記憶

随分昔の話になる・・・
虐げられる日々の今では想像もつかないほど無謀なことをしたものだ。
「昔の話」をするとオヤジの始まりとよく耳にするが、実際オヤジなのだから仕方がない。
既に記憶が薄れているのだが、記憶を辿り少々書いてみようと思う。
今から数年前、製品の現地試運転調整のために海外出張に出た。
期間は2週間・・・
既に同棲していたこともあり、窒息気味な生活に苦痛を感じてた時期だった。
仕事とはいえ、1人で過ごす時間を楽しみにしていた。
成田からジャカルタ経由で10時間の楽園・・・
神々の住まう島「バリ」
入国審査を通過し入国したのは19:00頃
むせるような熱気に包まれた空気の中を
ターンテーブルが悲鳴をあげながら、乗客達の荷物を吐き出す
やる気のない回転寿司のように・・・
私が立つ位置まで荷物が流れて来るには後5分はかかりそうだ
仕方なく、待ち位置を変えて荷物を待つ・・・
10分後
やはり荷物が出てこない。
「早速トラブルか?言葉の通じないのに・・・」
自慢じゃないが、英語などほとんど話せないし、ましてやヒンドゥー語など理解できるワケがない。
通訳ですら、まだ顔を会わせてないのだ・・・
ふと気づくと
ロビーの片隅で2人の係員が似たようなトランクを持っている。
1人は気弱そうな感じだが、もう1人は巨漢で厳つい感じの凸凹コンビ。
「そーそー、あんなトランクなんだけど・・・アレ?」
よく見ると、見覚えのあるステッカーが貼ってあるではないか!
「アレ?何か引っかかるようなモノ持ってたっけ?」
気がつかないうちにヘンなモノを運んで来てしまったのだろうか?
恐る恐る係員に近づいて柱の影から状況を観察してみることにした
しばし観察
どうやら、係員は荷物の持ち主を探しているようだ
もう少し様子を見ようと思ったのだが、
視線を感じたのか、巨漢係員が振り返り目が遭ってしまった。
しばし見つめ合う2人
だが、愛は生まれなかった・・・・
「コノトランクハオマエノカ?」
巨漢が怪しい踊り(絶対ゼスチャーではない)で聞いてくる
「そうだ」という私の答えに
係員は怪しくそして満足そうな微笑みを返し、トランクを運び始める
何事なのか?状況が掴めない
運ばれそうになるトランクを慌てて捕まえ、係員に聞いた
「チョット待て、一体お前は誰やねん?」
焦る私の問いに、係員は
「オレハオマエノトモダチダ」
「ニモツヲリョウガエマデハコンデヤル」
(ちなみに両替窓口までは20mほど)
そう言って、不自然に白い歯を見せて笑う。
ビー!ビー!ビー!ビー!
心の警報が鳴り響く
これは騙そうとしてる微笑みだ!
過去の経験からなのか?
自分も使った手なのか覚えていないのだが、
瞬時にそう感じ取った。
周囲では観光客vs係員によるトランクの奪い合いが始まっている
どうやら、ターンテーブル〜両替窓口まで荷物を運び
ルピーに換金される前に日本円でチップを貰おうという魂胆らしい。
このままでは「カモ」られる・・・
だが相手は厳つい巨漢係員
殴られればかなりのダメージを被るだろう
殺されるかも知れない・・・
だが、避けられない戦いなのだ!
気力を振り絞り、半分ビビりながらも、魔法の呪文を唱えた・・・
「ノーサンキュー」
[クリティカルヒット!!]
[ぱんちは巨漢係員にダメージを与えた]
[巨漢係員は逃走した]
[ぱんちのレベルが上がった Lv1→Lv2]
巨漢係員は御丁寧に「バァーカ!アホォー!」と日本語で捨て台詞を投げつけ
他の乗客のトランクを奪いに走り去る
入国早々に襲った珍事件
だが、私を待ち受けるのはこれだけではなかった。
日本円をルピーに両替し、空港の外に出ると待っていたものは・・・
鼓膜が破れんばかりの大音量ガムランの音色と大人から子供までのバリニーズ達の叫び声・・・
「#%☆凸¥*+○△$」←口論
「トキョーカラーオコーシノササーキサーン!」
「#%☆凸¥*+○△$」←口論
「#%☆凸¥*+○△$」←口論
「トキョーカラーオコーシノササーキサーン!」
「#%☆凸¥*+○△$」←口論
「#%☆凸¥*+○△$」←口論
「ガルーダデキタオキャクサーン!」←到着便がガルーダなんだから全員対象
「#%☆凸¥*+○△$」←口論
「ニポンカラキターヨシダシャン!」
「#%☆凸¥*+○△$」←口論
「#%☆凸¥*+○△$」←口論
「ニポンカラキタータカカシャーン!」
「#%☆凸¥*+○△$」←口論
「#%☆凸¥*+○△$」←口論
「#%☆凸¥*+○△$」←口論
「@@ツアーの方はコチラへ!!」
「#%☆凸¥*+○△$」←口論
「#%☆凸¥*+○△$」←口論
ヒンドゥー語で繰り広げられる罵声の嵐の中で少々混じる日本語
ヒジョーニウルサイ
どうやら人待ちらしいのだが、大勢で叫ぶので聞こえない。
一部の人がツアー客の名前らしきものを叫んでいるが
何が何だかわからない状況になっていた。
私には、どう聞いても口論しているのが全体の半分以上
お互いの声がうるさいと文句をつけているらしい・・・
ガムランの音色にはそぐわない罵声が飛び交う中
1人の少年が写真を手に近づいてきた。
「パンチサンデスカ?」(実際は本名で)
またか?
先ほどの係員を思い出したが、今度は少年だ負けるワケがない。
渾身の眼力で睨みつける(弱いって言うな)が、
彼の手には私の写真
いつのまにか国際手配されていたのだ・・・
なんてことは無く
どうやらホテルの迎えらしい・・・
少年の名前は「バワ」
実際はもっと複雑な発音をするようだが・・・
この少年にはバリ滞在中いろいろと世話になることになる。
私利私欲を交えながら・・・
なにはともあれ、バリ入国
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