死刑執行までの手続き

 懲役刑や罰金刑は、検察官の執行指揮により、刑の確定直後に行われるが、死刑の執行だけは、確定後に色々な手続きを取られた上で、法務大臣のところで決裁をした上で、はじめて執行される。ここでは、その手続きを紹介する。

上申書作成まで
 死刑囚の判決が確定すると、判決謄本及び公判記録がその死刑囚の該当検察庁に送られる。一審で判決(高裁に係属する前)が確定した場合は、判決を言い渡した裁判所に該当する地方検察庁、それ以外は二審裁判所に該当する高等検察庁に送付される。
 書類を送られた高等検察庁の検事長、または地方検察庁の検事正は、その死刑囚に関する上申書を法務大臣に提出する。

起案書作成まで
 上申書を受けて、法務省刑事局は、その検察庁から裁判の確定記録を取り寄せる。このときの資料は、大抵膨大なものであるが、それらの輸送を何かの機関やサービスに代行することは決してありえず、法務省の係官が直接運ぶ。
 記録は刑事局総務課で、資料が全部揃っているか、落丁が無いかをチェックし、その上で刑事局付きの検事の中から1人が選ばれて、記録の審査をする。
 審査の主な注意点は、刑の執行を停止する事由や再審の事由や非常上告の事由や恩赦相当の事由があるかどうかである。このチェックの過程で、執行の対象から外された死刑囚として、財田川事件の谷口繁義氏がいる。
 審査の結果、上記のような事由が全くなかったと検事が確認すると、死刑執行起案書を作成する。

執行命令書のサインまで
 作成された起案書は、刑事局内で、担当検事−参事官−総務課長−刑事局長のルートで決裁される。
 ついで刑事局から矯正局に送られ、参事官−保安課長−総務課長−矯正局長のルートで決裁される。
 さらに矯正局から保護局に送られ、参事官−恩赦課長−総務課長−保護局長のルートで決裁される。
 その後、起案書は刑事局に戻り、刑事局長が矯正局・保護局の決裁を確認した上で、起案書を「死刑執行命令書」と改名して、法務大臣官房に送る。
 法務大臣官房では、秘書課付検事−秘書課長−官房長−法務事務次官のルートで決裁される。ただし、法務事務次官の決裁は、大臣へのサインをすることに対する確認後に行われるそうである。法務事務次官の決裁は、「法務省当局の最終決定」であり、もし事務次官が決裁したのに、大臣が決裁しないと、当局と大臣の足並みが乱れたと見なされ、事務次官の責任問題になるということである。
 さて、ここに至るまでに死刑囚が身体や精神を病んだり、女性の場合懐妊していたりすると、書類はすぐに刑事局に回収され、このルーチンから外される。

サインから執行まで
 法務大臣が決裁すると、死刑執行命令書は該当検察庁に送られる。検察庁では、立会検事及び書記官を選ぶと同時に、死刑執行指揮書を作成する。
 一方、該当死刑囚が拘置されている拘置所に公用車で書類が届けられ、拘置所長の命令で執行の準備をする。
 そして執行当日には立会検事が執行指揮書を持って拘置所に赴き、概ね午前9時以降の午前中に死刑囚は刑場へ連れ出され、拘置所長が執行指揮書を読み上げた上で、死刑を執行する。大臣の決裁から死刑執行まで5日以内に行われる。



参考資料

死刑の考現学(勢藤修三)


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