翻訳ニュース(TIN News Update on 26 November 2003)
ネパール−チベット国境における不均衡とアンバランス

(訳文)
 ネパールと中華人民共和国は、両国の関係が「温かい」ものであり、協力と相互尊重の精神に基づいていると認識している。しかし、チベット−ネパール国境の実際の動きからは、不平等で、ネパール側にとって不利益なゆがんだ関係性が伺える。中国−ネパール国境協定の寛大な規定にもかかわらず、最近の中国の入管政策は限定的な印象を受ける。ネパール人の専門職従事者は、チベット人の観光業の幹部職を訓練するためにチベット自治区では大変歓迎されるし、ネパール人の売春婦は、国境を越えて、はるかシガツェ(Shigatse)のあたりでさえ見ることができる。しかし、一般のネパール人の多くはチベットへの入国を繰り返し拒否されている。評判の越境貿易は中国側の一方的な「サクセスストーリー」として進展しており、ネパール側に多額の貿易赤字を生じさせている。商業の動向と入管行政の実務によって悪化しているこうした状況を、ネパール人のビジネスマンの多くが不公平だと感じており、憤っている。
 11月24日にカトマンズで開かれた第7回「ネパール−中国民間人フォーラム」では、ネパール人のベテランビジネスマンがこのような状況を要約して次のように述べた。「(ネパールと中国という)二つの国は良好な関係を保っているが、このような関係をもっと建設的で利益あるものにするため、努力する必要がある。」

 中国とネパールの間に存在する国境協定によると、中国人・ネパール人双方が自由に国境を行き来することができ、一日以内なら国境から30キロメートル圏内で交易したり、短期滞在したりすることができる。そのためには、両国の市民はビザを取得する必要はなく、それぞれの出身国の税関当局から通行許可証をもらえばよい。しかし、このような手続きに従ってチベット自治区に入ろうとすると、ネパール人はチベットの役人や国境警備隊からしばしば嫌がらせを受ける。このことは特に Liping の国境検問所において顕著であるが、同検問所は、カトマンズとラサを結ぶ道路上にあるネパールの町 Tatopani に程近く、中国とネパールの間で開放されている8つの国境検問所のうち最も重要なものである。多くの同様のケースを見てみると、必要な書類を持ったネパール人が、なんら説明もなく、しかもしばしば何時間も待たされたあげく入国を拒否されている。ネパール人が提示した出入国関係の書類が単に捨てられたり、破られたり、無効とされたりする例も見られる。ネパール人が国境を越える権利を主張すると、チベット国境警察によって暴力を振るわれたり、手荒な扱いを受けたりすることもあり、ネパールの税関や入国管理関係の役人がチベットへの入国を拒否されることさえあるという。
 ネパールの新聞「カトマンズポスト」(11月4日)と「Samacharpatra」(11月10日)が Tatopani の税関責任者である Shiva Kumar Katuwal と、入国管理官のShiva Ram Gelal の発言をそれぞれ引用しているが、それによると、このような行動をとる理由を中国側に照会したが、明確な回答は得られず、言語の違いが障害となっているという。 彼らの発言によれば、どのネパール人の越境を許可するかという決定、およびいつ、どのような理由で許可するのかという点は、明らかに「中国の係官の気分」のみによっており、彼らは国境協定のことを知らされていないかのように振舞うという。こういった状況は「何年間も」続いているとのことである。
 対等なパートナーというより、中国に対して従属的であるネパールの立場は、越境貿易の分野でも明らかである。この交易は80年代半ばより大幅に増加してきた。手芸品や香料を除けば、ネパールのチベットへの輸出品は、ほとんどが米、野菜、果物や乳製品といった、チベット自治区の市場で安く売られる食料品である。主要な輸出品は植物性のギー(水分を蒸発させて脂肪分を固めたもの)であり、これは脂っこい、バターのような塊で、多くの「バターランプ」(チベットの僧院で典型的に見られる)の燃料となる伝統的なヤクバターの代替品として今日使われている。逆に、中国からネパール−チベット国境を通じて輸出されるのは、プラスチックや繊維製品のような単純工業製品がほとんどである。中国サイドもネパールサイドも、2007年に北京とラサを結ぶ予定の Qinghai−チベット鉄道の完成が、相互の経済的関係を促進するだろうと予想する。同鉄道のネパール国境への伸長は、2007年以降に着手される。
 11月24日のカトマンズポストによれば、ネパールの輸出のわずか1%が中国向けであり、一方輸入の12%が中国からのものだという。そのうち一番多いのがネパール−チベット国境経由のものである(ここに示された数字は、ネパールと香港との貿易額を含んでいるようだが)。ネパールのチベット自治区からの輸入量は、中国からの輸入全体の約4分の1に及ぶ。中国の他のチベット人居住地域(青海、四川、雲南)からの輸入量は明らかではないが、香港との貿易を無視すれば(ネパールは香港と東南アジアから多くの物品を主に空路で輸入している)、チベットがますます中国低地からの物資の中継地、現地のチベット人がわずかしか利益を得られない貿易の中継地としての役割を担っているように思われる。11月7日付のヒマラヤンタイムズ紙によると、ネパールの中国に対する貿易赤字は90億ネパール・ルピーにのぼり、香港との貿易額を含めると、160億ルピーにさえなるという。この巨額の赤字の他、ネパールのビジネスマンや税関職員は、彼らが保護貿易主義的で不公平と呼んでいる数々の貿易慣行について不平をもらしている。中国の税関は、ネパールの貿易商人によってチベットに持ち込まれる物資に、どんどん高い関税をかけていると言われている。ネパールの物品の対価は中国元によって支払われるが、ネパールの外国為替システムの不備のため、そのほとんどが、ネパールに持ち帰る中国製品を買う、という形で直ちに再投資されるわけである。外国為替システムの不備による同様の問題は、ネパールの西に位置するインド−チベット国境における貿易についても見られる。チベットからの輸入品へかける関税を計算するのに必要な、為替手形、インボイス、その他の書類はしばしば不完全であったり、架空のものだったりする、とネパールの税関は不満を述べている。
 地理的状況や、国内における整備された道路不足のため、Humla、Dolpa、上部ムスタンのようなネパールの辺鄙な地方は、国の中心部からと比べむしろチベットからのアクセスの方がよい。そのため基本的なネパールの食料供給を国境の中国サイドからの「再輸入」で賄っている状況だ。中国およびチベットのビジネスマンや運輸会社がこの交易に占める割合は不明である。中国は長年にわたりネパールに対して道路建設のための援助を行ってきたが、いくつかの有名なプロジェクトを除けば、このような一連の援助によって作られた道路は、ネパール国内の交通網整備というより、越境交通のために役立っているといえよう。最近、中国製品のネパールでの小売は、中国国籍の商人にとってますます利益率の高いものとなっているが、これらの中国製品は、ネパール人の卸売業者によってチベットからネパールの市場に運ばれたものである。ネパール人卸売業者は中国人の小売商人のほうが地元民(の小売商人)より信頼できると考える傾向にあるが、それは、彼らがネパールに留まろうという意思もなく、また中国製品を持ち帰ることに関心もないからである。
 ネパールには安い製品があふれているが、多くは中国低地で作られた、大企業のニセ商標をつけた標準以下の商品であり、チベット高原を越えてネパールにもたらされたものである。
 このことはネパールの観光業に特に影を落としており、トレッキング休暇のためにやってきた旅行者が、知らず知らずのうちにこういったニセ商品を安い値段で買うことになる。その結果、西側企業のライセンスによって東南アジアで製造したオリジナル商品を扱う商店は困難な競争にさらされており、健全な、品質が保証された、持続可能な、そして結局はより富をもたらす市場の発達が難しくなっている。
 チベットで人気のある、素朴なネパールの食料品も困難に直面しているが、それは詐欺的な商取引や、量的な制限、非関税障壁といった行政の裁量によってゆがめられた競争のためである。最近、よく知られたネパールブランドのイミテーションである中国製の植物性ギーがチベットの市場に現れたが、これはネパールの領事によるチベット自治区政府への苦情に発展した。ネパールからの野菜や果物、乳製品が、検疫の結果としてチベット自治区への搬入を拒否されるケースは繰り返し見られた。だが、成都から空輸しなければならない同様の物品は、もっと高価なのである。

 中国との貿易不均衡や、チベット国境で見られるその他の問題によって、ネパール当局は対策に追われてきた。特に the Rising Nepal のような、政府寄りのメディアは、これらの問題に対し控えめなアプローチをとっているが、7年間の内戦に苦しみ、絶望的なほど経済的に脆弱なネパールという隣人に対する便宜を図ってやろうという中国の心積もりは限定的なもののようだ。 たとえば、10月16日付のKantipur 紙に引用された中国の高級官僚の言葉によると、ネパール製品の関税特権について、「もし中国製品に対する関税が引き下げられれば、ネパール製品に対しても関税特権が与えられるだろう」という。11月6日、ネパール通商評議会によって開かれた会議において、チベット自治区税関局のLiu Jiang 副局長は、「(ネパール−中国の)税関や相互貿易には、これといって深刻な問題があるわけではない。もしあったとしても、私たちは対話を通してそれを解決する用意がある」と語った(11月7日付ヒマラヤンタイムズ)。彼は、国境の通商・交通を合理化するために両国はベストを尽くすだろう、と語った。しかし同時に、ネパールの輸出品には多大な需要があるが、さらなる高品質と、時機を逃さぬ納品が求められる、と強調した。

(原文)
TIN News Update on 26 November 2003 2 pages ISSN: 3313-3315

Asymmetries and imbalances on the Nepal-Tibet border

Nepal and the People's Republic of China (PRC) define their relationship as 'warm' and based on cooperation and mutual respect, but practices along the Tibet-Nepal border reveal an unequal partnership, skewed to the disadvantage of the Nepalese. Despite the liberal regulations of the Sino-Nepal border treaty, recent Chinese immigration policies appear selective. Nepalese experts are warmly welcomed to the Tibet Autonomous Region (TAR) for training Tibetan tourism cadres and Nepali prostitutes can be found as far across the border as Shigatse, yet many ordinary Nepalese citizens have been repeatedly refused entry into Tibet. The much praised cross-border trade is developing into a one-sided success story for the People's Republic of China (PRC), leaving Nepal with a huge trade deficit; a situation exacerbated by commercial practices and administrative procedures perceived to be unfair and resented by many Nepalese businessmen. On the 7th meeting of the Nepal-China Non-Governmental Forum held in Kathmandu on 24 November, senior Nepali businessmen summed up the situation with the remark: "[our] two countries have a warm relationship, however, we still need to work more to make this relationship more productive and beneficial".

The border treaty that exists between China and Nepal allows for free border crossing for both Chinese and Nepali citizens and the right to sojourn or trade freely for one day within a fringe of 30km on each side of the border. In order to do so, citizens of both nationalities do not require a visa but only an immigration pass delivered by the custom authorities of their country of origin. However, while attempting to enter the TAR in accordance with this procedure, Nepalese citizens have frequently been subject to harassment by Tibetan officials and border guards. This has been the case particularly at the Liping border post, situated close to the Nepalese town of Tatopani on the road linking Kathmandu with Lhasa, and the most important of a total of eight open points along the border. In numerous cases, Nepalese, in possession of the required documents, have been denied entry without any explanation and often after having been kept waiting for many hours. In some cases, the immigration documents presented by the Nepalese have been simply thrown away, torn up or otherwise made invalid. There are even reported instances of violence and the manhandling of Nepalese citizens by Tibetan border police when the former have insisted on their right to cross the border. Occasionally, even Nepalese customs and immigration officers have been denied entry into Tibet.

Quoting the Nepali chief of customs and the chief immigration officer in Tatopani, Shiva Kumar Katuwal and Shiva Ram Gelal respectively, the Nepalese newspapers Kathmandu Post (04 November) and Samacharpatra (10 November) report that enquiries made to their Chinese counterparts as to the reasons for this behaviour have not borne any tangible results and are hampered by the language barrier. They state that the decisions as to which Nepali citizens are allowed to cross the border, and when and why, apparently depend solely "on the mood of the Chinese officials" and that these officials behave as if they have not been informed about the treaty. This practice is said to have been going on "for years".

Nepal's role as a subordinate rather than equal partner is also apparent in the area of cross-border trade, which has been booming since the mid-eighties. Apart from handicrafts and incense, Nepal's exports to Tibet are mostly foodstuff like rice, vegetables, fruit and dairy products that are sold cheaply on the TAR market. The main export is vegetable ghee, a greasy, butter-like mass used today as a replacement for the traditional yak butter to fuel the innumerable butter-lamps typical of Tibetan monasteries. In return, China exports through the Nepal-Tibet border mostly simple manufactured goods, such as plastics and textiles. Both the Chinese and the Nepali side estimate that the completion of the Qinghai-Tibet railway, which will link Beijing with Lhasa in 2007, is likely to boost their economic relations. A programme to extend the railway to the Nepal border will be launched after 2007. The Kathmandu Post of 24 November reports that only 1% of Nepal's exports go to China, while 12% of the imports come from there, the largest part of it through the Nepal-Tibet border (though the figure provided seems to include Nepal's trade with Hong Kong). Nepal's imports from the Tibet Autonomous Region account for about a quarter of the total imports from the PRC. Figures on the amount of imports from other Tibetan regions of the PRC, in Qinghai, Sichuan and Yunnan, are not available but, ignoring trade with Hong Kong, (Nepal imports many goods from Hong Kong and Southeast Asia, mainly by air,) it appears that Tibet increasingly serves as a transit region for goods carried from lowland China, a trade which local Tibetans are likely to only marginally benefit from. All in all, the Himalayan Times of 07 November numbers Nepal's trade deficit with the PRC as 9bn Nepali rupees, or even 16bn if trade with Hong Kong is included.

Apart from this huge deficit, Nepali businessmen and customs officers complain about numerous business practices which they label as protectionist and unfair. Chinese customs reportedly impose increasingly heavy duties on goods brought into Tibet by Nepali traders. Nepali goods are paid for in Chinese yuan which Nepali traders, due to the lack of currency exchange facilities, mostly reinvest immediately by buying Chinese goods to bring back to Nepal. Similar problems due to the lack of exchange facilities exist with the trade on the Indo-Tibet border, west of Nepal. Nepalese customs complain that bills, invoices and other necessary documents required to calculate duties on imports from Tibet are often incomplete or unrealistic. Remote regions of Nepal like Humla, Dolpa and Upper-Mustang that, due to the geographical conditions and the lack of adequate roads in Nepal, are more accessible from Tibet than from central Nepal, are increasingly supplied with basic Nepali foodstuff that has been re-imported from the Chinese side of the border. The share of Chinese and Tibetan businessmen and transport companies in this trade is unclear. For many years, China has provided aid to Nepal for road construction but apart from some prestige projects, the roads constructed under this scheme serve more trans-border traffic than the inner-Nepalese traffic. Recently, the retail sale in Nepal of Chinese manufactured goods has been increasingly profitable to Chinese nationals, mostly ethnic Chinese, who distribute goods brought by Nepalese wholesalers from Tibet on to the Nepali market. Nepalese wholesalers tend to consider Chinese retail sellers more reliable than locals since they neither intend to stay in Nepal, nor do they have an interest in taking Chinese goods back to the PRC. Nepal is flooded with cheap goods, often substandard merchandise with the pirated trade marks of big companies produced in lowland China and brought across the Tibetan plateau to Nepal. This particularly affects the tourism market of Nepal with tourists on trekking holidays unwittingly buying fake equipment at low prices. As a result, Nepali shops providing original articles made under license from Western companies in Southeast Asia find it difficult to compete and to develop a sane, quality-based and sustainable and ultimately more lucrative market. Even simple Nepalese foodstuff popular in Tibet face difficulties due to fraudulent merchandising and competition being administratively distorted by quantitative restrictions and non-tariff barriers. Recently, a Chinese-made vegetable ghee, an imitation of a known Nepalese brand has emerged on the Tibetan market leading to complaints by the Nepalese consulate to the TAR authorities. In repeated instances, Nepali vegetable, fruit and dairy products have been barred from entry into the TAR as a result of quarantine controls, though similar products which have to be flown in from Chengdu in China are much more expensive.

The trade imbalance with China and other problems on the Tibet border have kept the Nepalese authorities busy. Although government-friendly media, like the Rising Nepal in particular, adopts a low-key approach to existing problems, the readiness of the Chinese side to accommodate the interests of its hopelessly economically weaker Nepalese neighbour, already suffering the duress of a seven-year insurgency, appears limited. The Kantipur of 16 October, for instance, quotes a senior Chinese official as saying, regarding concessionary entry of Nepalese products, that "if customs on Chinese products are reduced, then Nepalese products will be given custom concessions". In a meeting on 06 November organised by the Nepal Chamber of Commerce, Liu Jiang, deputy director general of the customs department of TAR declared "as such, there is no serious problems in customs and bilateral trade. If there is any, we are ready to solve them through dialogue" (The Himalayan Times, 07 November). He announced that China and Nepal will try their best to streamline border traffic, but also underlined that Nepali exports, though in huge demand, need better production quality and timely delivery.
end
翻訳:チベットチーム
 

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