記憶



記憶Vol.2




トランクをバワに手渡し、迎えの車でホテルへ移動。

デンパサール空港からバリ島最南端のホテルまでは約30分

街灯の少ない幹線道路を南下する。

幹線道路にも関わらず周囲には店らしきものがあまり見当たらない。

この時間では既に閉店しているようだ。



暗闇を見ていても仕方が無いので、挨拶代わりに持ってきた日本の民芸品の中から

「剣玉」をバワに達磨落としを運転手に渡し、ありきたりな質問を投げてみた。

「バワは何歳?成人しているようには見え無いけど・・・」



































沈黙













































聞こえなかったのか?今度は少し声を大きくして

もう一度同じ質問を繰り返す

「バワは何歳?」













































































沈黙































































あれ?もしかしてタブーな質問だったのか?









私の心に気まずい気持ちが溢れてくる

対面早々ギクシャクした雰囲気になってしまうのか?







何気にこういう雰囲気は苦手なのである。

















そうオイラは気弱なのだ・・・



















そういう質問がタブーならば、その場で教えて欲しいのだが

バワも運転手もひたすら沈黙を続けている









なんとかならんのか?この空気

これから先の滞在は苦難に満ちた日々になることだろう・・・

車の外は暗闇

これからのバリ滞在の行方を示しているようだ。

























理由は何であれ、最悪に近い状態でバワに出会ってしまった。

彼の機嫌を取り戻すにはどうすればいいのか?

明日からの仕事だけですら問題なのに、更に問題を抱えてしまった・・・









どうなる?この出張











言葉の通じないこの国で上手く立ち回れるのだろうか?

明日朝、迎えにすら来なくて途方に暮れる自分が見える。

遅刻の理由を知った仕事相手に散々悪態をつかれるのだろうか?

そんなこと聞くのは非常識だろう?と・・・

そう思うと、段々気持ちが凹んでくる































そのときであった





























キキーーー!!

突然、急ブレーキを踏む運転手

奇声を発するバワ

シートからズリ落ちる私

















なんだ?何事か?

















慌てて車外へ出て周囲を見渡すが誰もいないし、何もない。

では、今の急ブレーキはなんだ?













































運転席を覗く私の目に飛び込んで来たモノは・・・











































足元に散らばる「達磨落とし」

























































私は瞬時に全てを理解した・・・











































































この運転手はお土産が珍しくて

こともあろうに、運転中に達磨落としで遊んでいたのだ。





「ここここのバカタレがぁー!!!」





近年、人を怒鳴りあげるようなことはなかったのだが

一気に燃え上がった私の怒りは瞬時に頂点に達した。







「一体何考えて運転してんだよ?」

「事故ったらどーなるのか分かってるのか?」

「免許本当に持ってるんだろうな?」





怒りに震える私の言葉に運転手は下を向いて何も答えない。





反省してるのか?





だが、事故ってからでは遅いのだ。

早くホテルにチェックインし、明日の準備をしたいのだが

ここはキチンと反省させなければならない。

とりあえず、運転手の弁明を待った・・・

周囲を沈黙が包む













































2分経過・・・













































うなだれたまま微動だにしない運転手。

背後で、我関せずといった顔で剣玉で遊ぶバワ。













































更に2分経過・・・













































耐え切れなくなったのかバワが沈黙を破る



「ぱんちさん、彼は日本語分かりません」



私を脱力が襲う

そういうことは早く教えてくれよ・・・





また、怒りに火が点きそうだったが

さっきの問題発言の件もあるので

ここは穏便にバワに聞いた

「あのさ、バワこの国のタブーを知らないんだけどさ」

「人に年齢を聞くのはタブーなの?」





「はい、そうです」

彼は、そう答えると思っていた・・・

それならば、素直に謝ろうとも思っていた











だが、バワの口から出た言葉は











「いいえ、そんなことないです」

























「あれ?だってさっき・・・」





「?」が私の頭の中で飛び交う・・・





「ところでぱんちさんは何歳ですか?」



結局はバワも剣玉遊びに夢中になって私の問いに気がつかなかっただけらしい・・・





何事も最初が肝心

暗闇の中でバワ、運転手にもバワに通訳させてキッチリ説教(半分は脅迫に近い言葉を使った)。



まだホテルにすら着いていないのに、この疲労感。

















3人の珍道中はまだまだ続くのであった・・・











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