、その切り口でまとめます。講義では典型例を挙げていたので、ここでもそうしますが、ここに挙げたような客観症状(=客観的に観察しうる広い意味の表現・行為の異常)が見られなければ分裂病とは言えない、ということではありませんので、そこは注意してください。

 

1.行動面の異常

 不自然で、事態にそぐわず、自然さを欠き、ひねくれてわざとらしく、奇態である。

(1)表情

 硬い表情や冷たい表情、しかめ顔・尖り口(眉をひそめた不機嫌そうな表情)、空笑・児戯的微笑(周りから理由が了解できない底の浅い笑い)、表情錯誤(悲しいと言いながら笑うなど、言表内容と表情とのズレがあること)など。

(2)姿態

 常同姿態(同じ姿態のまま、しかもたいてい奇怪な姿態のまま、ずっと動かないでいること)、時に空笑や独語を伴う。

(3)振舞

 全体的に自然さがなく、ぎこちがない。

 拒絶症(無言、拒食など)、途絶(突然言葉や行動が途切れること)、命令自動症(言われたことをその通り続けること。時に反響症状(相手が言った言葉をその通り反復する。被影響感の亢進によると考えられる)を示す)、常同運動、反復語唱、精神運動興奮など。

 

2.言語面の異常 = 思路の障害

 談話や文章を通じて思路の障害を捉える。

 観念表象の関連付けの緩み(連合弛緩→思考滅裂→言葉のサラダ)。独断的・直感的な思考、言語新作、衒奇的ないいまわし(えらぶった言い方や、押し殺した声、憑依状態のような話し方など)。

 

3.造形

 様々な作品から内的異常体験を間接的に知り得る。内的異常体験を反映し、多くは極めて奇異、空想的、超現実的である。

 

G.症状各論3:主観症状

 主観症状、即ち患者の内的体験の異常は、問診によって、患者の口を通して初めて知ることが出来る。しかし、一般に患者は自分の内的体験を積極的には語ろうとしないため、客観症状から判断して、適切な問診によって患者に内的体験を語ってもらいやすいようにする必要がある。

 ここも例によって、講義で触れましたのでその切り口でまとめました。ただし個別性が強いということは忘れないで欲しいと思います。

 

1.妄想

(1)一次妄想(真性妄想)

 a)妄想気分

 外界変容感を伴った、特有な不安緊迫感。初期分裂病では高い割合で存在するとされるが、患者が適切に表現できないことも多く、行動から察知するしかないこともある。これが発展すると、世界没落体験、意味妄想(世界に何らかの意味を読みこむもの)、疎隔体験に発展し得ると言われている。

 b)妄想知覚

 患者が知覚したいろいろな日常の現象が、正常人には了解できない特定の意味(自分への迫害など)を持つようになったもの。妄想気分が、客観的事実としての性格を帯びてきたものとされる。(知覚それ自体が変容を遂げるわけではないので、二文節性であると言われる。)

 c)妄想着想

 妄想内容が、一つの着想として突然浮かんでくる(例えば、突然「自分は神だ」等と)。(妄想知覚と異なり、知覚それ自体が変貌するので、一分節性であるといわれる)

(2)二次妄想(妄想様観念)

 一次妄想を基盤として、二次妄想が出現してくる。最も特徴的なのは、関係妄想であり、また、関係妄想を基盤に発展してくる注察妄想(誰かに監視されている。追跡妄想もあり得る)・迫害妄想・被毒妄想などの被害妄想である。

 発症初期には患者も半信半疑であるが、次第に持続的・固定的な妄想になる。妄想は、多くの場合幻覚と同時に、しかも相互に影響し合いながら発展する。(例えば、体感幻覚が存在する場合の物理的被害妄想や、幻味が存在する場合の被毒妄想など)

(3)慢性期の特徴

 不安緊迫感が色あせるため、平然と妄想内容を語るようになる。

 初期の妄想に対して二次性の加工がなされることもある。(例えば、自分が世間から迫害されるのは、偉大な存在だからである→誇大妄想(宗教妄想、血統妄想など)→徐々に初期の妄想と無関係になっていく)

 

2.幻覚

 精神分裂病における幻覚は、幻聴が最も多いが、次いで体感幻覚(体を触られている、いたずらされているなど)である。幻視は稀とされる(幻視は意識障害などで特徴的に出現する)。

(1)時期による特徴

@初期

 妄想気分がむしろ弱まった時に、思いがけなく幻覚(特に幻聴)が体験される。(機能幻覚が見られることもある。)その内容は妄想気分と密接に関連している。

 最初は聞こえるかどうかで、本人も半信半疑だったものが、徐々に進展するにしたがって実体的な、客観的空間における知覚として定位されるようになっていく(外部からの声としての幻聴が成立する)。

A慢性期

 特定の人物に限定化するようになり、当然のものとして患者はむしろ無関心となる。

(2)精神分裂病の幻聴の診断的特徴

  1. 要素的な幻聴は少なく、意味を含んだ声が多い。(特に、妄想と一致した悪口、非難、強迫など)
  2. 対話形式の幻聴:声の主と患者(この時には独語が見られる)、あるいは2−3人の声の主同士の対話(患者のことを噂し合うような内容が多い)
  3. 行動に対していちいち干渉的に言葉を差し挟んでくるもの。
  4. 読書反響(読んでいる文字を声として知覚する)や思考化声(考えを声として知覚する)など

 

3.自我意識の障害

 人格の自律性の意識の障害であり、これらの体験は、崩壊過程にある自我が示す一つの態度と見なすことも出来る。

(1)離人体験(現実感喪失など)

(2)作為体験(させられ体験)

 :思考面では、作為思考(考えさせられる)、思考吹入(考えを植え付けられる)、思考干渉(自分の考えを他人に操られる)、思考伝播(自分の考えが相手に伝わってしまう)、思考奪取(考えを抜き取られる)など

 

※とりあえず、参考までに項目だけまとめてみました。整理の参考になるかも?

 

H.経過・予後

1.精神分裂病の経過

 精神分裂病の経過は、極めて個別的・多彩で、一概にこうだとは言えない。ただし、大きく分けると、

  1. 進行性に症状が進展していく型
  2. 良くなったり悪くなったりというエピソード的な型

 があり、その2つの多彩な組み合わせとして理解できる。たとえば、急性期症状を繰り返し示すが、その都度悪化して最終的に人格荒廃に至るものもあれば、徐々に進行はするがそれほどひどい人格荒廃に至らないものもあり、色々である。更にこうした分類からは当てはまらないものもありえる。

 

2.転機の種類の名称

  1. 完全寛解:症状が消え、病識はあり、社会適応は良好なもの。
  2. 不完全寛解:症状は多少あり、病識は不完全、社会適応は不完全なもの。
  3. 軽快:症状はやや改善したが、病識はなく、社会適応が困難なもの。
  4. 未治:症状は不変もしくは増悪し、病識はなく、社会適応が困難なもの。

 

3.予後判定の徴候

 これと同様のものに、クローが提出した分裂病概念がある。分裂病は2つの症候群からなり、TypeTは予後が良く、TypeUは予後が悪い。

 

I.診断と治療

1.診断基準

 精神分裂病の診断基準としては、WHOで出しているICD−10や、アメリカ精神医学会で出しているDSM−Wなどの操作的診断基準が有名ですが、これについては学生レベルでは覚える必要はないと思います。学生レベルで必要なのは、歴史的に有名な診断基準です。二つ挙げますが、どちらも現在の診断基準に重大な影響を与えたものです。「4つのA」は暗記です。

(1)Bleulerの分裂病基本症状(4つのA)

  1. 連合弛緩Assoziationslockerung
  2. 感情鈍磨Affektstorung
  3. 両価性Ambivalenz
  4. 自閉Autismus

 いわゆる陰性症状に着目した基本症状です。彼は、副症状として幻覚、妄想、緊張病症候群などを挙げました。

(2)Schneiderの一級症状

  1. 考想化声
  2. 話し掛けと応答の形の幻聴
  3. 自己の行為に随伴して口出しをする形の幻聴
  4. 身体への影響体験
  5. 思考奪取やその他思考領域での影響体験
  6. 考想伝播
  7. 妄想知覚
  8. 感情や衝動や意志の領域に現れるその他のさせられ体験

 いわゆる陽性症状に着目したもので、急性期の診断に有益だといわれています。

 

2.鑑別診断

  1. 器質性精神病
  2. 症状精神病
  3. 中毒精神病
  4. 神経症、人格障害
  5. 躁鬱病

 要するに、多数の精神疾患が鑑別対象に挙がります。

 

3.治療指針

 原則として心理・社会的側面からのアプローチ(脆弱性の克服と環境調整)。ただし、症状によって阻害されてしまう社会適応を回復し、悪循環を断ち切るという目的で薬物療法を補助的に使用することは有益なことが多い。現在は一般に、次のような治療が行われているが、これがベストという意味ではない。

(1)急性期の治療

 通院もしくは入院で、薬物療法を中心に行う。時に電気ショック療法を行うこともある。

(2)慢性期の治療

 作業療法、レクリエーション療法、生活指導、精神療法など。デイケア、中間施設、訪問指導、共同作業所、職親制度などを活用する。

 

4.薬物療法

 典型的な抗精神病薬は、ドーパミンD2受容体を遮断するものであるが、それ以外にも様々なタイプの抗精神病薬が存在する(たとえばクロザピンはセロトニン5−HT2受容体を主に遮断する)。有名なものとしては、

☆悪性症候群

 次のような症状が現れ、放置すると20−30%は死に至る重大な副作用。通常ドパミン遮断薬によって生じ、脳内ドパミン/セロトニンバランスが崩れることで生じるとされる。

  1. 運動系・行動面の症状:筋強剛、ジストニア、無言、無動、鈍化、焦燥
  2. 自律神経症状:発熱(40℃以上の高熱)、発汗、頻脈、血圧上昇
  3. 検査所見:白血球増加、クレアチニンホスホキナーゼ上昇、肝酵素上昇、血漿ミオグロビン上昇、ミオグロビン尿(時に腎不全にまで発展)